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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
七節 戦場の意思
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チェックメイト

昨日と同じ様に始められた戦いは、昨日とは異なり中天帝国本軍 私設軍共に押される形になっていた。

中天帝国本軍はディーノ軍の全面への攻撃に苦戦する形でどんどんと押されているし、私設軍もまたオフェリア軍に押される形で下がっていっている。

しかし施設軍の方の後退する動きはスムーズなもので、陣形自体は広がりつつあるものの被害もそこまで出ている様には見えず、下がるスピードも中天帝国本軍の下がるスピードと同じだ。


「おいおいこりゃ〜不味くねーかジョナン爺さん?」

〔ふむ。そうじゃのう。このままいけば確実に両方とも食われちまうのう。〕


「何呑気にこと言ってんだ。俺はすぐに救出に行ける様軍を整えるぞ」

〔ならんぞ〜それは。儂らが動いて良いのは戦いが決まった時か、見極めが遂行不可になる時かじゃ。これは最初の時とは状況が違う〕


「……了解だ。あくまで俺は"援軍の将"だからな。

参謀の指示に従うぜ」











「左翼を押し出せ!!!そして敵中央が薄くなったところに突っ込むぞ!!!」


クソ!!思った以上に中天帝国本軍を突破するのに時間がかかってる。右の戦場のオフェリアの奴が陣内の奴を追い詰められてねーのか?

いやオフェリアの方も俺と同じくらいに敵を押し込んでるな。

とするなら陣内の奴が最後の足掻きで粘ってやがるってことか?


「《先見の魔眼》発動」


よし!!俺の魔眼には中天帝国本軍を突破する寸前の未来が見えた。

この突撃で中天帝国本軍を突破する事は確定したって事だ!!!


「敵本軍を突破することが確定した!!!

軍を中央に集めろ!!!!一気に突破するぞ!」

「「「はっ!!!」」」

「(どうにか間に合ったぜ陣内)」


最初から《先見の魔眼》をフルに活用した事で守りに回る事なく一方的に攻めることが出来た。

そのせいで俺の魔力はもう底をつきかけてるが問題はねー。あと一回突破してからの未来を確認すればもう使う必要はなくなるからな。



「ディーノ総大将!!!敵本軍が崩れかけています!!!」

「このまま陣の じゃねぇ、炎 虚苦本陣にまで突っ切るぞ!!!!」


炎 虚苦はまだオフェリアの奴を止めることができていない。この勢いのまま行けば俺の勝ちだ!

そして俺は自分の勝利を確信するべく最後の《先見の魔眼》を発動させる。


「はっははははははははははは!!、ざまぁーねーな〜陣内。俺の勝ちだぜ!!!」


静まり返る戦場。血塗れの陣内 疲労しきったその部下達。

「(俺は選ばれた特別な人間なんだ!!!!)」






・・・・・・・



「ご報告いたします!

ご命令の通りに現在オフェリア隊とは乱戦になる事を避け距離を取りつつ後退しております。

そして我が軍本軍につきましてはあと数分ののち敵本軍に突破されることになるかと。」


「そうだオフェリア隊とは常に距離を取りつつ後退しろ。あれと今は戦う必要はない。

それと私設軍に伝令を飛ばせ。"決めるぞ"とな」

「はっ!!」


ここまでは計画通りだ。両軍の陣形の変化、スピード、位置何もかもが計画通りに行っている。

頭の中にある策の手順を整理していきながら《大軍師》と俺自身で予測をしていく。

問題はないはずだ。後は俺がミスをしなければ中天帝国が勝利できる。


「只今本軍が突破されます!!」

「(…………野上、これでチェックメイドだ)」


「合図を送れ!!!"土鍋"を発動しろとな!!」


俺の命令を聞いた部下は空に向かって光魔術を発動させる。

すると中天帝国本軍の後方と右側面の退路塞ぐ様にして岩の巨大な壁が一瞬のうちに形成されていく。

突然の退路を断つ岩の壁に戦場は混乱し兵達の叫び声がこだまする。

壁を破壊しようとする者、乗り越えようと壁にしがみつく者、訳がわからないまま固まる者、そしてその後ろから更に逃げようとする者達が押し寄せ、壁際の者達を圧殺していく。

まさに地獄絵図そのものの光景が俺の目の前に誕生する。

「(俺が考え作り出したこの世の地獄だ)」



「"土鍋"第一段階成功しました!!」

「第二段階に移行しろ!!!」


俺は罪悪感を必死に押さえ込む様にして大声を上げて指示を飛ばす。

罪悪感で動けなくなるのは戦争が終わってからでいいのだから。

退路を断たれたた中天帝国本軍の右翼は一部が逃走を諦め突撃してくる北領同盟王国に立ち向かっていく。

そして一部は壁ができていない前方や左方に向かって逃げ出していく。しかしその人数があまりに多いこともあり大半のものはすぐに逃走を諦め武器を取り北領同盟王国に立ち向かっていた。



「施設軍の動きはどうなっている!!!?」


「はっ!!!私設軍は事前の作戦の通り、長く伸びていた部隊をそのまま二つに分裂させております!!

