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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
五節 手放す平穏
39/129

親の思い子の思い

エルヴィンス戦決着です

カァッン!!


あれから数分ほどエル父さんと打ち合っているが、戦いの流れはエル父さんへと移りつつあった。

魔法術 剣の腕 読み合い 武器性能で上をいっているのは僕で間違いない。

このユグドラシルから貰った木剣は流石に性能がいい、とは言っても本当の刀身は木で覆ってるんだけどね。

軽すぎず重すぎず何より硬い。

木でできているものの今のところ傷がついたりということもなく、鉱物でできたエル父さんの剣の方がダメージを受けている。

剣の間合いも木剣を成長させることで自在に操れ、それに加えて木の魔力伝達効率が非常に良くて使い勝手がとても良い。



だというのに僕が押され始めている。

それにはいくつか理由があるんだけど、簡単に言ってしまうと戦闘経験の差だと思う。

過去の戦闘による戦い方のバリエーションの多さや第六感みたいな勘という部分で僕はエル父さんに翻弄されている。


思考を巡らす僕を邪魔する様に、『迷わせ誘う幻想蝶の群れ』を薙ぎ払うついでとばかりに土の刃入りの嵐が僕目掛けて飛んできた。


ズォォズガガガガガガガガ


土の刃入りの嵐を避けながらエル父さんに接近して木剣を打ち込んでいく。


カァッン!ガン!ガン!


数合打ち合うとエル父さんの岩の剣にはヒビが入る。しかしエル父さんはその剣でさらに打ち込んできて、タイミングを見計らいヒビの入った剣自体を細かな土の刃に変える。

そして土の刃は勢いのまま僕に向かって飛んできて浅く僕の体に突き刺さり、エル父さんはまた地面に刺さっている土の剣を掴む。

この攻撃は土の刃に変わるで動作に違いが無いため事前に察知し回避することが難しい。

「スルーシー』ですぐに治る傷しか出来ないものの痛いものは痛く、少しだけ動きが鈍くなってしまう。それが幾度も積み重なり少しずつ流れを持っていかれ始めた。

勿論僕も流れを取り戻そうといくつか手は打ってみたんだけど、どれもギリギリ防がれてしまう。

余裕があるのは間違いなく僕の方だけど、勝ちに近いのはエル父さんという具合になっている。

"あいつ"との時とは真逆だ。







〜エルヴィンス〜


今現在の戦況は私が優勢だ。

マーリンの木剣は予想以上に性能が良く、私の岩の剣を数合でダメにしてくる。

勿論木剣にはめだった外相は付いていない。

このままではどのみち私が負けると感じた私はそこで一つの賭けに出た。

それはそこまで余裕のない魔力をさらに消費して、マーリンとの打ち合いの際に岩の木剣に『崩れてなる土の刃』を使用し細かな刃を飛ばして攻撃するというものだ。

この方法は岩の剣で打ち付ける場合と土の刃を飛ばす場合での動作の違いが全くない。

そのためマーリンが避けることは難しい筈だ。



結果として私の予想した通りマーリンは完全に避けることが出来ず少しずつダメージを負っていく。傷自体はすぐに『スルーシー』で回復されていくが行動にほんの少しの隙を作ることには成功し、その隙をつくようにして流れを引き寄せることが出来た。

しかし代償として『崩れてなる土の刃』と、この魔術により消費速度が上がった岩の剣の生成でかなりの魔力を使ってしまっている。

加えてマーリンの反撃の数々。

『アズライール』の目が突然赤く輝き出したと思ったらデバフの強さが一〜二段上がった。

精神異常系全てのデバフ防御では防御性能が追いつかなくなり、私は昏睡や気絶などの即時戦闘不能になる精神異常系デバフのみにデバフ防御を絞りデバフ解除の感覚を少しだけ開けた。

