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今世初めてのナンパ(セクハラ?)

ディエゴ・マルク大将の護衛のもと僕達エルファエル留学生は国境付近に敷かれた陣幕に到着した。ここでエルファエル側の代表者と護衛の引き継ぎがされ、エルファエルへ向かう事になっている。

僕の他のエルファエルに行く講師含めた六人はとても静かなもので、僕にちょっかいをかけてくる事はなかった。出来る事ならずっとそんな感じていて欲しいね。

僕はその六人人とは離れた場所に移動してそんな事を考えているんだけど、隣にいるこの人はいつになったら本題に入ってくれるんだろうか?


「いやぁはっはっはっ!!上から歳の割に小さいと聞いていたがここまでとは思っていなくてな。

少年、いやぁ少女、はたまた女子といった見た目だな世界樹の少年よ」


「そういうのは大丈夫なので、早くこの足枷を外してもらえませんか?」


身長2メートル以上のおじさんはさっきからずっと僕のことを見ては同じ様な事を言ってくる。仕草でここに僕を誘導しておきながら何がしたいのか、もうすぐエルファエル側からの使者も到着するのに。


「まぁもう少しまて。今回は親善として留学生を送るという両国にとっての重大イベントに加え、お前という重要人物をエルファエルに送る重要任務だ。お前さんの足かせを外すのはあちらの代表者の前でって事になってる」


「そうですか。要らない発言しました。」


そう言って《神眼{把握}》でエルファエルからの使者を捉える事に集中しようとすると、ディエゴ・マルク大将は僕の顔を覗き込んできた。


「あの、何か僕の顔についてますか?」


「ん〜?国から貰った資料に書いていたよりも、壁がある様な気がしてな。それに少し前まで俺はお前さんと同じ天才児の面倒を見ていたんだよ。

そいつと比べてるってところだ」


「僕は天才児じゃないですよ」


「はっはっはっ!!!十分に天才だよお前は。資料は見たからな。そこいらの祝福の世代など相手にならんほどの才能をお前は持っている。

お前が自分をどんな風に評価していようとな、周りのお前への評価は完全に固まっているんだよ」


ディエゴ・マルク大将は笑いながらそう言って僕の頭を叩いてくる。同じ対象でもあのお爺さんとは違って普通の中年のおじさんと言った印象がある。そして何故かエルファエルの使者団から一人この陣幕に急速接近してくる人がいた。

というか、この場所目掛けて物凄いスピードで迫ってきたかと思うと、少し離れたところで普通の歩くスピードになる。


「おっどうやらきたみたいだな。」


ディエゴ・マルク大将も気づいたみたいだけど、僕自身はまだその人の気配を感じ取れてない。

《神眼{把握}》の能力でわかっているだけで、まだ気配自体は感じ取れてないんだ。ディエゴ・マルク大将が気づいたのは気配でなのか、はたまたスキルでなのか、見た目以上の実力は流石は大将と言ったところだね。

数秒後僕もやっと気配を感じ取る事ができ、さらに数秒後目の前の陣幕が揺れ外から長い金髪と碧眼が印象的な女性が入ってきた。


「待たせた。エルファエル・スフィネラ一級将官ただいま到着した。」


「おう、こちらディエゴ・マルク大将だ。んでこっちのちびっこが世界樹に選ばれた少年マーリンだぜ」


入ってきた女性は開口一番に名乗りあげると、ディエゴ・マルク大将の名乗り返しが始まった時には僕の顔を重視していた。 

いやそこはディエゴ・マルク大将の方を見ていた方が良いんじゃないかとも思うんだけど、返しを終わった本人が慣れた様子なので僕からは何も言わない事にする。


「君がシェーラの息子のマーリンで間違いないかい?」


エルファエル・スフィネラと名乗った女性は垂れた前髪の髪を長い耳にかけながら、僕の方にゆっくりと近づいてくる。

いくらなんでもディエゴ・マルク大将をぞんざいに扱いな気がするんだけど大丈夫なのかな?

ちょっと横目で確認してみればディエゴ・マルク大将が悲しそうな表情で空を見上げてるんだけど。


「ぇ、はい。シェヘラザード母さんは僕の母です。」


どう対応するべきか悩みながらそう返答すると、さらにスフィネラさんは僕に近づいてきて、手を差し出してくる。


「シェーラとは学生時代から友達でね。マーリンくんの話はよく手紙や通話でシェーラから聞いていたよ。」


「そうだったんですか。」


シェーラ母さんの言っていたエルファエルにいる友達というのはスフィネラさんのことだったらしい。ちょっとした疑問も解消してすっきりとはなったんだけど、スフィネラさんは握った手を離すどころか、更に体を近づけてきて僕の髪やらを触り始めた。

