昇格
マーリンです。
この前シェーラ母さんやエル父さんに恥ずかしい事をみんなに暴露されたマーリンです。
あの日は僕の他にルート兄さんやマエル ルーリィ達も暴露されて非常に気まずい雰囲気が形成された。
隠し事や恥ずかしい事を互いに暴露し合えばより親密になるとかそんな話で盛り上がっていた前の世界の人たちに言いたい。
そーいう事はバレたら嫌だから秘密にしてるんです。
そしてシェーラ母さんとエル父さんが眠ってから子供達だけで事情の説明や、事の折り合いをする会議みたいなのをした。
結論は掘り返したりせずに忘れましょう、だ。
それから数日家族と王都で過ごしたのち、シェーラ母さん達は村に帰った。
少しだけトラブルもあったけどちゃんとお別れも済ませることができたよ。
エル父さんにルーリィが成人してからの予定を聞いてみたけど、王都の教育施設に行かせるつもりらしい。
つまり次にルーリィに会うのは四年後みたいだ。
あと大切なことで冒険者登録をしてきたんだ。
ランクはFからスタートだけど、マエルからは羨ましがられたね。
登録した時にFランクのクエストを確認して、旅の道すがら達成できそうなものだけ全て受けておいた。
冒険者ギルドのクエストはハイランクのもの以外は場所によってあるものがちがう。よって受けらるクエストは場所によって少しだけ違ってくる。
しかしクエストの達成報告はどこの冒険者ギルドでも可能だ。
ついでにお金を預けたりも引き出したりもできるし、冒険者ギルドはお金を融資したりもするので前の世界でいう銀行に近い機関だと思う。
シェーラ母さん達が王都から出発するのに僕も合わせて王都から出発したけど、その時に王城から来た人に足枷つけられた。
なんでも国から出た時や壊れた時に、国へそのことが伝わるようになっているらしい。
城塞都市ディミトリアで外すと説明されたけど気分はだだ下がりだった。
「おめでとうございます!
王都フィルヴァーンでお受けになった依頼が全て問題なく達成されている事を確認いたしました!
Fランク冒険者マーリン様はEランクに昇格です。
それと買取させてもらいました魔物の素材についてご確認したいことがあるのですがよろしいですか?」
そして今僕は足についた輪っかを気にしながら一ヶ月ほど旅をして衛星都市アリウムに到着し、そこの冒険者ギルドでクエストの達成報告をしたはずなんだけど。
「何か問題があったんですか?」
少しだけ足枷のことでモヤモヤしている時に襲ってきたので、八つ当たり気味に討伐した魔物達なんだけど。
討伐したらダメな魔物でも混ざっていんだろうか?
「いえ買取自体になんの問題もありません。
ただ魔物中にCランクが二体とDランクが五体混ざっていまして、その経緯をお聞きしたいのです」
「経緯ですか?」
「はい。もしご自身が討伐されたのでしたらEランクからDランクへすぐに昇格していただけますし、実力試験のようなものを受けていただけましたらCランクへの昇格も可能です。」
受付の女性がそう言うと少しだけ周りの冒険者達が騒ぎ出した。
まぁこんな子供がこんな話をしていたらそうなるかもしれないけどね。
それと昇格の事に僕としては少しだけ疑問にも思う。
「昇格のスピードが少し早すぎる気もするんだけど、昇格基準ってどんな感じなの?」
すると受付の女性は少しだけ驚いたような顔で僕を見てきた。
何か変な事を聞いたのかもしれない。
「あー変な事を聞いてたならごめんなさい。
ちょっとした疑問なので」
「いえっめずらしい質問でしたので反応が遅れてしまいました。申し訳ありません。
昇格基準については教えられますので問題ありませんよ」
「やっぱり聞く人は少ないの?」」
「そうですね、冒険者の方々は昇格するまでは気にする方もいますが昇格できるという事を疑問に思う方は少ないですね。
昇格基準はCランクになるまでをお教えします。それ以上はまた上がってからということでよろしいですか?」
「それで大丈夫」
ランクに到達する前に昇格基準を聞くのは流石にダメだよね。
「ではFランクから順にいきますね。
Fは依頼達成数が一定基準に達する事です。
Eは討伐系クエストのクリアと一定基準の達成
Dはある程度の難易度のクエスト達成
Cはある程度の難易度のクエスト達成に、クエスト達成割合がある程度いっている。
大まかな基準はこうですが、実力やその他要素によっても昇格する事は多くあります。」
「経緯を聞こうとしたのはその他の要因っていうのを確かめたかったって事?」
「その通りです。どのようにして手にいれたかによって判断が違ってきますから。
しかしDランクへは昇格する事はなんの問題もありません。
Cランクに昇格する為に必要なその他の理由にですね」
理由は聞けたけど、どうしようか。
今の僕のランクはEでようやく冒険者の入り口といったところなんだけど、別に早くランクをあげたい理由もない。
「そうだね、まだEランクで大丈夫です。
そこまで急ぐ理由もないのでゆっくりやっていこうと思います。」
受付の女性にそう伝えると、周りの冒険者は突然叫び声を上げて騒ぎ出した。
受付の女性も何やら困った顔をしている。
さっきの話から考えたらランクをあげないということもできると思うんだけど、できないのだろうか?
