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マーリンのミス

「みんな〜!!今からこのお爺さんと二人で演奏始めるからよかったら聞いて行ってね〜!!」

(透き通るような美少女声)


「乗っかりたくなったらどんどん乗っかってきてね〜!いくよー!!」

(羞恥を堪えた美少女の顔で)




どうも同じみマーリンこと僕です。

僕は今お爺さんと一緒に楽器を持って街の広場の高台にいる。

時間は午前十時ごろで広場にはとても多くの人がいて、

比較的何時でも人が多いこの広場だけど今日は一段と多い。

理由としては今日の朝に起きた〔街人全員寝坊事件〕が原因だ。

今日の朝 泣くことがお仕事の赤ん坊から早寝早起きの老人までが全員九時くらいまでぐっすりというよくわからない事が起きた。

その為多くのお店が今日の営業を中止したため暇な人たちが街中溢れている。

魔法術が原因である事は消去法で解る為、街の兵士は今血眼になって魔法術使いを探しているが、まだ見つかったと言う情報はない。

心当たりはあるもののきっと僕の予想は間違ってる。僕じゃないよ。多分。



僕たち五人は九時半ごろに行動を開始した。行商人の二人は今回の事を生かして商品を販売して回っているし、ヒムさんも昨日の酒場と同じように情報を収集している。

僕とお爺さんは街の人の前で演奏の練習兼魔術の練習となった。

昨日の夜偶々お爺さんの魔術発動のやり方は掴めたとので今日はその確認をしていこうと思ってる。



そんな訳で今僕とお爺さんは街の人から歓声を受けながら広場で楽器を弾きながら魔術を発動させていっている。

このお爺さんの魔術発動の肝は音に乗せる魔力量の調節や維持などのコントロール。

それと対象の人達の感情の方向性をある程度自分の意思で決められる事。



まずは一定量均一の魔力を乗せた音を飛ばして対象の人に当てる。その魔力は当たってすぐに霧散してしまうけど、当たった本人も気付かない程小さな揺らぎが魔力循環にできる。

それを数十回程ミスなく一定のリズムで均一に作っていく。ここまでが第一段階。


そして第二段階についてはまだ予想の域を出ていなくて合ってるか微妙な物だけど一応整理しておく。

この魔術発動における一番重要な事は、ただ魔力を放出して相手に当てた時と違い、相手に音が伝わっている事だ。

当たり前のことに聞こえるかもしれないけど当たり前じゃない事なんだよこれが。

音が聞こえているという事はその音に乗った魔力もまた相手の鼓膜まで届いているという事なんだと思う。あんまり自信ないけどそうなんだろうと思う。


普通の魔法術としての音攻撃はすでに魔法術として構成されている物を対象に向けて放つもので、この場合対象者は生理現象の様にして自然と魔力循環量を上げたり、魔力を体外に放出したりなどして体を守る様になっている。

そのため普通の魔法術としての音攻撃が対象の気づかないうちに体内に入る事はない。

それが理由で対処自体は打とうと思えば打つ事できる。


話を戻し、鼓膜に魔力が当たってからどの様にして魔術が発動しているかは完全に勘であって、根拠となる物はほぼない。

僕が知る限りに置いて自分の体内で魔力が無意識の内に反応する事があるとすれば魔法術発動の時くらいだ。他にもあるかもしれないけど僕が知ってるのはこれくらい。魔法術の練習の際の空間同調で偶々発見して、魔法術を発動させようとするとどうしても魔力回路から微量の魔力が、発動させるまでの間一定の間隔で漏れてしまう。

(これを無くそうと頑張ってみたけどどうしても止めることができなかった)


音に乗った魔力に対象者の体が反応して魔法術を発動させようとしていると誤認し、その時の心の動きに反応する様にして無意識に魔法術を発動させているのではないかというのが僕の推測。



「(合っているかはわからないけどやり方自体はそんなに間違っていなかったみたいだね。

とは言ってもまだミスは多いし、バフの種類も人によって違ってる)」


僕は僕たちの演奏を聴いて踊ったり 歌ったり楽しそうに過ごしている人達を見ながら効果を確認して自分の予想が当たっていた事を確信し、横で演奏しているお爺さんに目線を移す。

