16. タイトル文字数なのじゃ
☆データ情報☆
※使用したデータは2026年09月29日時点のものなのじゃ。そのため今の値から多少ずれがあるのじゃ
※これらのデータは公式から提供されるものではなく、個人が集めたデータからの推測なのじゃ。
「気づいたら中世ヨーロッパ風の異世界に転生していて、『もしかして無双できるやつか!』とはしゃいでいたが、いわゆるナーロッパ的なやつではなく、衛生は最悪で飯はまずくて疫病も飢饉も戦争も普通にある厳しい世界で、自分は辺境貴族の5男坊、跡継ぎじゃないからって辺境のさらに辺境の貧しい開拓地を与えられるも、現代知識で農地改革に石鹸づくりに簿記にと地道な内政を始めて領地をじわじわ豊かにしていく、その過程で奴隷市場で買い取った元令嬢やら、身寄りのない村娘やら、政略で送り込まれた姫やら、剣で負かした女傭兵やらが次々と側に集まり、正妻と側室の序列で家同士の思惑がドロドロしつつもハーレムが形成されたら、いちゃもんつけてきた隣国の侵攻や兄たちの攻撃、裏切り者の家臣もいて血なまぐさい【自主規制】もありつつも、戦の後には嫁たちと【自主規制】で互いの生を確かめ合う日々、わかりやすいチートは無いけれども、『この手の届く範囲だけは守る』と剣を取る……そんな渋い世界もたまらんのじゃ~、のじゃ~……おっ、小僧。来たか」
「こ、こんにちは……ハーレム、お好きなんですね……」
「うむ。ロマンじゃ。さて小僧、今日はタイトルの文字数について切り込むとするかの!
『最近のWeb小説は長いタイトルばかりだ』と世間ではよく言われるが、果たしてそれは本当なのか? そしてR18のサイトでも同じなのか。いつから長くなり、何文字くらいのタイトルがポイントを集めておるのか、徹底的に暴き出してやろうぞ!」
「タイトルの文字数……。でも、何文字くらいから長いって言うんでしょう……?」
「では、先に感覚をつかんでおくかの。架空のタイトルを長さ別にいくつか並べてみるぞ。
5文字:『月下の情事』
13文字:『隣の席の幼なじみが甘すぎる』
20文字:『追放された私は辺境の騎士団長に溺愛される』
33文字:『婚約破棄された悪役令息ですが、宿敵の公爵に執着されて逃げられません』
39文字:『傭兵団を追放された俺は亡国の姫と二人きりで戦場を生き延び、やがて王国を取り戻す』
さて小僧、どのあたりから長いタイトルに感じる?」
「えっと……5文字は一般文芸でよく見る長さですね。13文字はライトノベルでは普通のタイトルって感じです。20文字は最近のWeb小説っぽいですね……。33文字になると長いタイトルだなって思います。39文字はタイトルだけで話の中身が全部分かっちゃいます……!」
「うむ、多くの者は20〜30文字くらいから長いタイトルと感じるようじゃな。ちなみにタイトルは最大100文字まで付けられるぞ。この感覚を頭に置いてデータを見ていくのじゃ」
「まずは全体の現実を直視せよ! タイトル文字数の分布じゃ!
