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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
七節 戦場の意思
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散らかるゴミ屑

僕ことマーリンです。まだ十一歳、この世界でも子供と認定される歳。

そんな僕だけど今僕は戦場すぐ近くで、その戦争の視察をする羽目になっています。前世の日本なら確実に事案になってると思うね。



とまぁおふざけは程々にして、少し前に一気に戦況が動き出し、中天帝国本軍がディーノ隊に突破されそうになった。がその時に事態は動き始める。


敗走しようとする中天帝国本軍の退路を断つ形で巨大な岩の壁が整形されたんだ。

規模とその生成スピードから事前に準備されていたものと考えられることから、炎 虚苦はこの状況を想定して事前にあの場所に魔法術式を仕込んでいたんだろう。

規模からして大本は魔法で、調整に魔術といった感じだと思う。まぁどちらにしてもかなりの魔力を使うことには変わらないけどね。


そしてあれやこれやとディーノ隊は包囲陣形を完成させ勝利が確定したかと思えばオフェリア隊の覚醒。


我を失い突撃してくる中天帝国本軍をものすごい勢いで撃破していっている。

圧倒的なオフェリア個人の強さとその配下の兵の強さを前面に出しながら、戦略を織り交ぜ戦うその姿は今までと比べて凄くしっくりくる。

軍というよりは馬鹿でかい野生の獣といった感じだけどね。



「(とは言ってもまだ馬鹿の方がついていききれてないかな、急なオフェリアの覚醒には流石の屈強兵士達も適応しきれないらしい。

このままでも勝てるかもしれないけど、犠牲も多く出ちゃうだろうね。ボヘム)」 


先に言った通りオフェリア隊は相手を圧倒してる。それでもオフェリア隊の勢いについていけてない兵はかなりいるし、数人は既にやられてる。

ボヘムはどうにか勢いについて行けてるみたいだけど、悪い癖が出ているみたいだね。



「視線の方も殺気は全然飛ばしてこないし、あちらの大将さん達も動く気配がない。ボヘムは変なところで兄貴肌出しちゃうし、困ったものだよ」



僕は荷物の中からあのお爺さんからもらったハープを取り出して戦場がよく見える見渡しのいい場所に移動する。


「『誘い迷わす幻想蝶の群れ』『吹き抜ける楽士の唄』『霞染みる静音』」



『誘い迷わす幻想蝶の群れ』は朝日 曇天 夜空

のみを生み出し光の屈折で姿を消し、曇天で周囲を防音し、音を違う場所から発生しているようにする。僕の一番お気に入りの魔術。


『吹き抜ける楽士の唄』は音自体に付与する魔術で、効果は音が込めた魔力の分どこまでも一定に安定させるもの。つまりは魔力次第でどこまでも届くって魔術。多分初級か中級の下くらいのはず


『霞染みる静音』は簡単に言うと聞こえているけど聞こえていない状態にする魔術。説明は省いてランクは上級の中くらい。多分


ついでに視線が一気に強くなった。

「(めっちゃ怖いや)」

でもこの隙にどうこうしようとは感じられない。

本当に僕の行動を見て楽しんでるだけみたいだ。



「そのまま邪魔はしないでくださいね。」


適当に一言いってからそこら辺の木を背もたれにして座りハープを持ち直す。二、三回弦を軽く弾き調子を確かめる。


「(うん。問題ないね。)」


ティララ〜ティラーンティラーントゥルーティラーティラーン



炎 虚苦の方もオフェリアの異変に気付いたみたいで、中天帝国本陣の方が騒がしくなってる。

オフェリア隊の勢いは少しずつ上がってるけど少し滞ってるし、ボヘムも手が回らなくなっていた。

そんな戦況を観察しながら僕はハープを奏でながら曲調をどうするかを考えている。


「(バフかデバフか。バフにするなら身体系か精神系か。)」


それとちょっと弾いてみてわかったことがある。

僕自身がこの演奏に乗り気じゃないってことだ。

やるとは決めたものの、どうしても気分が上がらないんだよね。

というわけで曲調は明るい系の感動系。精神系バフで行くことに決めた。


「(自分の気持ちも自分であげないとやっていけないよ。……父さん僕は一つ悪を背負うことにするね。)」


ティティティルン ティンティルンっティルッティルンティッティティララン ティララン



その音は戦場全てに響き、その音色は戦場にいる全ての人に分け隔てなく聞こえているだろう。

しかしマーリンが奏でる音の魔術の効果が出ているのはオフェリア部隊だけだ。 

音や魔力に絶妙な調整を施し完璧なコントロールをする生来のセンス、悠久の時を経て鍛え上げた努力は確かにマーリンの力と成っている。

この弱いバフは少人数の場合においてはあまり意味がない。だが大人数ともなればその影響力は確実に戦況を北領同盟王国側に傾けるだけの要素とならえるだろう。

しかし大半の人、いや二人を除いてマーリンの曲に気付く者はいなかった。







「(ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ〜っひゃっひゃっひゃっやっぱり来とったんじゃな〜小僧。)」


ポッロロロンポラララポロラン ポロンポロン


「おっどうしたんだよ急に!?

