21. 挿絵なのじゃ
☆データ情報☆
※使用したデータは2026年09月29日時点のものなのじゃ。そのため今の値から多少ずれがあるのじゃ
※これらのデータは公式から提供されるものではなく、個人が集めたデータからの推測なのじゃ。
「さて、続いては挿絵じゃ。挿絵があったほうがポイントが増えやすいのか、見ていくぞ」
「はい、お願いします」
「なお、作品に画像を入れられるようになったのは、2008年の12月からじゃ。それより前に始まった作品にも挿絵があるが、それはあとから足されたものじゃな」
「まずは全体の様子じゃ。横軸が挿絵の枚数の帯じゃ。0枚、1枚、2枚までは1枚ずつ、その先は3〜5枚、6〜10枚……と、右へ行くほど帯の幅が広くなっておるから気をつけるのじゃぞ。
一番左の0枚の棒だけが、ほぼ天井まで伸びておるじゃろ? 全作品の約96%は、挿絵が1枚もないのじゃよ。挿絵が1枚以上ある作品は、全体でわずか約4.1%(6,449作品)――およそ25作品に1作品しかないのじゃ!」
「に、25作品に1つ……!? 挿絵はついていないほうが圧倒的に普通だったんですね……」
「うむ。じゃから、挿絵がある6,449作品だけを取り出して内訳を見てみようかのう。何枚の挿絵が多い?」
「ええと……1枚が一番多いです! 次が3〜5枚の17.8%、その次が6〜10枚の12.6%、2枚の11.8%ですね」
「挿絵をつけておる作品でも、その3分の1は『1枚だけ』なのじゃ。5枚以下を合わせると約62%と、大半は5枚以下に収まっておる。登場人物や地図の絵を数枚だけ入れる、という使い方が多いのじゃろうな。
じゃが小僧、一番下の『101枚以上』を見てみよ。その上の51〜100枚(207作品)よりも多い、252作品があるじゃろ?」
「本当だ……。枚数が多いほうに向かって減っていたのに、100枚を超えたところで、また増えています」
「大量に挿絵を入れる作品がひとかたまりおるということじゃ」
「挿絵の枚数の分布を、サイト別にも見てみようかのう。挿絵がある作品だけを、サイトごとに100%として、枚数の帯ごとの割合を折れ線にしたものじゃ。
ムーン女性向けやムーンBLは、1枚だけの作品が半分近くを占めておる。一方でノクターンやミッドナイトは、複数枚の割合が高いのじゃ。101枚以上も、ノクターンが約5%で一番多いのじゃ。
ムーンは『つけるなら1枚』が多く、ノクターンやミッドナイトには、たくさん挿絵を入れる作品が多いということじゃな」
「なるほど……!」
「ちなみにじゃが、挿絵の多い順に並べると上から50番目の作品でちょうど500枚じゃ。その上位50作品の内訳を見ると、ノクターンが46作品、ミッドナイトが3作品、ムーン女性向けが1作品じゃ。最大値は約6,400枚じゃ。もちろんノクターンの作品で、2026年に連載が始まったAIイラスト使用の作品じゃな」
「2026年開始ですでに6,400枚!? ……ノクターンの挿絵好きがよくわかりますね」
「続いて、どんな作品に挿絵が使われておるのか、サイト別と形式別の割合を比べるぞ!
まずサイト別じゃ。挿絵がある作品の割合は、ノクターンが6.1%、ミッドナイトが4.6%、ムーンBLが2.3%、ムーン女性向けが2.2%じゃ」
「ノクターンは、挿絵つきの作品の割合がムーンの約3倍も高いですね……」
「そうじゃ。そして形式別を見よ。短編が2.1%なのに対して、完結した連載は4.8%、連載中は5.5%となっておる」
「連載のほうが、短編よりも高いんですね! やっぱり、話が長いほうがキャラクターが増えたり、見せ場が多かったりするからでしょうか……?」
「そうかもしれんの。連載が長く続くほど絵を入れる機会も理由も増えるじゃろうな」
「さあ小僧、ここからは時代の流れじゃ! まずは初回掲載年ごとに『挿絵がある作品の割合』をサイトごとに線で結んだものじゃ。
ムーン女性向けやムーンBLはずっと数%台のまま横ばいじゃが、ノクターンだけ2022年の約6.2%から上がり続けて、2026年には約10.3%じゃ。ノクターンだけが、はっきり右肩上がりなのじゃよ。画像を作るAIが広まった時期とちょうど重なるのう」
「AIの影響がここまで来ているんですね」
「どうやら男性向けのサイトではAI画像が使われやすいようじゃな」
「次に、その年に始まった作品の挿絵を全部足した『合計枚数』じゃ。その年に入った挿絵じゃないことに注意するのじゃぞ。
グラフを見ると、2016年までは1年で数百枚から2,000枚ほどじゃったのが、2025年の作品には約2.9万枚、そして2026年は9月までの途中なのに、すでに約3.6万枚じゃ! 棒の色のほとんどが、ノクターンの紫色じゃな」
「2025年と2026年の2年分だけで、それまでの合計に迫る枚数じゃないですか……!?」