横軸はタイトルの文字数を5文字ごとに区切ったもので、一番右端の点線の先にあるのは、入力の上限であるちょうど100文字の作品たちじゃな。
一番高い山は5〜9文字で約24%じゃ。次が10〜14文字の約22%、15〜19文字の約13%と続いておる。5文字未満は約6%じゃ。
つまりな小僧、全作品の約65%――およそ3分の2は19文字以下のタイトルなのじゃよ! さっきの例でいえば、13文字の『隣の席の幼なじみが甘すぎる』あたりが、ちょうど真ん中くらいじゃ」
「ええっ!? 長いタイトルが多いと思っていたのに、全然そんなことないじゃないですか……!」
「このグラフは、20年分の作品を全部まとめたものじゃからな。どうやら昔の短い作品まで全部まとめると、長いタイトルは少数派になるのじゃ。ちなみに40文字以上のタイトルは、全部かき集めても全体の1割前後じゃ」
「単語だけのような4文字以下も約6%あるんですね。長いタイトルばかりっていうのは、僕たちの思い込みだったんですね……」
「いや、そうとも言い切れんぞ。それは後で説明しよう」
「次に、サイトごとの違いを箱ひげ図で見てみようかの! 中央値はノクターンが17文字、ムーン女性向けが13文字、ムーンBLが12文字、ミッドナイトが11文字じゃ」
「ノクターンだけ明らかに長いですね……」
「うむ。真ん中50%の作品が収まる箱を見ても、ノクターンだけが9〜30文字と、上に向かって大きく伸びておるじゃろ? 長いタイトルは、ノクターンで一番多く使われておるのじゃよ」
「どうしてノクターンだけ、こんなに長くなりやすいんでしょうか……?」
「作品数が一番多いから、タイトルだけでジャンルや設定、好みの要素を伝えんと埋もれてしまう……という事情があるのかもしれんの。あくまで推測じゃがな。
じゃが面白いのは、箱の下端――下から25%の境界じゃ。どのサイトも7〜9文字で、ほぼそろっておる」
「短いタイトルのラインは、どのサイトもほとんど同じなんですね!」
「そうじゃ。『短いタイトルはどのサイトにも同じくらいあるが、長いタイトルはノクターンに飛び抜けて多い』というのが正確な姿なのじゃよ」
「さあ小僧、ここからが今回の主役じゃぞ! 初回掲載年ごとのタイトル文字数の中央値の移り変わりを見よ!」
「え、どんどんタイトルの中央値が上がっていってますよ!」
「どうやらノクムンミッドも長文化しておるようじゃな。初期はどこも9文字以下じゃったが、2014年頃から変わり始めたのじゃ。ノクターンは2014年に約10文字になって、2019年に約15文字、2021年には約21文字、そして2026年には約24文字まで上がっておる」
「昔の3倍くらいになっていますよ……!?」
「うむ。そしてムーン女性向けは、ノクターンから5年ほど遅れた2019年あたりから上がり始め、2025年に約20文字、2026年に約21文字と、ノクターンを追いかけておる。ムーンBLはさらにゆるやかで、2025年に約15文字、2026年に約17文字じゃな」
「ノクターンが最初に長くなって、それをムーン女性向け、ムーンBLの順番で追いかけていったんですね……! ……あ、あれ? でもミッドナイトは変わってないですね」
「何故かミッドナイトは開設された2015年から今まで、ずーーっと11文字前後で動いておらんのじゃ! 2026年にわずかに約13文字へ増えた程度じゃな。ちなみに2026年は9月29日までの途中の年じゃから、どのサイトも確定した値ではないぞ」
「ミッドナイトだけ、長いタイトルの波が届いていない……!? 時が止まっていますよ……!」
「他のサイトほど作品が多くないから、タイトルで目立たせる必要が小さかったのかもしれんの。理由までは分からんが、サイトによって流行の広がり方がまるで違うのは確かじゃ」
「タイトル文字数の変化を、年別の構成比グラフで見てみようかの。その年に始まった作品を、タイトルの長さで4つの帯(0〜9文字/10〜19文字/20〜39文字/40文字以上)に分けて、その割合を1本の棒に積み上げたグラフじゃ。棒はどれも100%で、色の長さがそれぞれの帯の割合じゃな。明るい色の割合が多い年ほど、長いタイトルの作品が多いことを示しておるぞ。