それによりどうにか乗り切ることには成功したものの不安や恐怖、思考妨害を受けるようになり、筋力低下などの身体的な異変に耐える時間が増えかなり辛いものがある。

そのほかにも木剣のリーチが伸びたり、木剣を地面にさして周りの植物を操ったりなどの攻撃をされたが紙一重というところで耐えきった。

だがもう三分も持たずして私の魔力は枯渇する。


「(勝負をかけるなら今か)」




「『暴風の大綱』よ、弾けろ。『咲き乱れる無数の刃』」


私がそう言葉を発すると『暴風の大綱』は圧縮していた風を周りへと放出した。その風に乗るようにして細かな土の刃も放出されていく。

それらは『迷わせ誘う幻想蝶の群れ』の殆どを消滅させ、私とマーリンにも襲いかかってくる。



マーリンは即座に反応して魔術を編み上げ土の刃を防いだ。

「(流石だな、だが今回に限っては悪手だマーリン)」

私は土の刃を防ぐことはせずにマーリンが防御の魔術を編み上げる為に動きを止めた一瞬を狙い、『咲き乱れる無数の刃』の座標を固定した。


岩の剣はマーリンと私を取り囲むように生成され、『アズライール』にも数本剣が刺さった。

『アズライール』は攻撃が当たっても消えはしないが形が修復されるまで能力が低下することはこれまでの戦闘で仮説が立っている。

ついでに言うなら私の魔力も後十秒ほどしか持たない。

私は右手に持っている剣を牽制でマーリンに投げながら左手で先ほど生成した岩の剣を掴み更に距離を縮めていく。






〜マーリン〜



攻防と攻防の隙間、その一瞬の静寂を破るようにエル父さんは行動に出た。


「『暴風の大綱』よ、弾けろ。『咲き乱れる無数の刃』」


エル父さんが声に出して詠唱をした。

前にも話したことがあると思うが通常実力者になるほど声に出して詠唱することはない。する場合があるとすれば相手がわからない言語を使ったりする場合。今回で言えばこの可能性はない。エル父さん達はほとんどの言語を僕たちに叩き込んだ張本人なのだから。

もう一つ実力者が声に出して詠唱する理由があるとすれば脅しやハッタリ、牽制など相手に反応してほしい場合だけ。

それだけの事をわかっているのに僕の意識は咄嗟に『迷わせ誘う幻想蝶の群れ』を消して回っている高密度の風の方に向いてしまった。

そしてそのタイミングで風は解放されて土の刃が四方八方に飛び散りほとんどの『迷わせ誘う幻想蝶の群れ』が消滅した。

そして土の刃は僕にも襲いかかってくる。

それを僕は風魔術で防御をしてしまった。

僕は視線をエル父さんに戻しながら、自分が既に後手に回らざる得ない状況に追い込まれていることを理解する。


ズドドドドドドドドドド!!!


僕とエル父さんを取り囲むように密集して剣の壁が形成され『アズライール』と『スルーシー』がひどく損傷した。修復に数秒かかるだろう。

エル父さんは僕に急速に接近しながら右手の剣を僕に投げ飛ばしてくる。


「(これで決着だね)」


そう心の中で呟くと、僕は手に持っている木剣を地面に突き刺し飛んできた剣を掴んで構えた。

剣の出来としては木剣と比べるのすら憚られるほど低い岩の剣ではあるが、今回はこの剣を使う。

エル父さんも左手で岩の剣を拾っている。

エル父さんの目には僕が岩の剣を使うことへの困惑の色が写っているものの、動きを止めることなく僕に剣を振り下ろしてくる。

僕も足を前に出して迎撃する。


ガン!!ガン!ガキィィン!!


場所を入れ替え都合三度打ち合う。

勢い 力 スピードで劣り 技を生かす空間は少なく、読み合いが入る隙間はほぼない。

そうなれば必然的に僕が押されて、同じ岩の剣でも僕の持っている方が早くに寿命が来るのが必然だ。


僕の手にしている岩の剣には目でわかるほどのヒビが入り次の一合も持たないことは明らか。

エル父さんがそのことに気づかないはずがない。

僕が地面に刺さっている木剣を抜こうと後退した所を容赦なく追撃してくる。

僕は後ろに引かせた右足を地面に刺さっている木剣に当て踏ん張りがわりにしそのまま右足を蹴る。

これで動揺してくれたら儲けものだったんだけどエル父さんに驚きはない。

「(まぁ予想通りではあるんだけどね)」

動きが鈍ることなくお互いの剣が衝突しようとした瞬間。


「『崩れてなるは土の刃』」


"僕が"そう詠唱すると手にしている岩の剣は細かな無数の刃に変わる。

そして剣を振っていた時の勢いそのままにエル父さんめがけて飛んでいく。

そしてこのままエル父さんが刃を回避し、姿勢が崩れたところでエル父さんの軸足を払い僕が勝つ予定だったんだけど、エル父さんは顔に刃が直撃しているにもかかわらず剣を振り下ろしてきた。

