6. 評価ポイントその1なのじゃ
☆データ情報☆
※使用したデータは2026年09月29日時点のものなのじゃ。そのため今の値から多少ずれがあるのじゃ
※これらのデータは公式から提供されるものではなく、個人が集めたデータからの推測なのじゃ。
「前世で遊んだ乙女ゲームの世界に転生しとると10歳の高熱で思い出して、しかも転生先は断罪イベントで婚約破棄されて処刑が確定しとる悪役令嬢で、『破滅ルート回避!』を掲げて幼少期から攻略対象には極力近づかんようにしとったのに、死亡原因の一人である護衛騎士だけはずっとそばにおって、これはやばいのぉと内申焦りつつしれっと遠ざけることも試してみたがずっとそばにおる、まぁ攻略対象ではないからええかとあきらめて放置しとったが、無口で無愛想で表情筋が死んどって何考えてるかわからんくせに転べば受け止めるし夜会で絡まれれば無言で割って入るし何故か好感度が高い、とはいえ破滅の可能性もあるからちゃんと線引をしつつ過ごし、頑張って破滅ルートを回避しとったはずが、ヒロインに転生した日本人の策略で結局は断罪イベントに引きずり出されて、このままでは騎士まで巻き添えじゃと『本日をもって護衛の任を解きます』と突き放す、一人で泣いて身辺整理をして『ここまでか……』と諦めとったところ、断罪の当日に姿を消しとった騎士が集めた証拠と証言で冤罪を全部ひっくり返してざまぁ、続けて騎士が跪いて『ずっとお慕いしておりました』と求婚、その後は無事に【自主規制】で、愛が重すぎる【自主規制】生活……そんな溺愛をされたいのじゃ~、のじゃ~……おっ、小僧。来たか」
「こ、こんにちは……」
「うむ、今日もエナドリご苦労。では今日は、ランキングの命運を分ける『評価ポイント』の生態系へ切り込むとするぞ!」
「えーっと、評価ポイントって、読者さんが星をつけてくれるやつですよね。でも神様、そもそも評価ポイントってどういう仕組みで計算されているんですか……? 僕、星の数とポイントの関係がよくわかっていなくて……」
「良い質問じゃ! まずは基本のルールを授けてやろう。今の評価の仕組みでは、読者は1つの作品に★1〜5の星をつけることができる。そして★1つにつき2ptに換算されるのじゃ」
「ええと……つまり、★1なら2pt、★5なら10pt……ってことですか?」
「その通りじゃ! 1人の読者が1つの作品に入れられる評価は、最低2ptから最高10ptまでとなるのじゃ。
ちなみに、この形になったのは2020年3月の評価フォームの改修からじゃ。それ以前は文章とストーリーの2つの項目に分けて点をつける仕組みじゃった。昔の話は次回じっくりするぞ」
「昔は違ったんですね」
「うむ。そしてもう1つ、この先のグラフを読むための物差しを授けておこう。『10pt=★5が1人分』じゃ。もちろん★2と★3を1人ずつでも10ptになるが、目安としてはこれで十分じゃ。この物差しを持っておくと、この後のグラフが劇的に読みやすくなるぞ」
「わかりました」
「では、最初のグラフじゃ。全作品の評価ポイントの分布を見るがよい! 全体の10.8%、およそ9作品に1つが評価ポイント0ptじゃ。前回のブックマーク0件が全体の5.9%じゃったから、およそ2倍じゃな。評価ポイントのほうが、ブックマークよりも獲得のハードルが高いことが分かるじゃろ」
「誰かに評価してもらうのって、ブックマークを付けてもらうよりも難しいんですね……。あ、あの! グラフを見ていて気になったんですけど、0ptの次の1〜9ptが6.4%と少なくて、その次の10〜99ptが32.1%と急に跳ね上がっていませんか? ここだけ谷間みたいになっていて、不自然に見えます……」
「おおっ、素晴らしい観察眼じゃな小僧! じゃがこれこそ、先ほど教えた仕組みがそのまま数字に表れた結果なのじゃよ」
