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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
七節 戦場の意思
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転生

「なんでこんな時に気づいちゃうのかなぁ」


今僕はどこからか飛んでくる視線を警戒しながら戦場の状況を確認している。

昨日は視線の事を警戒しすぎて暗部の人達に何回か気づかれそうになったけど、どうにか助かった。

それとこの視線について少しわかったことがある。この視線は僕が新たに何かしらの行動をすればするほど強くなるという事だ。

そして逆に行動を止めれば視線に殺気が乗っかってくる事。

現状維持を続けていても軽く殺気を飛ばしてくることくらいだ。

「〔なんだろう最初のエル父さんとの稽古を思い出すよ。懐かしいね)」



そんな感じで軽い殺気に耐えて、相手が飽きるのを待っていたわけなんだけど、飽きる気配がない。

時々結構きつい殺気を飛ばしたりとかしてきて心臓に悪い、その反応を見て楽しんでいる様にも感じる。

僕は仕方なく必要最低限の警戒だけをして仕事をしようと、両軍の陣形の様子などを見ていたわけだ。

そしてオフェリア隊を見ていた時に懐かしい人物を見つけてしまったってわけなんだけど。



「(あれボヘムだよね?多分ボヘム。見た感じボヘムに見えるんだよね。あのいかつい顔になんか無駄に大きい体でどことなく暴走族の大将に見える男。

ボヘムだよねぇ〜〜)」


「っはぁ…。」


ボヘムについて一回整理しておく。

僕の生まれた村であるラード村の自警団団長の息子さん。

僕が三歳の頃の頃の子供ヒエラルキーランキング一位で日頃から自警団に混ざって訓練をしていたのが印象深い。

十二歳で祝福の儀を受け、その後そのまま王国兵士試験を受け合格。

その流れで国が管理している若手の兵士養成の訓練場に行ったとかなんとか。

その後の足取りは不明。

村にいた頃も歳が離れていたこともあってそこまでお互いに話すこともなく、三歳の頃のランキングにいた子供の中では一番関わりが少なかった。



そんなボヘムがオフェリア隊の中で戦いの準備を黙々とやっている。

気づいた時には声が出そうなほど驚いた僕ではあるけどよくよく考えてみたら別にオフェリア隊にボヘムがいる事はおかしな事ではない。

城塞都市ドルケストで集めた情報の中にオフェリア隊についての噂話がいくつかあった。


訓練が尋常じゃないくらい厳しく脱落者が多いこと。

当初オフェリア隊に配属されたのは若手兵士の辺境出身者だとかなんとか。

完全実力主義であり、年齢関係なく強い者が上に立つ仕組みになっているとか。

脱落者が多すぎた為に各所から犯罪者を集めて数の足しにしたとかだ。


この条件で考えるならボヘムはいてもおかしくない。いやいて当然の様にも思える。 

改めて現在のボヘムを確認する。

ボヘムだ。

身体中 顔にまで傷があるいかつい顔に、村にいた頃よりも格段に高くなった体格。(肉達磨と呼べなくもない。)もう疑うところもないほどのボヘム感だ。

ボヘムの周りの様子からしてかなり隊の中では高い位置にいるみたいなんだけど、それは良いんだけど、できれば気付かないままでいたかった。



戦争には加わりたくない僕だけど流石に名前まで覚えている知り合いは放ってはおけない。

