第121話 いざ、バベルの塔へ
バベルの塔内部は一階層ごとにそれぞれ異なるダンジョンが形成されており、その何処かにある上層階へ向かう階段を登ることで攻略したと判定される。
一度攻略された階層は後続のプレイヤー達も入り口付近に設置されたワープパネルを踏むことで素通りすることが出来、安全に最前線まで進むことが可能になっていた。
現在は、いわゆるボス部屋になっている第五十階の直前、第四十九階の階段前までワープすることが出来る。
「……遂に入ってきちゃいましたね、バベルの塔」
「ああ、いよいよだな」
ミツルは、硬い表情をした茶々丸のそんな言葉に頷いた。
事前の情報などから、塔内部に入るのに警告表示の類がないことは承知済みではあったが、まさか本当に何もないとは思わなかった。
序盤の方は、何も知らないプレイヤーが偶然入ってしまい閉じ込められてしまった事例も、幾らか発生していたらしい。
実際塔に入って早々、入り口付近の広場にたむろする一般プレイヤー達の姿が見えた。
「……おや、新入りかい」
ミツル達を見留めると、地べたに座り込んでいた彼らのうちの一人がゆらゆらと立ち上がり、そう声を掛けてきた。どうやら顔役らしい。
全部で十五人。国籍はまちまち。
装備を見る限り、明らかに戦闘職だろうと思われるプレイヤーは二、三名程度で、その彼らも含め、一行は残基を相当消耗している。
最初期に塔に迷い込み、ダンジョンのモンスターと不慣れな戦いに巻き込まれたプレイヤーと、攻略組ながらリタイアした者達と見て間違いないだろう。
「どうも。攻略組に参加する為にやって来ました」
「おお、なら新しい勇者御一行ってわけだ。あんたらの武運長久、願ってるよ」
言って、顔役の男は付け足した。
「見ての通り、俺達は端から戦えないか、もう戦えなくなった連中ばかりだ。
戦闘には何の役にも立たんが、それでも二十人居るんだ。もし何かあってここまで降りてきてくれれば、出来る限りのサポートはさせてもらうよ」
「二十人? 少し足りないように見えるが……」
ミツルの後ろからひょっこり顔を出した九龍が聞く。
直後、広間の奥、ダンジョンに通じる道の向こうから大きな声と共に複数の足音が聞こえてきた。
「みんな、大変だぁ!!!!」
現れたのは男女三人のプレイヤー達。それぞれHPが半分を割り、装備の耐久値もマズそうだ。
「おいおいどうした。若いの二人はどこ行った?」
座っていたプレイヤー達がめいめいに立ち上がり、走ってきた彼らを抱き止めそう尋ねる。
叫び声をあげていた一人が、錯乱したように言った。
「突然石壁をぶち破ってデカいモンスターが何体も現れて……逃げてる途中ではぐれちまった。探しに行こうにも、まだ連中がいると思うと……」
そう言って崩れ落ちたプレイヤーをみんなが支える。
ミツルは急いで駆け寄ると、あとから続いた二人のプレイヤーに聞いた。
「どこで襲われたんですか?」
「ダンジョンの最奥部直前、我々が第六エリアと呼んでいる場所です」
「……あ、マップ見せますね。ここです」
二人のうちの一人、女性のプレイヤーがそう言ってエリアマップを開き、指差した。
攻略本の情報通りなら、確かレア度の高い薬草等が取れる地点だ。その採集中に、襲われたということだろう。
「――ありがとうございます。茶々丸、九龍」
「はい、行きましょう」
「肩慣らしには丁度いい」
三人は頷くと、慌てふためくプレイヤー達の横をすり抜け、ダンジョンの奥へ踏み出した。




