19. エタ作品についてなのじゃ
☆データ情報☆
※使用したデータは2026年09月29日時点のものなのじゃ。そのため今の値から多少ずれがあるのじゃ
※これらのデータは公式から提供されるものではなく、個人が集めたデータからの推測なのじゃ。
「さて、予告した通り今日はあと『エタ』になった作品について見ていこうかの」
「エタってよく聞きますが、これは何なんですか?」
「創作の界隈でよく使われるネットスラングじゃ。英語の『エターナル』――永遠という言葉から来ておってな、作品の続きが更新されなくなって、完結せんまま止まってしまうことを言う。『エタる』『エタった』などと言うのう」
「それには何か決まった定義があるんですか?」
「厳密な定義はないのじゃ。そこで今回は小説家になろうの区分を借りることにしたぞ。なろうのAPIには『長期連載停止』という項目があってな、完結しておらん連載作品で、最後の掲載から63日以上たつと、自動でこのフラグが付く仕組みになっておる。読者の検索条件にも『長期連載停止中を除外』という設定があるのじゃ」
「そんなものがあるんですね」
「うむ。昔はこのフラグが付くと、作品ページに『この連載小説は未完結のまま約○か月以上の間、更新されていません。』という表示が出ておった。これを見て、読むのをやめて引き返す読者もおったのう。なお、この表示は2026年2月ごろの仕様変更で出なくなったぞ」
「そうなんですね……」
「ということで今回はこの基準に従って、『完結しておらず、63日以上止まっておる連載』を『エタ(停止推定)』として数えておる。つまり、なろうが決めておる『長期連載停止中』の作品に、どういう特徴があるのかを見たものじゃな。
先に言うておくが、63日以上止まっておっても、あとで再開する作品もある。それに、エタった作品が悪いとか、作者を責めるとか、そういう話ではないからな。誤解するでないぞ」
「わかりました!」
「まずは全体の様子じゃ! 左の水色の斜線が『連載中』で、まだ完結しておらず、最後の掲載から63日たっておらん作品。真ん中の灰色の点々が『エタ』で、完結しておらず63日以上止まっておる作品じゃ。右の黄色が『完結済み』で、作者が完結の設定をした作品じゃ。
一番上の全体を見ると、完結済みが51.3%、エタが45.0%、そして連載中が3.7%じゃ」
「えぇ……! 連載中ってそれだけしかないんですか?」
「すさまじい数字じゃろ! 今まさに更新が続いておる連載は、全体のわずか3.7%――およそ25作品に1作品しかないのじゃよ!」
「25作品に1つ……!?」
「完結しておらん作品、つまりエタと連載中だけで割合を計算してみよ。45.0÷(45.0+3.7)=約92%! 完結しておらん連載の、実に9割以上が、63日以上止まっておるのじゃ。『長期連載停止中を除外』で検索しておる読者には、これらの作品は見えておらんことになるのじゃ」
「未完結の9割以上が止まっている……! あ、でも神様、サイトごとの内訳を見ると、ものすごく大きな差がありませんか? ノクターンはエタが54.4%で、ミッドナイトはエタが57.4%と半分を超えていますけど……ムーン女性向けは完結済みが61.2%、ムーンBLも61.3%もありますよ!」
「よいところに気づいたの、小僧! ムーンライトの2サイトは物語をきっちり終わらせる作品が多く、ノクターンやミッドナイトは連載のまま止まる作品のほうが多いのじゃ。サイトによって、はっきり違いが出ておるのじゃよ」
「では、エタの割合が時代とともにどう変わってきたのか、初回掲載年ごとの分類割合を見ていくぞ! 2026年は始まったばかりの作品が多くて、まだ63日たっておらんものもあるから、このグラフでは2025年までにしてあるぞ。灰色の帯が広いほどエタ作品の割合が多いことを意味しておる。
灰色のエタを見ると、ずっと約40〜57%じゃ。2020年以降は約45%前後と少し減っておるが、昔の作品も最近の作品も、大きくは変わっておらん。完結割合は徐々に多くなっておるがの」
「あれ? 古い作品ほど、完結作品が多くなりそうなものですけど……」