僕が不思議そうにしているのがわかったのか受付の女性は何やら説明をしだした。
「えぇっとですね。確かに昇格しないということも可能なのですが、そうする利点は本当にありませんよ。
受けられる依頼には制限がつきますし、ギルドに預けられる金額や借りれるお金もランクが低ければ少ないですから。
先ほどのような魔物を討伐した場合も、討伐をした後に依頼を受けて依頼達成報酬と売却報酬を受け取ることもできるんですよ?」
「僕はギルドの設備は利用してないし、魔物も今のままでも買い取ってくれるなら別に困りませんから」
「そうですが……高ランクになるほど御自身の名声は高まりますしギルドや国からの特別依頼も受けれるようになりますよ?
それと高ランクの人ほどギルドが持つ情報を多くもらえるようにもなります。
ですのでランクが上がって悪い事はありません。
私個人の意見ではありますが、Cまでランクをあげられた方が良いかと思いますよ」
話を聞く限りランクを上げるデメリットは全くないし、メリットもわかったから昇格するのもいいんだけど。
どことなく僕がまだ知らないことがありそうだし、知らないまま利用されるのは嫌だ。
僕は《clown mask》の対象を受付の女性にして《明鏡止水》で心を落ち着かせる。
受付の人が意図的に隠している何かを聞き出す為準備を完了させ口を開こうとした時、いきなり後ろから軽い衝撃が来た。
「よおっマーリン!!聞いたぜCランクになるんだってなぁ!!」
予想外の事態ではあったけど、すぐさま後ろから襲ってきた奴に反撃を喰らわそうと行動する。しかしその行動の最中に話しかけてきた声に聞き覚えがあることに気づいた。
一旦姿を確認しようと後ろを振り向くと、そこには三年以上前に僕の故郷にきた冒険者の二人の姿があった。
「アストにサリさん?」
「おう!!あの頃よりも俺は格段にカッコよくなったからな反応がそうなるのは仕方ねーぜ」
「お久しぶりですマーリンくん。マーリンくんは三年前とそこまで変わっていませんからすぐにわかりましたよ」
「サリさんこれでも身長は伸びたんだからね」
流石に二人とも背が高くなって一瞬誰かがわからなかったけど、顔に面影がちゃんとあった。
体も雰囲気もたくましくなってる。
「いやまじでマーリンはそんなに変わってねーな!その身長でCランクとは信じられねーぜ」
「これから身体強化を控えていくからすぐに伸びるよ。それにまだ昇格するとは決めてないし」
僕がそういうと二人とも受付の女性と僕を見てから、二人で笑いアストが僕の耳に口を近づけてきた。
「マーリンは何か隠されてるのが気になってんだろ?」
「うん」
「受付の人の評価ってさ、担当した冒険者の昇格数とかで評価されんだよ。
だから出来れば自分が担当した時に昇格して欲しいってわけだ」
あーそういう事ね。やっと納得できたよ。
滅多にない事と言っても、昇格の勧め方が強いなって思ってたんだ。
「ですがマーリンくん、受付の方が言っていたことには嘘はありませんよ。アストが言った事についても、私達冒険者にわざわざ言うことでもありませんし。」
「わかってるよサリさん。ちょっと気になってただけなんだ。」
二人と少しだけ話した後、受付の女性の方を見ると少しだけ緊張した面持ちだった。
ちょっとだけ悪い事をしたかもしれないけど、気になった事があれば解決してからじゃないと不安なんだ。
「Dまで昇格したいんですが大丈夫ですか?」
「…はい。書類の方はこちらになります。」
受付の人は少しだけがっかりしながら書類を僕の方へと渡してきた。
ついでに後ろの二人は小声で僕への批判をしているし、その他大勢の冒険者は「賭けが成立しねー」とかなんとかほざいている。
きっとCランク昇格時のテストかなんかであそこらへんの冒険者と戦わされていたんだろう。
僕は書類に署名してから受付の女性に笑顔で話しかけた。
「Cランク昇格に必要な分のクエストを教えてもらえませんか?昇格する時にはお姉さんのところでしますから」
「っはい!少々お待ちくださいね!!」
そうして受付の女性は急いで走っていく。
うん。とてもいい事をした気分だ。
後ろの冒険者からは罵詈雑言文句の嵐だけどね。
僕は受付の女性が戻ってくるまでアストやサリさんともう少しだけ話すことにした。
いきまりの再会で何がなんだかわからないからね
「そういえばアストとサリさんはなんでアリウムにいるの?確かフルーベンスを拠点にしてるってきいてたんだけど?」
