法に則った快楽
「やぁ〜これはこれはフードの人よ。また私の店に卸に来てくれて嬉しいですよ
「これは店主自らお出迎えとは恐縮ですね」
「今あなたが売りに来てくれる品は大変需要がありましてね。私としてはこれからもあなたと良い関係を気づいていきたいのですよ。」
「私も随分と買いかぶられたものです。とはいえ、私に不利益もないのでね。早速鑑定をお願いしますよ」
「ええでは」
その身を見るからに金のかけた服で飾った男が指を鳴らすと、部屋の奥から何も身に纏っていない獣人の女が十人ほど現れて、合わさる様にして二つの椅子の形を作り出した。
「私自らが調教した獣人の雌共です。どんなに手荒く扱おうと反抗する事もありませんし、コビの売り方もしっかりと教え込んでいますからご安心ください」
男は獣人の女で作られた椅子の、背もたれになっている女の乳房を引きちぎるかの如く鷲掴みながら此方に微笑みかけてくる。
背もたれになっている女もそれに抵抗する事も姿勢を崩す事もなく、気持ち悪い嬌声を上げているだけだ。
この男の趣味が理解できない。
「いや私は結構。私以外のものに触れられるのは生理的に受け付けないので」
「それは失礼しましたフードのお方よ。お前達は下がれ」
私用の椅子を形作っていた女共は無言で形を崩し、部屋の奥へと消えていった。
「では一体づつ鑑定した上で、まとめて計算しお支払いします。鑑定にお立ち会いください」
そして私が船に積んで来た商品たちが一体づつ趣味の悪い椅子に座った男の前に連れ出される。
「ふーん、見た目も悪くない。怯え方も良い。角も持ちやすそうだ。体が貧相とは言え歳も若いぶん需要は大いにある。
穴も未使用とくれば教会へ高く売れますね。」
男は家畜でも扱うかの如く、十二にも届かぬ少女の体を触っていく。そこには一切の劣情はなく、ただ価値になるかだけを淡々と判別するだけだ。
その少女の鑑定が終わればまた次の鑑定へ。
淀みなく進められる鑑定を立ったまま見続ける私の事を、通り過ぎていく哀れな魔人族達は静かに視線を飛ばしてくる。
これから自分たちがどの様な扱いを受けた後死んでいくのかを理解している上で、下衆なヒューマンに売りつける私を憎んでいるのか、はたまた。
どうか私を憎んでいてくれたならどれだけ心が救われる事だろうか。
男女五十人の魔人族を二十分程の鑑定で終わらせた男は、鑑定のたびに何かを書き込んでいた紙を数秒見たのち立ち上がり
「魔人族の雄が欠損含めて二十八体。雌が二十二体。雄の方に状態の悪い奴が数人いますが、それを補って余りある程に雌の品質がいいですね。
〆てゲオルグ白金貨五十枚でいかがでしょう?
お得意様という事で私としても多少色をつけたつもりですが」
下手な平民では一生かかっても稼ぐことのできない金額だ。金額的には私が事前にしていた額よりも上であり、色をつけているというのは本当だろう。
とはいえ、こんな端金を得る為に私はここに来たわけでもない。
「ゲオルグ白金貨五十枚ですか。大変に色をつけてくれている様ですね。ありがとうございます」
「ええそれはもう。あなた相手に値切れる気もしませんので、誠意を持って買取をさせて頂きますよ」
「えぇ、ですが余りに色をつけさせるというのも悪い話ですから。
…そうですね、ゲオルグ白金貨五十枚のかわりにノース白金板四枚とノース白金貨五枚でいかがですか?」
「……いえフードのお方。良い品を売りに来てくれたお人に気を使わせるのは商人の恥。幾らなんでも白金貨五枚分をご遠慮いただくのは承服しかねます。
そうですね、中天白金板五枚とゲオルグ白金貨五枚でどうでしょうか?
