7. 評価ポイントその2なのじゃ
☆データ情報☆
※使用したデータは2026年09月29日時点のものなのじゃ。そのため今の値から多少ずれがあるのじゃ
※これらのデータは公式から提供されるものではなく、個人が集めたデータからの推測なのじゃ。
「さて今回は、評価ポイントを時間の流れで見ていくぞ。評価ポイントの歴史を語る上で、絶対に避けて通れぬ運命の特異点が存在するのじゃ」
「と、特異点……ですか……?」
「うむ。グラフで見ればそれがすぐに分かるぞ。
なお今回のグラフの読み方はブックマークの回と同じじゃ。横軸は作品が始まった年、つまり初回掲載年で、それぞれの点はその年に始まった作品だけを集めた値じゃぞ」
「まずは、各サイトの初回掲載年ごとの評価ポイントの中央値じゃ。ムーン女性向けを見ると、2019年は約200ptじゃった中央値が、2021年には約700ptと、およそ3.5倍に跳ね上がっておる。ムーンBLも約250ptから約540ptへと2倍以上、ノクターンも約70ptから約120ptへと上がっておる」
「あ、あの……! ブックマークの時は、山が2016年から2017年あたりにあって、その後は下がっていたはずですよね……? どうして評価ポイントだけ、2021年から2023年がこんなに高くなっているんですか? 2020年って……巣ごもり需要で読者さんが一気に増えたから、ですか……?」
「鋭い推測じゃが、巣ごもり需要だけではこの段差を説明できんのじゃ。2019年と2021年の作品を比べると、ムーンBLやノクターンのブックマーク中央値はほぼ横ばい、ムーン女性向けでも約1.4倍に留まっておる。読者の数が増えただけなら、ブクマも同じくらい増えておらんと辻褄が合わんじゃろ?」
「では、読者さんの数が増えたわけじゃないのに、どうして星だけがこんなに急に増えたんですか……!?」
「読者の数が増えたのではなく、同じ読者が評価を入れやすくなった――そう考えるのが一番筋が通るのじゃ」
「ここで、2020年3月3日に行われた評価フォームの機能改修について教えよう。小説家になろうの公式ブログでお知らせされたものじゃ。この図を見るのじゃ」
「改修前と改修後の画面が並んでいますね。あ、昔の画面、なんだか評価しにくそうです……」
「そう! 改修前はな、作品を評価しようと思ったら、『文法・文章評価』で1〜5ptを選び、さらに『物語評価』で1〜5ptを別々に選び、その上で『評価する』ボタンを押さねばならんかったのじゃ。しかも、連載作品では最新話の一番下にしか評価欄が置かれておらんかったのじゃ」
「ええっ……!? 文章と物語をわざわざ別々に採点して、ボタンまで押す……!? そ、それは……読者さんからすると、すごく面倒くさいですね……」
「面倒じゃろ? それが2020年3月3日の改修で、今の形に生まれ変わったのじゃ。文章とストーリーの区別はなくなり、☆を1回押すだけの5段階評価になったのじゃ。さらに、連載作品のすべての話の下に評価フォームが置かれ、読んでいる途中でもいつでも評価できるようになったぞ」
「読者さんの手間が一気に減ったってことですね!」
「然り! 評価を入れる手間と心理的なハードルが、ぐっと下がったのじゃ。その結果、同じくらいの読者数でも、入るポイントが大きく増えた……これが、2020年に起きた大変化の正体だと考えられるのじゃよ」
「仕組みそのものがガラリと変わったから、傾向まで一変しちゃったんですね……!」
「評価フォームの変化を理解したところで、次は初回掲載年ごとの評価ポイントが0ptの作品の割合を見てみるぞ。その年に始まった作品のうち、いまも評価が1つも入っておらん作品が何%あるかじゃ。線が上にあるほど、評価0の作品が多いということじゃな」
「評価がゼロの割合……ノクターンは昔の作品だと少なかったのに、2016年以降は10%を超えて、2026年だと約25%まで上がっていますね」
「うむ。ノクターンでは、新しい作品の4つに1つが評価ゼロじゃ。ブックマークの回で見た2026年のブクマ0件(約9%)と比べても、評価ゼロのほうがずっと多い。男性向けの読者の『ブクマはするが、評価は入れない』という傾向が、ここでもはっきり表れておるな」
「やっぱり、男性向けは星を入れてもらうのが難しいんですね……。あ、でも神様! ムーン女性向けを見てください! 2020年以降はずっと数%で、2026年の作品ですら評価ゼロは少ないですよ!?」
「素晴らしい着眼点じゃ! ブックマークの回で、2026年のムーン女性向けはブクマ0件が約11%あったのを覚えておるか?」
