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前世の後悔

「とったぁ!!」


「それじゃとれないよ」


ザイバが僕と交差する直後に僕の左後方から振り返り際の一撃を打ち込んでこようとするが、それは僕がそうするように仕向けたものであり、僕は落ち着いて対応する。

回りながら体を落として両足と右手を地面につけバランスをとり、その勢いのままちょうど僕の斜め上に来ているザイバの左腕に僕の木剣を打ち込む。

ザイバ自身の木剣を振る勢いも相まって身体強化をかけているザイバの腕でも骨が折れる音がする。

そんな状態で木剣を持ち続けられるはずもなく、ザイバが木剣を手放したところで僕の勝ちとなった。


「僕の勝ちだね。」


「ああっくそ!お前の勝ちだ!」



現在僕がいるのはこの前と同じ村長の家?の広間であり、さっきまで打ち合いをしていたのはあの時七人の一番右端にいて、僕と最初に喋った見た目三十後半の男性。

何故僕がまたこの人と戦っているのかというと師匠のせいだ。

あの日七人全員を倒した後、やり過ぎてしまった人に応急処置をしてから師匠のところに行ったんだけど、そこで師匠から"どれくらい成長したかを見る"と言われてボコボコにされて意識を失った。

もうあれです。理不尽すぎるよね。

それで意識がなくなる前に師匠から言われた一言が「まぁ及第点といったところか」だ。

あんまりではなかろうか?


その後、目が覚めて僕がいたのはどこかの家の床の上で、師匠はちゃんとベッドに寝ていたよ。

目を覚ました師匠は僕にダメ出しを数分、褒めを数秒してから本題に入った。

簡単にまとめると

「私はこれから数日用事でこの村から出ている。私が帰ってくるまでの数日間七人と鍛錬して先の問題を改善させておけ。私が帰ってきたら確認するからな。改善されていなければ覚悟をしておけよ」

とのことでした。 

僕は後一年くらいずっと命を張り続けなければいけないらしい。


そういう理由からあの七人と鍛錬するすることになったんだけど、鍛錬の時はお互いに普通の木剣しか使うことは許されなかった。

その目的は僕が新しく考え出した戦い方の問題点を改善するためだ。

僕の新しい戦い方は、僕の剣術は今まで通り変えず、ユグドラシルの剣の形や長さを常に変えて応用力を増やすのいうもの。

問題点 ユグドラシルの剣でなければできない戦い方だということ。以上。


なんだかんだとユグドラシルの剣以外を使うのは久しぶりで、割と違和感がある。

それは相手も同じようで


「なんで俺がこんな木剣を使わないといけないんだ!やりにくくて仕方がねーぞ」


「僕よりも年上なんだから子供みたいなこと言わないでよ。僕だって同じ条件なんだしさ」


「うるせぇ!俺の場合長いこと同じ武器でやってきてんだから違和感が大きいんだよ!」


「その長いことやってきた武器を使って僕に負けたんだから変わらないよ」


「おいどんもそう思うっすよザイバさん」


「デブは黙ってやがれ!」


僕のフォローをしてくれたのはデンタさん。

七人の中で一番の巨漢。武器はウォーハンマーでハンマーとは逆の端に分銅みたいなのがついていたのを使っていた。

分銅で中距離から拘束してはハンマーで頭を砕きにきたり、鉄鞭の様に戦ったりと見た目に反して器用な戦い方をする男性。


ついでにザイバの戦闘スタイルは斬撃を主にする剣士って感じ。日本の静というよりも中華の動といったスタイル。言葉遣いは荒っぽいけど剣の振り方は綺麗で、昔は割とちゃんとした人だったんだと予想している。


「勝敗が決まったならさっさと下がれザイバ。次は俺だ。マーリンも準備はいいな?」


ザイバとデンタさんが喋っている所に割り込んできたのはルーンさん。一人称は俺だけど女性。男装の麗人といった感じの人で武器は細剣を使い、刺突を主とした戦闘スタイルをする。

