手紙は苦手です
〜みんなへ〜
えーっと、マリンです。
みんなとフィルヴァーニアで別れてから一年なかなか濃い旅をしたよ。
それで無事にエルファエルに留学する事ができてます。
半年くらい過ごしてみて、いろんな文化の違いを知り、国の特色の違いにも慣れてきたよ。
まぁそんな感じやってます。
三年後くらいにみんなと再開できるのを楽しみにしてるよ。
追伸
スフィラネさんが僕からもシェーラ母さんをこっちに呼んでくれとずっと言ってきます。
一応言われたから書いたけど、僕としてはそんなにお勧めしません。
〜マーリン〜
数日後
〜みんなへ〜
この前送ったのは練習の手紙でこっちがちゃんとした手紙です。
みんなとフィルヴァーニアで別れてから、一年はベテラン冒険者の人と色んな秘境巡りをしたんだ。
その人にはとてもお世話になって、かなり鍛えられたよ。
それで一年間その人と旅をした後、城塞都市で別れてね。次に会ったのがシェーラ母さんから聞いていたスフィラネさん。
なかなか凄い人で、出会った時から流されぱなしです。
シェーラ母さん程どうにも出来ないという感じではないんだけど、スフィラネさんはシェーラ母さんとで経験を積んでるから手強いです。
エルファエルのハーメルンの学園の話だけど、こっちは特に困った事は無いです。そんなに楽しい事も多くない生活で、これなら旅をしていた方が楽しかったね。
とか、思うけどちゃんと学園生活は送ってます。
ルーリィからの手紙でトムとサーレの子供の姿を送ってもらえたり、再開された収穫祭の時に話とかを書いてもらったり、いつも楽しみにしてます。
〜マーリン〜
「ふふっ、マーリンにしては頑張って書いてます。この前の手紙の後、ルーリィが送った手紙が随分と堪えたみたいですね」
「シェーラ母さん。私はマーリン兄さんを責める様な手紙は書いてないよ」
「わかっていますよ。マーリンにお願いを聞かせるコツをルーリィは知ってますからね。」
マーリン兄さんから届いた二通目の手紙を手にしながら、シェーラ母さんは私にそう言ってくる。
マーリン兄さんもよう言っているけど、どうしてシェーラ母さんはこうも簡単に私たちの事を見抜けるんだろう?
この前、一年半ぶりの手紙はあまりにも適当な者だったから、すぐにマーリン兄さんへ寂しいという内容の手紙を送った。
多分その手紙を読んですぐに返信を書いてくれたんだと思う。
「マーリンはいちいち指摘しなくても、考えさせる事が出来ればすぐに自分で気づいて行動しますからね。
その方が自分のことを考えてもらえますし、賢いやり方だと思いますよ」
「………///口に出して説明しないでよ、シェーラ母さん。」
「わたしは応援しているつもりですよ。他の国ではどうかはわかりませんが、この国では珍しいだけで禁止されていませんからね。」
「それはそうだけど、実際マーリン兄さんが私の事を妹以外で見てくれないとどうしようもないよ」
「ルーリィの場合は最初から家族という枠組みでマーリンの中にいたぶん、そこから抜け出すのは大変ですね。二年半前、マーリンが家を出旅の朝も、マーリンはあの状況でルーリィを妹としか認識していませんでしたから。
慌ててはいましたが、事態を把握できなくて慌てていただけでしょう」
シェーラ母さんに突きつけられる現実。それは今私が一番気にしていることでもあった。
スタート地点には最初から立てているのに、他の人よりも僅かに前に入れているのに、肝心のスタート地点が他の人よりもすごく遠い。
「まだ成人も迎えていない事もあり、ルーリィはまだ慌てる時期ではありませんが、どうしてもスタートは他の子たちよりも遅くなってしまいますね」
「うぅ…」
自分が恵まれた環境にいる事は理解していても、今の自分の願いとかけ離れた状況。
あまり良くない自分の置かれた状態に少しだけ悲しくなってくる。
そんな私を見てシェーラ母さんはアドバイスをくれた。
「とは言えですよルーリィ。貴方は他の子たちとは違い、切れる手札はとても多い筈ですよ。
その手札を上手く使っていけば、十分に可能性はあります。」
