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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
八節 始まりの準備
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凪ぐ水面

「酷い目にあったよ」


夜の森でオフェリアさんに会ってから数日がたった後の城塞都市ドルケスト内。そこの酒場でため息をついている僕ことマーリンです。

オフェリアさんの悩み相談が終わったと思ったらいきなりの戦闘状態に突入して戦いが始まっちゃったんだけど、どうにか必要最低限のものと僕の五体は無事に逃走する事ができた。



僕のお気に入りの魔術はどれも広範囲な魔術だから、状況の悪化を防ぐために使う事ができず、それに加えてスピード、力、フィジカルなどなどほぼあらゆる分野で圧倒的にオフェリアさんが勝っていて、戦いは終始僕がやられる展開になった。


最後の最後、勝負が決まるその一瞬にそれまで地道に用意した仕掛けを全て開放してオフェリアさんを感覚を惑わせその場から逃走したわけなんだけど、代償にお爺さんから貰ったハープを犠牲にした。

装備の方は服の方がかなり傷付いたけど、魔力を流して今ではかなり元どおりになってる。


それと戦闘での傷自体はかなり軽いもので済んだ。

オフェリアさんが間違っても僕を殺さない様に戦っていたからだろうね。

森の被害は大規模な氷塊がいくつもできたりするなどかなり広範囲で自然破壊が起きてる。

もちろん軍の方でも大きな問題となったみたいだけど、停戦協定破棄などには至らなかったみたいだね。


 