「そう思いがちじゃが、データはそうなっておらん。完結する作品は早いうちに完結して、止まる作品は早いうちに止まって、そのままになっておるのじゃろう。現に、2025年に始まったばかりの連載でも、すでに約40%がエタになっておるじゃろ?」
「始まって1年くらいで、もう4割が止まっているんですね……」
「次に、サイト別のグラフじゃ。見方はさっきと同じじゃぞ。ノクターンは、2012年から2016年ごろに始まった連載で、エタの割合が約65〜68%と高くなっておる。ノクターンで作品が急に増えた時期に始まった連載は、3分の2が止まったままなのじゃな。2012〜2013年あたりを底にして、そこからはじわじわと完結する作品の割合が持ち直しておるようじゃな」
「ノクターンではエタりやすいんですね」
「うむ。対照的なのがムーン女性向けじゃ。2009年に約70%もあったエタの割合が年々下がり続けて、2023年にはわずか約28%じゃ。完結済みが7割を超えるまでになったのじゃよ! ムーンBLも、2020年以降はエタが30%台前半と少なめじゃな」
「女性向けは、完結作品が増えていったんですね……! ……あ、ミッドナイトは……2016年以降、ずっと55〜70%がエタのままですね……」
「うむ。ミッドナイトは10年間変わらず、3作品に2作品近くがエタじゃ。この土俵では、それが普通の景色なのじゃよ」
「そのサイトごとの差を、折れ線にしたのがこのグラフじゃ。初回掲載年ごとに、連載作品のうち完結済みの作品が何%あるかがわかるのじゃ。右端の色が付いた2026年は、途中の年じゃから確定した値ではないぞ。
2012年あたりを見ると、ノクターンが約33%、ムーン女性向けが約50%、ムーンBLが約48%で、差は15%ほどじゃった。そこからムーンの2サイトはぐんぐん上がって、2023年には約68〜71%に達しておる。
一方でノクターンは2012年の約33%から少しずつ持ち直してはおるものの、2025年でも約46%と、まだ半分に届いておらん。ムーンライトとノクターンの完結率の差は、15%ほどから25%ほどへと広がっておるのじゃよ」
「どうして、ムーンとノクターンでこんなに完結率の差が開いちゃったんでしょうか……?」
「以前の回で見たように、ノクターンは同じ文字数なら完結してもしなくてもポイントはそれほど変わらん。むしろ完結させずに長期連載するほうがポイントが入りやすいのじゃ。正直なところ、完結させるメリットがそれほどないのじゃよ。逆に女性向けでは、完結させたほうが明らかにポイントが高くなる傾向にあるからの。その差が出ておるのじゃろうな」
「さあ小僧、ここからが今回のハイライトじゃ! 作品のポイントとエタには、どんな関係があるのか……『総合ポイント帯別のエタ割合』を見よ!
連載を総合ポイントで9つの帯に分けて、それぞれの帯の中でエタが何%あるかを棒にしたものじゃ。帯の幅はそろっておらんで、右へ行くほど広くなっておるから気をつけるのじゃぞ。
一番左の『0pt』の帯は、エタの割合が75.6%じゃ。0ポイントの連載は、4作品に3作品がエタになっておるのじゃ! 1〜99ptでも58.7%、100〜299ptでも44.4%じゃ」
「ううっ……読者さんからの反応がゼロだと、やっぱり書く気力がなくなって、筆が止まっちゃいますもんね……」
「いや、そうとも限らんのじゃ」
「え? どういうことですか?」
「逆の向きもありうるということじゃ。読まれんから止まったのではなく、早く更新が止まってしまったから、ポイントが貯まる前に放置されてしまった、ということもあるのじゃ。それに、最初から数話だけ投稿して置いてある作品もあるじゃろう。0ポイントの作品は、こっちの理由も大きいと思うがの」
「あ、なるほど……」
「うむ。そしてエタ割合は3千〜1万pt未満で28.4%、1万〜3万pt未満だと23.4%まで下がっておる。ポイントが入って読者が応援してくれれば、作者も気力を保って完結までたどり着きやすい、ということかもしれんな。……じゃが小僧、一番右端の『10万pt以上』の帯を見よ。エタの割合は何%になっておる?」
