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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
四節 一時の日常
32/129

出会いは偶然から、別れは必然のもとに

また少し長くなりました。


祭りの翌日


時間は正午くらい、村の入り口で冒険者たち見送るために村の住人が集まっていた。

見送る側つまり僕たちの方には、昨日祭りに参加した人達も混ざっている。



というのも、祭りが終わったのは今日の午前三時程であるからだ。

酒でべろんべろんになっていた人達は皆外で数時間の睡眠をとり午前十時くらいに目を覚ましてきた。

冒険者たちもその時間に起きてきたので、出発の準備が完了したのが正午だ。

普通こういうのは朝方に出発するものなんだけど、まぁ仕方ないよね。



パームさんとシーカさんはベテラン冒険者達と熱いハグをして別れを惜しんでいる。

「(あの二人はこれから大丈夫なのかな?)」


他にも村の人達と簡単な挨拶をしたり、村長から依頼達成報告書を貰ってる。

ヒムさんはこの村の人じゃ無い女の人と何かを話していた。多分昨日一緒に過ごした人だと思う。

ヒムさんがその人と別れたところで喋りかけてみた。


「ヒムさんさっきの人は?」

「うぅん?あぁ〜マーリンくんですかい。

それを聞くのは野暮ってもんじゃないですかね」


「結構綺麗な人だったね」

「ヘッヘッヘマーリンくんたちほどじゃありやせんがね」


「僕の名前は余計だよ。それよりも普通はこんなにみんな名残惜しそうに別れるものなの?」


「いやいや〜普通はスッパリと別れるもんですぜ。

冒険者としては数ある依頼の中の一つでしかなく、依頼主からしたら金を持っていく奴らでしかないですからね。ただ今回は期間が長くて、祭りの後。

そうなりゃ思うところもあるだろうって話ですよ」

「なるほどね。結構な思い出ができたもんね」


「へへへへ確かにあの稽古は忘れないでしょうねぇ。強くはなれやしたが、いかんせん厳しやしやすからね。

おっとこんな話をしてやしたらあっちからアストくんとサリお嬢ちゃんが一緒に歩いてきやしたね。……マーリンくん気づきやしたか?」

「昨日までとは違って距離が近づいてるね。

それにアストの顔がウザい顔になってるよ。」


「流石はマーリンくん気づいてやしたね。

ありゃ大人の階段を二人とも登りやしたね。

想い合っているのは分かってやしたからそこまで驚きはしやせんが」



二人は僕たちに気がつくと近づいてくる。二人の表情はそれぞれ違い、アストは誇らしげに、サリさんは恥ずかしげだ。

ヒムさんはいつもの調子で喋りかける


「へへへっへお二人とも昨日は楽しめた様で安心しやしたぜぇ。」


アストとサリさんはバレている事に驚いている。

あれで隠せているつもりだったのかな?


「まっ まーな!」

「……,///////」


アストは開き直っているが、サリさんはさらに顔を赤くして下を向いている。

「(なんか初々しいなー。前世の僕の初めてはこんな感じじゃなかったんだけどな〜」

前世で一応経験はあるもののこんな良い感じではなかった。ただただ疲労感と精神的疲労で疲れたという印象しか残っていない。


ヒムさんはそんな二人の反応にさらに茶々を入れて楽しんでいく。


「へへへへお二人ともそんな照れる事じゃありやせんぜ。

真面目な話、いつ死ぬかわからない冒険者やってるんですから通じ合えるうちにやっておかないと後悔しやすぜ」

「……///もう!あまりからかわないでくださいヒムさん!!!」


「おおっとこいつは失礼を。」

「まあまあサリそんなに怒んなって」

「うぅー大体こんなに遅くなったのはアストがヘタレなせいなんですからね////」

「おいサリ!それは言わなくても良いだろ!」


そんな感じで痴話喧嘩へと移行していく。

ヒムさんは声を出さずに笑いそれを眺めている。

僕も微笑ましいなーと思いながら見ていたんだけど、後ろから声をかけられた。


「アハヨウゴザイマス。マーリンクン」

「うぇっ!お おはようホット。どうしたの?

表情が死んでるよ」


ホットは僕の顔を見るとどんどんと泣きそうな顔になっていく。というか泣き出した。マジ泣きである。


「ウッグゔっゔうぅぅぅぅ」


嗚咽や鼻水などを必死にぬぐいながら泣き続けるホットにヒムさんやアスト、サリさんも気がつき何があったのかを問いかける。


「うっう! ギノォオ ゲッホゲッホ!!

