表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二百代目勇者、今日は低気圧につき休みます  作者: 灯吉郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/23

第十八話 洞窟帰り

緩やかな下り坂を進んでいく。


「……ちょっと待って」


道の途中で立ち止まり、勇者が落ちていた小石を拾って投げる。


カツン、と音を立てて転がった。


「どうしたんですか?」


スイが、声を潜めて尋ねる。


「ん。この先に空間がありそうだったから、罠も含めて確認したくて」


変な音は、しなかった。


勇者が先へ進む。


「……コンさんが気になったの、たぶんコレっすね」


珍しく敵の居ない小空間に、ぽつんと箱が置かれていた。


「……これって」


「ダンジョン名物、“宝箱”っす」


勇者が近づき、松明の下側でつつく。


「開けていいやつ?」


「そっすね。諸説ありますけど、魔物が何かしらをしまい込むらしいっす」


そのため冒険者たちは、箱の中身は“戦利品”として回収する。


しかし、箱そのものは持ち帰らないという暗黙のルールが存在していた。


「……じゃ、開けるね」


ギィ、と音を立てて箱が開く。


「ゴールド入ってた」


「良かったっすね。タイミング悪いと、カラなんで」


数枚のゴールドだったが、思わず頬が緩む。


「じゃ、もう少し進んだら折り返そうかな」


一本目の松明は、まだ消えそうになかった。


さらに先へと進み、ゴブリンを倒していく。


「……あ」


松明が消えかかった。


「ダイ殿。次の松明をどうぞ」


「ありがとう、ドーガ」


火を移して、松明を交換する。


「じゃ、戻るね」


「また発生してる可能性もあるんで、帰りも一応気をつけましょう」


「うん」


クロウの言葉へ勇者が頷き、来た道を戻っていく。


「今ので、だいたい六ゴールドかぁ」


「そっすね。明日以降、ランタン持って来れたら単純に倍は行けそうっす」



やがて、始めにゴブリンと遭遇した地点へ差し替えかる。



「……居るね。一体……ラナ、クロウ、スイで行こうか」


松明を持った勇者が、壁際へ後退する。


「了解っす」


クロウがゆっくりと矢を番え、構える。


「いつでも」


ラナが魔力を溜め、姿勢を低く保つ。


「行けます」


勇者の隣へ立ち、スイが頷く。


「氷よ、貫け」


「……」


「ギャアッ!」


「やあっ!」


歩いて来たゴブリンへ、ラナが魔法を放つ。


同時にクロウの矢がゴブリンを貫き、最後にスイの一撃が決まった。


「……ふう」


「ナイス」


ひと息つくスイの肩へ、勇者が軽く手を乗せる。


「あとはもう、戻るだけだね」


「はい」


“西洞窟”の外へ出る。



ほぼ真上から差す日差しと、地上を吹く風が心地いい。



「……疲れましたね」


「そうだね」


スイが反射的に浄化魔法を掛けながら呟き、勇者が頷く。


「戻ったら、とりあえず風呂行きたいっすね」


クロウが伸びをしながら歩く。


「そういえばジン殿。“青樽亭”の風呂ですが、片方が日替わりの薬湯でしたな」


「そうそう。良いだろ?


宿泊せずに、風呂だけ利用も出来るし」


ドーガの言葉へ、ジンが頷く。


「もう片方も、好きな香油を入れられるのも良いな。しかも備え付けの」


「私、ラベンダーが好きです!」


ラナが目を細め、スイが浄化魔法を掛けながら楽しげに頷く。


「あれな。もし気に入ったやつがあれば、俺が仕入れとくぜ」


「では、ラベンダーを」


ジンの言葉へ、ラナが即答し、スイが嬉しそうに頷く。


「でも今日は、私も薬湯の気分です」


「珍しいの。初めてのダンジョンで疲れたか?」


「はい。松明があっても薄暗いですし、あと腕も……」


緊張と、普段使わない筋肉による疲労。


スイの言葉へ、ラナが納得したように頷く。


「確かにそうですな。戻られたら、先にお使いくだされ」


「えっ。ドーガさん、いつも薬湯なのに……」


「儂はそこまで疲れておりませんので、後でも問題ありませんぞ」


「それなら、お言葉に甘えて……」


ドーガへ勧められるまま、スイが頷く。


「終わったら、呼びに行きますね」


「お心遣い、痛み入ります」


スイの言葉へ、ドーガが礼をする。


「では、わらわもスイと入ろうかの」


「ふふ、いいですね。あのお風呂、二人でもゆっくり入れますし」


ラナが首を傾げ、スイが楽しげに頷く。


「いいっすねぇ。それなら片方空いてますし、一緒に入りますか、コン」


「いいよ。ジンも来る?」


「んー……」


クロウが誘い、勇者が頷く。


街へ向かってのんびり歩きながら、ジンが少し考える。


「……そうだな。たまにはいいか」


小さく口元を上げて頷いた。


「その代わり、香油はオレンジな」


「いいっすけど」


ジンが器用に片目を瞑り、クロウが口角を上げる。



やがて街へ戻り、風呂を済ませる。


「昼飯どうする?」


着替えながら、ジンが問いかける。


「ジンのところにランタン取りに行かなきゃなんで、酒場にしますか」


クロウが応えた。


「じゃあ、先にジンのところへ行くって、ドーガに伝えてくる!」


「よろしくっす」


着替え終わった勇者が告げ、クロウが頷きながら片手を上げる。


「よく動くなぁ」


ソファが置いてあるだけの休憩場へ腰を下ろしながら、ジンが呟く。


「そっすね。コン、優しいんで」


クロウが頷く。


「なるほどな……」


風呂上がりで露わになった灰色がかった金髪を、ジンが生成りのターバンへ手早くまとめ直す。


翡翠の嵌った銀細工のピンで留めた。


「……ジンって、金髪だったんすね」


自分の緑がかった黒髪を弄りながら、クロウが呟く。


「……まぁな」


巻いたばかりのターバンへ指を差し入れて、軽く頭を掻いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