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情報は足で集める

広場で演奏した日から一週間ほど経った。

あの日からはお爺さんと一緒に演奏をするということは無くなり、一人で好きに時間を過ごすことが多い。ちなみにお爺さんは毎日楽しそうに朝から酒場で過ごしている。

そこで僕も街中の酒場を回りながら演奏をして場を盛り上げ、中天帝国やドルケストなどの情報を集めて回った。もちろんお爺さんとお店がかぶらないように気をつけてね。



情報収集の際は前にヒムさんから教えてもらった様にこちらから特定の話を深くは聞かず、広く浅く話を聞き、また違う人から同じように聞いた。

そうする事で相手側に自分の弱みを晒すリスクを犯さなくて済む。

そして多方向から情報を精査した状態の時に、これまでに手に入れていない情報を持っている人と当たった時に初めてこちらからアプローチか交渉を持ちかけるようにした。



そのおかげで中天帝国の食糧事情を少しと北領同盟王国軍の状況 北領同盟王国軍に援軍が出ると言う噂 北領同盟王国商人や中天帝国から来た商人からの愚痴 デ・ディヴァルドの輸出輸入の話などなど他にもいろんな情報を集めることができたし、商人数人にこれからの国家情勢をテーマに論戦をさせることもできた。

必要経費としてちょっとだけ少なく無いお金を使ってしまったけどまぁまぁまだ問題はない。

酒場の女将さんとかからお酒を勧められたりとかしたけど、僕が十一才であることを話すと残念そうにして諦めてくれた。

前から思っていたけど見た目が大人くらいになっている人は僕が十一才と言っても不思議そうな顔はしない。

村のガキンチョ達はよく僕の身長のことを馬鹿にしてくるのにだよ。

実際身長で言うなら僕は八〜九歳くらいだしね。

まだ僕の知らない一般常識があるのかもしれないと最近思い始めてきたから機会があったら調べようと思ってる。



少しだけ詳しく中天帝国の食糧方面の情報を集めた訳だけど、その時に不確かな情報として炎 虚苦の私設軍隊の大まかな規模を知ることができた。

エル父さんが教えてくれた両国の軍の規模は国家情勢などの情報からどれくらいの軍を動かせるかと言う推測によるもので確定しているものでは無いと聞いていたけど、今集めた情報から見てもそこまでの誤差は無さそうなんだよね。

あっても一万くらいしかなさそう。

ちょっとだけ不思議なんだよね。まぁ推測の軍の規模でも十分に多いと思うけどね。



北領同盟王国の援軍というか別部隊についてはその規模含めてあまり情報が入っていない。

そこまで大規模な兵糧集めが行われていないことから万に届く軍ではないのでは無いかと思っている。

それにまだゲオルグ正教法皇国とは戦争状態だし城塞都市チュニチュルティにいる軍は少しも動かせないはずだしね。



話を炎 虚苦に戻すと、一つの可能性が浮かび上がったんだよね。実際にされているなら後一ヶ月するかしないかくらいで開戦することになるだろうって言う可能性。

今から一ヶ月ほど前にはすでに炎 虚苦の私設軍隊分の兵糧をほぼ準備できていて、中天帝国本軍に先行して攻め込んでくるのではないかと言うものなんだけど、自分で言っていて可能性が限りなく低いと思う作戦なんだよね。

もし私設軍隊で先駆けて行軍したとしてもある程度の規模の軍であるため守る側にはすぐ気づかれて守りの態勢に入られてしまう。

そうなれば奇襲にはならないし、兵力では不利になる。

少数づつ送り込んだとしても大河を超えての行軍ということもあり軍の進行速度の調整がしにくい。そうなると合流に戸惑い個別撃破される危険性が多いためこの方法が選択される事はないはずだ。 

となると私設軍団全てで内部に侵入し、中天帝国本軍が来るまで施設軍のみで北領同盟王国軍と渡り合い耐え続けるしか無い。


「(どう考えてもリターンとリスクが見合っていないだよね。

失敗すれば全滅もしくは壊滅。成功したとしても戦場が選択できることと後陣の軍が上陸しやすくなるだけだ。

北領同盟王国軍に与えられる被害についても先行してもしなくてもそこまで変わらないはずだ。

それなのに実行しているとなると絶対に成功させる実力と自信を持っていると言う事だ)」


僕は炎 虚苦がこの方法を取らないという事を理論で固めていくようにして納得しようとする。

実際問題として炎 虚苦がこの作戦を実行しない理由ならいくらでも浮かんでくるしね。

それは理論的に考えたなら正しいもので簡単に納得できるはずなのに、納得できないでいる自分がいる時点で僕が頭のどこかで炎 虚苦がこの作戦を実行すると確信していると言う事だ。