「えっ、仕組み……ですか?」
「読者が★5をつければ、一発で10pt入るじゃろ? 1〜9ptの枠に収まるのは、1人だけが★1〜4の控えめな評価をつけた場合(2、4、6、8pt)くらいしかないのじゃ。読者は気に入ればたいてい★5を投じるゆえ、0ptの次は一気に10pt以上の世界へとワープしてしまうわけじゃな」
「あ、ああっ! そっか……! 1人が★5を入れた瞬間に10pt以上のグループになっちゃうから、1〜9ptにはほとんど残らないんですね……!」
「その通りじゃ! そして100pt未満が49.3%、100pt以上が50.7%となっておる。全体のちょうど真ん中は、およそ100pt――すなわち『★5をつけてくれた読者が10人おるかどうか』が目安というわけじゃな」
「全体像を掴んだところで、いよいよサイトごとの比較に入るとしよう。各サイトの中央値じゃ!」
「ええっ……!? 中央値、サイトごとの差が凄まじくないですか!? ノクターンが66ptなのに、ムーン女性向けは262pt、ムーンBLも222pt……! 女性向けはノクターンの4倍近くもありますよ!?」
「驚いたじゃろ! ブックマークの中央値では、ムーン女性向け(110件)はノクターン(47件)の約2.3倍じゃったが、評価ポイントでは約4倍へと差が広がっておるのじゃ。★5の人数に換算すれば、真ん中の作品でノクターンが約7人に対し、ムーン女性向けは約26人じゃな。
面白いのはムーンBLじゃ。ブックマークの中央値(66件)はノクターン寄りじゃったのに、評価ポイント(222pt)はムーン女性向け寄りになっておる。評価の入り方は、男性向けと女性向けではっきり分かれるようじゃな」
「女性向けの読者さんって、そんなにたくさん星をつけてくれるんですか……? もしかして、女性向け作品のほうが作品としてのクオリティが高い……とかでしょうか……?」
「慌てるでない、それは早計というものじゃ。これは作品の質の差というより、読者の評価の入れ方の差と見るべきじゃ。その理由は後で★の平均を見れば分かるぞ」
「次は箱ひげ図を見るのじゃ。前に教えたとおり、箱が真ん中50%の普通の作品が入る範囲、箱の中の線が中央値、ひげの先端が最大値じゃ。縦軸は100ptを超えたところから対数目盛りじゃぞ。
箱を見ると、ノクターンが約20〜270ptなのに対し、ムーン女性向けは約30〜1,700pt、ムーンBLは約40〜1,300ptとなっておる。箱の上端だけで比べても、ムーン女性向けはノクターンの6倍以上の高さにあるじゃろ?」
「本当だ……!」
「どうやら女性向けの読者には『面白かったら星をつける』という習慣が根付いておるようじゃ。一方で男性向けの読者は、『ブクマはするが評価は入れない』傾向が強いのじゃ。……そして小僧、一番右のミッドナイトを見るのじゃ」
「あ……ミッドナイトの中央値……0pt……。箱も一番下にぺちゃんこに潰れていて……」
「然り。箱の上端(上位25%の境界)ですら約20pt――★5が2人分入れば、上位4分の1に滑り込める世界じゃ。ただしひげの先端、最大値を見れば、ノクターンが約13万pt、ミッドナイトでも約4.7万ptと、頂点の怪物はどのサイトにも存在しておるがの」
「では、それぞれのサイトの中で、ポイントがどう分布しておるのか細かく見ていこうかの。横軸の最大値はグラフごとに違うから、棒の長さではなく数字で見比べるのじゃぞ」
「ノクターンは、10〜99ptのところに40.1%も集まってますね」
「うむ。ノクターンでは100pt以上が41.7%、1,000pt以上は10.1%しかない。ところが、ムーン女性向けは100pt以上が62.3%、1,000pt以上が32.3%――なんと3作品に1つが千の大台に乗っておるのじゃ! 10,000pt以上の作品も4.8%(約20作品に1つ)あるぞ。ノクターンで10,000pt以上はわずか0.6%(約170作品に1つ)じゃから、実に8倍の出現率じゃな」