ボヘムの両親とも知り合いだしね。

とは言ってもボヘムが窮地に陥るかもわからないし、放ってはおけないと言ったものの僕自身が直接戦争に加わって力で助けようとまでは考えていないんだよね。

「(戦場に戦うって事は戦場で死ぬ事を納得しているって事だからね。

それが納得できないならその人は戦場に立っちゃいけない。まぁ僕も参加したなら命を狙われても文句は言えないんだけどね。)」


だから僕は間接的にやれる範囲でボヘムを助ける。それで助けられなかったらボヘムと僕の責任として受け止めるよ。


「ボヘムが窮地に陥らない事を祈るしかないか。

僕は出来れば悪はまだ背負いたくないからね」



その数時間後、僕の願いは儚く崩れ落ち、僕は悪を背負う意志を問われることになる。









「炎 虚苦総大将。御命令の仕込みが完了いたしました。」

「本軍や他の私設軍にはには気付かれてはいないな?」


「はっ、御命令の通りに。そのためとはいえ少なくない時間をかけてしまったことお詫びいたします。」

「謝る必要はない。まだ兵糧 冬までの日数 兵力を見ても十分に間に合うからな。

よくやった。今日の戦いで私の合図に合わせて発動させろ」

「はっ!!!!」



予想外のオフェリアの強さ、野上の指揮に翻弄されたもののこの作戦がうまく決まれば北領同盟王国軍を撃破できるはずだ。

不安要素の大将ディエゴ・マルクとジョナン・ディオが残っているものの気にしていたらこれ以上は進めない。

準備した兵糧の残りから計算できる残りの日数、補給を要請するには厳しい国内情勢、数日のオフェリア隊との戦いで削られていく俺の自慢の兵達、冬に近づくにつれ勝率が低くなる事などを踏まえて考えるなら今が城塞都市ドルケストを攻め落とす為に行動する時だ。



「俺はオフェリアや国にいるあの二人とは違って強くもなく、野望もない。」


口に出してしまえば自分が情けなくて仕方がなくなってしまう。弱くて情けない自分の姿は他人と比べてしまうとどうしようもなく小さく見えてしまう。でもそれは仕方ない。俺はあの三人じゃないんだから。


「それでも覚悟を決めた。命を背負う覚悟を決めたんだ。………部下に死ねという覚悟もできてる」


弱くて情けない自分。前世では外を取り繕うだけで自ら見つめ直すことすらできなかった自分の本当の姿。

陣内 晴臣が炎 虚苦になっても変わることの無かった弱さはまだ心にあるままだが、それでも俺は覚悟を決めた。俺には背負い切れないかもしれない物を背負う覚悟を決めた。


「俺は炎 虚苦としてこの世界で生きる覚悟を決めたぞ野上。いや今はディーノか?

今のお前はどっちだ?」


俺には野上が今何を考えているのかはわからない

それこそ「(・君と僕は違う・)」からってやつだな。



この日この瞬間、前世で夢のみを追いかけていた空っぽな男は、これから何百何千万もの命を握ることになる炎 虚苦に真の意味で生まれ変わった。


後の世では、その一度始まれば敵味方容赦ない指揮と敵味方に厳しい決断を迫る戦略などの厳しい側面や、無理に命を奪う行為を嫌い味方の兵たちへの細かな気遣いや戦死者やその家族への手厚い事後処理の仕方などの穏やかな側面から、敵味方に尊敬される様になった。

いくつかの異名を得ることになる中で一番代表的な呼ばれ方は【覚悟を問う者】。

これは炎 虚苦自身が気に入り自らそう名乗ったことから有名になったと言われている。











「オフェリア隊長!!

