【砂城のドルケス】
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僕たち対盗賊チームは現在無事に城塞都市ドルケストの門前に到着した。
予定通り五日目の昼前に着くことができたものの、チームのみんなは魔法術の行使や緊張でとても疲労しているようだった。それでも無事にドルケストに着いたことで表情は明るい。
今は都市に入るための列に並んでいるわけだけど、この列がバカみたいに長いし進むのがとても遅い。
先に列に並んでいた人たちから理由を聞いた所、炎 虚苦の施設軍が中天帝国を出発し北領同盟王国にやってきているとの事で都市の警戒態勢が強まったとのことだった。
「(僕の予想が当たったって事なんだけど、素直に喜べる事じゃないんだよね)」
ここ数日の間に炎 虚苦が出発したとするなら大河に着くまでに数日、北両同盟王国の対応が遅れれば渡るのに一日と言った所。
北領同盟王国軍の動きを知るには都市に入って情報収集をしないといけないんだけど、僕も戦場に直接行かないといけないことを考えるとそこまで多くの猶予はない。
僕は手持ちのお金と交渉材料になり得る情報、都市内での取り締まりなどを予測していき、自分に残されている時間を見積もっていく。
「(調べないといけない事もあるしね。)」
「マーリンくんちょっといいかな?」
「どうしたんですかおねえさん?」
「うーんと、マーリンくんはこれからどうするのかなって思ってね。
ほらチームのみんなはドルケストに着いた時に解散したし、あのお爺さんもすぐにどこかに行っちゃったでしょ。」
対盗賊チームはドルケストに着くと少しだけ話をしてすぐに解散になった。
五組が全部ドルケストが目的地というわけでもないし、道すがらもうすぐ戦争が始まると言う情報も入ったので酒場でお祭り騒ぎをするほどの余裕もないからだ。
結局盗賊に襲われる事自体はなかったわけだけど不安なものは不安だっただろうし、自分たち以外の人といる事で安心感もあった事からそこそこに仲も良くなっていた。
ドルケストに入るのは僕たちだけだ。
お爺さんについても行商人の親娘の荷車が列に並ぶと、行商人の父親の肩を叩き、娘さんのお尻を揉んで、怒ったヒムさんの頭をはたき、最後に僕に見せつけるようにして楽器を鳴らすと何処かに去っていった。
最初から最後までよくわからないお爺さんだったわけだけど、最後の最後までお爺さんらしい行動で僕としては悪くないと思うんだけどヒムさんは拗ねている。
「僕はこのままドルケストで一〜二週間過ごしたらリューセンに行くつもりだよ。
おねいさん達はどうするの?」
「私たちは一ヶ月くらいドルケストを拠点にして周辺の村や町に行商をしにいく予定よ。
戦争がひと段落したら、食料保存のための塩とか香辛料を仕入れてフルーベンスに行くつもり。
ヒムさんとはそこまで一緒ね」
列はまだまだあるので少しだけ詳しくおねいさんから話を聞いてみると、北領同盟王国では冬前の戦争が終わると余ってしまった食料品などを少し割安で売りに出すそうだ。
理由としては完全に冬に入った北領同盟王国に攻め入る国はまずなく、実際に戦争が起きたとしても自然環境を利用して時間を稼ぐ事が容易なため問題ないんだとか。
「そんなんだね。じゃあ僕もドルケストの中に入るまでかな。僕はドルケスト内で過ごせるのは数日だけだからね」
「へっへっへまぁマーリンくんなら心配はないでしょうが気をつけてくだせえ。
冬の旅は想像以上に大変ですからね」
「自分で言うのもなんだけど僕結構しぶといからね。どうにかするよ」
「ついでにアストくん達に何か伝えときたい事はありやすかね。あるなら聞いときやすよ」
「ううん大丈夫。また会ったときに自分で伝えるよ。」
「へへへそうですか、そのほうがいいでしょうね」
「じゃあそろそろ順番が来るから先に行かせてもらうね。お世話になりました」
僕は三人に手を振ってから門兵の人に銅貨一枚とドルケストに来た目的を伝え、無事にドルケストに入ることができた。
ドルケスト内に入った僕は三人を待つ事はせず、近くの酒場に入っていく。
別れを済ませた後すぐに会うのはなんとなくカッコ悪いからね。
この城塞都市ドルケストは建国当時の戦乱期に活躍した英雄の一人【砂城のドルケス】の拠点であり伝説の地である。
