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【聖剣の大賢者】君の人生は面白い!〜少年はただ自由に生きる  作者: あっちこっち
三節 揺らぎの兆し
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見た目は女子で心は男子、その名は マーリン!

目を覚ましたのはマーリンの部屋、つまり僕の部屋だった。

窓からはこれでもかというほどの光が部屋に入り込んでいる。

エル父さんやルート兄さんの声、木剣の音は聞こえないが小鳥のさえずりが聞こえてきた。


「(うん朝かな多分。)」

朝の支度をしようとするけど全身が痛くて動けない 。

骨から痛いし、筋肉痛も酷い。思わず呻き声を上げてしまうくらいの激痛。

毛布から出ている体を見ると身体中に魔術刻印が描かれていた。

確か治療用魔術刻印だったと思う。よくわからないのもあるけど。

そしてうっすらとよく見なければ気づかない細かい傷跡が身体中に無数にあった。

あの大狼と戦ったのは夢じゃなかったみたいだ。



「確か僕が負けたんだよね。あんまり覚えてないけど」


かすかに覚えているのは三個の人影、立ち上がっている大狼、大狼とのちょっとしたやりとりくらい。

多分あの三個の人影はトムが呼んできてくれたんだろうな。


「マーリン起きたみたいですね」


シェーラ母さんが僕の寝ているベッドの横に座りながら話しかけてきた。

多分最初からいたのだと思うけど心臓に悪い。

僕が固まっているとシェーラ母さんは


「ふふふ元気そうで良かったですよマーリン。

貴方は三日ほど寝ていましたからね。

その間はわたしとルーリィがマーリンを観ていたんですよ」


「そんなんだ、僕はそんなに寝ていたんだね。

そういえばトムは無事に村に着いた?」


「はい。怪我はしていましたが、マーリンと比べると数倍はましな怪我でしたよ。」


「ねえシェーラ母さん、少し機嫌悪い?」


「ふふふそんなことはありませんよマーリン。

愛しい息子がやっと目を覚ましたんですから、嬉しくないわけがありません。」


「よ 良かった。ちょっとだけ言い回しがいつもよりもきつい気がしたんだよね。気のせいだったみたい。」


「えぇわたしはいつも通りですよ。」


「そうだよね。なら今ルーリィはリビングで一人で待ってるって事だろうから早く行こうよ」


「いいえ、マーリンはあと三日は自分ではベッドから動けませんよ」


「えっと なんで?」


「なんで?と言われても、体が動かないでしょう」


「身体強化を使えば大丈夫だよ」



シェーラ母さんの表情がほんの少しだけ暗くなったような気がする。気のせいかな、気のせいだよね。


「そういえばマーリンは日頃から身体強化を使い続けているのですか?わたしは魔力眼を持っていますが、常時発動させていないので。」


「うん一応毎日起きてる間は使っているよ」


「魔力循環量でいえばどれくらいですか?」


「そうだね、感覚的には限界値の二割から三割くらいかな。これくらいで筋肉痛とかがましになるから」


「魔力はどうしているのですか?

