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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
七節 戦場の意思
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視線

「A隊は突撃の勢いを右に逸らす様にしながら左に移動しろ!

B隊は右に厚みを作りながらオフェリアの攻撃に備えさせろ!

C隊はA B隊の中間後方に待機し、私の合図で地面を泥沼化させろ!!」


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



「いくぞ!!私に続け!!!!」


二回目の全面衝突から一日がたった。

布陣は昨日と変わらず私の目の前にはあの炎 虚苦私設軍が構えている。

等分三部隊の縦三列という陣形だ。

数は約十倍のまま、昨日と違うことがあるとするなら私の部下たちの覚悟の持ちようくらいか。

「(昨日の思いつきでの私の行動はどうやら良い方に働いたみたいだな。)」

私は後ろにいる部下たちを確認し十分に戦える状態であることを確認する。

「(私の部隊を人と考えるなら、相手は差し詰めビッグスノーマンと言ったところか。(【命の境界線麓付近にいる魔物。大っきなゴリラ)

性格はスノーモンキー、全体的雰囲気が似ているのが氷狼で数は一〜約三万まで自由自在。)」



私は炎 虚苦施設軍に突撃しながらイメージを固めていく。相手の軍を一つの生き物である様に見る為のイメージを。

「(傷の修復スキル持ち、分裂スキル持ち、魔法術持ち。頭脳となる核を中心に行動するタイプの魔物。核の位置は自由自在。かなり知性が高く狡猾。強さは私(剣)と部隊(体)が離れたらこちらが潰されるくらいの強さ)」



思いつく限りの条件を組み込んでイメージを形にしようとしている私を他所に、相手はその姿を変えていく。

私から見える姿は昨日の最初の姿そのものだ。

「(ついでに部隊(体)は不調、私(剣)は圧倒的性能。

ふっふふふっ、おかしい設定ではあるがこんなところだろうな。)」



イメージが固まり相手を見れば少しだけ相手の意図がわかる様な気がしてくる。

「(前方の奴は陽動と誘導。その後ろも私を仕留めようとはしていないな。

ならその後ろに本命といったところか。)」


「聞けっお前たち!!!結果など考えるな!!!

ただ私の言う通りに私の背中を追ってこい!!!

戦場で命は常に死線の先にあるものだっ!!!!

っいくぞオフェリア隊!!!!」

「おおおおおぉぉぉっ!!!!!!!」



・・・・・・・・・・・・・・


「くそっA隊は現在 B隊のいる地点まで移動してC隊の壁に!!

B隊はオフェリアの頭を押さえる形で展開しろ!

C隊はその B隊側面に小規模の泥沼を作りそれ以上の迂回を阻止しろ!!その後A隊の後ろに移動するまでの間B隊に援護バフをかけさせろ!」


「はっ」


「本軍の方に御命令はありますでしょうか!」

「陣形を広げさせない様にしろ!!今はそれだけで十分だ!!!」


野上の部隊の動きは昨日と比べれば目的のある動き方だが、部隊が接触してからの行動がまだまだだ。それに突破してくると言うならそれはそれで打つ手は用意している。



問題はオフェリアだ。

昨日の策では仕留めきれなかったことを踏まえて必殺できる確率が高い策を発動したと言うのに、オフェリアは見えていないC隊を狙う様にして行動した。どんな手を使ったかはわからないがC隊がいると確信しての動きだった。