ここ数ヶ月のあの国の貿易も活発ですから、こちらの方が実りも大きいかと」
私の提案に驚くでもなく、焦るでもなく、落ち着いて対応している。
私の提案がヒューマン以外の種族と商いする事を視野に入れていると判断したのか、それとも別の理由か。
この男が言った様に中天帝国はデ・ディヴァルドとの交易も回復して物の流れが活発化している。
スムーズにこの流れに乗ろうとするならこの男の提案は正に渡りに船だけれど、
「ゴードン殿そこまでお気遣いいただく必要はありませんよ。先日突然交渉を持ちかけた私を受け入れてくれた本のお礼です。
それにノースで頂きたいのは、この道に入ったばかりの若輩として安全性が高い通貨を手元に置いておきたいだけですので」
通貨価値で言うなら種族間によって様々。
ヒューマン、魔人族、ドワーフ間ではほぼ同じ。白金 金 銀 銅 鉄の順に価値が高いとされている。
エルフの場合は少し特別であり。
上の三種族と同じ様に通貨も使えるが、基本は物物交換が基本となっている。
基本的な考え方としては宝石類が基本。
魚人は使って金以上の貨幣のみ。
基本は物々交換であり、真珠や鱗などだ。
ヒューマンや魔人族、ドワーフ間に限って通過の話をするならば通貨としての貴金属含有率は、中天帝国が少し低いとされているだけで、平時はほぼ同じだ。
その為価値に大きな差はない。
よくゲオルグが含有率を高める事もあるがすぐに元に戻る。
平時の各国の通貨を価値順で並べるならば
デ・ディヴァルド 不落国家であり生産力がある
ゲオルグ ヒューマン内では広く流通した貨幣
ノース これまでに貨幣が変わったことがない
魔人族 基本的に含有率変動がない。
中天 新参の国であり、価値が定まりきらない。
しかし戦時となれば変動する
ノース
デ・ディヴァルド
魔人族
中天
ゲオルグ
ノース通貨の北領同盟王国は戦時中でも国内が荒れない。
都市機能が完全に分かれている事や、国民柄が関係しているが、貴金属の含有率は変わらず、物の流れも滞ることがない。
そして何より初代国王バナージ・フィルヴァーニアを除いてあの土地の進行を達成できたものがいないと言う信頼感。
デ・ディヴァルドも不落国家であり、生産力のある国だが、国としての性質的に戦時となれば物流が大幅に落ちる。
国全てが一つの砦となっているが故に、戦争になれば国の正門が全て閉まるのだ。
ゲオルグの場合は戦争という状況になれば内政が荒れる。信仰が深いが故に無理な徴兵や政策を実行しても国民の大半は反発することがない。
しかし商人達にとってみればたまった物ではなく、貴金属の含有率や、貨幣自体が変わる事も戦時中に多発したことがある。
つまりは戦時中のゲオルグ貨幣の信用度は驚くほどに低い。
商人の中では、戦争が近付けばゲオルグ貨幣を他の貨幣に変えるのが常識になっているくらいだ。
「そうですか。若輩という部分には疑問を持ちますが、フードの方の考えはわかります。
ノース白金板四枚とノース白金貨五枚で手を打ちましょう。」
「ご理解いただき感謝いたします。」
「お気になさらず。してお支払いは署名でですか?それとも今お渡しいたしますか?」
「ここで頂けるのであればここでいただきたいですね」
「わかりました。すぐに用意させますよ」
男が部屋の奥へと合図を送ると、数秒後一つのケースが私の前に運ばれてきた。
中を確認すればノース白金板四枚とノース白金貨五枚が入っており、本物を示す精密な魔術刻印が刻まれている。
それを確認してから私はその場から席を外す。
その時に目があった魔人族の少女の目を私は忘れない。
フードを深く被った奴が姿を消してから、買い取った奴隷達に奴隷刻印を刻む。そして椅子から立ち上がって振り向き未だに椅子になっている獣人のメス共を思いっきり蹴飛ばす。
「クソが!!イライラさせやがってっ!!」
ドガァッ!
「んっ、、」
「少し機嫌をとってやろうかと思ったのによぉ!!」
椅子を形作っていた雌が体勢を崩せば、その中の一匹の髪を掴んで組み伏せ、イラついた感情を叩きつける様に腰を動かす。
それだけでは治らない感情の昂りを周辺で待機しているメス達を鞭で打つ事で発散し、頭を押さえつけていた雌が動かなくなったところでようやく少し落ち着いてきた。
「はぁ…っ、はぁ…っ、
おいお前達はこの雌と、並んでる魔人族を奥に連れていってしつけを始めろ。
一番端の奴は俺が躾けるから濃さ置いていけ」
「はい。ご主人様」
今現在聖都ミリアムでは魔族の奴隷がかなり需要がある。この前まではエルフが一番人気だったが、ここ一ヶ月ほど少しずつだが魔族の奴隷を買い求める客が増えてきた。
それも隠してはいるが教会関係者でだ。
こういう傾向がで始めた時考えられる可能性はいくつかある。ただ単純に変態の上流階級が魔人族をいたぶるのに嵌まったとかもその中にはあり、この場合はすぐに終わる。
だがその可能性の中には戦争が始まる前兆というものがある。
「おいお前。服を脱いでそこのソファに上がり、こちらを向いて体を開け。お前の教育をしてやる」
体を小さく震わせる幼い魔人族の雌へそう命令すれば、震えた手で服を脱ぎ、おぼつかない足取りでソファに上がった。
戦争が始まる前に出身国や種族で奴隷の需要が高まる理由として、その国もしくは種族と戦争が起こることが往々にしてゲオルグではある。
理由は兵士や信者集団へ一種の洗脳を施す為。
男奴隷であれば大衆の前で嬲り殺しにし、女奴隷であれば犯して弄ぶ。
単純な方法だが、宗教という戒律で日々縛られているゲオルグ信者は、これによりいとも簡単に身の内にある欲望を表に出す。
こいつらは殺していいのだと、自分達よりも劣った存在なのだと。
攻め滅ぼせばいい思いができる。好きにしていいんだと。
「抵抗するな」
「っ、……うっ、う、ぁぁああ!!」
前世でやれば逮捕され有罪となる行為もこの世界では合法だ。
純血の証を破られ血と涙を流す幼い少女を見下ろしながら、俺は背徳感と優越感で心を昂らせる。
「俺は正しい!法を守ってる!俺は特別でお前らは物だ!
俺達に使われるための存在がお前らって物なんだ!!!」
「ぅっ、あっ、」
この世界に来て十四年。前世を含めれば五十六年。俺は今人生の絶頂にいる。




