旅は騒がしく
桜が綺麗な季節になりましたね。
一応この世界にもサクラぽいものはあるんですが、登場はいつになるんでしょうね
コンッコンッコンッ
「マーリン起きていますか?」
その声で僕は意識を覚醒させる。
目を開け返事をしようとした僕の目の前すぐそこには可愛い女の子の顔があった。
ルーリィの顔だ。「(なんでこんなに近いの?)」
体勢も抱きしめ合う形になっているし服も互いに乱れてる。
「(僕何にもしてないよね!?何もやましい事やってないよね!?)」
「マーリン寝ているのですか?入りますよ」
「す、少し まってシェーラ母さん起きてるから!」
ガチャ
「起きているなら早く身支度を整えましょう
……………………マーリンどういう状況ですか?」
「シェーラ母さん言い分を聞いて欲しいです。
僕は何もしてません。ただ普通に一緒のベットで寝ただけだです」
「………………嘘ではありませんね。(そうなるとルーリィですね。あとで結論を聞いておいた方が良さそうです)
それならまずはルーリィを起こしましょう。
今はそうしなければ話が進みません」
シェーラ母さんはベッドに近づいてルーリィの耳元に口を寄せて僕に聞こえない声で何かを話した
するとルーリィはすぐに起きて
「まってシェーラ母さん!!」
そう叫んだ。
何かよくわからないけどシェーラ母さんはルーリィの秘密を握っているんだと思う。
少しかわいそうだけど助かった。
「ほらルーリィ少し落ち着いて。
まずはベッドから出よう。そうした方が話が早いと思うんだ」
「あっマーリン兄さん。」
ルーリィは今の状況を理解し落ち着いた様だけど
何故か少しだけ顔が赤くなり、体が更に近づく。
シェーラ母さんはその反応を見て、時間がかかると判断したのか後ろからルーリィの肩を叩いて
「ルーリィ。マーリンにはやらないといけないことがあります。その邪魔をしてはいけませんよ」
ルーリィはそこでシェーラ母さんの存在を思い出した様で、少し残念そうな顔をしながら僕から離れてベッドを降りた。
ルーリィの雰囲気が昨日と少しだけ違う様に感じるけどそれがなんなのかよくわからない。
「ではマーリン、リビングで待っていますから準備をしてから来てくださいね」
「マーリン兄さんまた後でね」
「うんすぐに行くよ」
二人が部屋から出ると僕も急いで身支度を始めていく。とは言っても作ってもらった服を着て、用意していた鞄を背負うだけなんだけどね。
ちなみにパームさんから貰ったアイテム袋は鞄の中にちゃんと入れてる。
長い髪も簡単に紐で一つにまとめる。
身支度終了。
リビングに着くとエル父さんとシェーラ母さん、上着を羽織っているルーリィがいた。
「おはようみんな」
「「「おはようマーリン(兄さん)」」」
「マーリンここで一応予定を四人で共有しておくぞ。
マーリンはこのまま【深緑の森】の南端に向かってもらい八星都市の一つ 城塞都市ドルケストに向かってもらう。
そして自分で正確に戦場がどこになるかの情報を集めてもらい、その上で戦争の視察 観察 考察をしてもらう。
情報の集め方は全てマーリンの自由だ。
戦場に到達できなかった場合は王都の教育施設へ行くことも考慮される。
ここまでで質問はあるか?」
「いつぐらいに起きるかも教えて貰えないの?
城塞都市まで普通に行ったら二ヶ月以上はかかると思うんだけど」
「両国ともに準備に時間がかかっている。
大樹でのことでまだ世界情勢は不安定だからな。それにあちらは前回のデ・ディバルド攻めの傷が残っている。三ヶ月ほどは猶予があるだろう。」
「ドルケストまでの移動手段も自由なの?」
「自由だ。私とルートがフルーベンスに行く際に使用した【ランガル便】(走ることに特化した小型の竜。それを動力にした馬車みたいなもの)でもいいし【ボート】(魔法術を使った乗り物)でもいい。勿論それらを使わず歩いて向かってもいい」
「大体分かったよ。戦場を記録した後は真っ直ぐ王都に迎えばいいの?」
「いや戦場を記録した後は〔立生の節〕(三月)までに衛星四都市の一つ【リューセン】で私達と合流して、王都に向かう。
丁度王都に着いたときには祝福の儀を受けられる様になっているだろうから、祝福の儀を受けてから試験と謁見をする。」
「うんわかったよエル父さん」
「そうか。ならもうそろそろ日も昇る時間だろう。見送りはさせてもらうぞ」
「ちょっとだけ恥ずかしいけどね」
そうして僕たち四人は村の門まで移動した。
まだ日も顔を出していないこの時間村の殆どの人たちは寝ている。起きているのは母親たちぐらいだとろう。
そんなわけで静かに僕は村を出発する。
改めて何か言うのは気恥ずかしいので手短に
「それじゃちょっと行ってくるよ」
「マーリン戦争に関わる必要はない。ただ見てくるだけでいい。無茶はするな」
「またリューセンで会いましょう」
「またねマーリン兄さん」
「行って来ます」