その予想外のエル父さんの行動に反応が遅れた僕は咄嗟に回避したものの体勢が崩れお尻を地面につけてしまう。

肩にはエル父さんの剣先が置かれている。

もうどうしようもない。


「僕の負けだよエル父さん。」

「私の勝利だなマーリン」


なんともあっけない負け方だ。

単に僕は覚悟で負けた。この勝負を軽く見てしまっていた僕の負け。

………自分の愚かさに涙が溢れてきちゃいそうだよ







〜エルヴィンス〜


私が投げた剣をマーリンが回避したところで一気に間合いを潰す。

その考えはすぐにマーリンによって覆された。

マーリンは木剣を地面に刺し、私が投げた剣を掴んで構えた。



私は困惑した。

「(意図が読めない。私を動揺させる為だけにしては武器の性能に差がありすぎる)」

表情に自身の困惑が浮き出ている事を自覚しながらも隠すことができなかった。

がしかし私には時間がない。仕切り直す余裕もあるはずがない。

私は心の中に疑問を残しながら行動を止めずマーリンに斬りかかる。


ガン!!ガン!ガキィイン!!


都合三度打ち合った結果マーリンの剣は限界を迎えた。

「(こうなる事はマーリンなら容易に想像できたはずだ。それでもなお岩の剣を選んだという事は正攻法で勝つつもりではない。)」

心に残した疑問について考えながらも視線はマーリンから外さない。



マーリンは自身の後ろにある木剣を取ろうと後退しようとする。

更に私の心の中の疑問は大きく膨れ上がり根拠の無い結論を導き出した。

それに従う様に私は直感のままに動きマーリンを追撃する。

マーリンは私の追撃に合わせるようにして木剣を踏ん張りのように使い迎撃してきた。

剣同士が衝突する一瞬前


「(崩れてなるは土の刃)」

「『崩れてなるは土の刃』」


私の心の中での発音とマーリンの詠唱が重なった。

マーリンの剣はその姿を無数の土の刃に変え私に襲いかかってくる。

回避はできるがしない。このまま剣を空振りする事を選択する。


トストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストストス


細かな刃を全身に受けながら剣をマーリン目掛けて振り切る。

マーリンの顔には普段戦いの最中には絶対に見せない動揺が浮かんでいた。

そしてマーリンは避けはしたものの体勢を崩し、そのまま私が剣先をマーリンの肩に乗せ勝利した。

綺麗な勝ち方ではない、むしろ泥臭い勝ち方だ。

内容を考えれば私の惨敗ですらある。


「僕の負けだよエル父さん」


マーリンがそう宣言してくれる。

その言葉を聞いて私は我慢できずにこう言ってしまった。


「私の勝利だなマーリン」


ああ…なんてカッコ悪いんだ。自分で納得できるような勝利じゃない。

だというのに私はマーリンに勝てたことを、息子に勝てた事を声に出して宣言してしまうほど嬉しいのだ。

「(全く…呆れてしまうほどに情けない男だ)」











お互いに動かずその場には勝負の後とは思えない不自然な静寂があった。僕もエル父さんも次の行動に移ろうとしないのだ。



「エル マーリン。自分の反省の前にまずは相手への礼が先ですよ。」


シェーラ母さんの声が聞こえた。

言葉の意味を飲み込むのに少しだけ時間を要し、涙を止めることができないままエル父さんの方を見る。

エル父さんの顔はとても勝者の顔には見えないほど暗い表情をしていた。

なんでエル父さんがそんな顔をしているのかがわからない僕はそのまま固まってしまう。

エル父さんの方も僕の顔を見て固まっている。



「これは試合だったのでしょう。なら試合が終わった後には相手への礼を示した後に検討をするなり傷の治療をするなりやる事はあるはずですよ」


シェーラ母さんは手のかかる子に言い聞かせるような調子で言葉をつなげていく。

言っていることは正しいだけに反論などはできない。

エル父さんの方は気持ちを切り替えるのに手間取っているようなので僕から始める。


「エル父さんありがとうございました。僕は覚悟が足りていなかったよ。僕の完敗です」