お爺さんの方も僕が魔法術を発動させられている事を把握している様で驚いている様子はなかった。

「(きっと朝の事件で元から疑われていたんだね。勘は鋭そうだし。)」


お爺さんは僕が自分を見ていることに気づいたのか、僕の方に目線を移しにぱぁっと笑い曲調を変えてきた。

何というか悲願がかなって嬉しいなぁ〜〜みたいな感じ伝わってくる。

「(名前も知らないお爺さんだけど絶対ロクな人間じゃないよね)」

僕は周りに気づかれない程度の小さなため息を吐きお爺さんのリズムに合わしていく。









「(ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ)」


酒場で気分良くピトー(お爺さんの楽器の名前)をかき鳴らし、小僧の困った顔も拝めた。

そのあとヒョロ男とお嬢ちゃんをからかい酒の肴にして楽しく飲めた。

今日はなんてい〜日なんだ。明日も楽しみだとベットに寝転び寝て、偶々起きてみりゃ〜なんじゃなんじゃ、小僧がおもしれーことやってんじゃねーかい。

日頃の身体強化の完成度から見て相当な魔法術の腕前じゃと予想しておったが間違いじゃなかったて訳じゃな〜。

漂ってるだけの色とりどりの綺麗な蝶。ありゃ見ただけじゃ大したことなさそうにじゃが絶対にロクな魔法術じゃね〜の。

儂の勘がやばいと言っとる。性悪な性能しとると言っとる。

それに聞こえはせんが小僧のやつ儂の魔法術の発動方法を再現できとるぞ。

気付いとるかどうかは知らんが周りの蝶が一定のリズムで少し揺らめいとる。

防音でこっちには音と魔力がこんせいで儂には効果の判別はできんがそのおかげで儂がこんな事をしてもわからんじゃろ〜て。


「『search echo』『catch echo』」


隣の部屋に魔術を発動させてお嬢ちゃんの状態を調べるてみての。

ふぅ〜〜む。ふむふむ。ほぉ〜〜。

わかったぞ。安堵や鎮静系の精神バフじゃの。

方向操作は完璧、魔力の調整とコントロールは神がかっとるの。コントロールはまず間違いなく儂より上じゃな。

こりゃ〜詳細な範囲にもよるが結構な事態になりそうじゃな。

まぁバフがかかった者らはこれまでの人生で一番の快眠ができるじゃろうがの。

まったくあの時の儂の勘は間違っとらんかったの〜。実に面白い小僧じゃ。











正午過ぎほどまで演奏を続けたところでお爺さんは曲を終わらせる方向に弾き始めた。

どういう風に演奏していくかは互いに演奏をしながら主導権を奪いあい、奪った方が先導していくという方法だ。

今回のは僕も結構疲れて終わりたいけど終わらせ方がわからないので素直にお爺さんに主導権を渡した。



お爺さんは曲を弾き終わると周りの街の人達に手を振ってから頭に手を当てて頭を下げた。

そのまま終わりなのかと思っていたら、お爺さんは頭に置いていた手を地面に置いて土でできたシルクハットを上下逆の状態で生み出した。

街の人達はそのお爺さんの行動の意味を一間開けて理解したのか、笑い出して僕たちに歓声と拍手、そしてお金を投げ飛ばしてきた。

お爺さんは頭を下げたまま数秒程街の人達からお金やらを貰うと頭を上げて土のシルクハットと周辺に散らばったお金を拾い、シルクハットに入らなかった分は僕に拾わせた。

お爺さんは目線で僕に拾ったお金をばらまけと伝えてきたので僕は手に持っているお金をまたばらまく。

お爺さんは楽器を強く弾いてから、広場近くにある酒場を指差すとスタコラと広場に背を向けて小走りで走り出した。

僕もそれを追いかけて広場から離れたけど、後ろからものすごい叫び声が上っている。

多分今日一日はずっとあの調子で騒いで行くんだろうね。



お爺さんは広場から少しだけ離れた場所にある屋台の前でサンドイッチみたいなものを食べながら僕を待っていた。