「はい! 覚えています!」
「ブクマ0件が約11%あるのに、評価0は約2%しかないのじゃ。つまり女性向けでは、『ブックマークはしないけれど、面白かったら星だけは入れていく』という読まれ方があるようじゃな」
「ブクマはしないのに、星だけは置いていってくれる……! 女性向けの読者さんって、評価に積極的なんですね……。……あ、あの……ミッドナイトは……」
「うむ、ミッドナイトは……2016年以降ずっと48〜60%が評価ゼロじゃ。2026年に至っては約70%が0ptじゃな。何年経っても半分前後はゼロのまま……改修の恩恵すら届いておらん、相変わらずの超ハードモードじゃよ」
「ううっ……時間が経っても半分前後がゼロのまま……! やっぱりミッドナイトの壁は分厚すぎます……」
「落ち込むのはまだ早いわ! ここからが本題、サイトごとに作品形式(短編/完結連載/連載中)で分けた中央値の移り変わりじゃ。縦軸の最大値はサイトごとに大きく違って、ノクターンは200ptほど、ムーン女性向けは1,400ptほどまであるから、数字をよく見て比べるのじゃぞ。
まずノクターンじゃ。完結連載がずっと一番上で、短編と連載中が同じくらいじゃったが、2021年あたりから短編が連載中を追い抜いて、完結連載に迫る勢いで伸びておる。短編の山は2022年の約130ptじゃ。
そして一番変化が大きいのはムーン女性向けじゃ。2019年までは完結連載が圧倒的トップじゃったのに、2020年から短編が急上昇して……2023年には短編の中央値が約1,400ptになって、完結連載(約1,100pt)を逆転したのじゃ。2019年の短編は約90ptじゃったから、4年で約15倍じゃ。
ムーンBLも同じじゃ。2020年に短編(約700pt)が完結連載(約500pt)を一気に抜き去り、2021年には約1,100ptの山に達しておる」
「ど、どうして短編だけ、こんなすごい伸び方をしているんですか……!? 短編って、1話で終わっちゃう短いお話ですよね……?」
「さっきの評価フォームの改修を思い出すのじゃ。短編は1話でサクッと読める。そして読み終えたすぐ下に、☆を1回押すだけの評価フォームが待っておる。物語を読み終えた余韻の中で、そのまま★5を押す読者が多いのじゃろう。短編こそが、改修の恩恵を一番受けた形式だと考えられるのじゃ!」
「あっ! 短編は完結しているから読み終わった満足感もあるし、その場ですぐ星をつけられるから、読者さんが一番評価しやすいんですね……!」
「その通りじゃ! 一方、連載中を見よ。ムーン女性向けもムーンBLも、改修後ですら90pt以下の低いところを這っておるじゃろ? すべての話の下に評価欄が付いたにもかかわらずじゃ。つまり『評価する場所がなかったから入らなかった』のではなく、『物語が完結するまで星を入れない読者が多い』という見方の裏付けになるのじゃよ」
「な、なるほど……! いくら押しやすくなっても、完結していない連載には星を入れない……読者さんの心理って徹底しているんですね。……あ、でもミッドナイトは……短編も連載中も2017年以降ずっと中央値0ptで、完結連載だけがかろうじて数ptから十数ptを拾えている状態ですね……」
「うむ。ミッドナイトで評価が入っておるのは、ほぼ完結連載だけじゃな。そして女性向けでは、短編の真ん中の作品が1,000ptを超える年もある。
ただし、これは中央値の話じゃ。半分の作品はそれ以下じゃし、短編を書けば誰でも高得点を取れるという意味ではないぞ。ノクターンの短編の山は約130ptで完結連載を追い抜くほどではないから、男性向けでは女性向けほど極端な短編優位にはなっておらん。そこは勘違いせんようにな」
「さて、今度は各年に始まった作品が、いま持っておる評価ポイントの合計を見るぞ。ブックマークの回と同じく、その年に付いたポイントではなく、その年に始まった作品がこれまでに集めたポイントを全部足したものじゃ。
全体のグラフを見ると、2019年が約1,000万ptじゃったのに、2020年は約1,960万ptとほぼ倍増して、2021年の約2,530万ptが山になっておる」
「合計のピークが2021年なのは、ブックマークの合計グラフと同じなんですね」
「どうやらそのようじゃ。そして、全サイトの評価ポイント約1.8億ptのうち、実に約75%が2020年以降に始まった作品に集まっておるのじゃ! ブックマークの合計では、2020年以降の作品が占める割合は約52%じゃった。評価ポイントがいかに新しい作品に偏っておるか、数字で一目瞭然じゃろ」