バノバァドッじどおりべ」


という感じで何を言っているのかよく分からない説明を根気よく聞き、大体の事情を把握することができた。



なんでも昨日僕たちと別れて一人で収穫祭を楽しんでいたらしい。

ホットは北領同盟王国東側の辺境出身らしく、この村の収穫祭ほど大きなイベントは初めてだったそうだ。

そんなわけで割りかしちゃんと楽しめていたらしく、お酒を片手にぶらぶらしていたらしい。

ここまでは平和だ。

ところがぶらぶらしているうちに村の年寄り連中の飲み会の中に入ってしまっていたらしく、そこで大量にお酒を飲まされ朝起きたら五十歳くらい(前世基準)裸の女性と同じベッドで寝ていたらしい。もちろんホットも裸で部屋には生臭い香り。

ホットは慌てて服を着て部屋を飛び出してきたらしい。


これには僕やヒムさん、そして幸せ絶頂のアストやサリさんも何を言って良いかわからなかった。

ヒムさんはホットの肩に手を置いて


「ホットくん、気を強く持つんだよ。

覚えていないならそれは君の初めてじゃない。

フルーベンスに着いたらあっしの奢りで良いところに連れて行ってあげやすからね。」

「そっそうだぜホット!元気出せって!」


それを聞いてもホットは俯いたままだった。

というかどんどんと暗くなっていっている。

「(これってもしかして)」


「ねぇホット、答えたくなかったら答えなくても良いんだけどさ。もしかして覚えてる?」

ビグンッ!!


それで全てがわかってしまった。

何というかご愁傷様としか言えない。

離れたところからこちらというかホットを見ている、妙に肌がツヤツヤしているおばさんがいる。

多分あのおばさんがホットの言っている人なんだろう。

僕とヒムさん アストはその人を見てさらにホットに向ける憐れみの情を強くした。

サリさんはどうにか元気を出させようとしているが、こういう話には疎いのだろう何と慰めたら良いかわからない様であたふたしている。


ヒムさんとアストが僕の肩を掴んできた。

表情を見ると、どうやら僕が慰めてやれということらしい。「(んな無茶な難易度が高すぎだよ)」と思ったものの、ホットがかわいそうだと思っているのは本当なので一応挑戦はしてみる。


