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二百代目勇者、今日は低気圧につき休みます  作者: 灯吉郎


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第二十二話 防具屋にて

「みんな、お待たせ!


馬車、決まったの?」


建物の扉を開けて、勇者が顔を見せる。


「ああ。ちょうどいいやつがあったぞ。


三日後に馬を連れて最終調整だ」


「三日後!」


ジンの言葉へ、勇者が瞳を輝かせる。


「スムーズに決まって良かったっすね。


予算内に収まったんすか?」


「まぁな」


クロウが問いかけ、ジンが頷いた。


「いくらだったの?」


勇者が重ねて尋ねる。


「秘密だ」


「秘密ですな」


「秘密じゃ」


「秘密です」


ジン、ドーガ、ラナ、スイが顔を見合わせて答えた。


「ええっ!」


「なんすか、そのチームワーク」


勇者が驚き、クロウが吹き出す。



「商談は終わったし、食堂へ行くぞ」


「うん、分かった」


ジンが席を立ち、気を取り直した勇者が頷く。



馬車市場を出て、ジンがさらに右奥を示した。


「で、馬車の調整が終わったら、向こうの門から出て次の街へ向かうからな」


「上級職へ導く、《マーダ神殿》のある街じゃな。


途中にひとつ、村があったはずじゃが、素通りするとしても数日は掛かるじゃろうな」


ジンの言葉へ、ラナが遠くを思い描くように続ける。


「上級職ですか。


その街で、装備も買い替えたいっすね」


クロウが、自分の皮装備へ触れながら呟いた。


「つうか、コンはここで鉄ぐらい装備した方がいいだろ」


市場の方へ歩きながら、ジンが告げる。


「あ。忘れてた」


勇者が自分の装備を見下ろした。


ゴブリンとの戦闘では主に支援へ回っていたものの、それなりに劣化してきている。


「でもなんか、鉄って重そうだよね」


「そうですな。


しかし前衛で戦うということは、重量との戦いでもありますぞ」


勇者の呟きへ、ドーガが応えた。


「ふはっ。


これ以上の説得力はねぇな」


前を歩きながら、ジンが手の甲で口元を押さえる。


「昼飯のあと勇者の装備買って、残り二日で次の街の装備代稼ぎだな」


「わかった」


勇者が頷き、一行は馴染みになった定食屋へ入った。



いつもの北風鳥の鍋を食べ終えて、反対側に軒を連ねている防具の露店へ移動した。


「よう、ジン。


今日はどうした?」


「コン……いや、勇者の装備を買いに来た」


防具屋の店主へ、勇者の背中を押しながらジンが答える。


(ほんと、行く店全部、顔見知りなんすね……)


後ろから眺めながら、クロウが目を細めた。


「そっちの兄ちゃんの装備も、皮じゃねぇか」


「あ。俺は次の街で買うんで大丈夫っす」


店主が声を掛けると、クロウは両手を見せながら一歩下がる。


「次の街って、《マーダ神殿》があるところか?


言っておくが、道中も長いぞ。首巻きぐらい、あっても損は無いだろう」


そう言って店主が見せたのは、青地に紋様が刺繍された首巻きだった。


ジンが、軽く口笛を吹く。


「へぇ、なかなか良い素材だな」


店主が頷き、得意げに商品を掲げる。


「だろう?


これから北へ向かうんなら、あった方がいい。


十ゴールドだが、八ゴールドにまけとくぜ」


「うっ……」


正直なところ、見た目がクロウの好みど真ん中だった。


「良いのではないか。


 なかなか似合いそうじゃぞ」


ラナも、織りと素材を眺めて頷く。


「じゃ、買います」


クロウが即答し、店主が笑顔で応えた。


「まいどあり!」


 その横で、勇者も鉄の鎧を試着する。


「うっ。やっぱり重いね……」


「まずは慣れですな」


眉を下げる勇者へ、ドーガが背中を叩いた。


「うっ……。


あれ。何これ?」


背中を叩かれた拍子に前へ出た勇者の目に留まったのは、古びた鳥笛だった。


「ああ、それか。


昔、旅商人から受け取ったものでな。なんでも《グリフィンの笛》なんだと」


店主の言葉を聞き、ジンが鳥笛へ目を向ける。


「よくある眉唾ものか」


「えっ、そうなの?」


鳥笛を見ていた勇者が、ジンを見上げた。


「本当なら、とっくに誰かが呼んでるだろ」


「いや、吹いたことは無いけどな。


晴れた昼間に吹くと、一度だけ呼べるらしい」


店主の説明を聞き、ジンが頷く。


「なるほど。《限定》アイテムか。


それなら納得した」


「呼べるってこと?」


勇者が期待に満ちた眼差しを向ける。


「まぁ、この笛が聞こえる範囲内にグリフィンがいるならな」


一応鑑定を使ってみたが、確かに一度きりの制約が付いていた。


「……欲しそうな顔だな」


ジンが、瞳を輝かせる勇者を見る。


「おいちゃん、いくら?」


「五、と言いたいところだが、鉄の胸当て、篭手、すね当ても買ってくれるんだろう?


 合わせて三十三ゴールドだな」


防具屋の店主が、指を三本立てる。


「買った!」


勇者が嬉しそうに頷く。


「買うのかよ」


ジンが笑いながら、勇者の背中を軽く叩いた。

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