「でも…」
それでも不安である事には変わりはない。マーリン兄さんが私ではない誰かの物になるのではないかという恐怖が強く私の中で不安を訴えてくる。
ずっと近くにいたからこそ、私の元から離れていってしまった時の事を考えるだけで怖い。
「なら、エルファエルへ行ってみますか?」
「えっ?、」
「この一年半ほどマーリンに会えなくてとても寂しいのでしょ?マーリンの部屋へ訪れる回数も増えている様ですし、今ではもうマーリンの部屋はルーリィの部屋の様になっていますから」
「////……それ、は。…….ごめんなさい」
そう最初は週に一度くらい、掃除も兼ねてマーリン兄さんの部屋に行くだけだったのに、最近はほぼ毎日行っている。
なんとなくマーリン兄さんの部屋に行けば不安が消える気がして、抑えようとしても抑えきれなくなって来ていた。
そんな私の状況をシェーラ母さんはしっかり把握していたらしい。
「ふふふっ謝らなくても大丈夫ですよ。もともと兄妹として仲が良かった上に、好意を認識したのですから仕方ありません。
我慢しろという方が無理な事でしょう。」
「…シェーラ母さんも不安になったりするの?」
「なりますよ。特にエルと出会って意識し始めた当初は、エルの前で隠しているのが精一杯な状態でした。何しろそんな感情を抱いたのは、エルが初めてでしたから。
結婚するまで、それはもうたくさんを失敗しました。」
その話は少し意外だった。今のエル父さんとシェーラ母さんを見ると、エル父さんがシェーラ母さんにベタ惚れ状態だから。
だから最初からエル父さんをシェーラ母さんが上手く御しているものだとばかり考えていた。
「意外ですか?」
「…うん、ちょっとだけ」
「わたしが今の様に落ち着き始めたのはルートが生まれた時くらいからで、それまではエルの仕事の関係もあり、どこか不安な気持ちはずっと持っていましたよ。」
「ルート兄さんが生まれたから安心できたの?」
「そうかもしれませんが、すこし違いますね。」
「ならどうしてなの?」
「エルの方がわたしを求めてくれる様になったからですよ。ルートが生まれてからは初めての子育てに熱中して、エルの事を考える時間も少なかったですから。
そんなわたしにエルの方が不安を覚えてくれたみたいで、わたしが求めるまでもなくエルからまとめてくれる様になったんです。
そうなって初めてわたしは不安を感じなくなったのですよ。」
あまりに私がイメージしていたシェーラ母さんとは違う、昔のシェーラ母さんの姿に驚きながら、私もその状態になった時の事を考えてみる。
マーリン兄さんが不安を感じて私の事を繋ぎ止めようとしてくれるその状況を。
私がシェーラ母さんの立場で、マーリン兄さんがエル父さんの立場。
「……ふふ、だめ。想像してるだけで、顔が……」
実際にその姿を見てきたせいか、リアルに想像できてしまうその光景に自然と顔が緩む。
目の前にシェーラ母さんがいるのに、どうしても表情を作り直せない。
あまりに理想的すぎるからこそ、表情を隠す事ができない。
「本当にルーリィはわたしによく似ていますね。
性格でならルートはエルよりです。…マーリンはよくわかりません」
話をそう締めくくったシェーラ母さんは椅子から立ち上がって
「それではエルファエルに行く準備を始めましょう。わたしは教育者としての手続きと、エルの説得をしますから、ルーリィは自分の準備をしてください」
「ありがとうシェーラ母さん」
「わたしもこの話をできて楽しかったですよルーリィ。ありがとうございます」
シェーラ母さんがリビングを出た後、私はすぐに持っていくものをまとめ始めた。
さっきシェーラ母さんと話して目指す目標が決まった事もあるけど、それよりも純粋にマーリン兄さんに会えるのが楽しみで仕方ない。
そして絶対に上手くやろう。.失敗して今の関係すら壊れてしまう事がない様に。
よく考えて、焦りすぎない様に頑張ろう。
「(・・・・・・・・・・)」
「…絶対に失敗したくない…」
私は強くそう思った。