でなければやってA隊への突撃というところだろうし、A隊の先頭部分だけをかすめとる様に進行して、そのまま迂回するなどしてこないだろう。



「オフェリア隊と B隊が接触します!」

「A隊に急げと伝えろ!!相手は徒歩だが早いともな!!」


考えたくはないが、オフェリアは軍の指揮について学び始めていると考えていた方がいいか。

今はまだ三千という数だが、これが五千〜一万になれば手がつけられなくなる。

出来ればこの戦争中に摘み取っておいた方がいいな。


「(十万の命を犠牲にしても釣り合いが取れる戦果というところなんだろうな)」


俺は自然と浮かんだその考えに不思議と違和感を感じることはなかった。

そのことがいいことか悪いことかもその時の俺にはわからない。だがそれが紛れもない事実である事を俺は確信していた。



・・・・・・・・・・・・


きっかけがあれば戦場は一変する。

それが昨日の僕の予想だったわけだけど、その予想は間違っていたみたいだ。

昨日までのぐだぐだした指揮とは違い、少しずつ方向性のある動きをし始めたディーノ軍。

昨日の統一感がなかった中天帝国本軍もまだ所々指揮が行き渡っていない様にも見えるものの統一感が出てきた。

この二つの軍の内どちらかが昨日のままだったなら確実に流れは変わっていた筈だ。



そして炎 虚苦私設軍の動きもまた変わった。

なんと言えばいいかよくわからないけど、"覚悟"みたいなものを感じる様になった。

"効率性"と言ってもいいかもしれない。

昨日までの私設軍の動きには味方の犠牲をできるだけ少なくしようという意思を感じた。

いやそれは昨日だけではなく最初の戦いから感じていたものでもあったんだよね。最初の戦いで私設軍を半分ほど犠牲にしていたなら北領同盟王国七万を半壊させることができていたかもしれないのだから。

僕も最初は賭けをすることを嫌ったのかとも考えていたんだけど、それから数回の戦いを見て甘さに似た"優しさ"であることを確信した。

昨日何があったかは僕にはわからないけど、炎 虚苦は私設軍を犠牲にしてでもオフェリアを取りにいっているね。



最後にオフェリア隊

オフェリア隊の動きは昨日と変わらず隊全体がよくまとまって動けている。

時々戦略的な行動をするけど空振りしていることが多い。

上手くいったのは最初のすり抜けくらいなものだ。

昨日とは違うオフェリア隊の戦略意思のある行動に対応が遅れていた様に見える炎 虚苦私設軍も今はオフェリア隊を押す形で戦っている。

理由としてはオフェリアが自ら炎 虚苦のフィールドである戦略戦に足を入れたことで、炎 虚苦はオフェリアの行動を予測しやすくなったからだろう。



しかし徐々にではあるけど確実にオフェリアは戦略というものを理解してきている。

炎 虚苦私設軍の攻撃を事前に察知している対応が増え、昨日の様にしっかりと策にハマるということも少なくなってきていた。

ハマってしまった時は昨日と同じ様に力技で切り抜けているのは相変わらずの強さだと言うしかない。

他の理由としては押しているはずの炎 虚苦私設軍の方がほんの少し焦っている様に感じる。

僕の私感だけどね。


「(おっとっと。危なかった。そろそろここら辺も人が増えてきたね)」


僕は周りにいる両国の諜報部隊の人間や僕と同じ様に戦場を観察している人達に存在が悟られない様にして場所を移動する。

空間同調は戦闘するのにベストな状態にし、頭ではいつでも『誘い迷わす幻想蝶の群れ』発動できる様にしながらユグドラシルからもらった剣を握りしめて慎重に慎重に移動していく。