「うむ。挿絵がある作品の割合が上がり始めたのは2022年じゃが、枚数が跳ね上がったのは2025年の作品からじゃ。つまり2025年の作品からは、挿絵をつける作品が増えただけでなく、1作品あたりの枚数も増えておるのじゃよ」
「サイト別の合計枚数も見ておこう。並べると同じ高さに見えるが、縦軸の目盛りがサイトごとに違うから気をつけるのじゃぞ。ノクターンは万の単位じゃが、ムーン女性向けやムーンBLは数百枚から千枚ちょっとで、桁が2つも違う」
「やっぱり、ノクターンの勢いが桁外れです」
「うむ。2022年後半から画像生成AIが広まり、近年ではさらに手軽になったことで、絵が描けん書き手でも大量の挿絵を用意しやすい時代になったのじゃろうな。
ちなみにじゃが、AI直接使用という設定にしておる作品に限って言えば16%が挿絵ありじゃ。全体の約4%と比べると、AIを使っておると挿絵を入れる割合も高まるようじゃな」
「AIは便利ですからね……でも女性向けではそれほど増えてませんね」
「どうやら女性向けでは画像を入れぬ傾向があるようじゃな。グラフでところどころ跳ね上がっておる年は、1作品で大量に挿絵を入れた作品の影響で高く見えるだけで、全体としてはそれほど増えておらんぞ」
「次に挿絵をたくさんつければ、総合ポイントは本当に伸びるのかという問いに対するグラフじゃ。挿絵の枚数の帯ごとの、総合ポイントの分布を見るがよい!
0枚から20枚までは、1千pt以上の明るい色が約26〜31%でほぼ横ばいじゃ。それが21枚を超えると明るい色が増えていって、101枚以上では約44%が1千pt以上になっておる」
「えぇ? 挿絵を入れると、ポイントがもらいやすいんですか?」
「箱ひげ図の中央値も見よ。0枚で約240pt、1枚でも約240ptじゃったのが、21〜50枚で約380pt、51〜100枚で約480pt、そして101枚以上では約850ptまで上がっておる。
挿絵が100枚を超える作品は、挿絵なしの実に3.5倍ものポイントを集めておるように見えるのう!」
「やっぱり! 挿絵をたくさん入れたほうが、読者さんに喜ばれてポイントが上がるんじゃないですか! 絵を描けない僕でも、なんとかして挿絵を用意したほうがいいんじゃ……」
「待て待て、早まるでない、小僧! その結論に飛びつく前に、サイト別の箱ひげ図を見てみよ! ノクターンは全体と同じく右肩上がりじゃが……ムーン女性向けの中央値を見るがよい!」
「えっ……? ムーン女性向けは……0枚が約600pt、1枚が約550ptなのに……枚数が増えるにつれて中央値が下がっていって、11〜20枚で約200pt、101枚以上だと約150pt……!? さ、挿絵が多い作品のほうが、挿絵がない作品よりポイントが低くなっていますよ!?」
「然り! ムーンBLも、50枚までは上下しながら横ばいで、51枚以上では大きく下がっておる。ミッドナイトは中央値がほぼ0〜10ptで低いままじゃがな。
もし挿絵そのものにポイントを押し上げる力があるのなら、ムーン女性向けで挿絵が多いほどポイントが下がるのは、説明がつかんじゃろ?」
「ど、どうしてこんなことが起きているんですか……!?」
「ふふふ……ここからが腕の見せ所じゃ! その謎を解く鍵が、『話数帯ごとの挿絵あり割合』なのじゃよ! 連載を話数で分けて、それぞれの中で挿絵がある作品が何%かを見たものじゃ。かっこの中は、挿絵がある作品の数じゃな。なお、ここでの『1話』は、1話だけ載っておる連載のことで、短編は入っておらんぞ」
「話数帯ごとの挿絵の割合……?」
「そうじゃ。1話だけの連載は、挿絵ありが2.4%しかおらんのに、10〜29話で5.0%、30〜99話で7.9%、100〜299話で15.2%……そして300話以上では21.7%まで上がっておる。
300話以上の大長編では、5作品に1作品以上が挿絵つきなのじゃよ。サイト別を見ても、どのサイトも右肩上がりじゃ。300話以上では、ノクターンが約25%、ミッドナイトが約24%、ムーン女性向けが約23%じゃ。ムーンBLだけは約12.5%と低めじゃが、300話以上は作品が少ないから、揺れの範囲かもしれん。どのサイトでも、『話数が多い連載ほど、挿絵がある割合が高い』のじゃ!」
「あ……! そういえば話数の回で、連載は話数が多い作品ほどポイントが高くなるって学びましたよね……!」
「そうじゃ、さっきの傾向は『挿絵が多いからポイントが高い』のではなく、『もともとポイントが高くなりやすい長い連載に、挿絵が多くついておる』のではないか、と疑えるのじゃよ!」
「さあ小僧、いよいよ種明かしじゃ! 話数をそろえて、同じ話数帯の中で『挿絵なし』と『挿絵あり』の総合ポイントを比べた箱ひげ図を見よ!