「お爺さん僕のを買ってくれててもよかったんじゃない?一人だけそんなもの食べてさ」


お爺さんは僕が追いついたことに今気づいたかの様な反応をしてから食いかけの、もう半分も残っていないサンドイッチを僕に渡してきた。

白々しいお爺さんだ。

このお爺さんが僕が声をかけるまで僕に気づかないなんて絶対にありえない。


「食いかけはいらないよお爺さん。

さっき貰ったお金を少しちょうだい、それで新しいのを買うよ」


そうするとお爺さんはシルクハットの三分の一くらいを僕に渡していた。

流石お爺さんさりげなく三分の二を自分のものにしようとしてくる。


「お爺さん ここで分配を済ますつもりなら半分はもらうからね」

ポンポロロンロン


〜訳〜

「可愛げのない奴じゃ」

〜終〜


お爺さんはため息をついてからシルクハットを僕に投げつけてきた。


ポパラララン パラン パラパララン ポロン

ポポロンロンロン


〜役〜

「半分は今回の報酬で、もう半分は免許皆伝の祝金じゃ。特別に小僧にやるわい」

〜終〜


お爺さんはそう僕に伝えると宿の方向に向かってスタスタ歩いて行った。

いきなりの事で聞きたい事がかなりあるけど、一応僕は合格したって事なんだろう。

「(よくわからないお爺さんだね)」

お爺さんの後ろ姿を見送った後僕は中身が全て金貨に変わった土のシルクハットから小金貨を一枚取り出して、それ以外をアイテム袋にしまった。

数えていないから正確にどれくらいあるかわからないけど街の中で抱えて移動するのはダメだろうと思うくらいの価値は絶対にある。

さりげなくとんでもないことをしていかないで欲しい。心臓に悪いから。



カチッ

「すみません。サンドイッチを四個お願いします。」


まぁ使い道云々やお爺さん達との合流の前に僕もお腹が空いてるから取り敢えず屋台でサンドイッチを食べて腹ごしらえをしようと思います。










北両同盟王国のある場所


ゲボォッ!!ガァハッ! ハァッ!ハァっ!

オォゥェーー ベチャベチャベチャ ヒューッ 

ヒューッ があああああー!!!! \\\\\\\・\・€+]…×」・%×$*|々=[°々×」=々=


「おい、やばそうな奴には手当てをしてやれ」

「はっ!!」


あいも変わらず酷いもんだ。

一年前から何も変わっちゃいねーな。汚物と男どもで埋め尽くされた地面に一人だけ何もなかったかの様に立つ一人の少女。

まぁ一年前の場合は倒れている男どもは全員瀕死で音すら立てれていなかった事を考えればいくらかマシになっている。


「一年前と変わってねーなオフェリア。」

「ディエゴか、お前の方も相変わらず平凡そのものといった中年男のままだな」

「おいおい、いきなり俺の一族のコンプレックスを突いてくんなよオフェリア。最初の祖先から気にしてんだから。」


「それでどうしたんだ。後数ヶ月ほどは部隊の練兵をしておけと言ったのはディエゴ、お前だろ」

「おう!それなんだがな予定変更だ。

今から城塞都市ドルケストに向かって中天帝国との戦争に参加することになった。

んでそのためにお前さんを呼ぶためにわざわざ【命の境界線】付近のこんな辺境まで来たってわけだ」


「なんだと、闘争なら最初からそう言え。すぐに準備をして今日中に出発するぞディエゴ」

「いやいやどー見てもお前の部下達には休息がいるだろうがよ。それに今回俺とオフェリアは援軍って扱いだかんな。

あちらの総大将ディーノ・ツェッペリン・セルズ・ベル・ディミトリアとそのお目付役のジョナン・ディオ・トゥルウ・ベル・ドルケストの指揮下に入るからそのつもりでな」


一応軍に関わる事だから名前を紹介してみたが、オフェリアがちゃんとわかってくれるとは思っていなかった。しかし意外にもオフェリアは俺の出した名前に反応する。


「ディミトリアとドルケスト?