なら〔炎 虚苦は実行している〕というふうに考えておくべきなんだろう。



そんな風にこれからの行動方針を考えている僕にどこからともなく声がかかってきた。


「へっへへ準備は出来ていやすかねマーリンくん。そろそろこの街を出やすが」

「出来てるよヒムさん」


この一週間で行商人の親娘は商品を売り捌き、嵩張りにくく現金変換が難しい商品に変えた。

まぁ盗賊対策だね。

ヒムさんの情報収集で盗賊団がいる事は確定事項となり、軍が何度か討伐に向かった際には姿を隠しやり過ごしていることもわかった。

簡単に言えばいいようにやられてしまって手を焼いてているという状況らしい。



そんなわけでいくつかのドルケスト方向に行きたい人たちがチームを組んで進もうという話になったわけで、チームに五組程が参加して戦える人は十二人ほどになった。

もちろん僕は数に入ってないよ。


「そうですかい。なら行きやしょうか。

爺さんの方はもう荷台でいびきかいてやすからね」


なんていうか本当にお爺さんらしいよ。




〜今の世界情勢簡易版〜(マーリン視点)


北領同盟王国

ここ二年ほどで前代未聞の事件が二つ国内で発生

近隣諸国との相互理解や協定締結などの外交で国の頭である人達はてんてこまいの大忙し。

国内情勢は割りかし安定している。


ゲオルグ正教法皇国とは現在戦争状態になっており、ゲオルグ正教法皇国側が戦争終結を宣言しない限りこの状態は続く筈だ。


中天帝国とも戦争状態にあるものの、戦争をするほどの理由はなく今回の戦争の意図を僕は掴めていない。


デ・ディヴァルド とは良好な関係を築いている。ドワーフ達がノーブルファブニールや世界樹に対してそこまで興味がないことが理由として大きいが、三年ほど前の中天帝国との戦争が原因で武器などを輸出する国として北領同盟王国が大きな存在になっているからだと思う。