なんとも自然な動きすぎて何もいう事ができないんだけど、だんだんとスフィネラさんの目に熱が篭ってきている気がしなくもない。


「ああ…あのシェーラに瓜二つで大変可愛らしい子だとね。手紙に光魔術で君の姿を送ってもらったこともあるが、実際に見ると本当に瓜二つだ。

白銀の様な髪も、夕暮れ色の瞳も白い肌も本当に似ているよ」


「えっと、あの………」


「私が初めて出会った時のシェーラよりも随分と若いシェーラを見ている様で、なんとも言えない気分になるよ。

まだ後ろにいる使者団が到着するまで時間もある事だし、少しお茶でも飲みながらお話ししないか?」


「あのそれよりもやる事が、、、」


僕がそこまで言うとスフィネラさんは僕から離れないまま、


「ディエゴ・マルク大将殿。世界樹に選ばれた者であるマーリンくんの身柄確かに私が引き受けました。そこの台に足枷の鍵を置いておいて貰えれば大丈夫ですので、少しだけマーリンくんと二人きりにさせてください」


そう早口で捲し立てた後、また僕の目を見つめながら僕に喋りかけてくるスフィリアさん。

喋りかけられ程にスキンシップが激しくなるんだけど、一切の不快感を与えてこない。


「さぁ用事も済んだ事だし話を続けよう。マーリンくんはどんなお茶が好きなのかな?色んな茶葉を持ってきているからぜひ教えて欲しい。」


「僕はそこまでお茶にこだわりはないですよ」


「そうなんだね。じゃあ私が色々と教えようか。シェーラが好んでいた茶葉もあるし、こういう事は知っておいて損はないから。

どうせならお酒でも良いからしれないね。」


「えっと、お酒は少し前に失敗したので控える様にしているんです」


「では尚の事勉強した方がいい。より詳しくなる事で失敗する事は無くなっていくからね。

安心してもらっていいよ。私の家で教えるから、気を楽にして学んでいけばいい」


「いえ、流石に家に行くのは失礼ですから」


「それなら問題はないよ。私から一言言えばすぐに済むから。なんなら私の家から学園に通うのもいい。私は大歓迎だよ」


なんだろう。想像していた使者の人と全然違う。見た目は凄く美人なエルフの人で間違い無いんだけど、どことなく危ない雰囲気がする。というか僕ナンパされてるみたいになってるんだけど、僕ナンパされてるよね?

お母さんの友達にナンパされてる気がしてるの僕だけじゃないよね?

想定外の事態に押されぱなしの僕を助けてくれたのは、さっきまで悲しげな顔をしていたディエゴ・マルク大将だった。


「おいおいそういうわけにはいかんだろ。マーリンも急な事で面食らっているし、一旦離れてやれ。んで今二人っきりにすると何かと問題もある。俺がマーリンから目を離していいのは全てのことを終えてからだからな」


ディエゴ・マルク大将のその言葉でようやくスフィネラさんは動きを止め、名残惜しそうに僕から少しだけ距離を作った。とはいえ少し動けば体が当たりそうな距離ではあるんだけど。

離れる際にとても小さな声で「あと少しで、中年が…」と言っていたのを聞いたのは僕だけだろう。この一年の修行の成果を感じた。


その後は僕の足枷を外したり、エルファエル側からの新しい足枷をつけられたりして、エルファエル側の使者団が来るまでの時間を潰した。

その時もまだ北領同盟側の筈の僕の側にはスフィネラさんがいて、ディエゴ・マルク大将は向かい合う様な立ち位置だ。

そんな扱いを見て少しだけかわいそうな気分に僕はなった。


ある程度する事が終わればスフィネラさんはエルファエルの使者団のもとへ戻って行ったんだけど、何故か戻ることを凄く渋っていた。


「ディエゴ・マルク大将も色々と大変なんですね」


「まぁ慣れると案外大したことねーぜ。マーリンも大変だろうが頑張れよ」


僕とディエゴ・マルク大将がエルファエルに向かう六人のところに戻ってから数分後、エルファエルの使者団が到着した。

またそこでも少しだけ公式の場での手順として色々やり、なんだかんだと今はエルファエル側が用意した二つの六人乗りの車の片方に乗っている。

もう片方の車には僕以外の留学生と講師の六人が乗っていて、僕の方には僕とスフィネラさんが乗っていた。

人数わけについてはスフィネラさんが上手いことこういう形にしていたわけだ。


「さっきは中年に邪魔をされてしまったけど、今度はゆっくり話をしようマーリンくん。」


「ははは、エルファエル・スフィネラ一級将官様、少し距離が近くありませんか?」


「距離が近い方が話しやすいと思いまして。それと二人の時はスフィーと呼んで欲しい。シェーラからはそう呼ばれていたからね」


「じゃあスフィネラさんで」


窓際に座る僕の隣に座っているスフィネラさんの前には空席のがあるわけだけど、それを言ってもスフィネラさんは僕の隣から動かないだろう。

僕はエルファエルの首都に着くまでの間、何かと約束を結んでこようとするスフィネラと激しい言葉の攻防戦を繰り広げた。

結果的に立場上のハンデがあり、首都で一度一緒に出かける約束をさせられ、僕が負けた。

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