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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
四節 一時の日常
33/129

乙女の初恋

ここからやっと北領同盟王国の話にしていく予定です

わたしはルーリィ。いまは六歳でもうすぐ七歳になる。

エル父さんやシェーラ母さん、マーリン兄さんと暮らしてる。

この村から遠く離れた北領同盟王国の王都にルート兄さんがいて、手紙を時々くれる。


ついさっき冒険者を見送り、わたしはやることがないので手紙のお返事を書くことにした。

けど全く手が進んでいかない。

きっとさっきの出来事のせいだと思う。



アンジュさんがみんなの前でマーリン兄さんにやった【乙女の初恋】がどうしても頭から離れてくれない。普通はわたしも周りのみんなみたいにはしゃいだりすれば良いんだとはわかっているけど全くそんな気分になれない。

むしろモヤモヤしてしまう。



【乙女の初恋】とは、女性が初恋の相手に行う一種のおまじないみたいなものである。

北領同盟王国内ではかなり有名なおまじないで、殆どの人が知っている常識。

マーリン兄さんは何が何だかわかっていなかったけど、マーリン兄さんは基本的に自分から気にならないと記憶から呼び起こさない人だから仕方ない。

話自体は聞いたことがあると思うけど、興味がなくてわすれてしまったんだと思う。


【乙女の初恋】のやり方は簡単で、自分の左人差し指で自分の唇に触れた後に初恋の相手の口をその指で塞ぐ。そして自分だけが別れの挨拶をして別れると言うもの。


【乙女の初恋】の起源は、北領同盟王国初代国王の長女コーデリア・フィルヴァーニアと護国の英雄ディミトリとの恋愛話からきている。

恋愛話に入る前にこの国の歴史についてわたしがエル父さんから聞かされた範囲で少しだけ説明しておく。

その方が恋愛話に入りやすいから。



この北領同盟王国の初代国王バナージ・フィルヴァーニアは元々ゲオルグ正教法皇国の将軍だった。

その時には北領同盟王国と言う国もなく、現在北領同盟王国がある場所には国というもの自体がなかった。

数えきれない少数部族がそれぞれの土地を支配していたらしい。

そんな状態ならすぐにゲオルグ正教法皇国やエルフに征服されそうにも思うけど、そうはならなかったみたい。

理由としては人の手が全く入っていない厳しい自然環境。

そして圧倒的に武力において少数部族が強かったかららしい。


初代国王バナージ・フィルヴァーニア(長いのでバナージに省略します)そんな土地を征服するための北方統一総大将であったが、元々バナージはゲオルグ教に不信感を持っていたらしくそれが原因で同じような問題のある者達を押し付けられる形で北方統一総大将に任命された。

さっきも説明した様に北方統一はこの時代不可能とされていて、簡単に言うと死刑宣告をバナージはされた様なものだった。

だけどバナージは少数部族と争うのではなく、同盟を組んで行った。

その工程にも様々な出来事があるけどここでは省略。

そしてバナージは最大部族全てと血縁を結び、勢力順に貴族階級を作り北領同盟王国を建国した。



そして本題のコーデリア姫とディミトリの話。

そんな歴史を持つ北領同盟王国なのでゲオルグ正教法皇国やエルフその他の国から猛烈な攻撃を建設当初は受けた。

ゲオルグ正教法皇国と戦いでは逆に北領同盟王国が押し返す勢いで圧勝していったけど、エルフについてはそうもいかなかった。

エルフの国との戦いでは【命の境界線】や【深緑の森】の為、間にある平地が主戦場となったが、それまで少数部族としてのゲリラ戦法で戦ってきてきた為に砦というものが北領同盟王国にはなかった。

もちろんエルフ側にはある。

そのせいでエルフとの戦いは思うように進まなかった。

そこでバナージは膨大な犠牲を覚悟で砦の建設を決断した。

その時の総大将となったのが当時バナージが最も信頼していた将軍ディミトリ。


ディミトリは元々小部族からの一般の兵として軍に入り、実力で将軍にまで上り詰めた人。

コーデリア姫とは年が近いと言うことでよく遊び相手にされていたらしく(建設当初は規律が緩かったらしい)コーデリア姫はディミトリに恋をしていった。

ディミトリが砦建設に出立する前夜、コーデリア姫はディミトリの元を訪れた。


想いを告げる行為はかえってディミトリの心に隙を作ると考えたコーデリア姫はせめてもと人差し指に想いを込めてディミトリに送り、

返事を返しにくる為に会えることを願って相手に別れを告げさせずに一方的に見送る言葉を告げた


ディミトリはエルフとの苛烈な戦いに勝利し砦を完成させた。この戦い後エルフと争う回数は激減していきこの戦いでディミトリは【護国の英雄】と呼ばれるようになった。

ディミトリはこの功績が認められる大将軍になり、

王に褒美としてコーデリア姫と婚姻を要求したと言う。(これには諸説あり、コーデリア姫がそうなるように手を回したとか、王が気を利かせたとか色々ある。真実は定かではない)



