仲間へ最後にできること
一応のご報告です。
ここ最近改めて作者自身ストーリーを振り返るために読み直しているのですが、ちょっと気になるところがあったりしました。
そこで最初から話の内容は変えずに文章を修正していく事にしました。
ですので今の様な毎日更新は四月中いっぱいになりそうです。
以上個人的なご報告でした
「炎 虚苦様、退役者と死亡者の名簿が完成いたしました。」
俺が作った軍の拠点。そこにある俺の部屋で何人かの部下と共に父親から渡された報奨金と俺自身が持っている土地からくる収入の計算をしていたところへ待ちに待った報告が来た。
あの戦争から既に二ヶ月ほど経ったとはいえ、最後の大混乱が原因で戦後処理が滞っている。
俺のやったことであり、後悔自体はしていないが結果としてあいつらの家族への補償が遅れてしまっている事に僅かな罪悪感があった。
一応正式に保証が決まるまでの繋ぎとして戦争に参加した俺の部下達には一律で報酬を出してはいるが、それでも戦争から夫が帰ってこなかった家族としては不安が残る額だっただろう。
シカシ遺体すら見つからなかった行方不明者を全て死亡したと断定する事は出来ない。実際問題として今日までの間に自力で国にたどり着いたという兵の話が数件ある。
だから今日までの二ヶ月間俺は退役者と死亡者家族へのサポート案を考えたり、俺や俺の軍への収入を精査して予算を立てたりという事しかできなかった。
「そうかよくやった。退役者名簿は点 転子達に任せる。基本は事前に決めた通りに、対応に困るものは纏めて俺のところに持ってくるように伝えろ。
死亡者名簿は私達がやる」
「はっ!了解しました」
「それと返 変裏に新入部隊訓練の報告書を持ってくるようにも伝えてこい」
「はっ!!」
そして連絡役が下がり部屋から出た瞬間、俺と共にここ二ヶ月書類仕事をしてきた部下は一斉に動き出す。
こいつらは精鋭部隊、いわゆる魔法術部隊でありあの戦場での死者はほとんどいない。それは前線に立つというよりは、裏方での仕事がメインだったからだ。
だからこそ皆が皆今必死になって働いている。今やっている仕事こそが仲間としてできる最後のことだとちゃんと理解しているからだろう。
そしてつい先ほど始まった作業だというのに俺の机にはもう数枚の書類が流れてきている。
俺の仕事は最終確認と確定。こればかりは他の誰でもない俺がしないといけない。
一枚一枚の書類には俺の軍に入ってからの功績や家族構成、退役理由、補償内容が記載されており、それが妥当だと判断したなら印鑑を押す。妥当でなければその箇所にその理由を書き込んで部下に戻す。
書類の文章は作成する部下達の工夫で俺が読みやすいようによく整理されたものだが、それでも一枚一枚を読んでいくために俺の机に書類の山ができるのは当たり前の結果ではある。
当初の役割を決めた時の俺の仕事は最終確定だけであり、確認はまた別の人がする筈だったが、今回に限ってはそこも俺がやる事にした。
けじめとして最初の今回だけは俺がしたかったから、無理を言ってこういう形で他の部下達にも了承してもらったわけだ。
手元にある書類に目を通してから、印鑑を押しては書類の山から次の書類を取り出す。その中の一枚に良く知る者の名前が記されてあった。
〜〜夏 烈民〜〜
死亡確定者
盗賊団頭として国に捕まり、死刑との交換条件として炎 虚苦軍に加入。
当初は一般兵として軍にいたものの、その統率力で地道に地位を高め軍隊長まで上り詰めた。
その影響は元盗賊団にのみでは収まらず、元傭兵、元学者達にまで及んでいた。
家庭は持っておらず独身。愛人多数。過去の金の周りを調査したところ全ての愛人達へ金を回している。
この事から補償をこの愛人達へするべきだと判断。
半年分の生活費に加え働き口の提供。
〜〜〜〜〜
「はっ…」
思わず口から笑いが漏れる。その後この書類を作成したであろう周りの部下を見渡せば、顔を伏せる奴がいた。
責めるつもりはないが、他の書類に比べれば個人としての感情がいささか入りすぎている。
普通なら書き直しをさせるところだが、そうさせようとは思えなかった。
俺自身そうしたい気持ちはよくわかる。
夏 烈民には最初から最後まで世話になった。部下への指示の出し方から、上に立つ者の最低限するべき事、振る舞い方、本に書いていない事全てを教えてくれたのはあいつだ。
「(・俺らの上に立つってんならシャキッとしやがれ!
上に立つもんは下のやつが安心してついて来られるようにそうすんのが仕事なんだよ!!・)」
「(・俺達がいうこと聞かねーから失敗しただ!!??