そこまでの量を確保できるようなスキルはなかったと思うのですが。備蓄を使うにしても毎日はできませんからね」


「えぇ〜っとそうだね、隠すことでもないからね。

説明がちょっと長くなるけどいいかな?」 


「はい構いませんよ。」



僕は大地から魔力を吸っていることを、スキルの使用方法等と一緒に話した。もちろんあの空間のことははぶいてね。

その説明を聞いたシェーラ母さんは深いため息をしてから納得した顔で僕を見ていた。


「なるほどよーやく納得できましたよ。

マーリンの魔力回路の限界循環量はマーリンの魔力生産量の十倍ほどですよね。

マーリンの魔力生産量は流石にわたしよりもは少ないですが年齢を考えるならばすさまじい量です。

その十倍もの魔力を少なくとも嵐狼との戦闘中ずっと維持出来ていたという理由がわからなかったのです。

それを《把握》《同調》というスキルでやっていたというのですから驚きましたよ。」


「僕の限界魔力循環量を完全に把握されていることに僕は驚いたよ。」 


「わたしたちの教育は普通ではありませんからね、教えられる側の事を普通よりもよく理解していなければいけないのですよ」  


「やっぱり普通じゃないんだね僕の家族は」


「普通の家族ですよ。すこし教育熱心なだけです」


なんだろういつもより簡単に会話で手玉に取られているように思う。

出来るだけ主導権を握りたいのに。



「そういえば今僕は身体強化を使っても大丈夫なの?」


「大丈夫ではありませんよ。マーリンは二週間から三週間魔力のコントロールや使用は認めません。」


「理由を聞いても大丈夫?」  


「はい大丈夫ですよ。もともと教えるつもりでしたからね。ふふふふマーリンしっかり聞いているのですよ」


こんな暗い微笑みをするシェーラ母さんは王都の教育施設の話をするときしか見たことがない。

そこから二十分ほど、理論整然と一切の反論の余地なく、逐一理解できているかの確認をされながら僕がなぜ魔力を使ってはいけないのかを説明された。


「わかりましたかマーリン」


その笑みはいつもの慈愛溢れる優しい笑みだった


「うん……十分に理解したよシェーラ母さん」

「ふふいい子ですねマーリン」


頭をなでなでされながら褒められた。

しかしふとした疑問がある。



「今の僕一人じゃ全然動かないんだけど、その色々とどうすればいいのかなぁ?」


「心配ありませんよ。わたしが介護をしますから」


「いやいやシェーラ母さんは家事とか教育者としての仕事とかあるよね」


「教育者の仕事はプリントの原稿を何十種類も用意して村長に渡しておきました。家事についてもその間はルーリィに観ていてもらいますから大丈夫ですよ。」 


「いや本当に微動だにできないんだよ僕」 


「わかっていますよ。そうなるように必要最低限しか魔術で治していませんから」 


「えっとなんで?」


「マーリンにはこれくらいのお仕置きが必要だと思いましたから」


シェーラ母さんの表情から本気でそう思っている事がよくわかった。


「この魔術刻印は?」

「治療用の刻印、負傷者に異常が起きたら瞬時にわかるようになっています。

あとは魔力封じの刻印ですね。コントロールもできないようになっていますよ。」


「トイレは」

「ここに出してもらいます。」

(瓶を片手に)


「固体の方は?」

「あちらに」

(壺を指差して)


「お風呂は?」

「わたしと一緒に」

「少しだけ身体強化使ったらだめ?」

「ダメです。わたしと一緒に入りますよ」


「でも僕一応年頃の男の子なんだけど」

「わたしと一緒にですよマーリン」

「…はい」


「他に質問はありますか?」

「あいつはどうなったの?」

「嵐狼のことですか?」

「そう」


「嵐狼の尻尾以外はマーリンが気を失った後に現れた【深緑の大精霊】に土に埋められたそうです。

そして尻尾は防腐処理をして保管していまよ、

どうするかはマーリンが決めたらいいと思います」


「あの大狼、嵐狼っていうんだ。

確かに前にエル父さんから聞いた特徴に似てたかも。

倒したのはエル父さん?」


シェーラ母さんは不思議そうな顔をしていた。


「いえマーリン貴方だとわたしはエルから聞いていますよ。うなじ部分に鉈が刺さっていてそれが致命傷になっていたと。」

「そうなんだ、それは運が良かったんだね僕は。

でもあの勝負は僕の負けだよ、あっちが立って僕は立てなかった。

最終的に生殺与奪を手にしていたのはあいつだからね」


僕がそういうとシェーラ母さんは少しだけ驚いた顔をしていた。


「……珍しいですねマーリンが勝敗にこだわるのは」

「そうかな」


「そうですよ。あなたはエルやルート マエルなどに負けても素直に結果を受け入れる子でしたからね。

トムについては勝敗というよりもっと可愛らしい意地の張り合いでしたから」


「そう言われるとそうかもね、というかトムとのアレをシェーラ母さんはそんな風に思ってたんだね」


「えぇ微笑ましいなと思いながら見ていましたよ。

あの淡白なマーリンがムキになっている姿は母親としては可愛らしいものでした。」


ううぅやっぱりシェーラ母さん相手だと僕がからかわれる感じになる。


「マーリンがそこまで勝敗にこだわるということは、

初めて負けられない状況であったことと、相手の心と何か通じ合うものがあったからでしょうね」

 



