特別な人間
俺は特別な人間だった。
その事に気づいたのは何歳の時だったかも覚えていない。
俺は周りの子供と比べて運動がとても得意だった
俺は周りの子供と違ってものを覚えるのが早かった
俺の親は周りの親よりも偉い人間でお金持ちだった。
中学に上がる頃には学年カーストの頂点に立っていいる事を自覚した
勉強はしなくても学年上位に入り、サッカー部では即レジュラー入りして試合で活躍した。一年上の先輩と付き合い同学年から羨ましがられた。
高校に上がると俺と同じくらいの奴が一人二人いたけど俺が特別な事には変わりなかった。
俺は学校の人気者だったんだ。
飛行機事故に遭った後、起きた事も俺があの飛行機に乗っていたから起きた事なんだ。その確信がある。俺はやっぱり選ばれた者だったんだ。
それなのにあの根暗のオタクヤローの《陣内 晴臣》が俺のなるはずだった《大軍師》を掠め取りやがった。
何かの間違いだ。なんで特別な俺がこんな目に遭うんだよ。なんなんだよジャンケンって、俺が先に選ぶ権利があるはずだろうが。
凡人のくせに俺の邪魔をした晴臣の野郎は必ず報いを受けさせてやる。
俺はスキル選択で《先見の魔眼》を選んだ。
軍師系統は情報が多いほどより予測に正確さが増すからな。
転生した先はヒューマン三大国家の北領同盟王国で武の名門セルズ・ベル家だ。
年上の兄弟のいない大貴族という要望をしたらここになった。
まぁ《軍師》を取ったからには軍事に関わるつもりだったからむしろ幸運だったと思うことにするか。
しかもセルズ・ベル家待望の子息であり祝福の子という事で俺は親や親族からもてはやされた。
物覚えや運動神経 容姿なども完璧であり人生勝ち組だと確信したぜ。
可愛い婚約者も出来たし専属のメイドもいる、娯楽の方も前世にはない魔力を動力とするものが沢山あり退屈することはなかった。
だけど俺が十一歳になると指導役って事でジョナン・ディオ・トゥルウ・ベル・ドルケストって言うじじいが俺のところに来た。
ふざけたじじいに見えるけど、これでも俺と同じ五英傑の子孫でこの国の大将って言う軍事の最高権力者の一人なんだとか。
ちなみに俺の父親もこの国の参謀で最高権力者の一人だ。
じじいは俺のところに来た日に早速とばかりに剣の稽古と魔法術、戦略問題をやらせてきた。
まぁ俺は優秀だからな、そこらの子供とは違ってどれもかなりの腕前だ。
剣ではここら辺の貴族の子息の中で一番だし、魔法術は中級の上まで使える。言わずもながら一番だ。
戦略問題も《先見の魔眼》と《軍師》のバックアップに俺の頭脳があればなんの問題にもならなかった。
それなのにじじいは俺から興味が失せたとばかりに音楽を奏で始めた。
完璧にこなしたはずなのに何がダメだったのかが全くわからない。
それからはたまに同じ様な課題を出されるだけで何か特別なことをすることはなく、俺は何度父親に指導役の変更を訴えてたが通ることはなくそのまま一年じじいが指導役のままだった。
そしてようやく学園生活が始まり楽しく過ごしていた俺にいきなり戦争に行けとの意味がわからない命令がきた。良い戦果をあげれば指導役をつけないでいいという褒美付きでだ。
相手側の総大将は炎 虚苦、陣内 晴臣の野郎だ。
俺は両手を上げて喜んだぜ。二人のイラつく野郎に同時におさらばできるチャンスなんだからな。
「(しかもじじいも補佐役についてくるってんだから最後くらい俺の役に立たせてやる。)」
「ああああああああああああああああああああああああああああああくそがあああああああ!!
この俺をどいつもこいつもイラつかせやがってヨォォォォォ!!!!!!!!!!」
俺が絶叫する理由は三ヶ月ほど前まで遡る。
俺は戦争が起きる予定の二ヶ月前にドルケストに到着し戦争に備えていた(観光をしていた)。
じじいは行方知らずでいつ到着するかわからないと言う事らしい。
「(ふざけやがってあの老いぼれが!!!!