なんかいいことでもあったのか?」


〔興が乗ったからの。特別にちっとばかしバフをかけてやることにしたのよう〕


「まったく…気分屋な爺さんだよホント。

まぁジョナン爺さんがやってくれるなら全滅ってオチは回避できそうだぜ。てかちょっとばかしタイミングがおせーがな」


当分は儂以外に気付く者はおらんじゃろうが、感の良いものから次第に違和感に気付くじゃろうて。使っとる魔術やお主の性格からして出来れば気付かれたくないんじゃろう?

儂が隠れ蓑になってやるわい。

「(師匠からの免許皆伝の贈り物じゃ、小僧)」








「(誰かはわからないが私達に魔術を発動しているのか?私の部隊ではなく、効果自体も薄い。

微かな違和感、ほんの少しの違和感しか感じるられない魔術行使。

私が気付けたのも運が良かったからだろうな)」


「どうかされましたかオフェリア隊長!!!!」


「何も問題はない!!喋る余裕があるなら周りのサポートをしてやれ!!」


しかし部下の動きが確実に向上している。そして勢いも、今の戦況で私が用意したかったものが全てそろえられた。

「(全ては使いよう次第ということか。)」

そして少し間が空いてもう一つ音が加わった。これはジョナン・ディオの魔術だろう。根拠はないがそう判断できる。

もう片方が気になるが今は後回しにするしかないだろうと判断し、思考を戦場へと戻す。


「このまま一気に突っ切るぞ!!!!」









「まもなく左翼が突破されます」

「b隊右翼を厚くしろ。土鍋の上を固めているA隊にも右翼を厚くさせろ。

a隊準備はいいな!!数分の間ここにいる物だけでオフェリアを止める。お前達には覚悟を決めてもらう!!!死ぬ覚悟をな!!!」

「既に出来ております!!!」


「なら配置につけ!!来るぞ!!!」


土鍋完成の為、土鍋の上方を固める俺の軍三分の一動かせない。そして大規模魔法術を行使したばかりの精鋭もこの場には呼ばない。だからこそ俺は土鍋右方を担当するB隊を半数に分け、半数b隊を土鍋維持に、もう半数a隊でオフェリアへの対応をすることになった。


そしてそれからの十数分 いや数分の戦いはまさに命を削る戦いだ。

圧倒的に強い個人と軍を相手に、その二倍あるかないかの軍を率いての戦い。

前世の常識で考えるなら十分に勝ち目のある様に思えるかもしれないが、ここでは世界のルールが違う。俺がオフェリアに勝てる見込みはこの兵力差ではゼロだ。

全滅することを前提にして少数部隊を突っ込ませたり、俺を餌にして進路をずらしたりしながら必死に時間を稼いだ。六千人ほどいた部下はみるみるうちにその数を減らしていく。



「aj隊とah隊の残存兵を纏め、中央に集めろ!!」


「敵軍中央突破を仕掛けてきます!!!」


「aa隊に本軍左翼の逃走兵を引き連れさせて敵右腹部に突っ込ませて勢いを削げ!!まともに食らえば耐えきれん!!前列にいるac隊を前に出して防波堤にしろ!!」



これでaa ac ad ae agは全滅。残りはab三分の二

af同数 ai半数 ahj訳四百 プラス周りにいる本軍左翼の残存兵。シメて訳私設軍千五百+xといったところか。

前世では確か先に戦力の三分の一を失った方が負けということになっているらしいが、既に三分の一どころか四分の三が死亡もしくは戦闘不能になっている。

敵は与えられた被害など、こちらが被った被害と比べることさえできないというのにだ。もう惨敗も惨敗、否定する理由が一つたりとしてない。

それだというのに後ろの土鍋からはまだ報告が来ない。


「報告しますaa隊は数百の逃走兵を統率して突撃!!

敵軍の勢いを削ぐことに成功し壊滅しました!!

ac隊は敵将オフェリアの直撃を受け壊滅しましたが速度を落とさせ、敵の突撃を受け止める事に成功いたしました!!!」


「ああっ…よくやった。残り部隊にオフェリアを直接相手にするなと伝えろ!!

少数が連鎖的に足止めをする様にとな!!!

相手を打ち取ることよりもこちらに入り込ませないようにしろ!!!!」


今オフェリアはab隊が足止めをしている。

ただでさえ兵の強さに大きな差があるというのに兵数までこちらが劣ってしまえば出来ることはもうほとんど無い。


「ahj隊に周辺の左翼逃走兵を統率させて中央に配置しろ!!!ai隊はその後ろに付いて統率を手伝え!!!

af隊に左前方に向けて突撃させてオフェリア隊への杭にしろ!!」



このまま"土鍋"が間に合わない場合は"土鍋"自体を解除して北領同盟王国本軍を一気に逃走させる。そして戦場を混乱させ、その隙に私設軍を纏めてディーノを討ち取り逃げるくらいしかない。

「(成功率はかなり低いがそうするしかない)」

最悪の事態に備え、策が破られた場合の事を考えていると待ちに待った報告がきた。


「炎 虚苦様!!!土鍋が煮詰まりました!!!」


「よくやった!!!すぐに蓋を開けろ!!!