ディーノ・ツェッペリン総大将から言伝です!」


「・・・・・・」


「我が軍が敵本軍を破り炎 虚苦本陣を攻め落とす。貴殿はなんとしてでも私設軍を足止めし、我が軍の邪魔をさせないようにしろ。とのことです」


「・・・・・・・了解した。と伝えろ。」


「はっ!!!」


昨日の戦況からこうなる事はなんとなく理解はできていた。

一昨日までなら「お前が足止めをしておけ」と言えたが昨日の状況を考えればそうは言えない。

昨日の戦いで私は負けた。

負けたとは言っても兵が多数討ち取られたなどはなく、ただ後退を余儀なくされたと言うだけのことではあるが私は確かに負けた。



「(戦略的な読みの甘さと言う部分も確かに大きくある。私が炎 虚苦の上を言ったのは最初の不意打ちだけだからな。

まぁそれも上手く対応されてしまったが)」


あの馬鹿者から言伝が来たと言う事はもうすぐ戦いが始まると言う事だ。

だが私の頭の中には何故昨日の戦いであの結果になってしまったのかと言う疑問が渦巻いている。



「(私が戦略を実践してみたとしても私や私の部隊の力は一昨日のままだ。なら一昨日のように力で圧倒し、後退するまでの事態にはならないはずだ。 

だが現実として私は後退する事を決めた。いや選択させられたと言ったほうが正しいか)」


昨日の相手の動きは一昨日の動きとは異なっていた。狙いが変わったわけでも強さが変わったわけでもない。それなのに確実に変わっている。

そして私はそれを知っている。

それは死を覚悟した獣の強さだ。

犠牲を覚悟し逆にこちらを仕留めようとする獣の強さに似ている。



「(だがそれだけなら私は問題なく仕留めることができる。

幾度となく経験した事だ。今更どうという事はないはずだ。なら他にも要因があるはず)」


私が思考に没頭していると左側から馬鹿でかい太鼓の音がそれを邪魔してくる。

進撃の合図だ。

私は自問を頭の片隅に置いたまま自分の部隊に前進の指示を飛ばす。

見た限りの布陣は両軍とも昨日と変わらず、昨日と同じようにそれぞれがそれぞれの相手に向かって進んでいく。

そして理性ではなく本能で理解する。


「(今日の戦いで勝敗が決まる)」っと。








「オフェリアのやつに言伝は伝えたな!?」


「はっ!!。了解した。とのことです!!!」


「よし!!進撃の合図をしろ!!!!」


「はっ!!!!!」


陣内の奴はオフェリアの化け物への対処に手一杯で俺への対処が間に合ってない。

昨日は俺の《先見の魔眼》と軍師のフル活用した場合での感触を確かめるために敢えて力を抜いて攻めた。

結果は良好、今日は少し無理をしてでも攻撃をしていく。そうすれば陣内がいるところまで少ない時間で突破できるはずだ。



「(問題があるとすりゃ使えねー俺の兵たちくらいか)」


昨日本来ならもう少し敵本軍を押し込めていたはずだった。

だというのにそうならなかった理由は俺の部下や兵たちの動きが遅かったからだ。

俺が《先視の魔眼》で見た未来に対処するため指示を出してるってのに部下や兵達は素早く指示通りに動かねー。

現場指揮の奴らがぐだぐだなんか言ってきやがるが俺は《軍師》持ちだ。それ以上のジョブを持たねー奴らが俺の指示を否定できるはずがねーんだ。

俺は昨日俺の指示を聞かなかった奴らを降格させ俺の指示に忠実に動く奴らを指揮官に据えた。

これでより軍の機能が上がったはずだ。




〜マーリンメモ〜


ディーノ・ツェッペリンの軍の動きが鈍い。

当初から相手の軍の動き合っていない動きが目立ったが、時間が経つにつれ相手の動きに合うようになっていった。

軍の中央の動きは最初のように早く、端の動きが合っていることから現場の指揮官達がタイミングを合わせていると予想する。

ディーノ・ツェッペリンの指揮は読み間違いというには正確に相手の軍の次の行動を当てていることが多い。

そのことからなんらかのスキル又はジョブの力で予測あるいは予知しているのではないかと予想する。

この事をディーノ・ツェッペリン軍の陣形変更が激しい理由として仮定する。

激しい陣形変更による兵たちの疲労が見て取れるが、それも現場指揮官が上手く調節している


〜マーリンメモ〜




「(よし!!相手の動きは昨日と変わってねー!

これなら俺の作戦はうまくいくはずだ!)」


「本陣の場所を前面に移動させるぞ!!!」


「総大将それは危険です!!昨日と同じように軍中央の後方で指揮をされたほうがよろしいかと!!!」


「うるさい!!!お前たち指揮官が低能だから俺がわざわざ前面に移動するといっているんだ!」


「っっっぅくっ。しかしそれでは最初の時の様に反撃に遭えば逃げる事ができませぬ!!」


「だからそうならないために俺が前に行くといっているんだ!!!!

最初の戦いは兵たちが広がってしまったから起きた事で、俺が前に移動して指揮をすれば広がる事を予防できるだろうが!!!

いちいち口答えをする前にさっさと俺の指示通りに動け老耄が!!!!」


「っくぅぅ。わかりました。」


「最初からそうしていろ。

それと後方の予備軍も本軍に合流させろ。

全力で一気に決めるぞ」


「それでは相手の動きに対応が出来なくなる可能性が……」


「おい?次はないぞ」


「………ご命令の通りに。」



低能はこれだから使えねーんだ。

《先見の魔眼》がある俺が対応できねーはずがねーだろうが。

軍が衝突してから勝利を確信するまで定期的に《先見の魔眼》で未来を確認済んだからよお。


「北領同盟王国の兵たち聞けぇ!!!!!

今日この日に中天帝国軍を粉砕する!!!!!

お前たちはただ俺の指示に従え!!!!」


「(さぁ俺に喧嘩を打った事を後悔させてやるぜ陣内)」



ディーノ・ツェッペリン 野上 誠一郎はこれより数十分後、《先見の魔眼》により、沈まり返った戦場と血塗れになって倒れている炎 虚苦の姿を確かに見ることになる。

転生者とは前世での人格のまま、本質として前世のままの人のことですか?

作者はちょっとだけ考えが違います。

それをちょっとずつ書いていけたらなと思います。


少しでも面白いと思っていただけたら幸いです。よろしければ評価の方お願いします。

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