テメーが来なきゃ誰が指揮すんだよ!!)」
三週間ほど経ち援軍として冴えないおっさんとクッソ可愛い女子がきた。
冴えないおっさんはディエゴ・マルクでじじいと同じ大将で五英傑の子孫。
クッソ可愛い女子の方があのオフェリアって言うから驚いたぜ。ノーブルファブニールを単独で倒すぐらいだからもっと筋肉隆々のゴリラだと思ってたからな。
せっかくだから仲良くしてやろうと俺から話しかけてやったのに、一言二言言葉を交わしたら興味がうせたとばかりに俺を無視し始めやがった。
俺がイラついて掴みかかったら一瞬でボコボコにされ、おっさんには慰められる様に肩を叩かれた。
「(ふっざけんじゃねーよ!!!
ちょっと可愛いからって調子に乗りやがってヨォ
おっさんも何同情してんだゴラァ!!俺はテメーとは違うんだよ!!!)」
クソイラつく二人が来たかと思えばまだ予定より一ヶ月以上あるってのに陣内の野郎が攻めてくるしよ。じじいは陣内が大河渡った後に到着するわ俺の存在を認識しやがらねーばかりかそれを俺のせいにしてきやがった。
「〔ボケてんじゃねーよクソじじいがぁぁ!!!
役立たずのおいぼれのぶんざいでよおぉ!!)」
何度も軍の指揮をしろと言ってもすっとぼけやがるせいでこの俺が七万なんて大軍の指揮をやる事になっちまった。俺はまだ十二歳なんだぜ!?
まぁ俺は選ばれた人間だからな問題はない筈だがな。それでもイラつくもんはイラつくんだよ!!
そして最初の戦いの時、あの陣内がこの俺に喧嘩を売ってきやがった。
相手は三万でこっちは二倍以上の七万。
兵の強さだってこっちが上で簡単に潰せるはずだったのに俺が負けた。
二万人くらいの兵と共に逃げている時、陣内が俺に言ってきた言葉が頭に響く。
「私はディーノ・ツェッペリンなど眼中にない。
お前が指揮権を持つ七万よりも他七千の方がよっぽど脅威だ。
よかったな!お前一人だけなら勝負にもならなかったぞ。」
「(ふざけてんじゃねーよ陣内ふぜいがよぉ。
あんなもんまぐれ勝ちに決まってんだろうがぁ。
俺が《先見の魔眼》をちゃんと使えば負けるはずがねーんだよ!!)」
それから数日後二度目の全面衝突で俺は《先見の魔眼》をフル活用して自軍の指揮をした。
それなのに、未来の動きにいち早く対応してんのにどうしてうまくいかねーんだよ!!!
俺は特別な人間のはずなんだ。
選ばれた人間なんだ!!!
「それなのになんで俺は陣内やじじい おっさん
オフェリアの奴らからあんな扱いをされなきゃなんねーんだよ!!!!」
一人天幕の中で叫ぶ俺の頭には前世で遭った事を思い出していた。前世で数少ない俺が蔑ろにされた不愉快な記憶だ。
「(・調子に乗ってんじゃねーぞお前!!
クソインキャが何勘違いしてっか知らねーがよぉ!!
身の程をしれよ、なぁ飛紙・)」
「(・・・・・・・・)」
「(・無視してんじゃねーよ飛紙!!
それとも身の程を理解して《柊》の奴から手を引く決意でもしてんのかぁ?・)」
「(・・・・・・・・)」
「(・何か言えって言ってんだよ!!・)」
「(・はぁ…。身の程ね。
僕のそれがどれくらいかも、君のそれがどれくらいかも僕にはわからないけどね。
僕は君がそれほど特別な人には見えないよ・)」
「(・ああぁ??やっと喋ったかと思えばなんだ?俺が特別じゃねぇって?
頭脳に身体能力、容姿に親のランクに至るまで他のやつとは違うだろうがよ!!・)」
「(・確かに君は恵まれてるのかもしれないね。
それでも君以上の人はクラスを見回しただけでも数人いるし、君が他の人とは違う特別な人ならわざわざ僕にこんな事を言う必要もないんじゃないかな・)」
「(・つまり何が言いてーんだよ!?・)」
「(・自分の評価は自身で決めるものじゃなく、他者からの評価で決まるもの。っと僕は考えているという事と。
自分の評価を自分で言い張るのは他者からの評価が不安だからこそなんじゃないかなって事かな・)」
「(・意味わかんねー事ぐちぐち言いやがって何様なんだよお前はよぉ!!。さっきから君!君!って気色悪りぃんだよ・)」
「(・………ごめん君の名前を覚えていないんだ。
呼び方がわからなかったからそう呼んでただけで他に理由はないんだよ・)」
「(・まじで何様なんだよ!!!お前はよぉぉぉぉ!!!!!!・)」
思い出しただけでイライラしてくる不愉快な記憶にこれまでのストレスが重なって出てきた事が最初の叫びの理由だ。
今までのストレス全てを口から吐き出しようやく落ち着きを取り戻し始めた俺は手元にあった杯を掴み取り中に入っている果実水を一気に飲み干す。
「はぁ…はぁ…どいつもこいつも俺をコケにしやがってよぉ。絶対に証明してやるよ!!