「ホット 確かにホットの初めては容易には消せない深い傷になってしまったかもしれない。

いやごめん、なったと思う。僕ならなる。

でも諦めたらダメだよ。

まだ君にはその傷を埋めてくれる人と出会う可能性があるんだからね。

最初がアレな分、幸せがより明確にわかる様になっていると思う。まだホットは若いんだから諦めたらダメだよ」


う〜〜ん。自分でもどうなのかと思う励ましだけど仕方がないと思う。アレは無理だよ。

下手に慰めてめんどくさいことになるのも嫌だしね。

ホットは泣いたままで、「うん」と返事をした。

一応成功はしたらしい。一安心しているとアンジュさんがきた。

お酒は完全に抜けた様でいつもと同じ様子だった。


「あはよう。昨日はありがとうマーリン。

私を部屋まで運んでくれたんだろう。

すまなかったな、あんなに楽しい夜は初めてだったんだ。」



アンジュさんがそう言った瞬間にヒムさん アスト

サリさん 俯いていたホットも僕の顔を見てきた。

僕はその視線を無視して、アンジュさんとの会話を使って自然な形で誤解を解こうとした。

ここで変に言い訳をすると話がややこしくなるからね。


「おはようアンジュさん。昨日のことなら気にしなくても良いよ。アンジュさんが酔いつぶれて寝ちゃったのをただ宿まで運んだだけだからね」


これでアンジュさんがお酒を飲んで楽しくお話ししただけだということと、運んだだけで何も無かったですよということを主張しておく。

四人も視線に込められた力を抜けていった。

これで一安心と思ったんだけど、そうはいかない。

アンジュさんは寂しそうな顔をしてから


「昨日の様にアンジュとは呼んでくれないのか?」


などと聞いてくる。何だろう素面の時にそんな表情でそんなことを言われると昨日とは違った破壊力がある。

これには四人とも驚いてアンジュと僕の顔を交互に見ている。

流石にここでしらを切るとアンジュに申し訳ないので


「あはは…ごめんなさい。昨日アンジュは酔ってたからね、あの時のことを覚えてないかもって思って念のためにそう読んだんだ」

「口調の方も昨日と同じで良い。

確かに私は酔っていたがちゃんと全部覚えている。

マーリンは会話が上手くてとても楽しかった事や、私を抱えて宿まで運んでくれたこともな」


「起きてたんだあの時、言ってくれたらよかったのに」

「すまないな、意識はあったがはっきりとはしていなかったんだ」

「じゃあ仕方ないね」


二人で昨日の続きの様な会話をしているとヒムさんとアスト、ホットが僕を引っ張って話を中断させてきた。


「何するんだよ」

「いーや何をしてるんだって言いたいのはこっちだよ!どーゆーことだよ」

「へへ確かに聞きたいですねぇこれは。何もなかったってことはわかりやしたがねぇ、納得できないことがありやすよ」

「僕が地獄にいる間にマーリン君はアンジュさんとの仲を深めてたんだね」


「そんなんじゃないよ三人とも!それとホットは怖いからやめて。」

「じゃあどーいう事なんだよ!あのアンジュさんがあんな優しい感じになってる理由を教えろ」

「アンジュはただ口下手なだけで元からあんな感じだよ!」

「ほーそれは良いことを聞きやしたねー」


そう言うとヒムさんはアンジュに近づいて話しかける。


「へっへっアンジュの嬢ちゃん、あっしらも長い付き合いですしアンジュって呼んで良いですかねぇ〜」

「急にどうしたんだ。あとお前にそう呼ばれると背に嫌な汗が出るからやめてくれ」

「へ…へへ了解でさ〜アンジュの嬢ちゃん」


ヒムさんはこちらに戻ってきて僕の肩を掴んで揺さぶってきた。


「どう言うことですか〜〜マ〜リ〜ンく〜ん!!

全然話と違うじゃね〜〜ですかよ〜〜」


ブン!ブン!ブン!


「いや さっきのは ヒムさん の顔に 問題が ある よ!」


「そうだぜヒムさん、さっきのヒムさんの顔は性犯罪者の顔だったぜ。

こー言うのは自然にいくもんなんだよ」


「ほー言うじゃないですかアスト君。

昨日まで〇〇だった男とは思えませんねぇ」

「うっせ!〇〇じゃなかったよもともと!!」


アストは気づいていないが、サリさんの表情が恐ろしいことになっている。


「んじゃ二人共しっかりと俺の勇姿を見てろよな!」


アストはサリさんの表情に気づかないままアンジュは話しかける。


「なあアンジュさん。俺もマーリンみたいにアンジュって呼んでも良いですか?」


「アスト、その前にお前はサリに何かしたのか?

さっきからかなり怒っている様に見えるのだが」


アストはゆっくりとサリさんの方を向く。そしてサリさんの顔を見た途端にアンジュとの会話を中断してサリさんの下へと走った。


「違うんだサリ!!!」

「何がですか?」

「えっえぇ〜っとあれだ!!全部だ!!」

「〇〇じゃないことですか?

私の目の前でアンジュさんを口説こうとしていたことですか?」

「ごめんなさい!!許してください」


アストは必死に言い訳をしているけどあれは簡単には許してくれないだろうね。

馬鹿な男と書いてアストと読む感じの男だね、アストは。


「ヘッヘッヘざまーないですねアストくんは。

さてさて流れ的にはホットくんが行くところですがどうしやす?」

「行ってくるよ。名前を呼ぶ許可をもらうだけだからね」

「流石ホットくんわかってやすね」


ホットはさっきまでの暗い雰囲気を押し込めてからいつもの調子でアンジュに近づいていく。

さっきの馬鹿騒ぎで振り切れてきたんだろう、よかった。


「おはようございますアンジュさん。

アンジュさんはマーリン君と仲が良かったんですね。全然気付きませんでした」

「ああおはようホット。

偶々会う機会が多くてな、仲が良くなったんだ」


「そんなですね。さっきは驚きましたよ。

僕もアンジュって呼んで良いですか?

