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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
四節 一時の日常
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長すぎる一日

稽古の後はみんなで簡単に昼食を食べている。


シェーラ母さんとルーリィ、エル父さん アンジュさんが作ってくれていたらしい。

僕もそっちに行きたかったよ。

ホットとサリさん、ヒムさんも仕事が終わった様子で僕たちのところに来た。

ホットとサリはアストに詰め寄ると何やら言い争いを始めて、アストをどこかに連れていかれる。


「なんなんだろ」

「へっへ 気にすることじゃありやせんぜマーリン君、

アスト君が午前の警備をサボってただけですよ」


「午後からは誰がやるの?」

「アンジュ嬢ちゃんですぜ」

「一人で?」

「そうですぜ、しかしそれでもちゃん警備できちまいやすからねアンジュ嬢ちゃんは」


「ここにいない他の冒険者は?」

「魔物の討伐と護衛ですね」

「みんなさっきまで暴れて疲れてるだろうに良く働けるよね」

「へっへへへそれはマーリン君もでしょうに」

「僕?」

「そりゃマーリン君にはノルマがあんでしょう?」


そういえばあった!

完全に今日はこのあと寝るつもりだったよ!

頭の中で残りの日にちとかを計算しても、今日休むわけにはいかないとしか結論が出なかった。


「へへへへへその様子じゃ休むわけにもいかなさそうですねぇマーリン君」

「はぁ〜〜。うん まぁそうだね。休むわけにも行かないし行ってくるよ」

「へっへっへへ頑張ってくだせえ」


僕は朝食を食べたあとルーリィやシェーラ母さん エル父さんと少しだけ話をしてから、準備をして森林に向かった。

アンジュさんとも互いにやることがあるということで今日の夜に再戦することにした。

もちろん僕はやらない方向に話を進めたけど、ダメだったよ。



そんなこんなでボコボコに歪んだ剣と木こりの仕事道具一式を持って昨日と同じ所らへんに来ている。

魔物も数体魔術で倒しながら来たため少しだけ時間がかかった。

今は午後ニ時くらいだと思う。

できれば六時前には帰りたいんだけどね、今日はどうなるかな。

すぐには使わない道具を昨日木を伐採して作った切り株の上に置こうと思い、記憶を辿りながら向かっていく。

切り株はすぐに見つかったが道具を置くことはできそうになかった。

昨日の彫刻品みたいな女の子がその切り株の上で寝ていたからだ。

一応僕は空間同調をしているから大体のことはわかるはずなんだけど、この女の子については目で認識するまで気づけなかった。



僕が不思議に思っていると女の子は目を覚ました様で、

ゆっくりと体を起こしていく。

何というか、その動作を写真で一枚一枚切り取ってみたら全てがそのまま美術品の様に見えるんだろうなと思うくらいに完成されたものだった。

そのまま女の子は僕の方に近付いてくる。

多分昨日と同じ感じになるんだと思い


「すまないけど昨日みたいには付き合えないよ。

今日は少しだけ時間がないんだ」


一応先に断っておくことにした。

言葉は北領同盟王国、あと指で光魔術を使い、現エルフ語の文字を書いていく。

この森にいるってことは多分どちらかに所属していると思うからこの二つを選んだわけなんだけど


「……………………?」


女の子は立ち止まり不思議そうに頭を傾げている。

意味が伝わらなかったのだろうか?