そんなルーンさんの手には二つの木製の細剣。ルーンさんと僕の分だ。

この鍛錬のルールとして僕の武器は相手に合わせることになっている。

ザイバやルーンさんはまだ剣だからいいんだけどデンタさんとかの剣じゃない時が非常に辛い。


「準備はいいか」


「いつでも」


言いたい事はまだあるけど師匠が帰ってくるまでに成長しておかないと殺されるから、頑張るんだけどね。

戦績


ザイバ   三戦三勝        青龍刀

ルーン   三戦二勝一引き分け   レイピア

デンタ   三戦三敗        戦鎚

新海    三戦ニ勝一引き分け   刀剣

バムー   三戦二敗一引き分け   節鞭

ティッティ 三戦一勝一敗一引き分け 槍

ダル    三戦二勝一引き分け   トンファ


「ザイバは完勝できたんだけどね。やっぱり使い慣れた武器じゃないと厳しいよね」


最初に並んでいた順に戦績を並べてみたけど、あんまり良い結果ではない。この前の戦いも七人が七人とも冷静でなく、共闘するという発想がなかったからこその勝利で、完全な実力の結果とは言い難い。


「いちいち俺の名前を出すんじゃねーよ!!俺だけ完敗したのは、俺の武器がお前の使ってた武器と同じだからだろう!」


「でも似た様な武器のルーンさんや新海さんは完敗してないよ?」


「ルーンは刺突武器だろうが!それに新海さんは……あれだ、ちょっと違うし実力だ」


「実力だよね」


「っくっそぉうるせぇ!!人に言われっとイラつくんだよ!!それに新海さんは強さを求めて旅をしてここにたどり着いた人なんだから仕方ねーだろ!!」


これは初耳の情報だった。てっきり僕はこの七人全員が純粋に力を求めてここにいるんだと思っていたんだ。でもザイバのこの言い方からして他の人はまた違う理由でここにいる、或いはここにたどり着いた様だ。


「へぇみんながみんな同じ理由でここにいるんじゃないんだね?」


「あっ!!くそっまたいらねー事を」


ザイバの反応から見てあまり大ぴらに言っていい事じゃないみたいだね。まぁ考えなくてもわかる事だけど。

新海さんの他六人の事を聞きたくはあるけど、別に聞いてどうなるわけでもないし、気軽に聞いていいことでも無いか。この話を打ち切って違う話に行こうとするとザイバは急に真面目な顔になった。


「いや…ここで言っといてもいいかも知んねーか。」


「えっ?」


「俺たちは俺たち七人別の何かを求めてここいる。そしてその答えをお前やあの【無双】に求めているわけだが、そうなるとお前らに俺が何故ここに来たのかを話しとくのもいいかもしれねーだろ?」


「いや僕ザイバ達が何を求めてるとかどうでもいいんだけど、」


予防線を張ってはみたもののザイバは止まらない。ザイバはやるとなったら止まらない性格をしている様だから仕方ないと思うけど。


「新海さんはどっかの島国出身らしくてな、今から五十年以上前にこの村にたどり着いてそこからずっとここにいるらしい。新海さんは別に隠してねーからな、俺が言うが、他は自分で聞け。

んで俺の話だが、俺は逃げてきたんだよ」


「逃げてきた?」


「そうだ、いろんなもんから逃げて、これ以上逃れねーここに辿り着いたってわけだ。」


ザイバはそう言い切ってから僕の顔をじっと見てくる。何を求めているか分かってしまうので一応乗ってあげる。


「色々って具体的には」


ザイバは嬉しそうな顔をして


「んな聞きやがって、まぁ特別に教えてやるがな。……俺は道場と記憶から逃げてきたんだ。

俺が今も使ってる剣の道場でな、自慢じゃねーが俺はそこの師範代だった。」


「まぁ自慢にはなってないね」


「くそっ黙って聞いてろ。俺はまぁそこでうまくやってたんだよ。だがな、いつからか覚えてねーが時折見覚えのねー物が頭をちらつく様になった。馬鹿でけー石の建物だったり、見慣れねー服を着込んだ人だったりな。

