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5. ブックマークその2なのじゃ

☆データ情報☆

※使用したデータは2026年09月29日時点のものなのじゃ。そのため今の値から多少ずれがあるのじゃ

※これらのデータは公式から提供されるものではなく、個人が集めたデータからの推測なのじゃ。


「今回はブックマークを時間の流れで解剖していくのじゃ。どの年に始まった作品がブックマークをもらいやすかったのかを見ていくぞ」


「は、はい……!」


「先に、今回からずっと使う『初回掲載年』という言葉を説明しておくぞ。初回掲載年とは、その作品の第1話が投稿された年のことじゃ。2015年に始まって今も続いておる連載なら、何年経っても『2015年の作品』として数える」


「始まった年で作品をグループ分けするんですね」


「うむ。今回のグラフは横軸がその初回掲載年じゃ。それぞれの年の点や棒は、その年に始まった作品だけを集めて計算した値じゃ。右端の2026年は網掛けになっておるが、これはデータを取った9月29日までの、途中の年という印じゃ。それを頭に入れてグラフを見るとよいぞ」


「わかりました」






挿絵(By みてみん)


「まずは初回掲載年ごとの中央値じゃ。これを見るとどのサイトのどの年に投稿した作品がブックマークをもらいやすいのかがわかるのじゃ」


「えーっと……どういうことでしょうか」


「うむ、たとえばムーン女性向けの2016年の点は、『2016年に始まったムーン女性向けの作品を、ブックマークの少ない順に並べたときの真ん中の作品』の件数、すなわちその年の中央値じゃ。この位置が高い年ほど、全体の相場としてブックマークをもらいやすかったことがわかるのじゃ」


「なるほど……! あ、あの……! グラフを見ると、2016年から2017年あたりを山にして、最近の2025年や2026年に向かって急激に下がっています……。これって、年々サイトの人気が落ちて読まれなくなっているってことですか……?」


「待て待て、そこが一番陥りやすい罠なのじゃ! このグラフは『その年に付いたブックマークの数』ではなく、『その年に始まった作品が、いま持っている累計の数』を示しておる。


 公式のAPIでは、ブックマークがいつ付いたのかまでは分からんからのう。じゃから、作品が始まった年で集計しておる。


 2016年の作品は10年かけてブクマを集めてきたが、2025年や2026年の作品は投稿されてから日が浅い。今の時点でブクマが少なくて当然なのじゃよ。2025年や2026年の作品も、これから数年経てば数字が積み上がってくるはずじゃ。そのときに比較すれば下がったのかがわかるじゃろう」


「な、なるほど……! 掲載期間が全然違うから、新しい年が低いのは当たり前なんですね。じゃあ逆に、2009年以前の古い作品が低いのはどうしてですか?」


「一番大きいのは、ブックマーク機能が2009年のリニューアルで追加された機能だからじゃ。それ以前のブクマは後から付けられたものじゃ。当時はまだサイト自体の規模が小さく、読者数も今ほど多くなかったのじゃ。昔の作品はそれほど読み返さんようじゃな。


 中央値が高いのは2014〜2023年に始まった作品群で、ムーン女性向けは2016年に約200件まで達しておる。……なお、ミッドナイトは開始直後の2015年こそ約30件じゃが、2016年以降はずっと数件の超低空飛行じゃ」


「ミッドナイトは、いつの時代もブクマをもらいにくいんですね……」







挿絵(By みてみん)


「次は背筋が凍るグラフ、年別の『ブクマ0件の割合』じゃ。その年に始まった作品のうち、いまもブックマークが1件も付いておらん作品が何%あるかを表しておる。線が上にあるほど、0件の作品が多いということじゃ」


「ノクターンやムーンは、どの年も下のほうに固まってますね……」


「うむ。ノクターンやムーンでは、2010年以降はどの年も0件は数%しかない。投稿して1年足らずの2026年の作品でも、9割前後は1件以上のブクマを獲得しておる。じゃが……ミッドナイトは2016年からずっと3割前後かそれ以上で、2025年は約4割、2026年は約6割じゃ。直近の作品は半数以上がブクマ0件なのじゃ」


「僕がブクマを獲得できなかったのも、当然だったんですね……」


「然り! ノクターンやムーンは時間が経てば大半の作品にブクマが付くが、ミッドナイトは何年経っても3割前後が0件のまま凍りついておる。時間が解決してくれるとは限らんのじゃ」