ドルケスは中規模部族出身であり出自としては平凡なものだったが実力で出世していった将軍。
そして少将時代、【戯壊のチュニチュル】と【鉄血のホノルル】がいた南西戦線に奇襲を仕掛けようとしたゲオルグ正教法皇国混合軍十万が大河を経由して、当時中規模程度の町ぐらいしかなかった南東に上陸した。
北両同盟王国は南西戦線と東のエルフとの戦線維持で対応が遅れ、上陸した騎士と信徒の混合軍十万に相対したのは、当時治安維持として派遣されていたドルケスが率いる五百人隊と周辺部族の子供から老人含めた五千人 総勢五千五百人程だけだった。
そこでドルケスはゲオルグ軍と衝突するまでの数日間の間に五百人隊の内二百人率いて現在ドルケストがある場所に魔法術で大きいだけの張りぼての土の要塞を作り、残りの三百隊と五千人の周辺の部族達に予備の拠点を複数個作らせ一定距離内の動植物 食料になるものを根こそぎ集めさせた。
数日後ドルケスと二百人はゲオルグ軍十万と接触し、見掛け倒しの土の要塞と話術、奇策を用い信徒集団を動揺させ数十分間の時間を稼いだものの、ゲオルグ騎士団の命令による信徒集団の総攻撃により一分ほどで敗走させられた。
ドルケスは殿などはおかず、二百人と共に信徒集団に背を向けて森に混じれるように逃走。
ゲオルグ騎士団は追撃などはせずにすぐさま南西戦線に向かおう号令を飛ばすが、信徒集団は先ほどまで恐れていた相手の無様な姿と圧倒的なまでの快勝、初体験の戦場における興奮によりそな号令を無視して二万人ほどがドルケスを追撃した。
一時的にゲオルグ騎士団は軍を完全に統率できなくなり進軍は停止する。
これは騎士団と信徒集団の比率が一体九であることが原因だとされている。
騎士団は追撃した二万の信徒集団の統率を後回しにして残りの七万を制御することを優先した。
ドルケスを追撃した二万はすぐに二百人を圧殺して戻ってくると予想したからだろう。
しかしその二万の信徒集団は二千人にまで数を減らして戻ってくることになった。
ここで何故ゲオルグ正教法皇国やエルファエルが今まで北領同盟王国が支配している土地を支配できなかったのかをおさらいしておく。
理由として少数部族の個の力が強かった事。
人の手が全く入っていない厳しい自然環境とそこに住む動物や魔物。
ここまでなら各個撃破していけばいずれ支配していくことができる。
しかし冬になれば全てが無駄になる。
いくら個別撃破を繰り返し、少しずつ支配地を増やしたところで冬になれば軍の動きは止まり、進軍してきた兵達は自分たちの命を維持することに精一杯になる。
もちろん物資の補給はあるものの通ってくるのは吹雪が吹き荒れ、雪が積もり氷になった道であり思うように進めないどころか下手をすれば凍死する。
そこを生き残りの部族や他の部族、魔物に襲われてしまえば結果など分かりきったものだ。
北領同盟王国が建国して急にゲオルグ正教法皇国とエルファエルが侵攻を再開したのは、国として形を作る際に多少なりとも自然環境に手が入った事で拠点作りがしやすくなったことが理由としてある。
しかし少し手が入ったと言うだけで所詮は建国当初、たかが知れている。
そしてそこに住む魔物達が弱くなったわけでも、ましてや部族達の力が衰えたわけでもない事を騎士団と信徒集団は頭から抜けていたんだと思う。
逃げていたドルケスは二万の信徒集団が自分たちを見失わないように注意しながら誘導し、拠点の詳細な位置と罠の種類は事前に部族についていかせていた部下から聞いており、どのように行動するかを部下を通して部族に伝えていたと現代に伝わっている。
そのまま部族達と合流していくようにしながら二万の信徒集団を包囲して壊滅させた。
二万の信徒集団が二千人になり戻ってきた事に騎士団がどう思ったかは定かではないが、騎士団はそのまま警戒態勢を作ったまま南西戦線に向かったとされている。
ドルケスは南西戦線に向かうゲオルグ正教法皇国軍にすかさず反応して、ゲリラ戦法で八万二千程で長い隊列を作ったゲオルグ軍に攻撃を仕掛け進軍速度にばらつきを作っていく。
そんな時、中央後方の騎士団が隊列を整理しようと前方に移動したと同時にドルケスは、部族と配下の兵合計四千五百人にゲオルグ軍の前方を攻めさせた。
