10. 感想なのじゃ
☆データ情報☆
※使用したデータは2026年09月29日時点のものなのじゃ。そのため今の値から多少ずれがあるのじゃ
※これらのデータは公式から提供されるものではなく、個人が集めたデータからの推測なのじゃ。
「スキルが絶対的な異世界に転生し、楽しみにしていた成人の儀で授かったスキルは【自主規制】という戦闘には全く役立たんハズレ枠、家族やパーティーから『役立たず』と追放され、ギルドでは笑い者、ところがこのスキル、実は【自主規制】するたびに相手の能力を上昇させられるとんでもない性能だったと判明、最初に助けたエルフの少女と【自主規制】でステータスが跳ね上がり、続いて獣人の女戦士、聖女見習い、魔族の姫、ギルドの受付嬢まで次々と仲間に加わって、彼女たちも【自主規制】を深めるたびに強化されていく、気づけば最強パーティーが完成してちやほやされる日々、一方そのころ追放した者たちは何故か落ちぶれダンジョンで全滅寸前、助けを求めてきたので助けたのに、なぜかキレて襲いかかってくるも盛大に自爆してざまぁ、そして自分は女の子たちと毎晩ドッタンバッタン【自主規制】……そんな冒険をしたいのじゃ~、のじゃ~……おっ、小僧。来たか」
「こ、こんにちは。今日も絶好調ですね……」
「うむ。エナドリのおかげじゃ。さて今回は感想の分析へ足を踏み入れるぞ!」
「感想……! 小説を書いていて一番憧れるやつです……!」
「うむ。お前さんはミッドナイトに投稿した作品に、感想をもらったことはあるか?」
「め、滅相もないです……! 総合ポイントゼロの僕の小説なんかに、感想なんて届くわけがありません……。でも、やっぱり他の人気作みたいに、僕もいつか感想をもらってみたいです……」
「ふむ。では、その感想がWeb小説の世界においてどれほど貴重なものかを教えてやろうかの!」
「まずは全体の現実を直視せよ。ノクムンミッド全作品の感想数の分布じゃ!」
「ええと……棒グラフの一番上、0件が……えっ!? 56.1%……!?」
「然り! 全作品の半分以上には、感想が1件も付いておらんのじゃ! 感想が1件でもある作品は43.9%しかなく、少数派なのじゃよ」
「半分以上の作品が、感想ゼロなんですか……!? で、でも、ブックマーク0件は5.9%で、評価ポイントゼロも10.8%でしたよね? どうして感想だけ、こんなにゼロの割合が跳ね上がるんですか……?」
「読者の手間の差じゃよ。ブックマークはボタンを1回押すだけ、評価ポイントも☆を1回押すだけで済むじゃろ? じゃが感想はどうじゃ? 作品を読んだ上で、感想フォームを開き、文章を頭で考え、キーボードやフリックで文字を入力して送信せねばならん」
「あ……! 読者さんにかかる手間が、桁違いに大きいです……!」
「その通りじゃ。なお、この0件の中には、作者が感想を受け付けておらん作品も含まれておる。もらえなかったのか受け付けておらんのかは、このデータでは区別できんが、受付停止しておる割合はそれほど大きくはないのじゃ。ちなみに感想が5件以上ある作品は15.8%、10件以上は9.3%、100件を超える作品は全体のわずか1.1%しかないぞ」
「ポイントとかとは桁が違いますね……」
「続いてサイト別の比較に入るぞ。まずはサイトごとの中央値じゃ!」
「……? あ、あの……神様? グラフが壊れていませんか……? 棒が1本もなくて、全部0なんですけど……」
「壊れてなどおらん、これで正常じゃ! 全サイト、中央値は0件なのじゃよ!」
「ええええっ!? ノクターンも、ムーン女性向けも、BLもミッドナイトも、全部中央値がゼロなんですか!?」