横軸が話数帯で、それぞれの帯に箱が2つ並んでおる。左の灰色の点々が挿絵なし、右のオレンジ色が挿絵ありじゃ。下の『n=』は作品の数じゃな。同じ話数どうしで、2つの箱の高さを比べるのじゃぞ」
「ノクターンの比較グラフですね。……ええっ!? 『挿絵なし』と『挿絵あり』の箱の高さ……ほとんど重なっていませんか……!?」
「そうじゃ。中央値は、2〜4話で『挿絵なし』が約60ptに対して『あり』が約40pt、5〜9話で『なし』約160ptに対して『あり』約130pt、10〜29話で『なし』約370ptに対して『あり』約380pt、30〜99話でも『なし』約950ptに対して『あり』約850ptじゃ! 同じ話数どうしで比べると、挿絵のあるなしによる差は、ほとんど消えてしまうのじゃよ」
「ほ、本当だ……。100〜299話で挿絵ありが少し高くなるくらいで、それより話数による差のほうがずっと大きいんですね……」
「その通りじゃ。たとえ話をしようかの。大人は子どもより背が高いし、字もうまい。じゃから、背の高さと字のうまさには関係があるように見える。じゃが、同じ年齢の者どうしで比べたら、その関係はほとんど消えてしまうじゃろ?
挿絵も同じじゃ。挿絵がポイントを押し上げておったのではなく、『話数の多さ』という大きな理由の上に、挿絵が乗っかっておっただけなのじゃよ」
「さらに、ムーン女性向けやムーンBLを見よ。ムーン女性向けなど、10〜29話でなし約850ptに対してありは約230ptと、どの話数帯でも挿絵ありのほうがはっきり低くなっておるじゃろ?」
「女性向けでは、同じ話数で比べても、挿絵がある作品のほうがポイントが低いんですね……! これはどうしてなんでしょうか……?」
「うむ。男性は見た目の刺激を重く見る者が多く、女性は関係性の積み重ねを重く見る者が多いと、よく言われるじゃろ? ゆえに男性向けでは刺激の強い一場面さえあれば満足されやすい。じゃが女性向けで求められるのは、ムードやストーリー、心の動き、関係の変わっていく様子、相手の表情や優しさといったものじゃ。1枚の絵よりも、その積み重ねが大事というわけじゃな」
「そんなに単純なものなんでしょうか……?」
「ほれ」
「……えっ! なんではだけているんですか! えぇ……しまってください……うぅ」
「赤くなって可愛いのう。ほれ、男なんて、とりあえず胸でも見せときゃええんじゃ。それにしても、うぶじゃのう。彼女はおらんのか?」
「い、いないですよ……」
「ほぅ……。まあよい、話を戻すぞ。視覚的に言えば、男はチョロいが、女性は裸を見せても、それほど心を動かされん。そのあたりの違いが表れておるのではないかのう。
男性向けではイラストを入れても同じかちょっとポイントが上がるが、女性向けでは下手にイラストを入れると、読者の思い描いた姿と違って解釈違いになったり、かえってノイズになったりするのかもしれん。女性向けでは迷ったらイラストは入れんほうが無難かもしれんな」
「そうなんですね。……あ、ミッドナイトは、10話以上で挿絵ありのほうが少し高めですね……」
「うむ。ミッドナイトは男性向けが多いからの」
「最後に、300話以上の長編だけを取り出すと、こうなるぞ。300話以上は作品が少ないから、サイトごとに挿絵なしとありを1組ずつ並べてあるぞ」
「あ、300話以上の大長編では、4つのサイトとも挿絵ありのほうが高いですね。とくにノクターンとミッドナイトは、はっきり高くなっています」
「うむ。ノクターンでは、挿絵なし約2,700ptに対して、ありは約6,800ptじゃ。300話を超えると、登場人物や舞台を覚えるのも大変じゃから、地図や人物紹介の絵があると助かるのかもしれんな。
じゃが、人気が出た結果として読者から絵を贈られたり、作者が記念にイラストを頼んだり、書籍化され挿絵を入れたりと、ポイントが増えてから挿絵が増えていくこともあるじゃろうな」
「なかなか難しいですね」
◇
「どうじゃ小僧、挿絵の真実は見えたか?」
「はいっ……! 挿絵がある作品は全体の約4%だけで、つけないのが普通なこと、ノクターンで最近急に増えていること……そして何より、『挿絵が多いと伸びる』ように見えていたのは、長い連載に挿絵が多かったからで、話数をそろえると差がほとんど消えちゃうっていうことに、びっくりしました……!」
「うむ。これぞ『関係があること』と『原因であること』を取り違えてはならん、というデータの読み方の注意点じゃな。さて、次回からはいよいよ……作者たちについて、切り込んでいくぞ!」
「は、はいっ! 次回もよろしくお願いします、神様……!」
ちなみにこの作品の挿絵は全部で400枚超えるのじゃ。