「さぁそろそろ朝食の時間ですからリビングに移動しましょう。

食事は家族みんなでの方がいいですからね。」


「僕多分スプーンとかも持てないんだけど」

「わたしが食べさせますよ。」


「そこまで子供じゃないよ僕は」

「マーリンはすぐに自分で食事をするようになりましたからね。ルートやルーリィと比べると食べさせた回数はダントツで少ないんですよ。なのでその分を今やります」

「ルーリィの前で?」

「家族ですから問題ありません」

「いやルーリィには見られたくないかな、お兄ちゃんの沽券関わってくると思うんだよ」


「今更それくらいでは何も変わりませんよ」

「それはもう僕にはお兄いちゃんとしての威厳はないってことかな?」

「そこまでは言っていませんよ。」

「そこまではって…….。

「ふふどうせならパームさん、シーカさんもよびますか?」

「いいや!呼ばなくても大丈夫だよ!」

「いいお返事です」


くっそぅ体が動かせないことも相まってシェーラ母さんのいいようにされてしまう、悔しい。



「ではマーリン、わたしにどういう形で運ばれたいですか?三個選択肢をあげましょう

一つ目 お姫様抱っこ

二つ目 お姫様抱っこ

三つ目 お姫様抱っこ

ちなみに選ばなかった場合はお姫様抱っこですよ。

さあどれにします?」


「選択肢ないのと変わらなくないシェーラ母さん?

後いつもよりもテンション高いよ、何かあったの?」

「マーリンが三日ぶりに目をさましましたね」

「愛されてるね僕。」

「愛してますよマーリン」


結局お姫様抱っこでリビングにまで運ばれた。

色々と近いし恥ずかしい。

あとちらっと鏡に映った姿を見ると、女性に抱えられてる女の子にしか見えなかった。

自分でも不思議に思うくらいにそうとしか見えないんだ。

リビングにはすでにルーリィが食器を並べ終えて座っていた。

ルーリィは僕の姿を見てお腹を抱えてプルプルと震えている。

僕はシェーラ母さんの横に座らされた。ルーリィの目の前だ。


「ルーリィ久しぶり」

「プっふ 久しぶりッフ マーリンップふふ兄さん」


「ルーリィ?」

「ふっふふごめんなさい だってふふふマーリン兄さんが女の子にしか見えなくて ふふ」


「僕は男だよ」

「ごめんなさい。でもマーリン兄さん寝ている間に少し痩せてるから。

どうしてもそう見えちゃうの」

「そうね、マーリンは元々が女性よりの容姿をしていますからね。

少し痩せただけでもかなり線が細くなって女の子に見えてしまいますね。」

「うん。きっと兄さんを初めて見る人は女の子に間違えると思う」


「ううぅ エル父さんかルート兄さんがここにいたら僕の見方をしてくれるのに。」

「ふふふルートは一応フォローをするでしょうけど、エルならきっと「マーリンはシェーラによく似ているからな、仕方のないところもあるだろう」って言うと思うわ」


「うぅ確かに言いそう」

「シェーラ母さんはまさに美女って感じだから、似ているマーリン兄さんが美少女とに見えちゃうのは仕方ないよ」

「ふふ ルーリィもとても可愛いわよ」

「うっ ありがとう、シェーラ母さんに言われると純粋に嬉しい」

「もちろんマーリンもね」

「純粋に喜べないよシェーラ母さん」



そうして朝食が始まったはいいものの、僕がシェーラ母さんに食事の世話をされる姿をルーリィに見られ、さらに生暖かい目で見られることになった。公開処刑されてる気分だ。

食後部屋のベッドに運ばれた僕は、天井を見ながら、もっと筋肉をつけよう そう決心した。

そこからは村の人がお見舞いに来たり、お昼寝したりといくつかのことを除けば平和に過ぎていった。

村人たちの間で僕が【儚げな美少女】と言われ出したのもこの時からである。



そして一週間が経ちこの生活にも諦めがついてきた頃

エル父さんとルート兄さん、マエルが帰ってきた。

もうそのまま王都の教育施設に行くと思っていたんだけど、シェーラ母さんが言うには

一応高等教育施設には十二歳で入ることになっているけど、実質始まるのは十二歳になってから初めての春を迎えてかららしい。これは祝福の儀を受ける時期がバラバラであることが理由らしい。