僕が他の言語で話しかけてみようと考えていると、女の子は僕と僕の持っている道具を見て納得した様に頷づいている。

そして僕の方にテクテクと近づいてきて包み込む様に僕の手を握った。

そこまで力は感じないのにしっかりと固定されている

体温はそんなに高くない様で少しだけひんやりするが、次第にほんの少しだけ暖かな体温が伝わってくる。

そしてそのまま僕の手を引く様にして、一本の木まで近づくと僕の方を見て女の子は頷いた。

多分触ってということだと思い、僕はその木をスキルで確認する。

間違いなく腐っていてる木だ。

「(木の状態を完全に把握できる?もしくはたまたま知っていた?)」


僕は女の子の顔を見ながらそんなことを考えていると

女の子の表情が少しだけ変化した。

さっき僕に頷いた時の表情は何処と無く自信ありげな顔に見えたのが、今は少しだけ不安そうな表情になっている。

とは言っても殆ど表情は変わっていないので、僕がそう思っているだけなんだけど。

そうしてしばらく観察していると女の子は木と僕を交互に見だした。

それを見て僕がまだお礼を言っていないことに気づき疑問はあるもののひとまず女の子にお礼を言うことにした。


「ありがとう 。この木は僕が探してた木だよ

君のおかげで探す手間が省けたよ」


すると女の子は安心した様で少しだけ微笑んだ。

この女の子のちゃんとした表情の変化を初めて見た。

とは言ってもとても控えめな笑みではあったけれど。

女の子は僕から少しだけ離れたところに移動して僕を見ている。

多分そのまま見ているということなんだと思う。

僕の方もさっさとやらなければいけないし、特に何かは言わずに伐採を始めていく。



その木を切り倒したとのは一時間半くらいたった頃だった。

フル強化をした状態でも斧で馬鹿でかい木を切り倒すのにはこれくらいかかってしまう。

魔法術でやろうと思えばスパッと倒せなくもないと思うけど、なんとなくそれはしたくない。

女の子は心なしか楽しそうに見える顔で僕の作業をずっと見ていた。


「そんなに面白い?」


僕がそう聞くと小さくうなづいて答えてくれる。

「(面白いなら別にいいか)」

僕は基本的にあちらから話してこないこと以外は聞いたりしない様にしている。話したくないことや考えたくないことは人間いくつかは持っているものだからね。

そんなわけで女の子自身については聞こうとは思わない。

気になりはするものの、知ってどうするというわけでもないしね。



女の子はぼくの作業が終わったことを確認すると近づいてきて僕の目を覗き込んでくる。

まだ探しているのかを聞いているんだと思うけど、出来れば言葉で伝えて欲しいとも思う。

毎回毎回顔をそんなに近づけられるとこっちが恥ずかしくなるからね。


「また案内してくれるの?」


女の子は頷きまた僕の手を握って歩いていく。

案内をしてくれるのは嬉しいけど、なんとなく森の奥の方向に向かっている様な気がしなくもない。

「(まぁ大丈夫だよね。)」

程なくしてまた一本の木の前で女の子は止まった。

その木も間違いなく僕が探している木だったので僕はお礼を言い、また作業を再開させていく。

女の子はまた少しだけ距離を取り僕を見ていた。



その木を切り倒した時には日はかなり傾いていて、もうそろそろ帰る時間になっていた。

女の子はまた僕の顔を覗き込んでくる。


「今日はありがとう。予定よりも早くに終わったよ」


僕は女の子に今日の作業は終わったことを伝えた。

女の子は頷いたが、そのまま僕を見続けてくる。

多分昨日と同じだろうと思いながら僕は女の子の気がすむまでじっとしていた。

女の子のおかげで探す手間がなかったのは本当だし、これくらいなら受け入れるべきだと思ったから何も言わずにそのままでいる。



数分で女の子は満足した様に頷いて森の奥に消えていった。

「(何者なのかなあの子は?

いつか教えてくれたら嬉しいんだけどね)」


僕は伐採した木を昨日と同じ方法で担いで村に帰った。



村に着いた後は伐採した木を倉庫の中に置いてから家に帰ると、すでに夕食はできている様でみんなが座って待っていてくれた。


「おかえりなさいマーリン」


シェーラ母さんが優しく微笑みながら僕を迎えてくれる。

やっと一日が終わったんだと思って椅子に座ったんだけどルーリィが大切な事を思い出させてくれた。


「おかえりなさいマーリン兄さん。

アンジュさんが夕食を食べたら村の空き地には来て欲しいって言ってたよ」

「…………あぁそういえばまだ僕には予定があったんだね。今日は一日がとても長く感じるよルーリィ」

「マーリン兄さん元気出して。

いつものマーリン兄さんからは考えられないくらいの暗い顔になってるよ」


そうは言われてもこればっかりはしょうがないと思う。

今日は朝から動きっぱなしでもう動きたくない。

もう今日はルーリィと一緒に本を読んだりしてダラダラしてたい。


「マーリンたまにはこんな一日も悪くはないものですよ」

「シェーラ母さんも一緒にくる?」

「いいえルーリィとお勉強をする予定です」

「エル父さんは?」

「安心しろマーリン、今日の夕方にまた誘いがあった。指定された場所は村の空き地だ。

…………………長い夜になる。覚悟はしておくことだ」

「エル父さんそんなことは聞きたくなかったよ。」

「ああマーリンならそういうだろうと思って、アンジュに場所を空き地にするように助言しておいた」


「っなんてことをしてるのエル父さん!僕はその地獄からの誘いに呼ばれてなかったんだね」

「あぁだがアンジュとの再戦を見られたら巻き込まれてしまうかもしれないな」

「巻き込むつもり満々だよねエル父さんそれ!」

「一人で全員を相手にするのは少し無理があるからな。

ルートがいればもう少しましなんだが、今は王都だから仕方がない」

「エル父さん。僕体調が悪くなってきたよ」

「私もだマーリン。あの人たちが一箇所に集まるとこういうことがよく起きる。

すまないが一緒に耐え切ろうマーリン」



エル父さんはとても澄んだ目をしていた。

過去に一体何があったんだろうか?