「そうですよ。ヒムさんに聞いてたんですか?この前マーリンくん会ったとヒムさんが教えてくれたんですが」
「九ヶ月くらい前にあったよ。その時に聞いたんだ」
三年前のメンバーはあれからも同じパーティーになったりなど、交流はずっと続いているとヒムさんが言っていた。
アンジュは他のみんなよりもは関わる機会が少ないらしいけどね。
「俺とサリはCランクに上がる為にここらで暴れてたっていう盗賊を締め上げに来たわけで、今はその報告だ」
「フルーベンス近くでもいくつか依頼があったんですけど、どれも既に誰かが受注していたり規模が多すぎたりと結局こんな場所まで来たというわけです」
Cランクに上がる為に盗賊狩りか。
僕としては魔物かだったり、届け物だったりが良いんだけど。
その後はホットやヒムさん アンジュの話などを聞いていく。
ホットはランクもDになっているものの、娼館通いが激しく金銭的には充実していないらしい。
基本的にはソロでやっているらしいけど、最近はパーティを組んでいる事が多いそうだ。
ヒムさんはお馴染みの行商人親子の護衛をしたり、ランク上げの為に頑張っているんだとか。
ヒムさんはここ二年くらいCランクのままであり、そこまでランク上げに意欲的じゃなかったらしいけど、人が変わったみたいに頑張っているとアストが言っていた。
アンジュもAランクに昇格し、トップ層への階段を登りはじめてるそうだ。
常にソロで活動して実績を作っており、期待のエースと言ったところらしい。
そこまでの話を聞いたくらいに受付の女性が戻ってきて僕に一枚のクエストを見せてきた。
予想していた通りの盗賊討伐クエストだ。
理由は試験の理由と同じで、対人の場合どうなのかという事を知りたかったから。
対人も問題なくできるならいう事はなく、問題になるのであればその分他の実績を積み上げてもらうという事だろう。
僕はそのクエストを受けて、軽くアストと手合わせしてからアリウムを出た。
もちろんアストから誘ってきたんだよ。
「相変わらず馬鹿みたいに強かったなマーリンは。俺、勝てる気しねーぜ」
「アストはこの三年で随分と成長してますよ。いつも隣で見ている私にはよくわかっています。」
冒険者登録をした日に初めて会った俺の恋人のサリはそう言って俺を慰めてきた。
俺だって自分が三年前から成長していないなんて思ってない。絶対に成功してやると思ってなった冒険者という職業。数度目の依頼失敗で思い知らされる自分の弱さ。
自分の半分くらいの歳で、そこいらの子供よりもちっちゃい子供が自分の何倍も強いという現実。
顔では笑ってたけど心の中では絶望してた。
「サリにはこの三年ずっと支えられてるぜ。
俺一人だけだったら死んでるか、別の道を探してる」
収穫祭の日、サリは俺の悩みを聞いてくれた。
俺が隠していた気持ちを見抜いた上でただ話を聞いてくれたあの日、最初は話す事に抵抗感もあったけどその抵抗感すら受け入れてくれた。
男って単純だと自分でも思ったけど、サリは「男の子ならそれくらいで良い。」と言って笑ってくれる。
そして今も
「三年じゃありませんよ。これからずっとアストを支えます。初めて会ったあの日に私を助けてくれたアストみたいに」
「///あぁよろしくな。
んじゃフルーベンスに帰るか、無事依頼も達成してCランクになれたしよ」
「そうですね。ここ最近各地で依頼された魔物や盗賊達がすでに死んでいたという事例が多いですから。
依頼の盗賊が既に倒されていたら、ここまでの旅費とか時間がすべて無駄になっていましたからね」
依頼を受けた冒険者が依頼された魔物や盗賊を倒しに現場に向かったら既に倒されたとかは少なからずある。そうした場合はその事をギルドに報告して後は特になし。
冒険者の中には自分が倒したと虚偽の申告をするものが多いが、後にバレたら大幅な降格、もしくは冒険者資格の剥奪だ。
しかしここ数ヶ月前から依頼の目標が既に死んでいたという報告急激に増えている。
その数は数件十数件ではなく、ギルドから全冒険者へ申告要請が出されるほどだ。
「確か【死神】だったか?マーリンの奴が無駄足にならなきゃいいだけどな。」
俺はマーリンが無事に依頼が達成できる事を祈ってサリと共に拠点にしているフルーベンスへの旅を始めた。
楽しんで読んでもらえたなら幸いです。もしよろしければ評価のほうお願いいたします