グラフを見ると、2005年には約80%もあった0〜9文字の短いタイトルが、2020年には約30%、2025年には約21%まで減っておる。代わりに、昔はほぼゼロじゃった40文字以上が、2023年以降は約15%、2026年には約20%まで増えておる」
「きれいに変化していってますね……」
「うむ。構成比の変化を見ると、短いタイトルが大きく減って、40文字以上の長いタイトルがたくさん現れたことがわかるのじゃ。実は真ん中の10〜19文字の帯は、あまり変わっておらんのじゃ。そしてサイト別に見ると、その違いがさらにはっきりするぞ!」
「ノクターンは、2023年以降、40文字以上が約21〜22%(2026年は約25%)もあって、0〜9文字(約19%)を上回っておる。今や半数以上が、20文字以上のタイトルじゃ。ここ数年は安定しておったが、2026年は少し長めになったようじゃな」
「どこまで長くなるんでしょうか……」
「わからん。じゃがムーン女性向けを見よ。0〜9文字は約17%と、実はノクターンより少ないのに、40文字以上は約12〜13%に留まっておる。その代わり、真ん中の『20〜39文字』の帯が分厚く膨らんでおるのじゃ」
「ムーン女性向けは、長くはなっているけれど、40文字以上までは伸ばさずに、20〜30文字台でまとめているんですね! あ、ムーンBLは40文字以上が約6%とさらに少なくて、10〜19文字が中心です」
「うむ。そしてミッドナイトは……0〜9文字が約40〜45%で10年間ほとんど変わらず、40文字以上もわずか4〜5%じゃ。やはりミッドナイトだけ、別の時間が流れておるな」
「さあ小僧、ここからが今回の講義の核心じゃ! タイトルが長い作品は、本当に総合ポイントが高いのか、このグラフから読み解いていこうかの。1本の棒がそのタイトル文字数の帯の作品全体で、下の灰色が0pt、上へ行くほど明るい色の高いポイントじゃ。
グラフを見ると、タイトルが長くなる右へ行くほど、上の明るい色がどんどん増えておる。4文字以下だと1千pt以上は約13%なのに、40〜59文字では40%を超え、95文字以上では約60%が1千pt以上じゃ」
「本当だ……! タイトルが長いほど、明るい部分が増えています!」
「うむ。どうやらタイトルを長文化させるのは有効な手段のようじゃな」
「では箱ひげ図も見ていくかのう。中央値は4文字以下の約40ptから、10〜14文字で約200pt、30〜34文字で約500pt、40〜44文字で約650ptへと、タイトルが長くなるにつれて上がっておる」
「すごいですね……。あ、でも40文字を超えたあたりから、中央値の上がり方がゆるやかになっていませんか……?」
「うむ、伸びがいいのはせいぜい40文字くらいじゃな。それを超えると、中央値は700〜900ptのあたりをゆるやかに進むようになり、伸びが鈍るのじゃ。そして95文字を超えた右端で、約1,400〜1,500ptへと最後の跳ね上がりを見せる。もっとも、60文字を超える帯は作品数が少ないから、細かい上下はあまり気にせんでよいぞ。
それと、ひげの先――最大値を見てみよ。4文字以下の短いタイトルであっても、10万pt級の怪物はちゃんとおるぞ!」
「短いタイトルだからといって、伸びないわけではないんですね……! でも、どうしてこういう傾向になるんでしょうか……?」
「いくつか理由はあるが、おおむね情報量の違いじゃな。自分が読みたいものかどうか判断しやすいというのがあるのじゃ。作品数が少なかった時代は短いタイトルでも問題なかったが、作品数が増えると探しきれなくなるからの。
1日数件くらいの新作なら良いが、1日に数十作品が投稿されると全部を読みきれん。そのときに、どんな内容かがひと目でわかるタイトルが付いておれば、読者も自分が読みたいものを探しやすくなるのじゃ。特に小説投稿サイトでは文字情報のみで判断するため、タイトルに情報を詰め込む戦略は有効なのじゃろうな」
「なるほど……!」
