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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
七節 戦場の意思
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龍の巣

「ディーノ・ツェッペリンの居場所は掴んでいるな!!!」

「勿論です!!混乱に紛れる形で逃走しようとしていたところをB隊が発見し、孤立させることに成功したとのことです!!!」


「まだ打ち取れてはいないのか!!」

「申し訳ありません。戦場の混乱が凄まじく追い詰め切れてはいないとのことです。」


オフェリア隊に波がぶつかる瞬間は確認した。

いくらオフェリアでも俺を追ってくるのにはかなりの時間を要する筈だ。いやそうでなくては困る。

何のために夏 烈民に死ねと言ったのかが分からなくなってしまうから。



「大体の場所を教えろ。私達はそこに回り込み少しでも早くディーノ・ツェッペリンを討つ」










「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!」


何でこんなことになってんだよ。

俺はちゃんと見た筈なんだ。炎 虚苦が負ける姿を見た筈なんだ。

それなのにその未来を見た後すぐに巨大な壁ができて俺の軍の進撃が止まった。

兵は俺のいう事を聞かなくなり、いつの間にか周りを完全に包囲されていた。

そこからの記憶は朧げで、とにかく周りから飛んでくる矢や魔法術から逃げ、邪魔な味方の兵達を押し倒しながら逃げた。

逃げて逃げて逃げて逃げて逃げ続けた。

どれくらいか時間がたったかわからない内にやっと包囲に穴が開いて逃げられると思ったら、中天帝国の奴が俺を殺そうと躍起になって追いかけてきやがる。



「クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソォォォォォ!!!!!!!!!!!!!

俺は特別なんだ!!!選ばれた人間なんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


俺は恐怖を振り払おうと必死に叫ぶ。

魔力は身体強化分しか残ってない。足が止まればすぐに追いつかれて殺される。

自分がどこに向かってるのかさえわからない。

走り続ける俺の前方から知らない声が飛んできた


「終われている自覚があるのかお前は??

まぁそのおかげでこの人混みの中こんなに早く探し出せたわけなんだがな。」


「誰なんだよテメーは!!!!!はあっ…はあっ

俺がぁっ はあっ…はっはっ誰だかわかってんのか!!!!」


「ああわかってるよ。お初にお目にかかるディーノ・ツェッペリン・セルズ・ベル・ディミトリア。

私は炎 虚苦というものだ。

そしてお前の命を奪いにきた男でもあるな」



今何ていいやがったこいつ?炎 虚苦って名乗りやがったか?敵の総大将がこんなところまでのこのこやってきたってのか?


「グククハハハハ陣内お前はほんっとうに低能だなぁ!!!!!

大将がこんなところまでのこのこくるなんてよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!

全員聞けぇぇぇぇぇ!俺の目の前にいる男を殺せぇぇぇぇぇ!!!!!!」


くくくはははこれで《先見の魔眼》で見た通りの未来が来る。やっぱり俺は運命に選ばれた特別な人間なんだ!!!!。




「(あぁぁぁ????何で誰もあいつを襲わねーんだ!!??そこに敵の総大将がいるんだぞ)」


「………………はぁ。お前なんかを殺す為に俺は一体何人の部下の命を失ったと思っているんだ。

せめてその命に見合う男であっくれたらよかったんだがな。」


「調子に乗ってんじゃねーぞクソ隠キャがぁ!!

俺はお前には負けてねーんだよ!!!!

お前が負ける事は確定事項なんだよクソが!!」


「やはり予測や予知系のスキル持ちだったか。

どんな未来を見たかは知らないが、お前がここで俺に負ける事は覆せない事実だろ」



陣内は鞘から勢いよく剣を引き抜くとそのまま俺めがけて突っ込んできやがった。

「(だからお前は低脳だってんだよ陣内。部下に命令をすればいいものをわざわざ自分が来るなんてよぉ!!!何があったか知らねーがやっぱりお前は《大軍師》の器じゃねーよ!!)」


「お前を俺が殺せば一気に俺の勝ちだろうが!」



俺も自分の腰にさしている剣を引き抜き振り上げる。剣術は五歳の頃からやっているし自信もある

陰キャなんかには負ける訳が無い。

俺は絶対的な自信を持って陣内の首筋目掛けて剣を振るった。

勿論いきなりきまるとは思っていないが、陣内に防御をさせれば後は攻め続ければいい。

そう考えていた俺の予想を裏切り、陣内は防御をする事はせずいきなりその姿を消した。

俺の剣はただ誰もいない空間を虚しく切っただけだ。


「(どうなってやがる!?スキル?大軍師の能力か?)」


「いくら何でもこれくらいの動きにすら反応できないのはまずいだろディーノ・ツェッペリン」


「なんっ!」


突然後ろから陣内の声が聞こえ、俺は瞬間的に後ろを確認しようとしてしまった。

振り返った所には剣を振り上げた陣内の姿が写る。


「まっ待てくれ陣の……」


「…俺はもう炎 虚苦なんだよ」


ザッグジュッッ


「ぐあああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁいいぃぃぃぃぃっっでえあぁぁあ!」



今までに体験した事が無いほどの激痛が顔と右腕を襲ってくる。

声を出していないと痛みで死んでしまいそうになるくらい痛い。


「無意識に腰が引けたか。まだ覚悟が決まってなかったみたいだな俺は。」


うつ伏せで痛みを堪えている俺にゆっくりと陣内は近づいてくる。

「(うそだうそだうそだうそだうそだーーー!!

