よっちゃん、貴方は何をしてるのかな?
どうもマーリンです。
今神様で友達のよっちゃんとお茶と菓子を食べながら談笑中。
「いやぁ〜ユグドラシルからの宣言を聞いた時は、本当にどうなることかと思ったわ。
永遠じゃぞ!?永遠。
心臓止まるかと思ったわい。」
「もうそれ四回は聞いたよ、よっちゃん」
「そうなんじゃが〜」
こんな感じで適当に楽しく談笑してた訳なんだけど、一個だけ聞いてみたかったことがある。
「そういえばゲオルグ正教の祖ゲオルグって本当に神様になったの?」
「ふぇっ?……………あ〜〜彼奴な。なっとらんよ。
彼奴は詐欺師で奴隷商。ただそれだけの男じゃった。他に特別な所など何も持ち合わせとらん」
「詐欺師で奴隷商ね。」
「ちょうど一万年ほど前に【第一次聖魔大戦】が終わり、人種同士が疑心暗鬼の状態じゃったからな。
タイミングじゃよ。
あんなめちゃくちゃな事でも、その時々の状況次第では信じられ広まっていくものじゃ。」
ふぅ…とよっちゃんは息を吐いて、ティーカップをソーサーに置いた。
「わしが知る限りこの世界で神に最も近い所におるのは現在過去含めてもあやつじゃよ。
前にも話したじゃろ?奴じゃ。
お主でも確実に負ける相手じゃからの、相違わぬ様に気をつけい。」
「触らぬ神に祟りなしって奴だね」
本物の神様にベタベタしまくってる僕はいけしゃあしゃあと言い切る。よっちゃんからのツッコミはなかった。
ちょっとだけかなしい。
そして暗くなりかけた空気を変える為、話を変えることにする僕とよっちゃん。
「そういえばあいつから"祝いの言葉"を預かったるぞ。
あいつは今向こうの神々と話し合いじゃからな、どうしてもお主に会いに来れん。
せめてこれぐらいは友達としてじゃと」
「神くんらしいね。なんて言ってたの?」
「うんとの、「魔理、今はマーリンだよね。君の事はそっちの神様から聞いたり、そっちに行った時に直接見させて貰っているよ。
会いに行けなかったのはごめんね。
僕は君の人生を祝福しているよ!!
成人おめでとうマーリン
君の友達の神様より」、だそうじゃ」
思った以上によっちゃんの声真似が上手くて、神くんに直接言われてる様にさえ感じた。
絶対にめちゃくちゃ仲がいいよね神くんとよっちゃんってさ。
そんな事を考えているとよっちゃんはゴホンっ!と一回咳をしてから。
「それとわしからも"祝いの言葉"じゃ。
この世界で成人となった事、そしてこれからこの世界で生きていく事をこの世界の神として嬉しく思うぞ。
わしはこれからのお主の人生に期待し、その人生を祝福する。
………以上おぬしの友達の女神より。」
「ありがとう、神くんとよっちゃんからの言葉確かに受け取ったよ」
よっちゃんはなれない事はをしたせいか、とても居心地悪そうにしている。
まぁ神様が直接人個人を祝福する機会なんてないだろうからね。
僕としてはもう少しこの話をしていたかったんだけど、よっちゃんは照れ隠しでどんどん話を進めていってしまう。
「よし!!《ジョブ》と《スキル》の話をするとしようかの!!」
「僕はまださっきの話を続けたいよ?」
「終わりじゃ終わり。あんなこっぱずかしい話を長々とできるか!
よし、《ジョブ》の話をするぞ。お主の《ジョブ》については選択肢が多すぎての。
普通の者たちは系統が一つか二つでその中で最も階位が高いもの三つぐらいから選ばせられるんじゃが。
マーリンの場合系統が多すぎるのと、系統のないものが多すぎてな、それができそうになかった。」
「だからここで選べって事?」
「そういうわけじゃ。《ジョブ》の名前と説明が書き込んでいるカードを並べていくから好きに選べば良いぞ。
系統が有る物は上位二つまでをピックアップしておる。剣聖とか剣豪 大賢者に賢者みたいにの」
よっちゃんはジョブの名前を言いながら一枚一枚テーブルに並べていくんだけど、その量がとても多い。五十以上あるんじゃないだろうか?
「よっちゃん多すぎない?」
「だからここに呼んだんじゃ。
おぬしの場合は剣と魔法術に加えて一応無手格闘もコンプリートしておるからの、その派生ジョブが多い。
他にも系統がほぼ存在していない様な《聖剣士》や《聖騎士》なども多いし、《木こり》などの生産職ジョブもそこそこある。全ておぬしが巻いた種じゃよ。
ついでに神官系統もあるからな」
「宗教やってないんだけど僕」
「わしやあいつと友達じゃろ?」
確かに神様と話しているからそっち関係もあっておかしくはないか?
意外と理由としては分かりやすい。
「なんなら《勇者》なんてのもあるぞ?