自分でも不思議に思う自らの行動。

見つからない為なら空間同調の範囲はもっと広い方が良い。というよりも今の状況では戦闘になった時点で終わりなのに、それに備えるなんて馬鹿の行動だ。

頭ではわかっているのに僕の体は決して戦闘体勢を解かない。むしろ僕の体はより緊張感を帯び、心の方まで鋭く研ぎ澄まされた状態になってきた。


「(………見られてるよねやっぱり。

あたり一帯には僕に気づいている人は確実にいないんだけどね。一体どんな方法で見ているのかな?いやそれ以前になんで見つかったのかも気になるね。)」


闇が蠢く森の中を僕は、傷を負った獣の様に周りを警戒しながら進んでいく。

闇は怖くはない。味方ではないけど恐ろしくはないからね。

怖いのは僕が見えないところで僕を見ている何かだ。

前世で"深淵を覗くものはまた深淵からも覗かれてる"なんて言葉があったけど.、どんなに頑張っても僕を見ている何かはこちらから感知できない。



「猟師に狙われる獣はこんな気分なのかな。」


冗談っぽく言ってみた言葉は酷く的確に僕の現在の状況を表している様に感じた。




・・・・・・・・・・・


「おいジョナン爺さんよぉ〜」

〔なんじゃぁディエゴ坊主〕

「この戦場をあいつは見えいるよな」

〔わざわざ聞かんでもわかっとるじゃろう〕


ジョナン爺さんのいう通り俺はわかっている。

ずっと昔から感じているものだ、気づかないはずがない。

俺個人を見ているわけではなく、戦場全体の一部として見られている感覚。言葉にして表現するならそういう他ない感覚だ。

ずっと昔からと言ってみたもののいつからかはわからねーんだがな。

気付いたら見られていた。俺が気付くずっと前、俺の初陣の時からかもしれねーし、俺が気付いた時からかも知れない。

「(まぁ初陣の時から見られてるんだろーがな。)」



この話はある程度実力があり、長年戦場を体験している奴らの中じゃかなり有名な話だ。

実際俺の横で呑気な顔して戦場を見ているジョナン爺さんも感じている様だし、ジョナン爺さんの話によれば爺さんの爺さんである【砂城のドルケス】も感じていたらしい。



「オフェリアってわけじゃなさそうだよなー」

〔最初の数日はオフェリアのお嬢ちゃんじゃったがのう。今はよーわからんの〜〕


「どっかの国の暗部の中に面白そうな奴がいたってことだよなぁ?」

〔普通に考えればそうなんじゃが、それはちと不自然じゃろ。流石にオフェリアのお嬢ちゃん以上の者が暗部におるとは思えん〕


視線は常に戦場全体を覆っているが時々個人に集中する。それは感覚でなんとなくそう感じるだけだがそこまで間違った推測ではないだろう。

個人に視線が集中する時は、その個人に興味があるということだろうし、今までの経験上で言うならその個人は実力がある者であることが多い。

今回の場合で言うならまず間違いなく個人の力でトップにいるのはオフェリアだ。

実際数日はオフェリアに視線が集中していたように感じていた。

それが現在では感じられず、見える限りの戦場においても感じない。だが俺たちえの視線は薄まったままだ。なら誰かに集中していると言うことなんだがそれが誰なのかがわからねぇ。



「ジョナン爺さん誰か心当たりはねーのかよ」

〔………………………………ないよ〕

「ッあるんじゃねーか!!!!俺にも教えろよ!!!」


〔ないっちゅっとろうが馬鹿坊主!!

それにそろそろ日も沈む時間じゃ、セルズ小僧とオフェリアお嬢ちゃんを戻した方が良いんじゃないかの〕


「そんなんじゃ誤魔化されないからなジョナン爺さんよぉ!!後でじっくり聞かせてもらうぜ!」


〔わかったからさっさと指示を飛ばせい〕

「ほんっとにこの爺さんはよぉマイペースだな」


ジョナン爺さんがドルケスト到着に遅れた事も関係してるのかは分からんが、この爺さんの反応からして何かしらの心当たりがあることは明白だ。


「(問題は口で俺がジョナン爺さんに勝てる可能性がほぼゼロなことだが、なんとかやってみるしかねーな。)」





この日北領同盟王国本軍は中天帝国本軍を終始押す形で戦いを進め炎 虚苦本陣に詰め寄った。

対称的にオフェリア隊は最初の行動以降、私設軍に押されていき防戦一方の戦いになった。

そして未だに両軍共に問題を抱えており、決定打となる動きもない。

戦場の周りに潜ませた暗部からの情報を聞いた各国の上層部はこのまま戦闘は長引くと予想していた。



しかしその予想を否定するかの様に会戦から八日目の明日。満を持しての決着となる。

そして決着へと繋がる一手を打ったのは中天帝国総大将炎 虚苦だった。


「……………野上、これでチェックメイトだ。」


しかしでもいいなと思っていただけたなら幸いです。

よろしければ評価の方お願いいたします

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