空は今ようやく明るくなり始めてる。
後数分で太陽はその姿を露わにするだろう。
予想よりも早い親元からの旅立ち、二十歳ところか十二歳にすらなっていない。
それでも悪くはないと僕は思うだよ神くんよっちゃん。
目指すは城塞都市ドルケスト。
できる限り歩いて行くとしますかね。
〜エル父さんのざっくりとした説明〜
北領同盟王国の主要都市は十三都市
八星都市と衛星四都市と王都
国の中心にある王都フィルヴァーン
王都を中心としてほぼ正八角形の位置にある八星都市。八角形の辺を真上に置いた向き。
上から時計回りで
フルートゥル
ディミトリア
フルーベンス
ドルケスト
ホノルルティ
チュニチュルト
フルーバル
フルーラック
名前にフルーがついていない都市は全て城塞都市であり、そこで活躍した過去の英雄の名前が付けられている。
王都と八星都市の間にあり、王都と八星都市の二都市を繋いで大文字のYとする。そのYの中心に一都市とし、四つできるYそれぞれの中心付近に存在する四都市を衛星四都市と呼ぶ。
上から時計回りに
ザパック
リューセン
マルケル
アリウム
これは建国当時の四大部族の部族名であり、今でも四大公爵の本拠になっている。
ちなみに八星都市は全て侯爵か辺境伯の本拠
〜終わり〜
どーもマーリンです。
今僕は城塞都市ドルケストに向けて旅をしているよ。
空は晴れていて季節的にも花々が咲き誇っている。鳥や虫の鳴き声が旅の雰囲気を明るくしてくれる。
ポロロロン ポロン バンバンッ ポロロポロ
僕の背中の方からは熟練の楽士の音色が聞こえてくるしで、そこだけを切り取ればとても良い旅の初日だ。
僕は鞄を背負い木剣を腰にさしていて、これは今日の朝のまま変わらない。
しかし今僕は身長的に不釣り合いな大きさの背負子を背負い、その背負子には無邪気に撥弦楽器を演奏し続ける白髪白髭のお爺さんが座っている。
つまりは僕がお爺さんを担いで運んでいるわけだね。
「お爺さん本当に目的地はドルケストなんだよね?今更違うって言われても僕戻れないからね」
ポンポロロッポロポロポロポポッロ バンッポ
バンッポ パンパラポロロパロ
全然話し聞いてくれないよこのお爺さん。
僕はため息を吐き出しながら一歩一歩歩いていく。
「(なんでこんなことになっちゃったのかな)」
事の起こりは今から三時間ほど遡る
村を出発した僕はある程度整備された道を進んでいった。
この国は元々が別々の集団が寄り集まって成立した国であり、一つの国として纏るために色々な政策が建国当時になされた。
その政策の一つに全ての生活コミュニティーを道で繋げるということものだ。
そのためこの国は時間はかかるけど道をなぞる様に進めば目的のところにつけるようになっている。道が途中で途切れると言うことはまずない。
朝から身体強化をした状態での徒歩移動を続けて三つの村を超えて来た。
身体強化のおかげで荷物を持ったまま五時間歩いても疲れは殆どない。
でもお腹は空いてくるもので、太陽の日差しが強くなって来た事もあり昼ごはんを食べることにした。
流石に道の真ん中で座り込み昼ご飯を食べたりはしないよ。
僕は道から少し外れて休憩ができそうなスペースを探し、魔術で少しだけ環境を整えてから荷物を置いて座り込んだ。
「ここまでなるべく自然なペースで歩いて来だけどかなり良いんじゃないかな?
今日は徒歩移動をして間に合いそうになかったら、ランガルやボートを利用する考えだったけどこのままなら徒歩でも二ヶ月くらいでドルケストに付けるね。」
僕は地面に僕の生まれた村とフルーベンス ドルケストを書き込みながら今後の予定を考える。
三つの距離感は鋭角三十度の定規を使って説明できる。九十度の角に僕の村、六十度の角にフルーベンス。三十度の角にドスゲストという配置だ。
数年前にエル父さんとルート兄さん、マエルがフルーベンスに行った時はランガルに隣村で乗り三日ほどでフルーベンスについたらしい。
ランガルは車と同じくらいかそれ以上のスピードが出せる生き物である。
「僕もランガルに乗れば一週間くらいでドルケストには着けるけど、ランガルは結構お金が掛かるんだよね。それにドルケストに早くついても宿泊代やら情報収集やらでお金はかかるから、出来る限り徒歩で移動したほうがいいよね」
僕は持って来ていたパンと干し肉を食べながら、今の所持金とドルケストについてから情報収集にかかる時間、お金などを見積もっていく。
GiaaGiaa GiaaGiaa GiaaGiaa GiaaGiaa
ガラガガッガガガガカガカッッガココバキガカガ
そんなのんびり過ごしている僕を全力で邪魔しにかかってきているとしか思えない騒音が僕の通って来た道の方から聞こえてくる。
GiaaGiaa GiaaGiaa GiaaGiaa GiaaGiaa
ガラガガッガガガガカガカッッガココバキガカガ
