稽古にチャンコ。乙女たちの共同生活は、くちゃくちゃだ。
そんなこんなで女子大相撲に出会った私はこの世界に入り、四股名をもらって力女となった。
玉桜というのが私の四股名だ。
入門当時既に丸々と太っていて玉のようだったのと、本名がさくらだったから玉桜になった。
割合に安直なネーミングである。
入門したら稽古場のある道場で共同生活をする。
親方は引退した力女で、前述したウルフ井上だ。
他に女の行事と呼び出しがいるが、こちらも元プロレスラーの元力女である。
ウルフ井上とともに女子大相撲を立ち上げたメンバーだ。
親方は身長175センチ、体重120キロ。
プロレス時代は髪をモヒカン刈りにして、顔にペイントを施して極悪ヒールとして活躍していた。
他の2人も結構でかい。
あとはみんな現役の力女で、本場所の準備やら稽古場の掃除やら、ちゃんこの用意などの雑用は協力して行う。
女の子だけの共同生活というのも色々ありそうで不安なのだが、くちゃくちゃな姿を晒した後で近所の人に会うのも恥ずかしいため、道場にいられるというのはありがたい。
稽古はほぼ男子と同じ内容だ。
朝5時に起きて、朝食の前に朝稽古が始まる。
股割りなどの柔軟体操のあと、四股、すり足、テッポウといった基本動作を行う。
ぶつかり稽古をして、最後は申し合いで終了だ。
稽古が終わるとちゃんこを食べ、その後は昼寝。
夕方は各自で筋力トレーニングなど、自分の課題にあったところを鍛える。
夜のちゃんこを食べたら就寝。
こんな日が毎日続く。
着るものはいつも浴衣。
本場所の土俵に上がらないときでも、化粧は別に禁止されてはいないが、私は普段はしない。
腋の毛はすり減ってしまうので処理する必要がない。
入門して何か月か稽古をしたら、幕下力女として前座デビューをする。
中には緊張のあまり泣き出してしまう子もいるが、私は違った。
いざ土俵に上がると集中力が増していき、周りの音はどこかに消えてしまって聞こえなくなった。
私の心を占めていたのは、ただ目の前の敵をぶっ飛ばしてやる、土俵の下に思いっきり叩きつけてやる、といった執念だけであった。
見事押し出しでデビュー戦に勝利した私は、居場所を見つけたと思った。