「女性向けの1,000ptと、ノクターンの1,000ptは、同じ点数でも重みがまったく違うんですね……! あ、それにムーン女性向けは、0ptの割合が3.8%しかありません。前回のムーン女性向けのブックマーク0件(5.9%)よりも少ないですよ?」
「うむ、それだけムーン女性向けでは評価を入れる文化が徹底されておるということじゃな。短編などでブクマはせずとも評価だけは入れる読者も多いのじゃろう。
……そして、ミッドナイトに投稿された作品の55.3%、半分以上はポイントが0なのじゃよ」
「喜んでいいのか複雑ですけど、半分以上の作品が同じ境遇なんだと思うと、少し安心します……」
「さらに言えば、ミッドナイトでは誰か1人が★5を入れて『10pt』になるだけで、一気に上位約39%じゃ。もし100pt(★5が10人分)でも集めようものなら、上位約10%――トップ1割のエリートの仲間入りじゃぞ!」
「ミッドナイトでポイントを稼ぐなんて無謀だったんですね……」
「今度は作品形式による違いを暴くとするぞ」
「形式……短編、完結連載、連載中ですね。中央値を見ると、短編が116pt、完結連載が226pt、連載中が40pt……あれれ……? 神様、これ、ブックマークのときと順番が違っていませんか……?」
「くくく……気づいたか小僧! ブックマークのときは短編は35件、連載中は37件で、ほぼ横並びじゃったじゃろ?」
「はい! 短編と連載中は同じくらいで、完結連載(127件)だけが突出して高かったです!」
「そうじゃったな。ところが評価ポイントの中央値を見ると、短編(116pt)は連載中(40pt)の約3倍まで跳ね上がっておるのじゃ!」
「ええっ!? どうして連載中は、ブックマークの割に評価ポイントがこんなに入らないんですか……? 連載のほうが長くて読み応えがあるはずなのに……」
「データで分かるのは『形式によって評価の入り方が違う』というところまでじゃ。じゃが、読者の心理を想像してみよ。小僧、お前さんは小説を読んでいて、どのタイミングで評価ボタンを押したくなる?」
「えっ……? ええと、僕なら……やっぱり、物語を最後まで読み終わって、『ああ、面白かった!』って感動した時……でしょうか……?」
「まさにそれじゃ! 読者は読み終わった瞬間に一番心が動き、評価を投じやすいのじゃよ。短編や完結連載には明確な終わりがある。じゃが連載中は、いくら面白くても物語が続いておる最中じゃ。『完結したら評価を入れよう』と後回しにされ、そのまま忘れられてしまうこともあるのじゃろう」
「たしかに連載中だと、まだ途中でどうなるか分からないから星をつけにくいですし、続きが気になって評価を忘れてブラウザを閉じちゃうこと、僕もあります……!」
「そうじゃろ! つまり短編はブクマが少なくても評価ポイントで稼げる形式であり、連載中は評価が後回しにされやすい形式なのじゃ。箱ひげ図を見ても、短編の箱は約20〜780ptと連載中(約5〜210pt)よりずっと高い位置にあり、最大値も約7万ptまで伸びておる。短編のブクマの最大値が約1.2万件じゃったことを思えば、短編は評価ポイントのほうでずっと上まで突き抜けておるのじゃよ」
「次は平均★評価じゃ。その作品に入った星の平均の数じゃな。グラフの右上にある式のとおり、『評価ポイント÷評価者数÷2』で計算しておる」
「えっと……なんでこんな計算にしているんですか?」
「もっともじゃな。では例で考えるぞ。ある作品に3人が評価して、★5、★5、★2をつけたとする。ポイントは10+10+4で24ptじゃ。これを評価した人数の3で割ると8ptじゃ。★1つは2ptゆえ、さらに2で割ると★4.0になる。これがこの作品の平均★評価じゃ」