「時間が経っても0件のままっていうのは……本当に厳しい土俵なんですね……」







挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


「ここからが実に興味深いぞ。サイトごとに、作品形式(短編/完結連載/連載中)で分けた年別の中央値じゃ。どの形式の作品がブックマークをもらいやすいかこれで一目でわかるぞ。ちなみに縦軸の目盛りはサイトごとに違うから、4枚を見比べるときは数字をよく確かめるのじゃぞ」


「は、はい。えっと……どのサイトも『完結連載』の線が一番上にありますね」


「うむ。基本はどのサイトも、完結連載が首位を独走しておる」


「ムーン女性向けの完結連載、全盛期は中央値が500件を超えていて凄まじいですね……! あ……2020年あたりから、女性向けとBLで『短編』が『連載中』を追い抜いていませんか?」


「よくぞ気づいたの小僧! 特にムーン女性向けの短編は、2023年に約150件まで上がっておる。完結連載が下がっていくのとは逆の動きじゃ。実はな、2020年にサイトの『評価システム改修』が行われ、短編がランキング上位に入りやすくなったのじゃよ。詳しくは評価ポイントの回で話すがの」


「仕組みが変わったから……!?」


「そうじゃ、ランキングに載れば読まれる機会が増え、ブクマも付きやすくなるからの。もっとも、データだけでは改修だけが原因と言い切ることはできん。ノクターンの短編は2021年を山に下がっておるから、サイトによって効き方も違うようじゃ。それでも『仕組みが変われば、強い形式も変わる』ことがある、と覚えておくのじゃ。


 ……ちなみにミッドナイトは、完結連載だけがかろうじて5〜20件をもらえておる状態じゃ。連載中や短編には、ほぼブクマが付かん」


「ミッドナイトでは、完結させるのが大事なんですね……」


「そうとも言えるが、前回話したとおり『読者が付いたから完結まで書けた』という逆の流れもありうる。完結させれば必ず伸びる、というわけではないぞ」







挿絵(By みてみん)


「続いて、前回教えた箱ひげ図を、まずは全サイト合計のデータで初回掲載年ごとに並べたものじゃ。1年分の作品で箱ひげ図を1本作り、それを左から年の順に並べておる。縦軸は前回と同じく、100件を超えたところから対数目盛りじゃ」


「えっと、どう見たらいいんですか?」


「見るところは3つじゃ。


 1つ目は箱の中の線、つまり中央値が年ごとにどう動いておるか。


 2つ目は箱の位置と長さ。その年の『普通の作品』がどのあたりに集まっておるかじゃ。


 3つ目はひげの先端、つまり最大値。その年に始まった作品の中で、一番ブクマを集めた作品の件数じゃ」


「わかりました。えーっと……2014年から2023年までの10年間は、箱の上端が400〜500件前後で、ほとんど変わっていませんね。でも中央値は2017年くらいから少しずつ下がってるような……。2024年ごろからは、箱ごと下がってますね」


「うむ。『普通の作品』の範囲は、この10年ほぼ同じだったということじゃ。中央値は2016〜2017年の約100件を山にじわじわ下がっておる」


「掲載期間のせいなんでしょうか……?」


「そこはこのデータからは分からん。長期的な観察が必要じゃが、現段階で原因として考えられることはいくつかあるぞ。


 1つは、さっきの評価システムの改修じゃ。短編がランキングに乗りやすくなった分、それまでランキングに乗っておった連載作品が押し出され、ブクマが付きにくくなったのかもしれん。前回で言うた通り、短編はブクマが付きにくいからの、その影響は大きいじゃろ。


 もう1つは、娯楽が増えたことじゃ。他のサイトやエロ漫画、サンプル動画、ゲームに時間を取られて、ブクマをする読者が減っておる可能性もあるのう」


「確かに……今は色んな娯楽がありますね」


「ただ、ひげの先端――最大値を見よ。2011年以降は、どの年からもブクマ数万件の大ヒット作が出ておる」


「あ、本当だ……! 2026年に始まった作品でも、もう1万件を超えているものがありますよ……!?」


「そうじゃ! 全体の相場は掲載期間に引きずられるが、本物のヒット作は掲載期間が短くても突き抜けるのじゃ。もっとも、最大値はたった1作品で決まるから、年ごとの上下に意味を持たせすぎてはいかんぞ」








挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


「サイトごとの箱ひげ図も載せておくぞ。ノクターン、ムーン女性向け、ムーンBLの3つは、全体と同じく2014〜2023年の10年間、年ごとの箱の上端がほぼ横一線にそろっておる。一方で、サイトごとに違うのは箱がある『位置』じゃ。