Baja Baja Baja Baja Baja Baja Baja Baja Baja
ポンポロポンポロポンポロポンポロポンポロポン
無視しようにもドンドン音が近づいてきて、さらにしっちゃかめっちゃかな音楽とかして僕の思考を邪魔してくる。
流石に僕も我慢できなくなり音の発生源の方に目を向けるとよくわからないものが目に写った。
太ったダチョウに見えるポップスという比較的メジャーな移動手段の鳥がめちゃくちゃな走り方で走りながら泣き喚き、そのポップスに繋がっている台車は見る影もなく壊れていて今は板になっている。
そして激しく揺れる板の上で器用に座り込み、呑気に撥弦楽器を弾いているお爺さん。
それら追いかけている大きな蜥蜴。
なんとも奇妙な一団が僕の方に近づいてきていた。
僕はその光景に頭が真っ白になってしまいただぼ〜っと眺めていることしかできない。
その一団はどんどん僕の休んでいるところに近づいてきて、近づいてきて、たどり着いて 横切って 通り過ぎて 通り過ぎっていった。
それを見送った後ようやく頭が働き始めた僕は、お爺さんを助けたほうがいいという結論にたどり着き、急いで荷物をまとめ走り出した。
そして少し走ったところでボロボロの板に座り込み楽しそうに音楽を奏でているお爺さんを発見したけど、状況的に見てどうやら置いていかれたらしい。
とにかくお爺さんから事情を教えてもらって今後の対応を決めようと思い声をかける。
「お爺さん大丈夫?怪我はしてない?」
ポロポンポロロッパロポロパロロッツパララポロ
「おーい!お爺さん聞こえてますかーーー!?」
ポンポロポンポロポンポロポンポロポンポロポン
ポロポンポロロッパロポロパロロッツパララポロ
「きーこーえーまーすーかー!!!!!!!」
ポッン
お爺さんはようやく演奏を止めて僕の方を見てくれた。
「やっと気付いてくれたねお爺さん。怪我はない?」
「・・・・・・・・・・・・」
お爺さんは僕の顔を見た後辺りを見回してまた僕を見て首を傾げた。
いやいや状況がわからないのは僕も同じなんだけど。
「ちょっと身体触るよお爺さん」
一応断りを入れたけど理解できていない様子のお爺さん。でも暴れたりはしないし慣れている感じもする。
「怪我とかはないみたいだね。それでお爺さんはどこに行こうとしてたの?
流石にここに置いていくほど僕は冷たくないよ」
「・・・・・・・・・・・・・」
耳が聞こえないのかな?
でも楽器を弾けてるしね。そうなると声を出せないのかな?
するとお爺さんは地面に字を書いていく。
「(北領同盟王国の文字だ。えぇ〜っとなになに
[ドルケスト]ってそれだけ!?)」
「お爺さんドルケストに行きたいの?」
ポロロンポロロンポロロンポロロンポロロン
「お爺さん?」
ポロロンポロロンポロロンポロロンポロロン
お爺さんは楽器の演奏を再開して僕の言葉に反応してくれなくなった。
確証はないけど目的地は同じくだし、置いていかないとも言ってしまったため、僕はお爺さんを途中までは連れていくしかない。
近くの木を魔術で加工して背負子をつくり、お爺さんを乗せてから持ち上げて、担いで歩く。
お爺さんは全く動じることなく陽気な音楽を垂れ流し続けた。
そして時は戻る。というか進む。
「おーいお爺さん、次の村か街に着いたらそこで休むからね。それでいい」
パンパラパンパンパンパラパンパンパラポロロン
「いいってことだよね?」
ポロロンポロッポロロンパララ
いいのか悪いのか全然わからない。
仕草とかをしてくれたら意思を読み取ることができるんだけど、お爺さんは背負子に座ってからというもの唯々撥弦楽器をかき鳴らし続けるだけだ。
普通なら座る位置を変えたりして動くはずなんだけどね。お爺さんは指と腕以外一切動かさない。
そんな理由もありお爺さんを背負って歩き続けることには全くストレスや疲労はないんだけど、道をすれ違う人からの視線がきつい。
心配されたり笑われたり応援されたりととても恥ずかしいんだ。
お爺さんはそれに構わず演奏を続けるのでさらに目立つ。
「(お爺さんもう四時間くらい連続で演奏してるのに全く止める気配がしないよ)」
太陽ももう沈み始めた頃ようやく次の村に到着した。
ここでお爺さんの事について色々と聞いてみて、何もわからなかったらお爺さんを乗り物に乗せてドルケストまでそのまま行ってもらう事にしよう。
僕はそう考えをまとめて村の中に入っていった。
村長に挨拶をし、一軒一軒家を回ってどうにか小屋を貸してもらえる事になった。
お爺さんの事は聞いて回ってみたもののなんの情報も得ることが出来なかったよ。
というわけで明日の朝この村で何かの乗り物に乗せる事で決定。
肝心のお爺さんは晩飯を食った途端ぐうすか寝出して今もいびきをかいて眠っている。
「(何者なんだろうねこのお爺さんは?)」
僕の一人旅一日目はこんな感じで終わった。
少しでもいいなと思っていただければ幸いです