それ故に次の春までは好きに過ごしても良いそうだ。

ルート兄さんとマエルはこちらで荷物をまとめた後また王都の寮に行き、次の春までに王都の生活に慣れていく計画らしい。



僕は部屋から動けないのでルート兄さんたちが来るのをただじっと待つ。

コンッコンッ


「大丈夫だよ」


ルート兄さんとマエルは扉を開け僕を見て戸惑っていた


「どうかしたの二人とも」

「い いや何にもないよマーリン。久しぶりだね、少し痩せたかい?」

「うんかなり痩せたかな、あまり食事もいっぱい食べてないし(シェーラ母さんに食べさせられるのがかなり恥ずかしく、早くに切り上げているから)一日のほとんどを寝て過ごしてるからね」

「なるほどね、だから」


「マエルも久しぶりフルーベンスはたのしかった?」

「ええ久しぶりねマーリン。元気そうで良かったわ。フルーベンスはこことはかなり違っていたわね。

周りが森に囲まれてなくて、代わりに石の壁に囲まれていたわ。」


「そういえばエル父さんは?」

「今僕とマエルのジョブとスキルをシェーラ母さんに伝えにいってるよ。この村にいるのも後一週間だからね、その間に教え込むことをまとめてるんだよ。

多分もうすぐ来るよ」


「そうなんだ。ルート兄さんとマエルは何のジョブになったの?」


「僕は《剣法家》を選んだよ」

「私は⦅準魔導師》を選んだわ」

「おめでとう!!二人とも"冠位九階"だね!!」

「うん僕たちも驚いたよ。エル父さんは予想してたらしいけどね」

「ええ私も"冠位七階"くらいに行ければいいと思っていたから素直に驚いたわ」


(冠位十二階の説明。

これは人種がジョブの上下をわかりやすくするために考え出したもの。神が決めたわけではないらしい。

わかりやすく⦅剣士》の系譜をあげると

一階 剣士 魔法術見習い

二階 剣使い 魔法使い 魔術使い

三階 剣術使い 魔法士見習い ・見習い 騎士見習い

四階 剣闘士 魔法士 魔術師

五階 剣術士 魔法師見習い ・見習い 騎士

六階 剣師 魔法師 魔術師

七階 剣術師 博士見習い

八階 剣法使い 博士 魔剣使い

九階 剣法家 魔導師見習い 魔剣士 魔法剣士

十階 剣客 魔導師 聖剣使い

十一階 剣豪 賢者 攻魔導師 防・ 聖剣士 聖騎士

十二階 剣聖 大賢者

剣の系譜は冠位をはかるの基準とされている。

系譜がないジョブなどもこれ比べる形で冠位を判断されている

(見習いなどは準と呼ばれることが多いの)

一応この上にもいくつか存在するが、ごく少数の個人のジョブという考え方になる。

それは一括りに【破階者】とし、

個別の名称で呼ぶ。エクストラジョブみたいなものであり、強さは色々。」


.


「あとねマーリン。エル父さんもね一応儀式(最初の儀式を祝福の儀と呼び、それ以降は儀式と呼ぶ)を受けたんだよ、そしたらね⦅剣聖》になってたんだって!」

「本当に!?というかエル父さん⦅剣豪》だったの?

そりゃ強いはずだよ。」 


「ついでにだけど、シェーラさんは⦅賢者》でおじいちゃんは⦅攻魔導師》、おばあちゃんは⦅防魔導師》よ。マーリンにも教えていいとエルヴィンスさんから許可はもらっているわ。」 


「なんでこんな辺境の村に"冠位十一階"が四人もいたのかな、おかしくない?」

「あははは本当にね。最初に聞いた時は信じられなかったよ。それにね四人とも【異名】付きなんだよ。」

(【異名】とは本来の同ジョブ中から個人のして区別されて認識されることにより、集合無意識からつけられるもの。ランクで考えるなら+と同じ。

つまり【放浪剣豪】なら普通の【剣豪】より上という事。

冠位十二階に異名がついた場合のみ強さの上がり方は一定ではない。

数例【破階者】に勝利した記録がある。

魔物にも【異名】がある種類はあるが、これは尊称であったり物語からの引用であったりするもので、特別なボーナスはない。

嵐狼も中天帝国では【草原の暴風】という異名で呼ばれているが北領同盟王国では嵐狼と呼ばれている)


「(僕の家はやっぱり普通の平民じゃなかったんだね)」


僕は驚きとともに納得した。



少しでもいいなと思っていただければ嬉しいです

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