「そうじゃ。どのサイトも半分以上の作品が0件じゃから、少ない順に並べた真ん中の作品も0件になる。これまで『中央値で見よ』と言うてきたが、感想では中央値が役に立たんのじゃ」
「じゃあ、どうやってサイトごとの違いを見るんですか?」
「視点を変えるのじゃ! 感想が1件以上ある作品の割合として見ていくぞ。
感想が1件以上ある作品の割合は、ノクターンが46.5%、ムーン女性向けが44.8%、ムーンBLが43.0%、ミッドナイトが17.5%じゃ」
「……あれ? ミッドナイト以外の3つって、ほとんど差がありませんね?」
「ブックマークや評価ポイントではサイト間に2〜4倍の差があったのに、感想が付いておる作品の割合は、3つのサイトで3.5%ほどしか違わんのじゃ。ミッドナイトだけ違うのはいつものことじゃ」
「次に、上位10%に入る境界の値を見るぞ。上位10%の境界は、感想の多い順に並べて上から10%目にいる作品の件数じゃったな。ノクターンが11件、ムーン女性向けが9件、ムーンBLが7件、そしてミッドナイトは1件じゃ。つまりどのサイトでも、感想が10件前後集まれば、その時点で上位1割に入れるのじゃよ!」
「10件もらえるだけで、もう上位1割なんですか……!? ……あ、でも神様、ちょっと引っかかるんですけど……」
「む? 何がじゃ?」
「一番最初の全体の数値の紹介で、『感想の大半はノクターンに集まっている』って言ってませんでしたっけ? 確か全体の約3分の2がノクターンだったはずです。1件以上もらえる割合がどのサイトも4割台で同じなら、ノクターンに感想が集中しているっていうのと矛盾しませんか……?」
「よく覚えとったな、小僧! その矛盾の謎を解く鍵が、次の分布と作品形式のデータなのじゃよ!」
「では、サイトごとの感想数の分布を細かく見ていくぞ! ミッドナイトだけ横軸が100%まであるから、棒の長さではなく数字で比べるのじゃぞ」
「わかりました」
「ノクターン、ムーン女性向け、ムーンBLを見てみると……0件が53〜57%、1件が約14%、2〜4件が約14%……20件未満までの形は、3つのサイトでほぼ瓜二つじゃ。
じゃが一番下の『100件以上』では、ムーン女性向けが0.7%、ムーンBLが0.6%なのに、ノクターンは1.7%ある。ほかのサイトの2倍以上じゃ。
作品数に直すと、100件以上の感想を持つ作品は、ムーン女性向けが約290作品、ムーンBLが約240作品に対し、ノクターンには約1,200作品もあるのじゃ! つまり『ノクターンは感想をもらいやすい土俵』なのではないぞ。『ノクターンには、何百件、何千件と感想を集める一部の作品がたくさんある』というのが真相なのじゃよ! ちなみに感想数上位100作品の内訳は、ノクターンが81作品、ムーン女性向けが9作品、ムーンBLが8作品、ミッドナイトが2作品じゃ」
「普通の作品が感想をもらえる割合は同じでも、一部のとんでもない作品が大量の感想を集めているから、全体の合計ではノクターンが3分の2になっちゃうんですね……!」
「その通りじゃ! 女性向けのサイトでは★は熱心に入るが感想は少なめ、男性向けのサイトでは★は少ない代わりに感想が多い。評価ポイントの回と逆の関係じゃな」
「読者さんの反応の仕方の違いが、ここでも綺麗に出ていますね……。……あ、あの、神様、ミッドナイトは……」
「うむ、見ての通りミッドナイトは0件が82.5%じゃ。5作品中4作品以上が感想なしじゃな。しかしながら1件でも感想をもらえれば、それだけで上位約18%じゃ!」
「5作中4作がゼロ……! でも、1件もらえるだけで上位2割に入れるなら、ちょっと希望が持てますね……!」
「さて、ノクターンに感想が多い作品が生まれる理由を、作品形式別(短編/完結連載/連載中)のデータから探るとしよう!