「あっ、ポイントを人数で平均してから、星の数に戻しているんですね!」
「そういうことじゃ。評価が1件も入っておらん作品は割り算ができんから、このグラフは評価が入った作品だけが対象じゃぞ」
「わかりました」
「では全体の分布を見るがよい。平均★が4を超える作品が全体の74.8%――実に4作品中3作品を占めておる。★4.5超だけでも42.3%じゃ。逆に、平均★が3以下の作品は、全体のわずか9.9%しか存在せんのじゃよ。ちなみに★4から上だけ0.5刻みで細かく区切っておるのは、ここに作品が集中しておるからじゃ」
「ええっ……!? 全体の4分の3が★4超えなんですか!? み、みんなめちゃくちゃ高評価じゃないですか!」
「さらに、各作品の平均★を並べて真ん中をとった『平均★の中央値』を、サイト別と形式別で見るのじゃ。サイト別ではノクターン4.47、ムーン女性向け4.32、ムーンBL4.54、ミッドナイト4.46。形式別では短編4.44、完結連載4.45、連載中4.45じゃ」
「どのサイトも、どの形式も……全部★4.3〜4.5くらいで、ほとんど差がありませんよ!?」
「そうじゃ。評価ポイントの中央値ではサイトごとに4倍もの差があったのに、★の平均ではほとんど差がつかんのじゃよ!」
「で、でも神様、どうしてそんなことに……? 面白い作品とつまらない作品で、星の数に差がつかないなんておかしくないですか……?」
「読者の行動を考えるのじゃ。Web小説の読者はな、主に気に入った作品に★5を入れるために評価フォームを使うのじゃよ。もし作品を読んで気に入らなかったり、肌に合わなかったりしたらどうする? わざわざ評価欄までスクロールして、労力を割いて★1を投げつけるか?」
「あ……! しません……! つまらなかったら、そっとブラウザの戻るボタンを押して、別の作品を探しに行くだけです……!」
「その通りじゃ! 読者は気に入らなければ、低評価をつけるのではなく無言で立ち去ることが多い。ゆえに、評価欄に星を残していくのは、その作品を気に入った読者が中心になるのじゃ。結果として、多くの作品の平均★が4〜5に集まるのじゃ。
……ちなみに、ムーン女性向けだけが4.32とわずかに低い。さっきのサイト別のポイント分布を見返すと、ムーン女性向けは1〜9pt、つまり★1〜4が1人だけ入った作品が9.9%と他より多かったのじゃ。 ★3や★4を使い分けて、きっちり採点する読者が比較的多いのかもしれんの」
「なるほど……! だから、女性向けの評価ポイントが高いのは、星が高いからじゃなくて……」
「うむ、評価する人数が多いからじゃ。星の平均がどこも約4.4、つまり評価1人あたり約9pt弱で一定ということは……作品ごとの評価ポイントの差は、評価をつけてくれた人数の多さでほぼ決まっておるということじゃ!」
「評価ポイントは、何人が評価してくれるかが大事なんですね。……あれ、ミッドナイトも4.46で、他のサイトと変わらないんですね」
「よく気づいたの。ミッドナイトの作品は、評価さえ入れば他のサイトと同じくらいの星をもらえておる。ミッドナイトの問題は、星が低いことではなく評価する人がおらんことなのじゃ。お前さんの作品も、つまらんと判定されたわけではないぞ。まだ誰の目にも届いておらんだけじゃ」
「……! ちょっと、元気が出ました……!」
◇
「さて、今回見せたデータは、あくまで現時点での累計に過ぎん。では――この評価ポイントは、いつ始まった作品に多く入っておるのか? そして2020年3月の評価システムの改修で、形式ごとの力関係はどう塗り替えられたのか? その歴史を、次でじっくり解き明かすのじゃ」
「は、はい……! よろしくお願いします!」
グラフが多くなったので分割するのじゃ。