「ええと……10万pt以上は……25.5%……!? えええっ!? 頂点にいるような大ヒット作でも、4作品に1作品はエタっているんですか……!?」
「その通りじゃ! どれだけ読者に支持されて、10万ポイント以上を集めた作品であっても、エタの割合がゼロになることはないのじゃよ!」
「そして、このポイントとエタの関係を、サイトごとに比べたのがこのグラフじゃ! 線が下にあるほど、エタが少ないということじゃな」
「えっと……0ptのところでは、どのサイトも同じくらい高いですけど……100ptを超えたあたりから、線が二つに分かれていませんか……!?」
「うむ。その通りじゃ。ムーン女性向けとムーンBLではポイントが高くなるにつれてエタの割合は下がっておる。ムーン女性向けなど10万pt以上ではわずか9.1%――9割以上の連載が完結しておるか、更新が続いておるのじゃ!」
「女性向けは、人気作になればなるほど、ほとんどが完結しているんですね……!」
「一方のノクターンは、100〜299ptで50.7%、1千〜3千ptで48.4%、1万〜3万ptで50.0%、そして10万pt以上でも52.6%……! 100ptを超えると、どれだけポイントが増えようが、エタの割合が約5割のまま真横に張り付いておるのじゃよ!」
「えええええっ!? 10万ポイントを超えるような大人気作でも、半分がエタったままなんですか……!? どうしてそんなことに……!?」
「ここからは推測じゃがな。さっき言うた通り、ノクターンでは長い連載ほど人気が出やすい。人気が出れば出るほど話が広がって、畳むのが難しくなるのかもしれん。さらに、書籍化やコミカライズの作業に追われて、Web版の更新が止まってしまうこともあるじゃろう。人気作だからといって完結するとは限らんのが、ノクターンという土俵なのじゃよ」
「でも、人気作がエタっちゃうと、読者さんは困らないんでしょうか……?」
「ノクターンではエタっても完結しても、ポイントの集まり方にあまり差が出ておらん。男性向けの読者はそこまでエタを気にしておらんのかもしれんの。じゃが、ムーンではポイントの高い作品ほどきっちり完結しておる。女性向けの読者は、未完のまま止まっておる作品をあまり好まんようじゃな」
「サイトによって文化が全然違うんですね」
「サイト別の細かいグラフも置いておくから、あとで見ておくのじゃ。どの棒にも数字が書いてあるぞ」
「はい。それにしても、人気がありすぎても完結できなくなっちゃうことがあるんですね……。あ、ミッドナイトは、3千〜3万ptでも約5割がエタっています。3万pt以上は0%になっていますけど……」
「ミッドナイトには、そもそも3万ptを超える連載が4作品、そのうち10万pt以上が1作品しかないのじゃ。いずれも完結か連載中じゃ。作品が少ないから割合が大きく揺れやすいのじゃ。ミッドナイトに限っては3万pt以上は気にせんでよいぞ」
「なるほど……!」
「最後に話数帯別のエタ割合についても見ていこうかの。ノクターンは長編作品が多いからエタるのではないかという疑問についての答えが載っておる」
「えーっと、どの話数帯でもノクターンやミッドナイトのエタ割合が多いですね……」
「うむ、長編じゃろうと中編じゃろうと、ポイントがあろうとなかろうと、それとは関係なくエタりやすいのが男性向けということじゃな」
◇
「どうじゃ小僧、エタ作品の真実は見えたか?」
「はいっ……! 連載全体の45%がエタとして止まっていること、未完結の連載に限れば9割以上が63日以上止まっていること……そして、0ポイントの連載は75%以上がエタだったってことが分かりました……」
「うむ。それと覚えておくべきは、サイトによってエタの受け止められ方が違うということじゃ。ムーンでは人気作ほど完結しておるが、ノクターンではエタはよくあることじゃ。じゃから、男性向けではエタるのを恐れて書かんより、まずは書いてみることが大事じゃよ。止まってしまっても1話載せれば再開じゃからの」
「はい、わかりました」
「それでは今日はこのあたりにしておこう。次回は会話率について見ていくぞ」
「は、はいっ! 次回もよろしくお願いします、神様……!」