片方は北領同盟王国本軍の後方に周り込み、現在逃走を図っております我が本軍の兵士の退路を断つことに成功しております。

もう片方は後方に生成した岩の壁に続く様にして隊列を組み左方に逃走を図る我が本軍の兵士達がオフェリア隊にぶつかる様に誘導しております」


「北領同盟王国本軍の動きはどうだ!!?」

「はっ!! 現在北領同盟王国本軍には多少の動揺が見られるものの攻勢の姿勢は変えておらず、現在も我が本軍に向けて追撃を仕掛けております。正確に岩の壁の位置を把握できてないと予想されます。」



やはり俺の予想通りディーノは予測系か予知系のスキルを所持していたと見ていいだろう。

オフェリア隊への対処を下がりながら受け流す方針にした事で多少の指揮を本軍の方に飛ばす余力ができた。

それを突破するためにそのスキルをかなり使わせることに成功したと見ていい筈だ。

あと使えて一〜二回、もしくは既に使用できないと考えて間違いない。余力があるなら既に発動させ岩の壁の位置程度なら容易く把握できるはずだからな。

俺が現状を整理しているうちに更に事態進み伝令の者が報告をしてくる。



「左翼の誘導に成功した私設軍が北領同盟王国本軍の左方に配置完了し"土鍋"が完成いたしました。攻撃の指示を!」

「私設軍に北領同盟王国本軍への攻撃を開始させろ!!

私が指示を出すまで完全包囲体制を維持し、北の蛮族どもをじっくりと蒸し焼きにしてやれ!!」



完璧に決まった。配置も完璧だ。

オフェリア隊には逃げるために我を失っている本軍の左翼をぶつけている。それらが壊滅させられるまでの数分間で北領同盟王国本軍を壊滅させることができるはず。

そして煮詰まったところで左方の蓋を開けて北両同盟軍を逃走させ、左翼の兵達を突破しかけているオフェリア隊に北領同盟王国の逃走兵を追加で投入。これで更に動きを妨害する。

そのうちに私設軍を纏めて奥の大将二人に強襲し撃破。それができたなら戦果は十分。

オフェリア隊が疲労しきっていたなら討ち取りに行くのもいいし、出来そうにないなら本軍を使い潰して中天帝国に逃げるもいい。

オフェリアを無視してドルケストに攻め込むもいい。

どちらに転んでも俺の勝利は覆らない。



「はっ、ははは。」


俺は片手で顔を覆い笑い声を出す。

周りには俺と同じ様に勝利を確信している部下達と、戦場からは人の叫び声に断末魔、奇声が聞こえて来る。

「(俺は今どんな顔をしているんだ。笑えているならいい。勝利の快感に酔いしれているなら問題はない。だが罪悪感で泣くのはだめだ)」


後は暫く時間が経つのを待つだけの時間だ。

表情を直す時間ならあるはずだった。

あるはずだったんだ。



「緊急のご報告です!!!!

オフェリア隊の勢いが増し、後数分ののちに我が本軍左翼部隊を突破します!!!!」


「(!!!!?????????????????????どういうことだ??????

オフェリア隊と戦っているであろう部隊は軽く二万人ほどはいるはずだ!!??

それがものの数分で突破されるはずがない!)」


「どういうことだ!!虚言の類なら容赦はしないぞ!!!」

「はっ!!我が命にかけて虚言ではございません!!!オフェリア隊は北領同盟王国本軍が包囲された事に気づくと一瞬の沈黙の後進撃を再開。

衝突する我が軍の左翼を順次撃破しながらもその勢いは増大していき現在も収まる気配がございません!!!」



俺はその報告を聞くとすぐに天幕を出て自分の目で事態を確認する。 

伝令の報告通りオフェリア隊の勢いは凄まじい。

激流の様に押し寄せていたはずの本軍左翼の兵達にもはや勢いはなくただの肉の壁としてしか機能していない。



「(どうする?このままでは伝令の言う通り数分持つかどうかだ。

"蓋"を開けるか?いやまだ煮詰まりきっていない。下手に実行すれば妨害するはずの軍が逆にオフェリアの力になりかねない。)」


俺に与えられている時間は少ない。

対応が間に合わなければ逆に詰むのは俺の方だ。


「(左方私設軍を二つに分けるか?

だがそれだとオフェリア隊と北領同盟王国本軍の両方に対する備えが薄くなる。ただ分けて配置するだけでは崩れる可能性の方が高い)」


「左方私設軍を二つに分ける!!!

