9/14
負けて舐める土俵の味は、苦くて塩辛い。あいつは人気者で私は・・・。
私の味覚は、苦さと塩辛さを同時に感じていた。
塩が撒かれた土俵の味。
負けた。
桃優奈に負けた。
フワッと立ってしまった私は、桃優奈の立会いの変化に付いて行けず、あっさりと土俵に這いつくばってしまった。
女子大相撲は、まだ興行として立ち上がったばかり。
本来なら、立会いの変化であっさり終わってしまう相撲はファンをがっかりさせる。
しかし、桃優奈は存在しているだけで華があった。
全力女の中で、彼女だけが立会いの変化を許されていた。
そんな決まりなどどこにもないが、みんなそう感じていた。
茫然自失として土俵を降りる。
滅多に勝てない桃優奈が勝ったものだから、客席は大いに沸いていた。
花道を去る私の背後で、更なる歓声が起こる。
おそらく桃優奈がまた投げキッスか何かをしたのだろう。
実際は違っていたのかもしれないが、それが何かは知りたくもない。
全観客が、桃優奈の勝利に沸きかえっていた。
私と桃優奈。
同じまわし姿なのに。
私を見る人は一人もいない。
やばい。
泣きそう。
私は早足で花道を駆け抜け、支度部屋へと向かった。