それがどんどんチラつく感覚も短くなりやがるし、胸糞わりー光景も見る様になった。

そんな状態で道場の師範代なんてまともに務まるはずもねー。日を追うごとにみたくねーもん見せられて、それに比例する様に周りからの圧力も増しやがった。」


ザイバはそう言うと立ち上がって広間の隅に置かれた愛剣を取って戻ってくる。


「こりゃあの道場から唯一持ってきたもんでな、師範代の証明書みたいなもんなんだよ。そしてこれは完全な実力主義のもんで、戦って師範代から奪ったもんだ。

調子が悪くなる前は俺に挑もうとするやつなんて一人もいなかったが、悪くなり出した途端毎日のように挑まれるようになった。馬鹿にされてるのかとも思う相手からも挑まれることもあったぜ」


鞘から刀身を出して軽く振るい、陽の光に刀身を晒す。僕からみてもいい剣だし、よく手入れも行き届いている。


「そんなある時な同期の奴から挑戦されてよ。

軽い挑発に乗っちまって自分を抑えきれずに殺しちまった。道場内で命のやりとりは許されてねー。真剣を使う稽古だからこそ加減できるものだけが師範代になる資格がある。

つまりはその時俺はそれまで築いたものを自分で捨てちまったってわけだ。んでそんな時に限って一番見たくなかったもんを見ちまった。その時の俺と同じ様に自分で全部を壊しちまう光景をな」


前世の記憶だろう。たまたま前世のトラウマとかぶるところの多い環境に居たんだろうね。神くんから聞いた世界の流れを思い出し、そう結論づけた。


「その光景と目の前の光景で頭の中が真っ白になってな、恩師や先輩、同期に後輩をズタズタにしてその道場から逃げ出した。それまでの人生全部がそこにあるってのに、この剣以外何も持たずに逃げ出したよ。とにかくあそこから離れたくて、記憶も見たくなかった。

んで記憶のこととか調べながらこんなド辺境まで逃げてきたってわけだ。調べた結果としては前世帰りって言うらしいぜ。なった奴は大体人生破滅したってよ」


「前世帰りね。其れで結局逃げ切れたの?」


「逃げ切れてねーからお前に挑んでんだよ。ここに辿り着いてから思い出すことも減ったが、まだ時々ちらつきやがる。

もっと遠い場所へ、ここじゃねー場所まで行く力が俺は欲しい。いつか記憶に振り回されることのねー人生を送りてぇ」


結局最後まで聞いてしまったね。まぁ聞いたところで何一つ言えそうには無いけど、ここで僕が「前世の記憶や過去の出来事に向き合ってみなよ」なんてザイバに言っても何の意味もない。

それが出来ることなのかどうか僕にはわからないし、出来ないからザイバはこんなに苦しんでいるんだろうからね。


それに僕もどうしようもないことから逃げたことはある。逃げること自体は悪いことだと思っていない僕だけど、逃げるべきでないと分かっている時に逃げたのはあの時が初めてだった。前世今世含めた中でその一回だけだ。

それも上手いこと逃げ切れたとは言えないもの。

だから僕はザイバにこう言おう。


「うまく逃げ切れるといいね」


「っぁ?。グックク、ぐははは!!ああ逃げ切ってやラァ!!!絶対にもう追いつかれねーってところまでな!!、お前は逃げ切れなかったみたいだがな!!!」


「ちょっとね。いつのまにか彼女になってて、いつの間にか婚約者になりかけてた女の子がいてね。あのままだと僕は何も自由に出来なくなるところだったんだ。

うまく逃げることもできなかったけどね。」


「ぐはははははははは!!!何だそりゃ!!すげえ女がいたもんだ!!!お前相手にそこまでできちまうんだからな!!!!」


うん。すごい子だったね。あそこまで綺麗に掌で転がされたのはあの子だけだ。顔も名前もしっかりと覚えてる。

柊 紫苑(ひいらぎ しおん) 僕の幼馴染で元彼女。僕を一方的に敗北させた同級生。そして転生するのかどうかを僕が唯一気にした人だ。

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