このお話は細部は少しずつ違うけど北領同盟王国でよく寝物語に聞かされるもので、その後このこと引用する人が続出して【乙女の初恋】として定着していった。

説明が長くなっちゃったけどこんな感じ。



みんながニヤニヤしていたのもこう言う理由があるもので、あれを見たこの国の人ならほぼ全員、アンジュさんがマーリン兄さんに告白したと理解できる。肝心のマーリン兄さんは理解していなかったけどいつかはその意味を知ると思う。



その時のマーリン兄さんはどんな顔をするんだろう?

わたしはどんな顔をして欲しいんだろう?

なんでわたしは喜んで欲しくないんだろうか?


まだわたしには何でこんな風に思うのかはわからないけど、マーリン兄さんはわたしと一緒にいて欲しいと思う。

わたしはマーリン兄さんにはずっとそばにいて欲しいとそう願ってしまう。













僕はアンジュ達が出発した後にすぐエル父さん達に何でそんなにニヤニヤしているのかの理由を問い詰めた。

みんなニヤニヤするだけで全然教えてくれない。

シェーラ母さんに聞いたらなんでかわからないけど物凄く褒められた。さっぱり意味がわからない。

ルーリィに聞こうとしたら、ものすごく不機嫌な顔で拗ねられた。意味がわからないよ。



僕は理由を知ることを諦めて、数日前にルート兄さんから届いた手紙の返事を書くことにした。

その後に森に木を切りに行くことにしよう。

「(あれ?僕もう木こりになっちゃってない?まぁ大丈夫だよね)」



ルート兄さんからの手紙はわかりやすく訳すと


久しぶりみんな。

手紙を出すのが遅れてごめんなさい

そっちはもうすぐ収穫祭だよね、色々と問題が起きてることは王都でも噂になってるよ。

僕も今王都になれるのに苦戦しています。

人が溢れているし、物も溢れてる。

村とは全然何もかもが大きく違っていて手間どうばかりです。

手紙を出すのが遅れたのも、手紙を出すための手続きに時間がかかったからなんだ。


教育施設、こっちでは学園って呼ばれてるけど、学園の方でも驚いたことがいっぱいあったよ。

書庫の本は自由に呼んでいいし、生徒は食事が無料である程度のものなら学園内に売っているんだ。

僕としては逆に窮屈に感じてしまうけど頑張って慣れていくよ。

あとシェーラ母さんのーーーーーーーーーーーがーーーーーーーーー、ーーーーーーーーーーーーーーーーーーなんだよ。(シェーラ母さんが塗り消していた)

