思いを込めて
「前々から伝えていたように、模擬戦トップチームにクラスの代表としてクラス対抗の代表戦が行われる予定です。
が今年度のA組は都度誤解の模擬戦を全て引き分けという結果で終えています。
青組代表エファーラル・ファーニア
緑組代表エファーラル・アンスリア
白組代表マーリン
以上三名で協議を行い、代表となる組を報告しにきてください」
「先生。多数決で決めるのは大丈夫ですか?」
「マーリン貴方の考えはわかりますが、それは認めません。何かしら三組共に納得できる結果を持ってくることを条件とします。
期限は今月末までとします。それまでに決められなければ代表戦は不参加という事になりますのであしからず。」
僕たちのAクラスの担任は5回目の模擬戦の次の日。授業が全て終わった前世で言う終わりのホームルームの時に、さらっと重大発表をしてそのまま教室を後にした。
その後クラスがどんな風になるかなんてわかり切っていて、僕はそれを早くに終わらせるため代表者三人で多数決をして終わらせたかったわけだ。
「代表戦には多くの方が来られるのに、そこに不参加になんてなったらいい笑い者だ!」
「北領同盟王国からの使者も来るんだぞ…」
Aクラスは学年の中で一番優秀な生徒達が集められているクラスらしく、その分そう言うところを気にしている。
別に代表戦に出れなくても、成績に直接的な不利益があるわけでもないのに、見栄え的なものを気にするんだ。
もう殆ど入学してから喋る機会もない、留学生五人も本国に恥をかかせると言う意味でかはわからないけど、とても慌てている。
「マーリン、アンスリア、こちらに来なさい」
そんな中で必然的に逃げられない状況にあるのが僕で、一応白組(僕一人)の代表として話し合いをしなければいけない。
ちなみに僕とアンスリアは近くの席にいて、離れた席に座っていたファーニアが呼んできた。
「ファーニアが一人こっちに来た方が早いと思うんだけど。こっちからは上りで、そっちからは下りでしょ?」
教室の構造的に前の教壇から奥に行くにつれて階段になっている。僕とアンスリアは廊下側の前の席に座っていて、ファーニア達は奥の中央一番高い席に座っていた。
この配置は単純に青白緑の組が纏まって座っているだけで深い理由はない。ちなみに僕は青と緑の中間の位置に座って、アンスリアは僕の斜め前に座ってる。
「最大勢力の私達のところに来るのが筋ってものでしょう。」
「規模が大きいだけで最大勢力じゃないよ。引き分けなんだから」
「こっちは肉体戦闘一位と魔法術一位がいるのだから、実質的に最大勢力でしょ?二位さん?」
「まぁ魔法術については僕も認めるんだけどね、肉体戦闘についてはファーニア自身思うところがあるんじゃないかな?」
「……っどう言う意味かしら…?」
成績に多大な影響を与える模擬戦闘の他にも判断基準となるものは多くあり、肉体戦闘試験、魔法術試験がそれだ。因みに知力の試験はない。
エルフは膨大な時間を持っているため、知識はゆっくりと暇な時に蓄えればいいと言う考え方らしいよ。
肉体戦闘や魔法術の試験なんだけど、お国柄もあって判断に偏りがある。
肉体戦闘は弓が高評価されるとかね。
魔法術は攻撃やサポートなどいろんな分野の合計点で判定される。攻撃ができない僕は二位と言う結果になった。『告死鳥』『告命鳥』『誘い迷わす幻想蝶の群れ』は使ってないので二位が精一杯だった、言うのは言い訳だね。
で、僕がほのめかしたのは、肉体戦闘のこと。
一位がファーニアで二位がアンスリア、三位が僕。
僕は槍とかを使ったて弓を使ってないため三位が精一杯。ここに文句のつけようはないんだけど、アンスリアは違う。
試験でおいてなら《ジョブ》補正の違いがはっきりと出るためファーニアが圧勝するが、実際と戦闘では場合が違ってきている。
でなければ圧倒的少数の立場で圧倒的多数の状況を引き分けにできるはずが無いんだから。
「僕の言葉の意味ならもう理解できてると思うんだけどね」
「………ちぃ」
ファーニア自身僕が言いたいことに覚えがあるみたいで、わかりやすいくらいに不快の感情を露わにする。
とはいえ、これ以上の深入りは不味いので。
「まぁ冗談はここまでにして、僕のこの席周辺がいいんじゃないかなお互い的に?」
「……………」
流石にこの話のまとめ方は都合が良すぎるとは思うけど、これは一対一の会話ではないからね。
僕が全てをきれいにまとめる必要はない。
「そうね。マーリンの言う通り、マーリンの席の周辺が私達にとっては都合がいいと思うわ。」
青と白以外のもう一つの緑の代表アンスリアがそういえば、抜いた剣の納めどころとして納得せざるおえない状況になる。
「わかったわ。その席で話し合いましょう」
ファーニアも話し合いの舞台を真っ二つにするつもりはないらしく、そこで納得してくれた。
「じゃあ、早速話し合いを始めようか」