「いや私の方こそありがとうマーリン。内容で言えば私の惨敗だ。最後のは偶々だ」


「………?いやエル父さん。最後のは僕の覚悟不足による想定の甘さが原因だよ。それに結果として僕が負けているし、内容で言ってもエル父さんの勝ちだよ」

「………?いやマーリン。マーリンの行動はどれも合理的であり間違いはなかった。最後の一撃もわたしの勘が偶々当たっただけだ。マーリンに落ち度はない。」


「「……………???」」


僕とエル父さんは互いに見合いながら首を傾げている。そんな僕らを見かねたようにシェーラ母さんが間に入り


「まずは二人の戦いがどういう流れだったのかをそれぞれ個別に教えてもらえますか?」



僕とエル父さんはそれぞれ別に戦いの流れを説明していく。

両方の説明を聞いたシェーラ母さんは話を再開する。


「では二人に聞きますが、決定的に勝負の流れが決まったのはどこだと思いますか?」


「土の刃を防御したところ」

「マーリンと同じだ」


「そうですねわたしもそう思います。マーリンのした唯一のミスですね。これで戦いは短期決戦になりましたから、余裕のあったマーリンにはデメリットしかありません。

戦いの流れをそれぞれから聞きましたがマーリンの敗因は経験不足です。

『アズライール』やその木剣の能力で流れを覆せなかったことも、エルの詠唱に反応して行動が単純になったこともそれが原因です。

最後の奇策については問題ありませんよ。攻防の中で魔法術の模倣はとても困難なことですし、一対一ならなおさらです。

そしてエルの勝因も経験だと私は思いますよ。

先ほどマーリンに話したことと、最後のあの行動もエルには珍しい行動でしたがそこまで思い込むようなものではありません。

あの一瞬マーリンの読みをエルが超えたというだけの話です。」


「「………………………………。」」

「二人ともそんな顔しないでください。

変なところで強情になるんですから。

マーリンも涙を流している姿は赤ん坊の頃を除けば初めて見ましたよ。」


「////////シェーラ母さんそんな事は言葉に出さなくてもいいよ………//」

「ルーリィも呼んでこようかしら、お兄ちゃんの貴重なワンシーンですしね」


「ああああーもうわかったから!!僕の経験不足による負けなのは十分わかったから勘弁してよ」

「はいよく理解できてますね。いい子ですよマーリン。それともうそろそろルーリィが様子を見にくると思いますから顔を洗ってきた方がいいですよ」

「ありがとうシェーラ母さん」


僕はルーリィが来る前に急いで外にある水場に走った。








「エル大丈夫ですか?」

「あぁもう大丈夫だ。シェーラのおかげで助かった。」


「マーリンはとても強いですよ。この前わたしと戦った時も決め手に欠けただけで戦いの流れを握っていたのはマーリンですから。

そのマーリンに勝ったエルの事を羨ましく思いますよ」

「………そうだな。私も父親として、一人の剣士としてマーリンに勝てた事が素直に嬉しい。

綺麗な勝ち方ではないがそれでも嬉しいんだ。」


「それでいいと思います」

「ありがとうシェーラ。愛してる」

「わたしもエルを愛していますよ」







マーリン兄さんを呼びに行ったシェーラ母さんが戻ってこないので様子を見に来たら、目の前で小説のワンシーンの様な光景があった。


「///////なんでこんな事になってるの?」


このエル父さんとシェーラ母さんのその姿をわたしは生涯忘れる事がないと思う。、



えーマーリンの負けです。

当初はマーリンが勝つだろうと自分の中で予想しながら描いていたのですが、書いている途中から「あれ?このままだとエルヴィンスが勝つのでは」となり、気がついた時にはエルヴィンスが勝っていました。

作者としても驚きのある一戦でした。

勝敗や戦いの流れについてご意見ございましたらお待ちしています。質問があったものは全部答えるつもりです。

少しでもいいなと思っていただければ幸いです

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