つまり【死穿のディミトリ】【砂城のドルケス】の末裔ということか」

「ほぉ〜流石に北領同盟王国生まれなだけあって

五大英傑のことは知っているのか。ちなみに全員知ってるのか?」


「ん?多分言えるぞ。

さっき挙げた二人に【英雄王バナージ】【戯壊のチュニチュル】だな。それと………ぁ〜〜確か。

【熱血のホノルル】?だな」


「惜しいな 【鉄血のホノルル】だ。ついでにいうなら俺のご先祖様だぞ。」

「そうか惜しかったな。ふむ【鉄血のホノルル】か。こいつだけは特に語り継がれる武勇伝がなくてな、正確に記憶していなかった。

「あんまりそこんとこ弄らないでくれ。一族全員が気にしてんだからよ。」



そうは言ったもののオフェリアは特に気にした風はない。

悪気があるとか無いとか関係なく単純に、本当に覚えていなかったんだろうなこいつは。

実際五人の中で唯一地道に武功を重ねて名をあげて行った人だからな、一番地味ではあるだろうけどよ。

コンプレックスについて考えている俺を無視してオフェリアは話を進めていく。


「お目付役がついている者を二人同じ戦場に送るということはそういう意図があるの思っていいのだなディエゴ?」


「(戦闘脳の癖に相変わらずそっち関係にも頭が働くようだな)」

「意図も何も援軍って言ってんだろ?

兵力差三万はきついだろうからって暇な俺達に声が掛かったってだけだと思うぜ。


「……………まぁいい。久しぶりの命揺れる戦場だ。

存分に楽しませてもらうとしよう」


「(まさに【氷の女帝】と言った笑みだな。

ただ単純な戦いへの期待か、絶対強者としての余裕か、それとも全く別の感情から来るものかは俺にはわかんねーが体の芯から震え上がりそうな表情だ。

自然界のヒエラルキートップの獣によく似た雰囲気だってのによ、なんとも美しいもんだな。

こういう奴が英雄ってのなんだろうぜ。

年甲斐もなく妬いちまうってもんだ。)」



オフェリアは話は終わったとばかりに俺から視線を外すとすぐさま周りに指示を飛ばし始めた。


「休憩は取れたなお前たち!!

ならすぐに行軍の準備に取り掛かれ!!!」


「おいおいさっきも言っただろうが、出発は明日以降だ。それに会戦も早くて二ヶ月後だ、急いでドルケストに行く必要はねーぜ」


「いや後一ヶ月ほどで始まるぞ」

「根拠はあるのか?」

「私の勘だ。絶対では無いが理由としては十分だろう?」

「…はぁ、わかったが兵たちは今日一日は動けんだろう。」


俺がオフェリアを諭すように周りを指差してそう言うと、オフェリアは何を言っているんだ?と言う目で見てくる。


「私はこれくらいで動けなくなる様な柔な訓練はしていないぞディエゴ」


逆に周りを指差してオフェリアはそう俺に言ってくる。

俺はまさかと思い、周りを見てみれば信じられない光景があった。



今にも崩れ落ちてしまいそうになりながら、オフェリアの兵達は立ち上がり行軍の準備を始めていた。

さっきまで呻き声や嘔吐物を吐いていた奴らがだ。

治療にあたらせていた俺の私兵達もこの光景にただただ驚いている。


「さぁディエゴ。今日中にここを発ち、一ヶ月以内にドルケストに到着するぞ。」

「……ハァ。しゃーねーな。俺の言うことなんて聞くはずねーよなお前はよう。

俺の兵達に告げる!!!!!!

今日中にここを発ち、一ヶ月以内にドルケストに向かう!!!。お前達はオフェリアの兵達をフォローしつつ迅速に行軍の準備を完了させろ!!!!!!!!

復唱!!!!!!!!!」


「「「「ハッ!!!今日中にここを発ち、一ヶ月以内にドルケストに到着!!!


「さぁディエゴ。今日中にここを発ち、一ヶ月以内にドルケストに到着するぞ。」

「……ハァ。しゃーねーな。俺の言うことなんて聞くはずねーよなお前はよう。

俺の兵達に告げる!!!!!!

今日中にここを発ち、一ヶ月以内にドルケストに向かう!!!!!!!

お前達はオフェリアの兵達をフォローしつつ迅速に行軍の準備を完了させろ!!!!!!!!

復唱!!!!!!!!!」


「「「「ハッ!!!

今日中にここを発ち、一ヶ月以内にドルケストに到着。我々はオフェリア軍兵士達の手当てなどのフォローをしつつ迅速に我が軍の行軍準備完了させます!!」


我ながらよく訓練された部下だと感心する。しかしオフェリアは。


「やはり【熱血】の方が似合っていると私は思うぞディエゴ」

「うっせい。【鉄血】つってんだろーが!」


「(まったくもって俺みたいな平凡な男にはこの嬢ちゃんは荷が重いぜ)」


少しでもいいなと思っていただければ幸いです

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