勝手に司会進行役をし始めた僕にアンスリアは様子見を決め、ファーニアは不愉快そうにするものの結果が分かっているのか何も言ってこない。
二人には悪いけど、学園が終わってからルーリィと遊ぶ約束をしている為早く終わらせないといけないんだ。
ぱぱっと結論まで行かせてもらおう。
第一に
代表の組は模擬戦の勝者で決める。話し合いの余地なし
第二に
基本的にルールはこれまでの5回と同じにする事。人数は自由。
敵対する組の降参もしくは全滅を持って決着とする事。
第三に
模擬戦を行うフィールドについては、三組それぞれに指定する場所を紙に書き、審判である先生が引いた場所で行うこととする。
第四に
武器は学園が用意した模擬戦用の武具を使うこととするが、他にサポート用の魔術具を用意するなどの工夫を認める。
第五に
組が三組いる為、人組が降参もしくは全滅させられた時、まだ二組残っている場合にのみ降参させた組は降参した組を引き入れる権利を得る。
引き入れられた場合は引き入れた組の者として模擬戦及び、代表戦に参加するものとする。
「という感じでまとめてきたんだけどルーリィ。これがどういう結果になるのかな」
「マーリン兄さんはもうどうなるか予想できてそうだけど」
「僕のは予想じゃなくて、こうなったらいいなーって言う願望だからね。どうなるのかは僕自身わからないよ」
適当に強気に押してくるファーニアと勝手に話し合いに参加してきたデルアドレ。
どうにか意見を織り込もうとアンスリアも頑張っていたけど、まだ少しだけ足りないみたいだ。
僕は二人の意見を少しだけ修正させてルールとしてまとめただけだからね。
なんというか小さい頃村の子供達の意見を聞いてルールを考えていた頃を思い出したよ。
「それはマーリン兄さんがそんなに頑張らないといけない事なの?」
「僕は頑張る必要はないんだけどね。なんとなく見過ごせなくなっちゃったから、少しだけ手を出してみただけだよ」
寮に帰ってきた後のルーリィとの試合はかなり疲れた。こっちでの僕のルールで戦ったとはいえ、ルーリィは本当に強くなってきてる。
棒術のキレも魔法術のキレも両方共に同じ頃のルート兄さんよりも強い。
触覚の感覚コントロールの魔術には驚かされたね。
打ち合ってる槍の衝撃が以上に長引いたり、衝撃のくるタイミングが遅かったり、強かったりと何回か槍を落としそうになった。
まだルーリィが十分にその魔術を扱えていなかったから余裕を持って、教える側の視点で勝てたけど、ちょっと次はどうなるかわからない。
「…苦しくなったら逃げていいと思うよマーリン兄さん。それで何か言われても、シェーラ母さんなエル父さん、ルート兄さんもいるよ。
それに私がマーリン兄さんを受け止めるから」
「ははは、確かにルーリィは受け止めてくれそうだね。
…でも大丈夫だよ。僕にはやりたい事があるから。それをやり切るまであきらめないって決めたんだ」
この道を進んだ先で必ずスカイの願いを叶える。そう決断したし、宣言した。後悔はしてないし、諦めるつもりなんて毛頭ない。
その事をルーリィは知らないけど、流石僕の妹だね。どこか諦めたように納得してくれる。
「……私はマーリン兄さんと一緒にいるよ。ずっと、マーリン兄さんが一人でどこかに行っちゃっても私は…ずっとそばにいるから…」
「…うーん、まぁルーリィが自分の意思で旅立つ時までは出来るだけそばに居るよ。」
「……マーリン兄さんは嘘つきだから。」
「自分では約束は大切にしているつもりなんだけどね。」
「マーリン兄さんは嘘つきだよ。いつも優しい嘘で私を幸せにしてくれるもん」
いつのまにか妹からの信用度が地の底についてしまっていたらしい。兄妹の危機という奴なのかな?確かにルート兄さんと比べられると、自信を持って信用できる兄とは言いにくいんだけどね。
「ここはお兄ちゃんとして愛すべき妹の不安を少しでも払拭しておこうかな」
「っえ、」
そう言ってから隣で寝転んでいるルーリィを慰めるように、はぐらかすように抱きしめて灰色の髪をクシャクシャにする。
「ははは!こんな事するのは初めてだけど楽しいかもね!」
「っ///.マーリン兄さん!、」
数秒間思いっきりルーリィを可愛がり、ゆるく抱きしめたまま
「ルーリィこんなお兄ちゃんだけど、ルーリィが好いていてくれるお兄ちゃんでいられるように頑張るからね。」
言葉にできる精一杯の気持ちを込めて、少しでもルーリィが安心してくれるように呟く。
前世での立派な兄や姉、今世でのルート兄さんの様に上手く年上としての役目を果たせていないのかもしれないけど、僕なりに頑張るという意思表示だ。
「……うん…」
僕の胸の中に顔を埋めたままそう応じてくれるルーリィ。ルート兄さんに次に会った時に、何か年上としてのコツを聞いておくのも悪くないかもしれないね。
そのまま部屋の明かりを消し、前世の兄と姉の姿を思い出しながら僕は眠りについた。