感想が1件以上付いておる割合は、完結連載が54.3%、連載中が40.2%、短編が37.5%じゃ。過半数に感想が付くのは完結連載だけじゃ。注目すべきは感想が多い所じゃ。短編を見よ。10件以上はわずか1.5%、50件以上はほぼ0%じゃ」
「本当だ……短編はほとんどが1〜4件の間に収まっていて、多い方はほとんどありません……」
「一方、連載中を見るがよい。0件の割合は約6割と短編並みに高いが、100件以上の割合は2.0%と、3つの形式の中で一番高くなっておるのじゃ!」
「ええっ!? 連載中は、ゼロも多いけれど、100件を超える作品も一番多いんですか!? どうしてそんな両極端なことに……?」
「感想の仕組みを思い出すのじゃ。評価ポイントは、1人が1つの作品に1回だけ★をつける仕組みじゃったな? じゃが感想は違うぞ。同じ読者が1つの作品に何度でも書き込めるのじゃよ!」
「ああっ……! 話数が多い連載作品ほど、読者さんが感想を書くチャンスが何回も生まれるんだ……!」
「その通りじゃ! ノクターンは連載中の割合が高く、長い連載が多い土俵じゃったな。話数が積み上がった長期連載に、熱心なファンからの感想が雪だるま式に溜まっていく……これが、ノクターンに感想の多い作品が集まる大きな理由じゃろう」
「短編は読み終わりに評価ポイントを稼ぎやすいけれど、感想を集めるなら話数を重ねた連載が有利なんですね……!」
「うむ。評価は読み終わりに1回だけ、感想は読むたびに何回でも。同じ読者の反応でも、性質がまるで違うのじゃ」
「仕組みが腑に落ちたところで、次は歴史じゃ! 初回掲載年ごとの『感想が1件以上ある作品の割合』を見るがよい。その年に始まった作品のうち、いま感想が1件以上付いておる作品が何%あるかを、サイトごとに線にしたものじゃ。2005年から2009年ごろは感想割合は比較的高かったが、徐々に一定割合になってきておる」
「確かに2010年から2024年まで、15年くらいずっと横ばいでほとんど動いていませんね。とても安定してそうです」
「そうじゃな。そしてこれまでの傾向を思い出してみよ。評価ポイントには2020年に大きな段差があったじゃろ? 感想にもそれはあるかの?」
「そういえば感想の割合には段差がありませんね」
「そうじゃ。2020年の改修で変わったのは評価フォームだけで、感想を書く手間は変わっておらん。変わらなければ増えんのじゃ。評価ポイントの急増が改修によるものだという見方を、裏から支える材料にもなるのじゃ。
ちなみに感想にも、2024年10月8日に改修があった。それまで感想には『良い点』『気になる点』『一言』の区分があったのじゃが、それがなくなって、自由に書けるようになったのじゃ」
「でも感想は増えてなさそうですね? 逆に減ってるような……」
「そうじゃな、区分がなくなって少し書きやすくはなったが、自分の頭で文章を考えて書くという手間そのものは変わっておらんからの。2025年以降が下がっておるのは、まだ投稿されて日が浅いことや、作品が急に増えたことのほうが大きいじゃろう。感想を書く読者の数に対して、作品の数が増えすぎているのが問題だと思うのじゃ」
「確かに1日で書ける感想って限りがありそうですね……」
「それと、もう1つ面白いことがあるぞ。2026年に始まったばかりの作品でも、ノクターンで約24%、ムーンの2つで約30%にもう感想が付いておる。一方で、古い年の作品でも5割前後で頭打ちじゃ。感想は、連載を追いかけておる読者が、更新に追いついたその時に書き込みやすいものなのじゃ。昔の作品をわざわざ読み返して感想を書く者は少ないから、時間が経っても割合はあまり増えんのじゃろうな」
「さあ、いよいよ感想のデータで一番極端な部分じゃ! 年別の箱ひげ図を見ていくぞ!」
「わ……箱ひげ図を見ても、四角い『箱』が完全に潰れていて見えません……」