「ちょっとの改修が、これだけ影響するんですね……」
「そのようじゃな。運営が仕組みを1つ変えるだけで、サイトの生態系はここまで劇的に変わってしまうということじゃ」
「サイト別にも見てみるぞ。ノクターンは2022年の約460万pt、ムーン女性向けは2021年の約1,200万pt、ムーンBLも2021年の約900万ptが山じゃ」
「どこも、改修以降はポイントが入りやすくなってるんですね」
「うむ。それと、ノクターンとムーンBLは2025年の作品の合計が2024年を上回っておる。ノクターンは2025年に作品数が大きく増えておったな。ブックマークの合計は減っておったのに、評価ポイントは増えておるわけじゃ。
ただし、ミッドナイトだけは山が改修前の2018年(約13万pt)のままで、2020年の段差が出ておらん。縦軸の桁も他のサイトより2つ小さいぞ」
「うう……ミッドナイトだけ、改修の波に乗れずに取り残されちゃっていますね……。でも神様、2020年より前の昔の作品って、改修された後に読まれて星が入ったりはしなかったんでしょうか……?」
「もちろん、改修後に入った分もこの数字には含まれておる。じゃがな、古い作品の多くはすでに読まれ終わっておる。昔読んだ作品をわざわざ探し出して、新しくなった星を押しに戻ってくる読者は、そう多くないと考えられるのじゃよ」
「あ……そっか。昔の作品をわざわざ読み返して評価し直す人なんて、あまりいませんよね……」
「そして最後の仕上げじゃ。前回教えた『平均★評価』を、初回掲載年ごとに見たものじゃ。その年に始まった作品の平均★を並べて、その真ん中の値をサイトごとに線にしておる」
「星の平均値……! あ、あれ……? 神様、2005年から2009年あたりの古い作品って、星の平均が3.0から3.5くらいで、すごく低くないですか……? 2015年以降はどのサイトも4.3以上で安定しているのに……昔の読者さんって、みんなものすごく辛口だったんでしょうか……?」
「うむ。評価についても2009年のリニューアルで一新されたものじゃからな。ついておるポイントは完結、もしくは更新が止まってから入れたもので、辛口じゃった可能性もあるのう。
もう一つ考えられるのは読者層の変化じゃな。2010年ごろは本体のなろうが法人化して急激にユーザーが増えた時期じゃ」
「な、なるほど……!」
「サイトが大衆化するにつれて、気楽に★5をつける読者が増え、甘めに採点する文化が定着したのではないかと思われるのじゃ。2020年の改修で評価を入れる人の数自体はさらに増えたが、甘めに採点する読者層の傾向はそのまま変わっておらんからな。
ちなみにミッドナイトの線が上下に揺れておるのは、評価が入った作品の数が少なくて、中央値が動きやすいからじゃ。ミッドナイトは『評価がゼロか、気に入られて★5をもらえるか』の極端なオール・オア・ナッシングになりやすい場なのじゃな」
「ミッドナイトだけ世界が違いますね……」
◇
「ふう……どうじゃ小僧、2020年の変動の全貌は見えたか?」
「は、はい……! ものすごく衝撃的でした……! 評価フォームが変わっただけで、全体のポイントが何倍にも跳ね上がって、短編が完結連載を逆転しちゃうなんて……」
「うむ。今回の教訓をしっかり胸に刻むのじゃ。
第一に、評価ポイントは2020年の評価フォームの改修を境に、別物と言ってよいほど変わったこと。
第二に、全評価ポイントの約4分の3は2020年以降の作品が持っており、昔の作品と今の作品を同じ物差しで比べてはならんということ。
そして第三に、改修のあと、女性向けでは短編が完結連載と並ぶ、あるいは追い抜くほどの強さを見せておることじゃ!」
「サイトの仕組みやルールを知らないと、データの本当の意味を見誤っちゃうんですね……。僕も闇雲に書くんじゃなくて、ちゃんと形式や特性を考えなきゃって思いました……!」
「殊勝な心がけじゃ! じゃがな小僧、戦いはまだここからじゃぞ。これまでに学んだブックマークと評価ポイント……この2つが合体した時、ランキングの王者を決める最終指標が姿を現す! 次回、総合ポイントの真実を、余すところなく暴いてみせようぞ!」
「は、はいっ! 次回もよろしくお願いします、神様……!」
なに? 評価ポイントを付けたことがないじゃと?
ならばこの下の評価フォームで、わしがやさしく手ほどきしてやろう。
ほ~れ☆をぽちぽちっと……そう、上手じゃ♪