この俺が選ばれた特別な人間ってことをな!!」
〔ほ〜〜お〜もう少し荒れておるかと思ったったが意外と澄んでおるの〜お嬢ちゃんや〕
儂は先程後ろから聞こえたセルズ小僧の雄叫びを思い出しながら氷の嬢ちゃんに話しかける。
今日の戦いで相手の掌の上でいい様にされプライドが傷つけられ、感情が煮え滾っとると思っていた氷の嬢ちゃんは日頃と何一つ変わらない様子じゃ。
「そう見えるかジョナン。確かにあいつと比べれば落ち着いているだろうがな」
〔セルズ小僧は自分で気づく事でしか成長せんだろうからの、今はあのままで良いわい。〕
「ジョナンは意外と厳しいのだな。
それで私のところに来たのは私が不安定な状態になっていると思ったからか?」
〔まぁそんなところじゃよ。
お嬢ちゃんの様に個人としてありえない程の力を持ったものが、自分より遥かに劣る者たちに苦戦させられる事は未知の経験じゃと思うての〕
「そんな事か。別に未知ということはないぞ。
思い出してみれば数多く見て、体験したことだ。
私がノーブルファブニールを殺せたのも言ってしまえば同じことだしな」
「ふぁっふぁっ確かにそうじゃのう。お嬢ちゃんの言う通りじゃ!。〕
「それに群れで行動して強敵を仕留める魔物たちも数多くいた。氷狼とかな。」
〔お嬢ちゃんはこれからどういう風に戦っていくつもりじゃ?〕
「まずは魔物たちの行動に習いながらやっていくつもりだ。今日戦った三万も見ようによっては一体の魔物に見えなくもないしな。」
〔さっきの会議に来なかったのもそれが理由かいの?〕
「昔狩りをしていた時に氷狼の女王が配下の氷狼を丁寧に弔っていたのを思い出してな。
私の経験的に配下からよく信頼されている女王がいる群れは強かった。
それの真似で今日死んだ部下や負傷者を労ってみたんだ。意外と効果がある様に見えたな」
〔ふぁっふぁっなんとも心のこもっとらん労いをしたんじゃのう〕
「ちゃんと労ってはみたさ。
ただな、死んだ部下は弱かったから死んだだけの事だ。生き残るための足掻きが足りなかった。
突き詰めてみれば理由はそれだけの事だ。」
〔お嬢ちゃんの方が儂なんかよりよっぽど厳しいことを言いよるの。
儂のちょっとした疑問なんじゃがお嬢ちゃんは何故闘いを求めておるんじゃ?〕
「ん?……考えたこともないな。
生き物として生きるために戦い、勝利し 奪い 自らの糧として生きる。当たり前のことだろう」
〔前まではそうじゃろうが今の状況は違うじゃろう。この人同士の戦場においてはの。〕
「……………。確かにな。今は直接的に生きる為に戦っているわけではないな。」
ふむ。儂としたことが踏み込む量を間違えたかの。軽い葛藤が生まれたら面白いかと思い投げかけた言葉がまさか根本の部分の問いかける物になるとはのう。
オフェリアの中で何かが固まりかけているのが傍目から見ておる儂にも伝わってくるわい。
「なるほどな。私は詰まるところ、戦い勝利して相手から奪うことでしか生きている快感を得られない生き物だということか。」
見ている者の心を凍らせてしまうほど冷たく美しい笑みじゃのう。
儂なんかやばいもん呼び起こしちまったかの?
「そんな顔をしなくても大丈夫だぞジョナン。
自分の本質を理解したからと言って目につくもの全てに襲い掛かるつもりはない。
私は私のままだからな」
「(まぁ本人もこう言っとるし問題ないかの♪
なんか起きても儂し〜らないっ♪)」
儂は適当に言葉を交わしてからその場を離れ、音魔術で適当に精神安定をしたのちさっさと寝た。
「(オフェリアお嬢ちゃんはあの小僧と同じくらい面白いが方向性が違いすぎるのう。
小僧は健全な面白さじゃった。
オフェリアお嬢ちゃんはめっちゃオブノーマルじゃ。めっちゃ怖いの〜)」
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