私は変わった。強敵相手に、思い切りぶちかます。
その日から、私は変わった。
初日から2連敗スタートしてしまったが、まだこれからだ。
あと残り全部勝てば、優勝決定戦に進む可能性もある。
私は雑念を払うように、稽古場にあるテッポウ柱に、ひたすら両手の平を打ち付けた。
3日目の対戦相手は唐紅の締め込み・栃乙女関。強敵だ。
栃木県出身で、元バスケットボール選手。高校時代にインターハイに出場したこともある。
身長は180センチ、体重110キロ。
重いが、背が高いため、そんなに太っている感じはない。
力も強く、長い手で後ろ廻しを捕まえられると、身動きが取れなくなってそのまま吊られてしまう。
今まで2回対戦して、2敗。
でも、それがどうした。
元バスケットボール選手だろうが、インターハイだろうが、条件は同じだ。
相手も私も、身に付けているものは、まわしのみ。
お互い覚悟を決めて、この世界に入ってきた。
だとしたら、勝敗を分けるのはハートの差じゃないか。
東に唐紅の締め込み・栃乙女。
西に茄子紺の締め込み・玉桜。
行司軍配が返り、立会いに構える。
栃乙女関は顔もでかい。気合十分、忿怒の表情で私を睨みつけてくる。そのままどこかのお寺で不動明王として祀られてもおかしくはない。
私も睨み返す。
ぶちかましてやる。
いや、これでは足らない。
ぶっ潰してやる。
叩きつけてやる。
打ち崩してやる。
八卦良い、残ったの合図で、頭から突っ込む。下から上に突き上げる。
立会いで変化するのなんて桃優奈だけだ。
逆に今までそのことがネックになって、思い切り突っ込めないでいた。
相手が変化しないのを分かっていて頭から行くのは卑怯じゃないかという気持ちがあった。
今日は思い切っていった。
栃乙女関の胸の真ん中に頭がぶつかる。
跳ね返って、2人の間は僅かに離れたが、まだ体は崩れていない。
相手も強い。私の頭突きくらいではビクともしない。
私の口元に自然と笑みが浮かんでくる。
面白いじゃないか。
これを求めていたんだ。
自分の中にある、好戦的な血が騒ぐ。
左右の突っ張りを繰り出す。私は押し相撲だ。普段、突っ張りは使わない。
相手も怯まない。突き返してくる。
まだ、駄目だ。
血が騒ぐぐらいじゃ、駄目だ。
もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと。
バチンと、左から張られた。
一瞬、クラッとなる。
まだまだ。
今度は、右から。
血が、滾った。