ついでに両軍被害の確定情報をおさらいしておくと、

北領同盟王国

ディーノ・ツェッペリン・セルズ・ベル・ディミトリア総大将生存 

少将に昇格 昇格理由不明


本軍

三万の再編成に成功

一万弱は生きているものの戦闘能力を損失

三万程死亡 遺体の確保成功割合七割


オフェリア隊

二千の再編成に成功 内三割が四肢損傷

二百人ほどが戦闘能力を損失

八百死亡 遺体の確保成功割合九割


オフェリア

大佐に昇格 明確な戦果として敵将の首を上げる事には失敗したものの、三千という兵力で敵軍を圧倒し北領同盟王国に多大な貢献をした。

本来であれば少将に特別昇進するはずだったが、停戦宣言後の夜に状況を混乱させかねない行動をしたため大佐への昇格となった。




中天帝国軍

炎 虚苦総大将生存 四肢の損傷は無事回復

少将に昇格

ディーノ・ツェッペリン生存が発表される前は中将に昇格する予定だったという噂があった。


本軍

二万の再編に成功

一万五千程が戦闘能力の損失

二万五千ほどの死亡を確認 遺体の確保成功割合五割

残り一万は軍を離脱し確認の術なし。

その逃亡兵については両国の間で殲滅協定が結ばれた。内容は離脱した兵に関して中天帝国は一切関与しない代わりに、責任を負わないと言うもの。


私設軍 

一万六千の再編に成功

二千人程が戦闘能力の損失

一万二千人程の死亡を確認 遺体確保成功割合八割



以上ここ数日で確定した両軍被害の報告書



僕は酒場のテーブルで報告書の清書をパパッと終わらせてアイテム袋にしまう。

そして新しいハープ(ユグドラシルの剣をハープ方にして弦をつけたもの)の調子を確認し微調整。

調整ができたら店の時計で時間を確認して序曲を始める。

この都市の酒場ではかなり僕の名前は有名になっているから、僕が演奏し出せばお客さん達はどんどん集まってくるし、店の雰囲気はアゲアゲになる。

酒場のマスターの方を見てサムズアップをすればマスターもやり返してくれた。


「(これで今日一日この酒場で好きにしていい許可は取れたね)」


内心でガッツポーズをしてから演奏に力を入れていく。


カラァン カラァン


そして時間ぴったりに待ち人が到着。

オフェリアさんに襲われてからドルケストに帰ってきて集めた情報の三割をこの人を利用して引き出した。


「昨日ぶりだねトル・ネリさん」


「はい昨日ぶりですねロキシィさん。相変わらず貴方のいる場所は賑やかですね」


「そういうトル・ネリさんも相変わらず顔がやつれてますよ?」


「それは指摘しないでほしいですね」


トル・ネリ フルネームはトル・ネリ・トゥルウ・ベル・ドルケストで、軍での地位は中尉。

あのジョナンお爺さんの孫らしい。見た目は全く似ていないけどね。トル・ネリさんは若手の爽やかイケメンサラリーマンといった感じで、お爺さんはぬらりひょん。


「どうせ今日も例のお爺さんのことだよね」


「例が例の如くですよ。」


オフェリアさんから逃げてドルケストに帰ってきた日に偶々酒場で一緒になったトル・ネリさんの愚痴を聞きながら、軍に関する情報を聞いている。

とは言ってもトル・ネリさんはかなり優秀な様で絶対に機密部分は話してくれないし、僕がそこに踏み込んだらすかさず僕の身元を探りにくるぐらいにはガードが硬い。実際にそんな危険なことはしてないけど、なんとなくの勘。

それでも僕がトル・ネリさんとよく話す様にしているのにはちゃんとした理由があってね。

トル・ネリさんは優秀で頼られる存在であることは少し話したトル・ネリさんの身元情報からわかると思う。

そのトル・ネリさんとよく話す相手とだったら安心だ。みたいなことを思いがちなのがトル・ネリさんみたいな人の下にいる部下の人達の特徴。



トル・ネリさんは優秀で頼りがいがある。部下の人達に聞かれたり相談された事にもちゃんと答えているのはここ数日でよくわかった。

でもトル・ネリさんは常に周りを見れているかというとそれは違うんだよね。

頼られた時、見る必要がある時など以外は基本基本的に自分の事で精一杯な人だ。

その事を本人含め部下の人も理解してない。

だから部下の人達はトル・ネリさんが絡んでいる事では自然と気が緩み、トル・ネリさんはそんな部下の人達に気が回っていない。


「(まぁ情報聞き放題、抜き取り放題という事なんだよね)」



そんな感じで最初はトル・ネリさんの愚痴を軽く聞き、その後部下の人から情報を聞き出し、粗方の必要な情報を集めることができましたとさ。

非常に助かりました。



そんな風に城塞都市ドルケストで過ごすこと二ヶ月。北領同盟王国本軍とオフェリア隊がドルケストから離れた一ヶ月後の十一月〔隠命の節〕に僕はドルケストを出発した。










我住まいの奥深く。

この部屋を知っているのは私と私の後継者のみ。

そこで私は部下からの報告書に目を通しながら目の前に並んだ三つの水晶に話しかける。


「待たせた。こちらとしては全て想定の範囲内に収まっている。そちらはどうだ?」


「ああこちらも問題ない。倅も予想はしていたらしいからな。……あれはこれから更に成長する」


低い声でありながら、体の底から萎縮してしまいそうになる声だ。正に覇王という威厳を水晶越しに伝えてくる。私とは正反対の人間だ。


「お互いに収穫できた様でよかった。(みのる)かどうかは賭けだったからな」


「ああ…なった実に大きさでいうならそっちが上のようだがな。あの倅にあそこまで言わせるのだからな」


こちらを牽制する様な言葉だが、その言葉には決してその意図はない。ただ言葉通りの確認でしかない事は数度この男と言葉を交わせば理解できる様になるだろう。

私が更に水晶越しの男へ言葉を返そうとした時、その私ともう一人の会話を遮るようにして、妖しく色気漂わせる様に女性の声が聞こえてくる。


「坊や二人だけで仲良く盛り上がるのは感心しませんよ?此処は子供部屋ではないのですからね」


「既に坊やという歳は過ぎているんだがな」


「私からすれば二人とも坊やですよ。それとダンマリは良くありませんよ龍?」


「……はぁ。あんたの相手疲れる。エファーラル・ティリアーノ」


三つあるうちの二つ目の水晶から聞こえる声の主の名。

龍と呼ばれた男の様に言葉にはしないが、私も得意とは言えない人だ。出来る事ならあまり言葉を交わしたいとは思わない。

だがそんなエファーラル・ティリアーノに自ら関わりにいく猛者が残りの一つの水晶から声を張り上げる。


「ばっははははは!!!!

よぉく分かっとるのぉ〜サラマンダー!!!

白く枯れ果てた老木の相手なんぞ無駄よぉ!!!

切って燃やす他に使い道なんぞないからの〜」


紳士の教育を幼少から受けた私では絶対に言えない事をさらっと言いのける男。だが乱暴な言葉の割には正確に相手を表す言い回しに心の中で称賛してしまった。

とはいえ言われた本人がそう思うかといえばまた別問題であり、すぐさま反撃を始める。



「泥に塗れて朽ち果てるだけの老いぼれが何をいうかと思えば、燃やすしか利用法がないのは石炭の様な貴方のことでしょう」


「なぁ〜にが老いぼれじゃ。実年齢はお前の方が儂より百年以上も年上じゃろうが!!!」


「これだから野蛮人は!女性に対するマナーを何一つ知らない様ですね!」


いつもの流れではあるもののこの二人の罵り合いは終わる兆しさえ見せない。

本来なら両人とも今の様な言動は決して出来ない立場の人物である事を考えれば、とても貴重なシーンと言えなくもないわけだが。

そう思うかもまた個人差であり、先ほどまで私と話していた男がそんな事を気にする訳はない。


「おい。さっさとあれを止めて話を進めさせろヴィー」


「面倒ごとばかり私に押し付けないで欲しいんだがな。」


この男は昔からこの二人の相手が苦手で、私に喧嘩の仲裁をする様に言ってくる。

二人の口喧嘩を止めるのには少なくない時間とストレスを被る訳であり、ただでさえこの一〜二年でストレスを抱え込みまくった私の体には堪える。

できるならばこのまま自然に終わるのを待っていたいが、それが許される立場に私はいない。

この時間も人一人にさせる量ではない仕事をどうにかこうにか終わらせて、死ぬ思いで捻出した貴重な時間なのだから。

まぁそれを言ってしまえば私の他三人も同じはずなのだがな。



結局私が二人の口喧嘩を止めるのには少なくない時間を要してしまった。

私の胃は既に様々なストレスで限界を迎えそうになっている。


「‥それでは改めて初めていくとしよう。

まずは私から。

バロック殿に依頼され、こちらで買取りした軍事品については無事に消費させる事に成功した。二〜三ヶ月後にバロック殿と龍の間に私が立ち、仲介する形で元の状態に戻す予定だ。


例の木の少年については予定通りで変更はないか?」


「えぇありませんよ」


「それでは例の少年については予定通り進めさせてもらう。

最後に正教についてだが、先の龍との戦争をきっかけとして終戦の流れに傾いた。

私の方は以上だ」


私が話し終わった後、軽くいくつか質問と調整をし私の番は問題なく終わった。



「それでは次は私ですね。

魔の方からの協力要請は例の木と、それによって混乱した情勢への対応を理由に流せそうです。

少年についてもヴィーガンとは話がついていますから問題なくまとめられそうですよ。

これくらいですね」


エファーラルは詩を読んでいるかの様にそう締めくくった。これについてはどこからも質問などはなく、すぐに次の報告に移る事になった。



「あ〜っと次は儂じゃな。

問題になっとった在庫の武器達はヴィーがうまく対応しとくれたおかげでそこまで大きな問題にはならんかったわい。

数年前にきた魔の奴らからの協力要求もサラマンダーとの戦争とその復興を理由にして断りきれそうじゃ。

今後はヴィーの仲介って事でサラマンダーとの関係を大っぴらに修復して元どおりと言ったところかの。

以上。質問はあるか?」


「特になさそうだな。

次の俺の報告に移らせてもらうぞ。

爺さんやヴィーとの戦争で粗方、俺の言う事を聞かねー奴らを排除することができた。

排除した分の食料を他に回す事で食料問題も深刻な問題にまで発展してねぇ。

正教の方からの要求もヴィーと戦争する事で達成したしな、大体の問題は片付いた。

魔の方は俺自身が対応している。問題はねーだろ?」



四人全員が報告を終わらせ、情報共有を済ませると各自手短に挨拶を済ませ通信を切った。

私も手元にある資料を魔術で消し炭にしてから立ち上がり、水晶を箱にしまう。

この水晶はこの国に現在一つずつしかなく、また再度製造する機会はないものだ。間違っても紛失 破損などしてしまえば国が揺れるほどの大問題になる。



部屋の水時計を確認してから部屋を出て扉を隠す。

そして曲がりくねった道を決められた歩幅と歩数で歩いていく。

道を決められた通りに進めば自然と外に出られる様になっているが、ミスをすると出る事はできない。

因みに出口は様々であり、その時々によって違う。今回は私の自室の暖炉の前のようだった。


「今回は自室か。手間が省けて助かる。この前は此処から遠く離れた第五庭園の噴水だったからな。」 



コンッ コンッ 


私が自室に戻ったと同時に容赦なくくるknock。

心当たりは一つしかないが返事をしたくない。

居留守を決め込もうかと割と本気で考えていると扉の向こうから声が飛んできた。


「こちらに居ると確信してお話しします。

これより三秒以内で出てこられなければ私を含めた文官全てが今日はお休みさせていただきます。

もちろん必要な手続きと書類は済ませておりますので、後でご確認ください。

それでは1………2……」


「私なら此処にいるぞ。

何か報告があるのかラインバッハ宰相?」


私はラインバッハの話が始まると同時に身なりを整え、予想していた通りの集団ストライキ作戦が実行される前に自室から優雅に出た。

その私の行動に少しばかりの反応もせず、ラインバッハ宰相は当たり前のように書類と時間を見て話しはじめる。



「只今予定より我が王が長く不在だった為に城全体の書類作業が滞っております。

恐縮ではありますが我が王には問題解決の為、これより六十時間休みなく仕事をしてもらい、その後一時間の休憩。休憩の後さらに四十八時間休みなく働いてもらう必要がございます」


ラインバッハの手には、既に私を署名機械と印鑑押し機械にするためのインク壺、ペン 朱肉 判子が揃えられていた。

ついでに移動時間も私が仕事をできる様に机付きの車椅子まであるしまつ。

「(これは死ぬかも知れないな)」

そう頭に浮かんだ瞬間どうにかこの場を切り抜けようと口を開く。


「ラインバッ………」


「ご安心ください我が王よ。何もお一人でするわけではありません。私や文官達は既に昨日の夜より五徹令(残業命令の事。最初の数字が徹夜をする日数)を出し我が王のサポートをする事は決まっておりますし、第一王子にもご協力頂くつもりです。

何かご質問がなければどうぞこちらにお座りください我が王よ」




ラインバッハ 

フルネームはラインバッハ・ハウル・リクルート・アリウム。爵位は公爵。

前宰相のカリュシュ・ファアム宰相の息子であり、十五年前にカリュシュ・ファアムが引退と同時に実力で宰相の地位に立った男でもある。

現在の年齢は七十二で非常に若く、更に顔立ちで若く見える事から六十前後にしか見えない。

仕事は完璧であり人当たりも完璧。

忠節については疑う方が疲れる。


少し前にラインバッハは叛意を持っていると噂になったときには、翌日に私の机へラインバッハやその周辺の人物の過去二十年分の金の流れを書類に纏めて提出してきた。

その精査を噂の発生源であった古株の文官達にやらせて、私の横で小さく笑っていた時の顔と目の色は忘れることができない。

勿論その文官達は書類の精査が終わり次第、ありとあらゆる不正の証拠をラインバッハに暴かれあえなく左遷された。


そしてその時に近い顔と目の色のラインバッハが現在私の前にいる。

「(選択肢は無い)」

覚悟は決めた。


「大儀である。」


そう言い残し、しばしの間私は人間を辞めて機械になった。


しゃしゃっ ポンっ ぺらり 


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり 


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり 


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり 


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり


しゃしゃっ ポンっ ぺらり

オフェリアとの戦闘シーンはカット致しました。

またいつか機会があればマーリンと戦うこともあると思いますのでご期待ください。

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