俺がこんな惨めな姿で死ぬなんてぇぇ!!)」


痛みを我慢して陣内の姿を見ようと顔を上げる。

左目は見えるのに右目は全く見えない。

起き上がろうとするのにも右腕が動かない。


ガッッッ


「ガァ!うぇあっ」


そんな俺の顎に突然強烈な衝撃が走る。

何でか痛みはそこまで感じないが俺は飛ばされる形で仰向けになった。

左目に陣内の靴が血に濡れているのが見える。

陣内が俺の顎を蹴り上げた事をそれで理解する事はなんとなくできた。


「ディーノ・ツェッペリン・セルズ・ベル・ディミトリア。今戦争の北領同盟王国軍総大将であるその首を取り、中天帝国側の勝利とさせてもらう」


「ジェあうバンバァボォォ じぇんじょおうぢぃ

ボォバァじいいばじょおおぉ バァがアバアラロォ」


言葉をうまく喋れない上に勝手に陣内の奴に命乞いまでしちまう。

怖くて怖くて仕方がねぇ。生き残りたくて仕方がねぇ。

勝手に涙まで出てきやがる。


「ぃぎぃでぇぇ」

「(生きてぇ…)」


「……今世でのお前の人生はこれで終わりだ。」


陣内はそういうと剣を振り上げ、俺の首を目掛けて振り下ろしてくる。

「(あぁぁ何でこんな人生になっちまったんだよ)」





・・・・・・・・・・・






俺の下には前世でのクラスメイトがボロボロの姿で倒れている。

右目は潰れて 右肩から先はなく 顎もぐちゃぐちゃになっていて、今にも死にそうだ。


「ぃぎぃでぇぇ」


野上 誠一郎いや今はディーノ・ツェッペリンか

前世での野上からは考えられない姿と言葉だ。

まぁそうさせているのは俺なんだが。

そして今から俺は野上の首を跳ね飛ばす。

そうする責任と義務が俺にはある。


「今世でのお前の人生はこれで終わりだ。」

「(お前の命も背負って生きるよ野上。)」


「炎 虚苦様!!!!!!後ろ!!!!!!!」


俺は瞬間的に誰が何をしようとしているのかを理解した。それでも俺は剣を振り下ろす腕を止めはしない。これが最後のチャンスである事を知っているから。

そして野上の首に剣が切り込まれた瞬間に背中から衝撃が来て俺は体ごと前方に吹き飛ばされた。



「がぁっくうぅ。っっオフェリア!」


俺と一緒に吹き飛ばされている部下の姿とオフェリアの剣についている血から状況を整理する。

オフェリアの一撃を部下が間に入り盾になって俺を守ってくれたようだ。部下はすぐには立てそうには無いが息はある。

周りにいた部下達もオフェリアの出現にあわせて俺のところにこようと動き出していた。



だが部下が到着する前にオフェリアが追撃を仕掛けるために俺に近づいてくる。

俺の剣は野上の首筋に刺さったままだ。突き飛ばされた衝撃で両断はできなかったが動脈は切断できている筈だ。ここからでは生死の確認はできないが、致命傷である事は確実。

俺は俺を守ってくれた部下から剣を拝借して構える。俺の体は所々痛むものの骨は折れていない。



「『三連土壁』『撃ち抜く岩の弾丸』」


オフェリアとまともに戦って俺が勝てる可能性はないのはわかっており、となると部下と合流するまで時間を稼ぐしかない。

「(壁を迂回したところを岩の弾丸で攻…)」


ドバァガガガが!!!


俺が意識を壁の左右に飛ばした瞬間、一瞬前に作り出したはずの三重の壁は破壊され、物凄い速さで何かが突っ込んでくる。

俺はそれに剣を持ち上げることしか反応できなかった。


ザシュッッッ!


俺の持ち上げた剣を避けるようにしてオフェリアは俺の右脇腹から左頬までを切り裂いた。

全身が割れたように感じる痛みに思考が飛びそうになるものの、歯を食いしばり耐えて目の前にいるオフェリアを睨む。


「(防御も回避運動も間に合わない!!!

一度目で死ななかったのは運が良かった、二度目は確実に殺される!!!!)」


俺は今にも形が崩れそうになっている岩の弾丸を自分もろともオフェリアに発射する。

勿論オフェリアはすぐさま反応し回避するが俺は全弾命中しその場に倒れ込んでしまう。

だがそのわずかに稼いだ時間で部下の到着が間に合った。


「炎 虚苦様ご無事ですか!!!!