 箱の上端は、ノクターンが250〜400件、ムーンBLが400〜550件、ムーン女性向けが700〜900件ほどじゃ。前回見たとおり、ムーン女性向けが一番高い位置におる」


「やっぱりムーンはブックマークをもらいやすいんですね」


「うむ。しかしミッドナイトは開設直後の2015年だけは箱が大きいが、2016年以降は箱が底に張り付いておる。最大値も2017年の約3.5万件が最高で、2024年以降は一番の作品でも1,000件前後にとどまっておる。過疎るサイトと同じような動きじゃ。開店ボーナスが終わった後は人が残らんかったパターンじゃな」


「普通の作品だけじゃなくて、一番読まれている作品まで下がってるんですね……」









挿絵(By みてみん)


「最後は、その年に始まった作品が、いま持っているブックマークの合計じゃ。棒の高さは、その年に始まった作品のブクマ数を全部足したもので、単位は万件じゃ。これも、その年に付いたブックマークじゃないぞ。その年に投稿された作品が持っているブックマークじゃ」


「わかりました」


「うむ。グラフを見ると、2021年に始まった作品が持つブクマは約740万件。2020年と合わせると約1,470万件で、全体の約7,150万件のうち約2割が、この2年に始まった作品に集まっておる。


 ただし注意じゃ。これも『2021年に付いたブクマ』ではない。2015年に始まった長期連載が去年集めたブクマは、2015年の棒に入る。じゃから『2021年がブクマの最盛期だった』とは言えん。『2020〜2021年に始まった作品が、いま一番多く持っている』が正しい読み方じゃ」


「なるほど……。でも、そこからどんどん減っていますね」


「新しい年ほど掲載期間が短いから、減るのはある程度、自然じゃ。じゃが2022年の作品は4年近く経っておるのに、2021年より約80万件少ない。ブクマがもらいにくくなり始めておる可能性はあるのう。来年も見て回復しなければもらいにくくなったと見るべきじゃろうな」







挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


「サイトごとの合計も見ておくぞ。ミッドナイトだけは縦軸の目盛りが10万件までと、桁が1つ違うから注意するのじゃ。グラフを見ると、ノクターンは2020年の約270万件、ムーン女性向けは2021年の約300万件、ムーンBLは2020年の約200万件が一番高いのじゃ。ミッドナイトは2018年の約9万件が最高で、それ以降はどんどん減っておる」


「2024年以降は1万件にも届いてませんね……」


「ミッドナイトの2018年の山は、さっきの箱ひげ図で2017〜2018年の最大値が高かったのと関係しておるじゃろう。合計は上位の数作品に大きく左右されるから、少数の大ヒット作で山ができたと見るのが自然じゃ」


「……あれ? そういえば、『ノクターンの新規作品数は2025年に急増した』って言ってませんでしたっけ?」


「よく覚えておったな! ノクターンの作品数は、2024年の約5,800作品から2025年の約8,600作品へと大きく増えておる。にもかかわらず、ブクマ合計は約182万件から約160万件へと減っておるのじゃ」


「えっ……作品はすごく増えたのに、ブクマの総量は減っているんですか……?」


「そうじゃ。2025年の作品は掲載期間が1年短いぶん不利じゃが、それにしても作品が5割増えて合計が減っておる。前回話した『平均値』を使って1作品あたりにならすと、2024年の約310件から2025年は約190件じゃ。作品の数に読者のブクマが追いついておらず、『1作品あたりの取り分が減っておる』ということじゃな。最初に見た中央値が下がっておるのともつじつまが合うのじゃ」


「他のサイトでもちょっとずつ厳しくなっているんですね……」


◇


「……さて小僧、初回掲載年で分解してみた感想はどうじゃ?」


「自分の0件を嘆く前に、掲載期間の違いやサイトの特性を冷静に見極めるのが大事だと痛感しました……。あと、サイトのルール変更で強い形式が変わるかもしれないっていうのが、すごく驚きです」


「良い気付きじゃ。作品の良し悪しとは別に、サイトの仕組みとルールを知っておる者が有利になるのは、情報戦の鉄則じゃからの。そして、その仕組みの根幹を握るのが……次回のテーマたる『評価ポイント』じゃ!」


「評価ポイント……! 星を入れて点数をつける、あの仕組みですね」


「うむ! 2020年に一体何が変わり、読者の評価の入れ方はどう変わったのか――次で徹底的に暴いてやろうぞ! 明日もエナドリを持ってくるのじゃぞ」


「は、はい! 今日もありがとうございました。また来ます」

※2026年10月20日追記:今のブックマーク機能は2009年のリニューアルで追加された旨を追加

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