「そう! 箱が見えんのは、真ん中50%の普通の作品が0〜2件に固まっておるからじゃ。その一方で、ひげの先――最大値だけは数万件の高さまで伸びておる。普通の作品と最大値の間に、なんと4桁もの差があるのじゃ! しかも、各年の最大の作品のうち1万件を超える6作品だけで、合計約12万件にのぼる。全作品の感想約127万件の、約9%を占めておるのじゃぞ!」
「た、たった6作で全体の1割近くの感想を……!? まさにバケモノですね……」
「合計のグラフも見るのじゃ。これはブックマークの回と同じく、その年に始まった作品に、これまでに付いた感想の合計じゃ。長期連載に付いた感想は何年分でも始まった年の棒に入るぞ」
「変わった形をしてますね。2017年、2020年、2022年がちょっと飛び出てます」
「うむ、これまでのブックマークや総合ポイントの合計はなだらかな山形じゃったが、感想の合計は年ごとにギザギザと波打っておるのじゃ。
このからくりは、その年に感想が大量に書かれた作品が存在しておるためじゃ。例えば感想の最大値は約3万件で、この1作品だけで縦軸の目盛りの約5分の1もの高さを占めておる。つまり先ほどの飛び出た年には、突出して感想を集めた怪物作品があったことを示しておるのじゃよ」
「約3万件……とんでもないですね」
「そしてサイト別の各年の合計を見よ。縦軸の目盛りはサイトごとに違って、ミッドナイトだけ単位が『件』じゃから注意するのじゃぞ」
「ノクターンは2017年が約9万件で飛び抜けてます。ムーンBLは2020年が約3万件、ミッドナイトも2018年が約5,700件と、特定の年だけ尖っていますね」
「先ほど言うた通り、その尖りこそ、数万件の感想を集める大ヒット作が始まった年の跡と考えられるのじゃ。データの中身を調べると、ノクターンの2017年には1作品だけで約3万件、ミッドナイトの2018年にも、1作品だけで約4,000件もの感想を集めた作品があるのじゃ。合計の山は、こうした一握りの作品で作られておるのじゃろう。逆にムーン女性向けは、飛び抜けた作品が少ないぶん、比較的なだらかじゃ。
感想の合計や平均は、時代の流れよりも、ごく一握りの作品がどれだけ感想を集めたかで決まってしまう極端な世界なのじゃ」
「一部の人気作が、グラフの形そのものを変えていたんですね……あれ? でもそれだと2024年ごろから飛び抜けたものは無いってことですね。合計数はどれも減っていってます」
「どうやらそのようじゃな。最近だと感想が大量に書かれる作品が生まれとらんようじゃな。ただ、そういう作品は長期連載が多いゆえ、まだその領域に達しておらんだけの可能性もあるぞ。あと数年様子を見ればわかるじゃろ」
「年別の中央値も簡単に紹介しておくぞ。完結連載が1〜3件ある年を除けば、短編も連載中も、ほぼ全てのサイトと年で『0件』に張り付いておる」
「どこまでも中央値ゼロの壁が厚いですね……」
「うむ。形式と年で分けても、中央値が1件を超えるのは完結した連載だけ、ということじゃな」
◇
「どうじゃ小僧、感想というものの正体は見えてきたか?」
「はいっ……! 感想は半分以上の作品に1件も付かないこと、1件もらえるだけで上位半分、10件もらえたら上位1割に入れること……そして、何回も感想を書ける長期連載に集まりやすいっていう仕組みが、すごくよく分かりました!」
「うむ、よくぞ学んだ! 読者が時間と手間をかけて言葉を考え、わざわざ届けてくれた感想はな、たとえ『面白かったです』のたった一言であっても、半分以上の作品が手にできん、大切な宝物なのじゃよ」
「読者さんの生の声って、本当に尊いものなんですね……」
「そうじゃな。では次回に切り込むのは、読者が他の読者へ作品を推薦するために、己の文章力を振り絞って捧げるラブレター――『レビュー』の生態系じゃ! わずかしか出現せぬ奇跡の深淵……次で、その実態を徹底的に暴いてやろうぞ!」
「は、はいっ! 次回もよろしくお願いします、神様……!」