そして本陣を左方私設軍へ移動させ直接俺が指揮を取る!!!」


「はっ!!!!!」


流石に数年俺といる奴らだ。状況をよく理解してるし俺の意思も尊重してくれる。

北領同盟王国本軍が煮詰まりきるまでの時間をどうにか稼がないといけないこと、オフェリア隊を止めるためには俺が指揮を取るしかないこと。


「(現実っていうのはやっぱり思い通りには進んでくれないってことか…)」






炎 虚苦が本陣を移動させるその数時間前


「オフェリア隊長!!!敵軍更に後退していきます!!!」


「先行している部隊を引き戻せ!出過ぎるな!」



戦いが始まると同時に軽い衝突。

その後昨日までの様な苛烈な戦いや乱戦になることはなかった。

敵は私達の攻撃を躱しながら躊躇なく後退していく。押している様に見えるがこれは違う。

これは獲物を誘導する動きだ。

 

「(何度か本軍の方に寄ろうとしてみたもののそれは牽制して来る。

すると狙いはあの馬鹿の本軍だろう。

としても私には目の前の敵を打ち破る手があるわけでもないが)」



私は冷静に戦況を分析しながらも頭の中は何故昨日負けたのかを考えていた。

今まで私より強い魔物や人に負けたことなら数度くらいある。理由は私の力不足。

他に理由を挙げるまでもなく単純で明快な当たり前のこと。

弱いままでは強い者に殺され奪われる。

強くならなければ強くなり続けなければ子供だろうが老人だろうが生き残れない世界。



私の両親は魔物に喰われ、私は齢六歳程で天涯孤独の身になった。

周りの大人達にはそんな私に構う余裕はなく、私には両親の残した家とわずかな備蓄、武器しかなかった。

私の生まれた村はそういう世界だった。

いや村がなくなり外に出てもそのルールだけは変わることがなかった。



「(世界のルールは変わっていない。強くあり続けなければ生き続けることができない世界。    

私の知っている世界のままだ。

なら変わったのは私という事になる)」



ズガガガガガガががががかががががががかががががががががががががかがガガガががががかがががががががかががががががかがががががががかががががががかがががかががががかがガガガがががががががかがガガガががガガガガカガカガ!!!!!!!!!!!!


突然の揺れ 轟音 遠く離れているはずの私の目に映るほど巨大な壁。

遠方から聞こえる人の叫び声 慌てふためく敵兵と味方の兵。 事前に知っていたかの様に動き続ける炎 虚苦の私設軍。

事態を飲み込めずに呆然と立ち尽くしている私の部下の間抜けた顔。

フラッシュバックするあの日の光景。


「はっははっあははははははははは!!!!!

ようやくわかった。私は飲み込まれていたということかっ!!!!!!

あははははははははは!!!!!」


「オっオフェリア隊長どう いたしますか!??」


「あはははははははぁ………。聞くまでもないだろう?私達は戦うためにここに来ている。

なら戦うに決まっているだろう?」


「えっ?あっうぇっとそうではありますが、いえっとその………」


「全くたった二ヶ月ほどで忘れてしまったみたいだなお前も周りの馬鹿どもも」


「っと言いますと?」



忘れていたというなら私もそうだが今は置いておいていいな。

私は最初敵を破れなかった理由を軍としての機能を活かせていないことだと考えた。

それ自体は今でも間違っていない様に思う。

二回目の戦いで一回目よりも悪い戦いになったのは私が軍というものに寄りすぎたからだ。

それも間違った選択では無いだろうが、私の土俵じゃ無い。炎 虚苦達の土俵だ。

私は昔から変わらない私の世界のルールに従えばいい。



「お前達はこの一年間どこで何をしていたんだ!!!!!!!!

こんな戦場に劣るほど優しい場所にお前達はいたのか!!!!!!!!

そう思っている者は休んでいるといい!!!!!

希望通りその者達にはあれが天国に思えるような訓練をさせてやる!!!!!!!」


私の声は私の部隊全てに届いたようだ。

部隊のもの全てが私の注目し、私の言葉を聞き意味を咀嚼している。

皆顔を真っ青にしてある者は俯き嘔吐し、ある者は雄叫びをあげ、ある者は泣きながら武器を握りしめる。


「思い出した者は顔を上げろ!!!!!

生き残る道はどこにある!!!???」


「生き残る道は常に前に!!!

敵を打ち倒した先にっ!!!!!!」


「打ち倒す術はどこにある!!!???」


「術は体に、術はこの手に!!!!!

常に自身の中に自分の側に!!!!!」


「今私たちの前には敵の大軍勢が立っている!!!!

これらは打ち倒せぬ敵か!!!!????」


「倒せるっ!!!打ち倒してみせるっ!!!!!!」


「生き残りたい者だけ私に続き、その手で自らの命を掴み取れ!!!!!!!!!

いくぞオフェリア隊、私の背中を追ってこい!」


「おおおおおおおおおおお!!!!!!!」



オフェリアは数え切れないほどの異名をつけられていくことになる。

その中で唯一オフェリアだけが持つようになり、その死後誰一人として持つことがなかった異名が存在する。

どれだけ激しい戦場だろうと力で有無を言わさず勝利を掴むその姿から付けられた


その異名の名は【最強】

これから幾たびの戦場を駆ける戦場の王者は、この日王者としての一歩を踏み出した。

少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。


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