フルーベンスまで話すこともあるでしょうし」

「ああ私もホットについて驚いたことがあってだな。ついさっき村の婦人から果物をホットに渡す様に言われたんだ。いつのまに仲良くなったんだ。」


「……………………………コッホ。」

「おいどうしたんだホットいきなり膝をついて

顔色も悪いぞ。体調が悪いなら村長に相談してホットは休んだのち出発することにしても構わないが」


「それだけはやめてください。大丈夫です。

僕は一刻も早くフルーベンスに行きたいんです」


「そうかそれなら構わないが」

「はい。ちょっと厠に行ってきます。

すぐに戻りますから置いていかないでください」


そしてホットは厠に走っていった。

運がなかったんだよホット、頑張って。

と心の中でエールを送っておいた。


「ホットは行ってしまったが、もうそろそろ出発の時間だ。やり残したことがない様にな。」


アンジュさんはそう言って村の入り口の方へと歩いていく。

アスト達も荷物を持って各人移動しはじめた。

村の入り口にはもうかなりの冒険者が荷物を持って待機している。

ここに集まっていないのは、パームさんとシーカさんの友人とホットだけだ。

エル父さん達も見送りに来ていたようでなにやら話し込んでいる。



数分後には全ての冒険者が集まった。

村長は一人一人顔と名前を確認していく。

これをしっかりしていないと後で困る原因になるため、大規模な依頼ほど丁寧に事後確認をするのが常識なんだとか。

村長の確認が終わると冒険者達はそれぞれの目的地に向かって出発していく。

アンジュ達五人はフルーベンスのギルドでパーティ登録をしているので五人でフルーベンスに向かうとのことだった。


「じゃあなマーリン!!

また機会があったら会おうぜ!!」

「じゃあねアスト。サリさんに迷惑かけたらダメだよ」

「余計なお世話だって〜の」


「それではマーリン君お元気で。

アストについては私がしっかりするので大丈夫ですよ」

「あははアストはサリさんには頭が上がらなそうだね」


「マーリン君じゃあね。次会うときはちゃんとした冒険者になっているからね」

「元気出してねホット。良い出会いがあるよ」


「へっへへへそれではマーリンくん。

可愛らしさの足りない子供でしたよ」

「ヒムさんこそカッコ良さが足りない大人だね」

「可愛げないですね〜〜本当」


ホットもどうにか持ち直しているようで良かった。また会う機会があるかはわからないけど、また会えるような気がする四人ではあるんだよね。

その時までには僕も身長をもっと伸ばしておきたいな。


「マーリン 私ははマーリンに出会えて良かった。

私よりも圧倒的に強い年下がいるとは思っていなかった。それもジョブやスキルではなく純粋な技でな。

次会った時には私が勝つからな」

「僕もアンジュと会えて良かった。アンジュ程不器用なな人と会ったことがなかったからね。

次会った時は稽古じゃなくて昨日みたいに話せることを期待してるよ」

「マーリンらしいな。まぁそれも楽しみにしている。」


五人は僕やエル父さん、シェーラ母さんに別れを告げて歩き出した。

一ヶ月くらいの付き合いだけど、友達になったと僕は思ってる。

友達との別れはやっぱり寂しいね。

これも人生を歩んでいく上での刺激ではあるんだろうけど。



僕がエル父さん達の所に行こうアンジュ達に背を向けると背後から声をかけられた。


「あぁマーリン少し良いか?」


アンジュの声だ。

「(そういえば"またね"とかを言い忘れてたっけ?)」

僕は振り向いてアンジュの方を見ると、アンジュはすでに僕の目の前に移動していた。


「どうッ………」


どうしたのかと聞こうとしたら、僕の口をアンジュが人差し指で閉じてきた。

僕が訳がわからずに固まっていると、アンジュは少しだけ顔を赤くしながら僕の目をじっと見つめて


「さようならだマーリン。

そしてまた会えると信じている。」


そう言うと指を僕から離してヒムさん達の方へと足早に向かっていった。

僕はなんと言えばいきなりのことに反応が遅れてしまい、結局別れの挨拶をすることができなかった。

アスト達が何か驚いた顔をしているけどその理由がさっぱりわからない?

流石にアンジュさんが別れの挨拶をして驚いているとかでは無いと思う。


「(じゃあなんなんだろう?あのアスト達の信じられない物を見たかの様な表情は?)」

アンジュさんはもうこちらを見ようとはしなかった。

僕は諦めてエル父さん達の方を見れば、エル父さんは感心した様な顔をしている。

シェーラ母さんは何故か満面の笑みで、ルーリィに至ってはかなり不機嫌そうな顔をしていた。

他の見送りの人たちも何故か僕を見ながらニヤニヤとしている。

「(いや、本当になんなの一体?)」


主人公のある物言いが気にくわない人もいると思います。それを考慮してもこれからの物語展開で必要になると思い書きました。

決して実は主人公は胸糞主人公オチでないです。

見捨てないであげてください!!



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