また手紙を送るからね。



こんな感じだった。

僕も収穫祭の事や冒険者の事。地獄の稽古の事。

ついさっきの事などを書いた。

きっとルート兄さんなら教えてくれるはずだ。

僕は書いた手紙を引き出しにしまってから、片付けをしているエル父さん達のところに向かった。

この村では基本、月に数度くる配達人に手紙を渡して届けてもらうことになっている。

配達人は国家役人職。給料はいい方。

その時にルーリィを見かけたけど、うーんと手紙を見て唸っていたのでそっとしておくことにした。



家の外では村の大人総出で清掃をしている。

食べ物の食べかすやら、酒ビン、嘔吐物、などなどゴミが散らばりまくっている。

大人達の半数がまだ酔っている状態なので毎年清掃にはかなり苦労しているみたいだ。

エル父さんやシェーラ母さんは毎年全く酔ってなく元気いっぱいなので大活躍している。

今もエル父さんは野外に出されている椅子や机を何個も担いで歩いている。


「エル父さん何か手伝うことはある?」

「マーリンか、いや問題ない。昨日は私の我儘を聞いてもらったからな、今日は自由に過ごしてくれ。マーリン分の売り上げも私が一旦預かって夜に渡すから安心していい。

あとシェーラがマーリンを読んでいたぞ」

「ありがとうエル父さん。じゃあシェーラ母さんのところに寄ったら森に入ってくるね。」

「くれぐれも気を付けてな」


僕はエル父さんと別れシェーラ母さんを探す。

シェーラ母さんは毎年売り上げの計算を任されているから村長の家にいると思う。

村長の家に歩いて向かっていると、女性陣から愛の鞭を受けながら働く二日酔いの男達を多く見かけた。毎年の光景ではあるけど、何回見ても哀れに思ってしまう。


村長の家では予想通りシェーラ母さんがものすごいスピードで仕事をしていた。

村の幹部達に指示を出し、手元の書類やらを高速で片付けていっている。


「シェーラ母さん!僕を呼んでるってエル父さんに聞いたんだけど?」

「ああマーリンですね。呼び出してしまう形になってごめんなさい。

昨日の収穫祭で服を作るのにとても適した素材を手に入れましたので、前に話した服作りの件を進めていくことになりました。

服についての要望があれば聞いておこうと思いまして。」

「スカートとかじゃなかったらなんでもいいよ」

「スカートはダメなんですか?」

「ダメ」


「ふふふ冗談ですよ。わかりました、要件はそれだけですが聞いておきたいことはありますか?」

「いつぐらいに仕上がる?」


「そうですね、マーリンが祝福の儀を受ける時には間に合うと思いますよ」

「そんなに大変なんだね。面倒くさかったら無理する必要はないよ?」


「ふふ優しいですね。ですが大丈夫ですよ。

少し凝った服を作りたくなったのでそれくらい時間がかかるだけなんです。つまりただのわたしの我儘なんですよ」

「じゃあそれでお願いするよ。あと何でルーリィが不機嫌なのかわからない?」

「わかりますが教えませんよ」


これ以上仕事の邪魔をするのは気が引けるので会話も短めに村長の家から出た。

今の時間は午後の二時半くらい、森には入れる時間なので入ることにする。

家に道具類と真剣(ダンさんに新しく打ってもらった)を取りに帰ると、ルーリィはルート兄さんへの返事を書いている真っ最中だった。

もう不機嫌そうではなかったのでよかった。

邪魔をしないように静かに家を出た。




二十分ほどで一昨日に最後に切った木のところに着いたのだけれど、そこにはいつもの無表情な女の子ではなく、いかにも怒ってますよと言った感じの女の子がいた。

「(あぁ〜そういえば最初にあった日から僕が来なかったことなかったからね。昨日ずっと待ってたのかな?」


「ごめんね、昨日は収穫祭で来れなかったんだ」


女の子はまだ怒った表情のままだ。

僕は仕方なく女の子が座っている切り株の前で正座をし、言い訳を開始した。

約一時間をかけてどうにか昨日来れなかった理由を説明し終え、女の子の機嫌は少しだけマシになった。


「(今日は女の子の機嫌をとる日だな)」


女の子は今正座をしている僕の頭をくしゃくしゃにしながら遊んでる。

その顔は上機嫌そのものでさっきまでのふくれっ面が嘘みたいだ。


今日はもう木こりの仕事は出来そうにないな〜と考えながら、正座による足のしびれを全力で無視する。

一時間正座しっぱなしというのは流石に辛い。

もうそろそろたっていいですか?という視線を向ければ、女の子はその視線を受け止めてくれるものの無視して僕の頭で遊ぶ。

このままでいろということなんだろう。



名前も知らない女の子に頭を触られているというとても不思議なシチュエーションに今僕はいる。

最初のうちはただ頭を触っているだけだった女の子は徐々に僕の反応に合わせるようにしてこそばゆい所や気持ちがいい撫で方をしてくる。

「(意外とやるよこの女の子!)」

そんなことを思ってしまうくらいに女の子の僕の頭を撫でる技量はどんどん上がっていく。



ビクンッ!


女の子の雰囲気がいきなり変わった。

僕は女の子の表情を確認すると、信じられない事が起きて驚いているという表情だ。

女の子は北の方角を向いて数秒停止したのち静かに立ち上がり、僕の頭をひと撫でして森の奥へと消えていった。


「なんだったんだろ?」


僕は女の子が消えた後木々の隙間から空を見上げて正座を崩した。

そこには木々のざわめきだけがあり、僕は足のしびれが収まるまでその静かな音を聞いてから村に戻った。





それから数日は何事もなくいつも通りの生活を送った。女の子も何事もなかったかのように僕を案内してくれた。

そんなある日、世界情勢を揺るがす大事件の報がこの辺境の村にまで届いた。


大陸の北端にある大山脈【命の境界線】の支配者

ランクSSS 四龍神の一角【ノーブルファブニール】が消滅

討伐者は一名、二十歳にもならぬ少女だという。



ルーリィの扱いにかなり悩んでます。どうしましょうか?


少しでもいいなと思っていただければ幸いです

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