俺は残存部隊を纏めて合流する!!!」


待ちに待ったその報告に気が抜けそうになったが、すぐなきを引き締め指示を出す。しかし周りの部下達の反応が鈍い。


「恐れながら…それはなりません。

炎 虚苦様ならわかっておられるはずです!!」


その言葉で瞬時に理解する。しかし理解できるからこそ、選択したくない。可能性はあるのだ。

部下を説得しようと口を開くが、言葉が出る前に部下の一人がそれを遮る。


「そうですよ。ここは私が指揮をしておきますので炎 虚苦様は早く合流しに向かってください」 


夏 烈民。施設軍における最古参であり、軍の元となった盗賊グループの頭だった男。その男が、当初俺の寝首をかこうとしてきた男がそう言ってくる。

一番苦労し、一番助けられた男にこう言われてしまったのだ、その大将として俺はもう何も言い返す事はできなあ。


「……烈民 すまない。蓋が開ききるまでの数十秒オフェリアを食い止めてくれ。」


「がははは炎 虚苦様…。こういう時はいつもみたいにやってくれた方がこっちも気が楽ですよ」


「あぁ…………そうだな。すまない…。夏 烈民、お前達にはここで死んでもらう!!お前は残りの残存兵に指揮しオフェリア隊の足止めをしろ!!」


「はっ!!!必ずや!!!」


最後に見た友の顔は、最後まで俺と共に歩んできた頼れる友の顔だった。








炎 虚苦の大将は行ったな。

最後の最後に最初の頃みたいな顔になりやがったが、心配はいらねーな。この戦争で大将は十分に成長してる。

後は一人でもやっていける筈だ。

俺は大将を見送った後歩いて戦友達のところに向かう。

最後の命令を遂げるためにな。


「んじゃあ命令通り華々しく死にますかね!!」


「ずるいっすよ頭〜。一人だけ直接命令してもらうなんて」


「元頭の特権だバーカ!!んで戦況はどうよ?」


「オフェリアと戦ったab隊はもう壊滅して、足止めの為に突っ込んだaf隊はもうすぐ限界が来ると思いますよ」


「あ〜あと烈民。さっきahj隊から連絡で左翼の奴らの殆どが逃げ出しちまったてよ〜。残ってるの俺らだけだわ!」


「テメーそういうのはもうちょい早く報告しろよ!!」


あーくそ大将がいなくなった途端に拾ってもらう前のゴロツキに戻りやがるなこいつらは。 

んで目の前にいる敵はもはや天災の域の化物ときた。



「仕方ねーな。今残ってる奴らだけでやるしかねーか。気合入れろよゴミども!!!!!」


「「「あんた(お前)がその元大将だろうが!!」」」


「(がはは!!悪くねーな。気心知れた馬鹿野郎共と、鼻垂れだった若造の下手な取引に乗ってこんなところまで来れた。

がはははは!!がはははははははは!!!!

悪くねーなぁおい!!!悪くねーぜぇ!!!!!)」







肉塊と血溜まりで埋められた大地の上で、オフェリアは離れた戦場を見ていた。


「オフェリア隊長、最後の敵部隊全滅しました。

炎 虚苦の姿はありません」

「そんなことはわかってる」


「このまま炎 虚苦を追いますはか?」

「もう手遅れだ。部隊を纏めろ。すぐに大波が来る。」


「えっあのどういうことですか?」

「早く部隊を纏めに行け!!!!

さっきの波の数倍でかいのが来るぞ!!!!!」



「うあわぁぁぁぁぁあぁあぁぁあぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁざぁぅぁぁぁあぅあぁあぁあゎあかぁああわゎあゎああ!!!!!!!!!!ー!!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「すぐに纏めに行きます!!!!」



やっと行ったかあのノロマは。

とはいえもう回避する事はできないがな。

あの最後の敵部隊が退かずに挑んできたのはこれが理由か。

流石に時間が経ってしまった事で部下達の士気も落ち着き始め、そのせいで今までの戦いの疲労が出てきている。

あの二つの音のバフも既に止まっている事でここから士気が上がる事は期待できない。



「私はお前達を待つつもりはない。ついて来れる奴だけついてこい!!!!!」

「っうぇ!?オフェリア隊長まさか!!!???」


戸惑う部下達を置き去りにして走る。

北領同盟王国本軍の敗走兵の波が私たちもろとも押し流そうという勢いで向かってくる中、私の心は戦争が始まってから一番の落ち着きを保っていた。


「(武器はまだ保つ。魔力もまだ余裕がある。

不安は部下達くらいだが、これについてはどうしようも無い。だが)」


「炎 虚苦、お前に剣を打ち込むにはこれで十分だ」


少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。ご指摘ご感想があれば是非。

それとよろしければ評価の方もお願いいたします

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