お前がいうことを聞かせられなかったから失敗したんだよ!!・)」
「(・悩んでるなら悩みやがれ!!中途半端な気持ちで俺らの前にくんじゃねぇよ!!上が迷ってる姿なんてのはなっ、大体が部下を不安にさせるだけだ!!!・)」
「(・前に出てくんじゃねぇよ!!テメェは大将だろうが!!!なら前に出て邪魔するよりも先にできることがあるだろうがっ、このドアホ!!・)」
「(・それでいい…お前はただのクソガキだが、まだマシなクソガキだ。ガキはガキらしく大人をうまく使って成長しやがれ・)」
「(・泣くんじゃねぇよ。お前の命令に従ったのはあいつだ。だからそんな言葉吐くんじゃねえ。ただ次こそはと思えればそれでいい・)」
「(・いい顔になってきたじゃねぇか!!もう少し覇気がありゃあいいんだが、まぁ甘ちゃんのボンボンにしちゃあ上出来だ。・)」
「(・さっきのはいい檄だったぜ。それと俺らの言葉には嘘はねえ。俺らにそう思わせられるくらいには成長したってことだ。自信持ちな……大将・)」
思い出す記憶の殆どがボコボコに殴られた時の記憶や怒鳴られた記憶だ。でも嫌な記憶じゃない。どれもこれも俺には必要な物だと思えるし、むしろこんな俺にしてくれた事にはすごく感謝している。
「だからこれで最後だ。」
俺は手元の書類に少しだけ勢いよく印鑑を押しつけ、また違う書類を取る。
結局全ての作業が終わったのは一週間ほどの時間がかかってしまったが、部下達は何も文句を言わずに付き合ってくれた。
返 変裏から提出させた報告書も戸惑いはあるようだが進歩的には問題のないという内容であり、部下達もあいつがいない"今"に慣れよう努力しているようだ。
それを感じると俺も自分自身で立っていける様にならなければいけないと思わされる。
「意外と落ち着いている様だな虚苦。父に良い様に利用されたというのにな。」
「利用されるも何も、それが私達の役目ではありませんか惣輪兄さん?」
だからこそ俺はもうたとえ相手が実の兄であろうと引き下がることはできない。
「ほぉ、キョロキョロ逃げ回る事だけに注力していた小物が、随分と変わったのだな?
まさか虚苦、お前までお前の周りにいる阿保どもの様な考えになったのか?」
「まさか兄さん。"たかが"《ジョブ》《スキル》の一つや二つを持っているからと帝位にふさわしいなど愚かな事です。」
「それでいい。お前まで喚き散らす様ならば、もう奴らには救いようがないからな。
ゆめゆめ忘れるなよ。そのお前は自身の矮小さによって生き延びられているということをな」
宮廷の廊下で"偶々"話した。
そう言わんばかりに第一王子炎 惣輪が付き人数十人と共に歩いていく。その付き人の中には高位ジョブの護衛が数人混ざっており、先ほどから今もこちらへ警戒の視線を飛ばしてきていた。
俺の周りにも一応の護衛はいるが、惣輪とは比べるとレベルが低いと言わざるおえない。
派閥の力関係がそのまま形になって現れているという事だ。より有能な者は自然とより強い派閥に集まり、弱い派閥との差は勝手に広がっていく。
俺の派閥、というよりも俺の母の派閥は規模としては小さい。一応祝福の子である俺がいてのこの規模であり、派閥の大きさに順位をつけるならば三位。
一位は第一王子炎 惣輪本人が管理している派閥。
二位は皇后炎 華世が管理している派閥。
俺の派閥と比べればどちらも強大であり、殆ど二強になっている状態だ。
理由は幾らでもあるわけだが、強いてあげるとすればそれぞれの派閥に俺と同じ祝福の子が一人づついる事だろう。
惣輪には《ドラゴンテイマー》で政治権力トップ相国の娘麟 優螺がいる。
華世には《拳聖》で軍事権力トップ元師の息子撃 亜信がいる。
ただでさえ規模が高い上に、俺と同じ祝福の子まで引き込まれてしまったら、もう三位以下には逆転の目はない。
まだ派閥はいくつか存在しているが、もう数年もすればこの二つのどちらかへ吸収される事だろう。
その時俺の母であるあの人達がどう行動するかによっては俺の命は終了する事態になりかねない。
「炎 虚苦様どうかなさいましたか?」
「いや何もない。それよりも急ぎ宮廷から出るぞ。そろそろ私がここに訪れた事が母上まで伝わっているだろうからな。でくわしてはかなわない」
「…はい。確かに。ならば主要な通路は避けて行きましょう」
「ああ、」
大小様々な通路を歩きながら考えてしまうのは俺と同じ祝福の世代の二人のことだ。
優螺〔四ツ谷 綾香〕や亜信〔澤崎 大輔〕が良く俺に話してくる夢。二人とも前世では少しは話す関係だったこともあり今世でもなにかと話す機会がある。
どちらの夢が大きいとか小さいとか憧れるとかは特にないが、明確なビジョンがある事に対しては素直に尊敬していた。
今もあの二人はその夢を実現させるために動き回っているのに、俺は今も明確に叶えたいと思えるものがないでいる。
前はそれが嫌で行動していたわけだが、もう今は仕方がないと思っている。
俺はきっとそういうものが無い人間だと開き直って考えれば、どうということはない事に気づいたから。これも飛紙が言っていた言葉に当てはまることなんだろう。
「(お前は違うと否定してくるかもしれないけどな。どう認識するかも人によって違うってだけの事だろう)」
長い通路を歩ききり、無事に母上の配下と出会わずに済んだ。
そして宮廷を出る前に俺は自分の母へ向けて小さく、語りかける様にして呟く。
「母上。貴方は確かに父上から見初められた人だ。だがそれでも貴方はあの皇后や周りの皇妃とは違うのですよ母上。」
母には聞こえないことはわかっている。きっと直接言葉を投げかけても母には届かない。
もうあの人の心には何一つ誰からの思いも届かないのだろう
後半が少しごちゃごちゃしてしまいました。
作者の力不足です。
申し訳ありません