いや想像はできるんだけどね。

僕はエル父さんにこれ以上何かを言うことは出来ず、今日という日を受け入れることにした。

そうすると何故か気分が明るくなり、いつもと同じような表情であることができるようにもなった。

そしていつも当たり前に感じるこの楽しいひと時がより一層尊いものだと感じれるようになってくる。

僕はまた一つ成長することが出来たんだと実感した。



夕食後シェーラ母さんやルーリィと今日の出来事などを少し話してから(女の子の話は端折った)パームさんの家で行われる警備の打ち合わせに参加した。

簡単な打ち合わせが終わるとすぐに僕とエル父さんは警護されようにして空き地に連れていかれた。

そこでルール説明を受けて稽古が開始となった。



[建前]防衛強化日 [現実]エンドレス稽古


村の周りに一定の距離を置いて光と火の魔術で光源を置いていく。

そこに二人一組で警備をする。

その時に稽古をする事も可能である(しない事は不可)

ある程度満足(勝敗がつくと)空に向かって合図を送る。

全ての光源の場所から合図が上がると疲れた方が時計回りに一つ横の光源に移動していく(負けた方)

合図が全て揃うまでは稽古をしていて良いこととする

(合図が揃うまでは何回戦でもやっていい事。でも、敗者としてカウントするのは最初に負けた方)

これを朝日が昇るまで続けること。

今日に限り、参加したい人はローテーションを無視して警備に参加できることとする

朝同様魔法術とスキルの使用は不可、


以上が防衛強化日の概要とする



めんどくさく書いているけど、朝までエンドレス稽古ということだね。

アンジュさんは何をどう反応したらいいのかわからず混乱しているようだ。

アンジュさんも今日は僕と一戦だけして休むつもりだったのだろう。

パームさんとシーカさんは知り合いのベテラン冒険者達と盛り上がっている。

多分あの二人は若い頃はやんちゃな人だったんだろうね、などと考えながら最初の位置に移動していく。

最初はアンジュさんとだ。



「すまないマーリン、こんなことになってしまうとは思っていなかった。」

「これは仕方がないことだよ。アンジュさんの方こそ大丈夫なの?朝からあんまり休んでないんでしょ?」

「これくらいならまだ大丈夫だ。

寝ずに戦い続けるような依頼も数回こなしたことがある。」

「じゃあ問題ないね。僕の方も長時間集中して体を動かすのは得意なんだよ。

アンジュさんも気づいてると思うけど、このよくわからない防衛強化日は勝った人の方が楽をできる仕組みになっているからね。本気で勝たせてもらうよ」

「マーリンの集中力が異常な事は朝の稽古でよくわかってる。私の方こそ勝たせてもらう。」



結局今回もなんとか僕が勝つことができた。

そこから数回まではちゃんと記憶があるけど、パームさんやシーカさんが回ってきたりと色々あり、日が変わらないうちに体力が限界になった。

そこからは負ける事も多くなり、エル父さんとも戦った。戦わずに休めるかもしれないとも一瞬思ったけど、エル父さんの次はパームさんが待ち構えているとのことで互いに本気でやった。

結局フィジカルで押し切られて僕が負け、パームさんにエル父さんとの激闘で疲れているところを容赦なくボコボコにされた。

「(一切の容赦を感じなかったね。)」



そんな感じでずっと戦い続け、気がついたら朝になっていた。

流石に全員疲れ切っており、誰も何も言わずに寝床に帰って行く。

僕とエル父さんもなくなつた体力を振り絞りどうにか家の玄関までたどり着くことができた。

エル父さんはパームさんとシーカさんはじめ実力者にかなり狙われていた。あの人たちはわざと負けたりして回ってくるんだ。

僕も何回かやられてボロボロにされた。

そんなわけで僕たちは玄関に着くなり気を失うように

眠りに落ちてしまった。





目覚めると自分の部屋のベッドに寝かされていた。

窓の外に目を向けるともう昼頃になっているようだ。

まだ木を切りに行くのはできる時間で安心した。

毎日行かないとノルマ達成が厳しいんだよね。


「おはようマーリン兄さん。」


その声の方向を見るとルーリィがベッドの横に椅子を置いて座っており、開いたままの本を膝に起き僕の方は見ていた。


「おはようルーリィ。

ルーリィが僕をここに運んでくれたの?」

「そうだよマーリン兄さん。

朝起きてリビングに向かったら玄関に二人が倒れていてびっくりしたよ。エル父さんはシェーラ母さんが運んでいったよ」

「そんなんだありがとうね。重かったでしょ」

「ううんマーリン兄さんは軽かったよ」

「それはそれで反応に困るなぁ」

「ふふふマーリン兄さんは線が細いもんね」

「気にしてるんだから言わないでよ」

「ごめんなさいマーリン兄さん。もうリビングに行く?」

「ううんまだシェーラ母さんも昼食を用意できてないと思うから、もう少しのんびりしてようよ」


さっきスキルで確認したところ、あっちはあっちで盛り上がっているようなので少し時間をおいたほうがいいだろうな。四人目ができるかもしれないしね。


「じゃ じゃあ前みたいに ね、一緒に本を読んでもいい?」

「うんいいよ。おいで」


ルーリィが少し照れながら僕のベッドに入ってくる。

なんだかいけないことをしているような気もしなくはないけどまぁ問題ないよね。


「(今日は平和な一日になるといいな)」


そんなことを考えながらシェーラ母さんが呼びに来る一時間後までルーリィとゆっくりとした時間を過ごした。


少しでもいいなと思っていただければ幸いです

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