「では、サイトごとにポイントの分布と箱ひげ図を並べて確かめるぞ。まずはノクターンからじゃ。
ノクターンの箱ひげ図の中央値を見ると、4文字以下で約30ptじゃったのが、40〜44文字で約500pt、95〜99文字で約1,400pt、100文字で約1,600pt……頭打ちがなく、100文字まで上がり続けておる。
ノクターンは、タイトルの長さとポイントの関係が、4つのサイトで一番はっきり出ておる土俵なのじゃ。読者がタイトルから中身を判断して作品を選んでおる、ということかもしれんの」
「長いタイトルほどポイントが高いのは本当なんですね」
「そうじゃ。ただし、ただ長くすれば良いというわけでもないぞ。どんな内容なのかがちゃんと伝わらんと意味がないぞ。長いタイトルでも、ポイントがほとんど入っておらん作品はたくさんあるのじゃ」
「次にムーン女性向けじゃ。
ムーン女性向けは、10〜14文字ですでに約570ptで、30〜34文字で約1,400pt、40〜59文字で約1,500〜1,900ptまで上がっておる。じゃが60文字を超えると、それ以上は上がらず、むしろ横ばいか下がっておるのじゃ。
ムーン女性向けでは、『30〜40文字前後』で頭打ちになっておるのじゃよ。それ以上長いタイトルでも、真ん中の作品のポイントは増えておらん。文字数の回で見た『本1冊分で頭打ち』と同じ形じゃな。もっとも、60文字を超える帯は作品が少ないから、下がっておるところは揺れの範囲かもしれん」
「ノクターンとムーン女性向けでは、ここでも形が違うんですね」
「ムーンBLも同じような形で、30文字台(約1,100pt)で頭打ちじゃ。それに、4文字以下の短いタイトルでも中央値が約120ptあって、4つのサイトで一番『短いタイトルでも読まれておる』のがムーンBLじゃな」
「ムーンでは、無理して100文字近くまで伸ばす必要はなさそうですね……!」
「最後にミッドナイトの分布じゃ。4文字以下では一番下の灰色の0ptが約44%もあったのが、タイトルが長くなるにつれて20%前後へ減り、50文字台では4〜11%まで減っておるじゃろ?」
「本当だ……! ミッドナイトは、高いポイントが増えるというより、0ポイントの作品が減るんですね!」
「その通りじゃ! 箱ひげ図の中央値は、40〜44文字でも約25ptと、他のサイトとは桁が違って低い。じゃが、タイトルの長い作品ほど、少なくとも誰かに読まれて0ptから抜け出しておる割合が高いのじゃよ」
◇
「どうじゃ小僧、タイトル文字数の正体は見えたか?」
「はいっ……! 全体では20文字未満が多数派だけど、2014年ごろから長いタイトルが増えてきたこと、そしてノクターンは100文字までポイントが伸び続けるのに対して、ムーンは30〜40文字くらいで頭打ちになること……すごくよく分かりました!」
「うむ、よくぞ学んだ! ……じゃがな小僧、ここで一番大事な釘を刺しておくぞ。『タイトルを長くすれば、誰でもポイントが上がる』と信じ込んではならんぞ! その理由は3つあるぞ。
1つ目に、新しい作品ほどタイトルが長いことじゃ。そして新しい作品は、2020年の評価フォームの改修のあとで、評価ポイントが入りやすい時代に書かれておる。年の違いが混ざっておるのじゃ。
2つ目に、タイトルをじっくり練る作者は、あらすじや本文、更新にも力を入れておることが多いじゃろう。
3つ目に、ポイントが伸びたあとで、『書籍化決定』や『完結』といった言葉をタイトルに足して、長くなる作品もあることじゃ。今回数えたのは今のタイトルじゃから、伸びた結果として長くなった作品も混ざっておるのじゃ」
「あ……! タイトルだけを無理やり長くしても、中身が伴っていなければ意味がないんですね……」
「そうじゃ。タイトルを工夫すれば見つけてもらいやすくはなるかもしれんが、読んだ読者を満足させるのは中身じゃ。それを肝に銘じるがよいぞ」
「はい!」
「では、今日はもう1つ、あらすじの文字数についても見ていくぞ」
「は、はいっ! よろしくお願いします、神様……!」
グラフが多くなったので分割するのじゃ。