エルファエル との関係は一応安定はしている。

二つの事件はお互に国が傾くほどの死活問題であり、お互いが慎重に歩み寄っているためだ。

こじれると一気に全面対決に移行すると思うから油断はできない感じ。



ゲオルグ正教法皇国

現在北領同盟王国とは戦争状態

先日のチュニチュルティ攻めで討伐軍に多大な被害を受けた。同盟国達も甚大な被害を受けたため今は軍の再編をしている。

これはチュニチュルティを守護する軍の総大将がチルチ・ダービー・フェイル・ベル・チュニチュルトである事が大きく関係しているんだけどここでは割愛。

そして世界樹発生による宗教的な問題の解決に力を割かなければ国が割れる可能性があるため内政はかなり厳しいことが予想できる。

その政治権力でも派閥争いが激しくなっているとの噂が絶えない。


中天帝国との関係は良くは無い。

先の戦いで中天帝国が北領同盟王国攻めに参加しなかった事から食糧などの貿易の取り締まりをゲオルグ正教法皇内とその同盟国内でしている。

だが完全な敵対状態になりたいわけでは無いのだろうから、個人的な取引程度なら厳しくは取り締まっていないらしい。


ヒューマン以外の国とは全て仲が悪く、他種族の奴隷総数はすべてのヒューマンの国の中でダントツに多い。



中天帝国

北領同盟王国とは現在戦争状態にある。

表向きな理由としては領土獲得と世界樹が発生したことによる勢力増大を懸念してとなっている。

しかしその二つとも現在の中天帝国にそれほど大きな利益を生むとは思えない。


デ・ディヴァルドとは国交が途切れている。

そのため武器の輸入先に困っていると言う噂があるものの、元々の武器の保有数が凄まじいのでそこまで大きな問題にはなっていないとのことだった。


ゲオルグ正教法皇国とは現在仲が良く無い。

ノーブルファブニール消滅の際に北領同盟王国攻めに参加しなかったことが原因となっている。

そのため食料の輸入が滞り、国内の食料供給が苦しい状況になっているとのことだった。

そのことがきっかけとなってか、ここ数ヶ月、帝に対して抗議する人達(近年併合された国の人達)が出初めている


エルファエルや魔族達との関係については情報がなかった。



ここまで幅広く情報が集められたのは現在どの国も大規模な輸出輸入がしにくい状況にあるため、個人の商人が国と国を忙しなく動き回っているからだ。



〜終〜




集めた情報を頭の中で簡単に整理しながら荷台に座りハープを弾いている僕ことマーリンなんだけど、さっきからお爺さんがずっと僕にガンを飛ばしてくる。

移動が開始した当初から考え事をしながらハープを引いていたからずっと曲の主導権はお爺さんに任せているんだけど、少し前からお爺さんの曲調がすごく激しいものになってきた。



最初の曲調は


「お〜い小僧〜〜ぼ〜っとしてっと儂がずっと主導権握っちゃうぞ〜〜い」


って感じだったのが


「小僧ーそろそろちゃんと弾いたらどうじゃ〜」


になり


「小僧ーそろそろ儂怒っちゃうぞー」


「いい加減反応くらいしてくれてもいいんじゃないかのー」


「老人いじめは感心せんぞーマジで泣いちゃうぞ〜儂 マジで泣いちゃうぞ〜」


「やーい冷血小僧 アホタレ スカタン 人でなし〜〜」


「鬼畜 う◯こ ク◯ガキ 鼻垂れ小僧 アホンダラ ハゲ チビ 男の娘 オカマ 皮◯むり

小◯茎 お前の母ちゃんデベソーーーー!!!」


という感じになってきている。

ついでに目が少しだけうるうるしていて、見ているこっちが悲しくなってきた。

流石にこのまま無視をする程僕は嫌な奴じゃ無いので演奏に意識を向けることにする。

僕の意識が演奏に向いたことをお爺さんは瞬時に感じ取り、お爺さんの曲調が少しずつ明るいものになってきた。

感じ的には


「小僧〜遅いぞこの野郎〜儂怒ってるからな〜

コンニャロ〜バカヤロ〜」


みたいな感じになった。

気持ちが悪いけど、総合年齢三十歳の僕はちゃんと反応をしてあげる。

それから数時間、中間目的地に着くまでの間よくわからないツンデレモードになったお爺さんの相手を勤め上げた僕。異常なほど疲れた。




今夜寝泊りするのは小さな村で五組それぞれ固まって一夜を明かす。

五組の対盗賊団チームはそれぞれ自分のウール(馬みたいな)やポップス(ダチョウに似ている)に強化魔法術をかけ、普通に行けば一週間ほどのドルケストまでの旅を四日五日で終わらせる予定になっている。

僕の盗賊団がいると予想するのは三日目らへんで通ることになる平原で、理由としては周囲に中小規模の村や町があることと、平原から少し行ったところにいくつかの岩の丘があること、村や町までは森に遮られていることだ。

つまり素早く察知しやすく、逃げるための障害物があり、逃げ込むための人が集まっている場所が複数個あるという事からそこだと予想している。

ちなみにドルケスト近くの場所で、通常ならドルケストから速攻で討伐隊が来るはずだけど今は戦争前なので討伐隊が来ないのだろう。

そんなわけで明日の夜、僕がこっそりそこに向かい様子を見てこようと思っている。



チームのみんなには言っていないけど僕は空間同調である程度の距離ならかなり正確に物事を把握することができる。

今は情報過多で頭が麻痺しないくらいまで自分の魔力と集中力を使い空間同調をしているからここ周辺に怪しい集団がいない事は分かっている。

なんとなくお爺さんも自分の方で周辺を警戒しているように感じるし、そのお爺さんがグースカ寝ている事から僕の判断と同意見という事だと思う。

それでもチームのみんなは不安からか寝つきがあまり良く無い。無理もない事だとは思うし、間違っていないとは思うものの襲われる心配はまだないと分かっている僕としては少しだけ気を楽にしてほしい。

僕がスキルの事を説明するのも手だけど、それには色々と問題がありすぎる。



ティラァ〜ララン ツェラ〜〜ティラ〜ン


「(だからこれは僕の個人的な願望。他意はなくただ思いを込めて楽器を演奏しているだけ)」


お爺さんが小さく笑っているようにも見えなくもないけど、意識的に見ないようにしながら誰かに向けての言い訳をして演奏を続ける。

その時に癖で魔力を乗せてしまったとしても無理はないよね。


少しでもいいなと思っていただければ幸いです

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