ディーノを追っていた部隊もすぐそこまで来ております!!!!オフェリアは我らに任せて引いてください!!!!!」


部下の言っている事は正しい。今の中天帝国軍で指揮を取れるのは実質的に俺だけだ。

北領同盟王国側とはそこが決定的に違う。

ここで俺が引き残存の兵を纏め撤退するのが正しい判断だ。

だがそれと同時にチャンスでもある。


「いや今ここでオフェリアを討つ!!

今のオフェリアの状況はずっと俺が作り出したかった状況だ。」

「しかし炎 虚苦様との距離が近すぎます!!!

あまりに危険です!!!」


「今回の中天帝国軍が俺含めて全滅したとしてもオフェリア一人を討てたならお釣りが来るほどの戦果だと理解しろ!!!

北領同盟王国本軍を包囲していた私設軍全てに伝えろ

【龍の巣】だとな!!!!!」」


オフェリアの方も何に反応してかはわからないが戦闘を再開している。

今のオフェリアの周りには味方は誰もおらず一人だ。流石に部隊を率いてあの波は越えられなかったみたいだが、ぐずぐずしていたらすぐに合流してくるだろう。

オフェリアは周りに味方がいないという事で範囲の広い魔術攻撃を多用しながら俺の私設軍を殺し回っている。

だがそれでも個人による被害は一箇所の点での被害で軍全体の動きは止められない。

俺とオフェリアを囲むように二万に届かない私設軍が渦の様に回りながら近づいてくる。



【龍の巣】は簡単に言うと圧殺戦略だ。

対象の相手を包囲した状態から時計周りに部隊全体で回転し、動きを止める事なく徐々に輪を縮めていく。そして対象を削り取る様にして隙間をなくし、最終的に対象とその周辺の仲間もろとも潰すと言うのが概要だ。

この戦術は対象の位置に合わせて部隊の動きを事細かに調整する必要があったり、動きながらの戦略だからこその支障を瞬時に直していかないといけない欠点がある。



「点 転子の部隊が速すぎる!!

逆に辺 の部隊は遅い!!!オフェリアの位置もずれたぞ!!!部隊全体に一回転で三十センチ東に移動する様に伝えろ!!!!」


「炎 虚苦様オフェリアがきます!!!!」


「流石に勘がいいなオフェリア!!」


俺は血が大量に流れ出る体を無理やり動かし防御姿勢を作る。周りの部下も瞬時に防御陣形を構築した。

まぁオフェリアに至っては気にした風もなく突っ込んでくるわけだかな。

その威力は凄まじくあれよあれよと部下は吹き飛ばされていく。

俺も挑んだはいいものの一合目で軽く剣を吹き飛ばされ、回避のために後ろに飛んだものの両足を切り飛ばされた。



身体強化を維持しているおかげで出血多量で死ぬにはまだ猶予がある。【龍の巣】も既に崩れようのない段階に入った。


「俺の勝ちだオフェリア!!!」


「私の勝ちだ炎 虚苦!!」


俺が死んだのち戦場がどうなるのかについてはまだ疑問が残っている。だがあいつらと同じ場所に行くからには最後まで胸を張っていなければなんて言われるかわからないからな。





「停戦!!!!!停戦!!!!!停戦!!!!」



あまりに今の状況とかけ離れた単語が北領同盟王国側と中天帝国側から叫ばれた。

戦場は静まりかえり、俺はゆっくりと意識を失う。





停戦 概要

〔停戦とは、戦争もしくは紛争の双方当事者が互いに攻撃的行為や敵対行為を一時停止する事に"合意"すると停戦状態になる。

限られた時間もしくは限られた場所で戦闘は停止され、その間負傷者や犠牲者の救出が行われたり、本格的な休戦や終戦への交渉が行われたりする。



簡略的な両軍被害

北領同盟王国

総大将ディーノ・ツェッペリン生死不明

本軍壊滅

負傷者全兵士

死者計り知れず

兵数は半分残っていれば奇跡


オフェリア 軽傷 魔力枯渇寸前

装備大破


オフェリア隊

四肢損傷三分の一

死者五百人超

負傷者全兵士。

現在半分が波にさらわれ行方不明

四分の一が力尽きその場に待機

残りオフェリアに合流するため移動中


大将二部隊

特になし



中天帝国

総大将 炎 虚苦 意識不明 両足喪失 出血多量 重傷

本軍壊滅

負傷者全兵士

死者北領同盟王国より多いものと予測される

兵数は三分の一も戻る事はないと予測。


炎 虚苦私設軍

死者一万程度。その全てがオフェリア隊であり四分の一以上がオフェリア本人によるもの。

負傷者 C隊(魔法術特化部隊)を除く全ての兵士


楽しんでいただけたなら幸いです。

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