騎士団がそちらに気をさいているうちに後方の輸送隊にドルケス本人と三百の兵で奇襲を仕掛け、ゲオルグ軍の物資の五分の一程を奪う事に成功する。
その後すぐに戦場を離脱し足止めに専念した戦いを展開。
ゲリラ戦法 罠 夜襲 毒 騒音などなどに、複数の拠点を使い潰しながら相手を翻弄したり、ゲオルグ軍の進路上に最初とは違い実用的な土の要塞を築いて真正面から進軍を防いで見せたりとあらゆる手段を使い時間を稼いだ。
南西戦線では【戯壊のチュニチュル】による大規模な奇策が成功しゲオルグ軍の軍船を壊滅させていた。そこで【鉄血のホノルル】が南東への援軍として向かう事になったわけだけど、ホノルルが戦場についたときには戦いの決着はほぼついていた。
元々十万いたゲオルグ軍は止む事のない奇襲、罠 毒により確実にその数を減らし、騒音と夜襲で眠る事も出来ず精神を弱らせていった。
そこに圧倒的に数の有利があるはずの相手に正面からの戦いで苦戦していると言うストレスと徐々に不足してくる食料なども重なり、騎士団と信徒集団が分裂し争い合い騎士団が虐殺された。
その後信徒集団は幾度かドルケスに挑むものの完敗し、諦め祖国に帰ろうとするもののドルケスは残っていた拠点などを使いこれを殲滅していった。
ホノルルがついたときには現在城塞都市ドルケストがある場所には岩でできた城壁と中に立派な集落がある都市が整形されていたと言う。
大きな波に流され崩れてもすぐに直り、潰れるようにしながら相手を包み込み圧殺していく戦い方から、ドルケスはその後大将に昇格しその後も数多くの伝説を残した。
そして【英雄王バナージ】【戯壊のチュニチュル】【死穿のディミトリ】【鉄血のホノルル】達と共に五大英傑と呼ばれる【砂城のドルケス】として今世にまで名を轟かせている。
お終い
「うおおおおお!!!!!いいぞ嬢ちゃん!!!!」
「すっげーーーうまかったぞーーーー!!!」
「もう一回頼むぜ!!!!!!!」
この【砂城のドルケス】の伝説は今でも北両同盟王国内では人気で吟遊詩人や大道芸人などが歌として講演したり、酒場で盛り上がるためによく話されてる。
頭の中で整理しながら面白おかしく歌い演奏するのはなれないとかなり難しいんだけど、お爺さんとの演奏合戦よりかはかなり楽だった。
その後数曲だけ弾いてから、いい感じに出来上がっている人達の輪に入り情報を集めていく。
僕が早急に集めたい情報は北両同盟王国の詳細な軍の規模と動き
中天帝国軍と炎 虚苦施設軍の動き
各国の状況
最後に一昨日の夜僕が見た氷漬けになって死んでいた盗賊達のことだ。
一昨日夜、つまり三日目の夜僕は予定通りみんなにはバレないように抜け出して盗賊達がいるのかを確認しに行った。
空間同調で動いている人の集団はいない事はわかっていけど、念のために見に行ったんだ。
そして僕が予想していた地点には破壊された後の簡易な家々にバラバラにバラされた人だったであろう肉の数々、氷柱のようなものに串刺しにされた死体。
悲壮な表情のまま氷っけにされている死体があった。
所々氷が溶けてできたような水溜りなどがあることから一日二日前ほどに誰かか誰か達ががこの光景を作った事は容易に想像できるものの、誰がやったのかが全くわからない。
候補としては例の援軍が最優良候補であるもののこの光景を作り出せる援軍というのは尋常じゃない。
幸い僕たちのチームが通る道からはここは見えない為この事はみんなに話す必要はないと判断。
僕は最低限の後処理をしてから静かにみんなのところに戻った。
最低限この四つの情報は戦場に行く前に集めておきたい。
そんなわけでまだ十一歳の僕は日も沈んでいないうちから酒場を梯子して演奏し、お金を儲けてはばら撒き場を盛り上げ、酔っ払いを精一杯ヨイショして話を引き出していく。
「(なんかとても親に顔向けできない人間になっているような気もするけど気のせいだよね!)」
そこから数日間城塞都市ドルケストでは【酒場の天使】と呼ばれる、ハープを片手に歌を歌い場を盛り上げ、酔っ払いの相手をしてくれる綺麗な男の子か女の子かがいると噂になった。
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです




