千秋楽。滾って、滾って、滾り尽くせ!
そして迎えた千秋楽。
これまで2敗で、3人の力女が並んでいる。
そのうちの2人は今日対戦する。私と、唯一の外国人力女、ロシア出身の愛里女関だ。
愛里女関はロシア人だけあってでかい。
身長182センチ体重140キロ。
ほとんど男子の相撲取りと変わらない大きさだが、愛くるしい顔立ちで人気がある。
金髪を日本髪に結い、その瞳の色と同じ紺碧の締め込みに、白い肌がよく映える。
太っていようと痩せていようと、モテる女はモテる。
だから何だと言うのだ。
以前の私であれば、こういうところが気になってしょうがなかったが、今の私は違う。
土俵に上がれば、もう周りの音は聞こえない。
圧倒的な静寂の中、裸同然の女が2人。
おそらくこの空間の外では、興奮した歓声が渦巻いているのであろうが、私はそいつらを土俵の上には入り込ませない。
東に茄子紺の締め込み・玉桜。
西に紺碧の締め込み・愛里女。
行司軍配が返り、構える。
愛里女関は闘志が凄い。
母国を捨て、取り返しのつかない体になって、衆人環視の中で自分をさらけ出すその覚悟は生半可なものではない。
でも、私もこの小さな丸い体に私の人生を詰め込んできた。
お互い歩いて来た道は違う。
日本人に生まれた私の道は、愛里女関が歩んできた道より平らな道だったかもしれない。
だから、どうした。
私は私だ。
この瞬間。
全身全霊を込めたこの瞬間に、私はありったけの闘志をぶつける。
血が騒ぐ。
まだ足らない。
さらに闘志を込める。
いや、闘志じゃ足らない。
闘魂だ。
魂を燃やすのだ。
血が、滾った。
そうだ、これでいい。
滾って、滾って、滾り尽くすのだ。