剣の腕は剣聖並みで魔法術の腕は超特化型じゃ。
ダメ押しとばかりに最上位の聖剣を既に持っているとくればなんの問題もないからの」
よっちゃんはなんとなしにそんな事を言ってくるけど《勇者》はやりたくない。そんな柄じゃないし、絶対にろくなことにならないという確信がある。《勇者》を選んだ場合の結末は、後悔して死ぬか、途中で逃げ出すかの二つに一つしかないだろうからね。
それに剣の腕はまだまだ剣聖には届いてないと自分では思ってるし。
よっちゃんにこれらの事を伝えると不思議な顔をされた。何か変なことを言っただろうか?
「マーリンの腕は確実に剣聖の域じゃよ。
お主がその様に考える理由の一番の要因はその身体によるハンデからじゃろ?
それが理由ならさっさと伸ばせば良いのではないか?」
「?いやそんな簡単に伸ばせられるんだった苦労しないよ」
今の僕はよっちゃんとそこまで変わらない身長で、よっちゃんの身長は童女と少女中間くらいだ。
実際僕は妹のルーリィよりも低い身長なのである。
しかしよっちゃんの表情は相変わらず訳がわからないと言った感じであり、
「いやいや何を深刻そうに言っとるんじゃ?
お主が日頃からやっとる馬鹿みたいな量の魔力を使った身体強化を解けば普通に成長するじゃろ。
お主の体が大きくならんのは成長しても大きくならんのではなくてな、体の成長自体が止まっとるからじゃよ?」
「えっ?うそぉ…」
「うそぉではなくてのぉ、考えればわかるじゃろ!
前のお主の世界とは違い魔力が濃い世界じゃぞここは!
人の寿命も平均的に前の主らの世界の1.5倍以上じゃし、魔力が多いものはもっと長い。
体が出来上がってからは自然と魔力がその状態を維持しようと細胞に働きかけるからの。
魔力の多い者ほど体がベストな状態で保たれる時間は多く、寿命も長くなる。
常識じゃろ!?」
「いやいやいやいや!!!
知らないよそんな常識!!
何度かこの世界の寿命とか気になったけど、結局詳しい事教えて貰ってないし!!
寿命が長いのは知ってたけど、元々のヒューマンの寿命だと思ってたよ。
種も違えば寿命も違うよねって感じでさ。」
「アホぬかせ!!!
確かに生き物の中にはその身体的特徴で百年以上の時間を普通に生きる奴らもおるじゃろうが、人種の様な生き物で百五十年生き続けるのはどう考えても不可能じゃろ!!」
「だってエルフとか前の世界でも長寿設定だったし」
「知らんわそんな事!!
それにこの世界でもエルフは多種族に比べて長寿じゃが、それは多種族よりも身体的特徴で魔力となじみやすい体質だからじゃ!!」
僕とよっちゃんの言い争いは三十分ほど続き、初めて僕が負けた。
ボロクソに言い負かされたね。
負けを認めさせられた瞬間頭が真っ白になったよ。
「まぁあれじゃろ、成人するまでは教えない。みたいな習慣があるんじゃろう。
あっちに戻ったらスキルを応用した身体強化を控えるとかすると良いぞ」
「…わかったよ。」
「そんなに落ち込むなマーリン。たった一度の敗北じゃ。次に活かせ。
でら改めて《ジョブ》選びに戻るぞ。
言い忘れておったが、マーリンはどれを選んでも【深緑の】と付くからあしからずの」
「【深緑の】?」
「マーリンの持っている称号の中に【ユグドラシルの半身】というものがあってな、その影響と思えばよい」
「【深緑の剣聖】とかになるの?」
「そうじゃよ。【深緑の勇者】とか【深緑の大賢者】じゃな。
異名なんじゃが、その名に関係したなんらかのスキルや魔法術がついてくると思えばよい。
【深緑】ならば自然系統か生命関係じゃろうな。
それもトップクラスの」
これはギリギリセーフなんだろうか?
《ジョブ》に【深緑】なんてついてたら、今後の国の予定とか崩れるんじゃないかな?
どこまでが国としてセーフなのかがよくわからない僕なのでした。
せめて国同士でどういう約束が交わされていたのかを聞いていれば判断できるんだけど、そこはエル父さんも教えてくれなかったね。
「そういえば僕の称号とか加護とかスキルとかってどんな感じなの?」
「……それはじゃなぁ〜〜えぇ〜っと、あれじゃよ。
どうせあちらに戻ってからでも確認できるからの今は気にする必要はないぞっ」
ないかすごく怪しい。
わかりやすいくらいに何か隠している。
隠す気がないんじゃないかってくらい、逆に気づいて欲しいんじゃないのかとも思えるぐらいに何かをよっちゃんは隠している。
そんな僕の視線に耐え兼ねたのか、よっちゃんは露骨に会話の流れを変えてきた。
「そういえばマーリンおぬし!!!
あまり見ぬ類の魔術を使っておったな!!
今見せてくれぬか!?」
ただ単に会話を変えたいだけなら隠し事の追及をするつもりだったんだけど、よっちゃんは意外にも本心から僕の魔術を見たいらしい。
「……………仕方ないね。今回は見逃すよ。
それでどんな魔術を見たいの?」
「蝶のやつと鳥のやつじゃ」
「了解。『迷わせ誘う幻想蝶の群れ』『告命鳥』『告死鳥』」
『迷わせ誘う幻想蝶の群れ』はその数を制限して発動した。『告死天使』と『告命天使』は少しだけ呼び方を変えた。
最初の拡散型は『告死天使』『告命天使』として呼ぶことにし、普段封印するものの増殖術式に組み込んだ。
シェーラ母さんには絶対に秘密。
そしてセーブした状態のものを『告命鳥』『告死鳥』と呼ぶことにした。形は烏のまま。
「そうじゃこやつらじゃよ。うむうむ真に雅なものじゃな」
よっちゃんは蝶に触れたり烏に触れたりして楽しんでいる。
当たり前の様になんの悪影響もないみたいだね。ちょっとだけ複雑な気分。
するとよっちゃんは烏を撫でたまま
「そういえば呼び名を変えたのか?前まで違う名称じゃったじゃろ」
「うん変えたよ。オフェリアさんと戦ってみてね、弱体化した状態から広範囲特化や単体特化どちらかにスムーズに移行できる様にしたんだ。」
「あの子娘か、わしも確認したが素質は十分過ぎる程持っておったな。
まぁあ奴みたいにわしのところに突撃してこん事を祈るばかりじゃよ。
でじゃ、単体特化型を見せてくれぬか?」
「?良いよ。僕以外に見せるの初めてだから感想も聞かせてね。
『アズライール』『スルーシー』」
僕が詠唱すると二羽の烏は二羽の鷹へと姿を変えていく。
根本の術式は『告死天使』『告命天使』と同じで全ての能力を単体に向ける様にしているだけ。
単体に向けていると言っても何十倍に効果が上がるわけではなくて『告死天使』『告命天使』が周りに与える効果の二倍くらいの強さしかない。
後は追加オプションで〔開眼〕と〔鳴き声〕があるくらいだ。
僕の説明を聞いてからよっちゃんは『アズライール』と『スルーシー』に触れる。
「あれらの二倍なら十分に強力じゃろ。生半可な者らでは対処できずに死ぬぞ。
それに加えて音魔術まで組み込んどるんじゃ、国の精鋭部隊とかいう奴らでも対処は出来ないじゃろうよ。
この時点でまともに戦える者はわしの知る限りでごく少数じゃな。
〔開眼〕とかいうブースト機能を使えば何倍じゃ?」
「多分素の三倍くらいだよ」
「ふむ、これの三倍か。使われてなお戦えそうなものは両の手いるかいないか、いたとしてもそれくらいじゃろう。
文句なしに"理源"に辿り着いておるな」
よっちゃんは懐かしむ様に『アズライール』と『スルーシー』を撫でて独り言の様に呟き声で話す。
「正にアズライールにスルーシーといったところじゃな」
僕にはよく聞こえなかったけど、きっとそれが原因なんだろう。
『アズライール』とスルーシー』の体が急に光り出したのだ。
先ほどまで魔力と魔術式で体が構成されていた二羽の表面に無数のヒビが入ったかと思えば、中から実体のある二羽の鷹が飛び出てきた。
卵の殻を破るかの様にして、蛹から羽化する蝶の様にしてだ。僕とよっちゃんはただ唖然とした表情で一連の様子を見ていることしかできなかった。
「……よっちゃん何したの?」
「"名前"を付けてしもうた………」
「名前?……それで今はどういう状況?」
「おぬしの魔術がわしという神の名付けによって神獣へと昇華した状態じゃ。
ついでにマーリンおぬしの中では神獣召喚術として一連の出来事が魔術として固まっておるじゃろうから、これから好きな時に呼べる様になっとるかも知れん」
何をやってくれているんだろう。この幼女様は。
実際に魔力のパスが二羽と繋がっているからよく分かるけどこの二羽はやばい。
多分ユグドラシルとかの大精霊級に迫れるくらいには個体としての能力がやばい。
つまり扱いきれない可能性が大きすぎるって事だ。それ以前に下手したら秩序のバランスが崩れる。
混乱している僕とよっちゃんだけど、その神獣になったアズライールとスルーシは僕とよっちゃんの間を行ったり来たりしてピィピィ鳴いているんだよね。
普通に可愛い。
「これ問題だよね?よっちゃん」
「大問題じゃよマーリン」
取り敢えず二人とも落ち着く為にソファーに座る。
僕はアズライールを、よっちゃんはスルーシーを撫でながらチョコレートを一口。
口に残った甘さは紅茶で流し込む。
あぁ非常に美味しい。
この問題もチョコレートの甘さみたいに紅茶で何処かに流れて解決してくれないかな?
僕だけではなくよっちゃんもそう考えていることだろう。
面白いと感じてもらえれば幸いです。




