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七話 潜入 ダンジョン[大河の深淵]

@Crusadechan

『本当にごめんなさい!

私のせいで炎上してしまって!


過激な発言は止めるよう、私からも発信を続けているのですがなかなか収まらなくて……私はただ、アナタと連絡が取りたいだけだったと言うのに。


そこで考えたのですが、私とコラボ配信しませんか?


その動画内でアナタに悪意は無いと私が説明すれば、きっと今回の炎上も収まるはずです!


今、そちらに向かっています!

二子玉川のダンジョンにいらっしゃるんですよね?


SNSのフォロワーさんからそう教えて頂いたんです!

もう少しで到着するので待っていて下さい!


とにかく、詳しい話は落ち合ってからにしましょう!

またその際に、今度こそ連絡先を交換出来たらと思っています!』


@D.SHIN

『〉〉@Crusadechan

待ってクルセイドちゃん、コラボ配信とか連絡先の交換とかマジで言ってる???


ちょっとごめん、俺もすぐそっちに行く。


今回だけは流石に見過ごせない、どうしても先に伝えたい事があるんだ』





─────

二子玉川ダンジョン[大河の深淵]


全冒険者平均探索成功率[44%]

全冒険者平均死亡率[7%]

危険度[低〜中]

脅威度[低〜中]


佐藤大吾:職業[上級職:スマホクラフター]


[懸念事項]

ダンジョン探索経験(低)

自律神経の乱れ


算出:佐藤大吾 [ダンジョン探索成功率]


〝22%〟

─────


「低っ!?ちょっとこれ低過ぎないか!?

というかまず平均からして低いじゃないか!!


……ひ、引き返そうか?


やっぱさ、よくよく考えたら、近いからって安易にダンジョンを決めるのは良くないと思うし?」


『問題ありませんよ、ご主人。


今回のダンジョンは川辺にあると言う事で、湿気が多く蒸し暑く、また浸水している箇所もあるために『単に探索が面倒で引き返した』者が多いのです。


平均が低いのは危険だからではなく、それが主な要因です。


また、ご主人は上級職とは言えまだ一度しか探索を行っていません。なのでどうしてもこの程度の数値になってしまうというだけで、本来の成功率はもう少し上と見て間違いはないでしょう。


ですからご主人、安心してダンジョンの探索を開始して下さい』


「そ、そうなのか。それなら良かった……けど、それはそれとして。


俺だって蒸し暑いのとか、湿気が多いのとかは普通に嫌だから、どちらかと言えば引き返したいんだよなぁ……」





まあ色々と思う所はあれど、来てしまったのだから行かねばなるまい。


という事で遂に、俺達はダンジョン[大河の深淵]の探索を開始した。


また、ダンジョン内部はその名の通り、常時水が滴るような洞窟が余す所無く上背のある苔や藻にも似た植物で覆われているという、何処か密林を連想させるようなものであった。


そして、この場所が密林と例えられるならば。


地の利を活かしてこの俺こと佐藤大吾さとうだいごという名の獲物を付け狙い、身を隠し。


最後には胃に収めんと、襲い掛かる魔物達だって必ずや存在するはず。


俺は慎重に、一歩一歩を踏み締めるようにして歩いていた。


『ふむ……ご主人、急ぎましょう。


恐れていた事が現実となりました。


『クルセイドちゃん』氏がご主人の配信にコメントを付けました。しかもこちらに向かっているようです』


……そんな俺の尻を、相変わらずスマホは叩きに叩き続けてくる。


何処に危険が潜んでいるかも分からないと言うのに、だ。


なので言い返そうとしたのだが、この無機物は続け様に自身のディスプレイ部分、つまり画面を見せ付けて今度はこう言うのだった。


『またそれだけでなく、彼女の発言によってただでさえ荒れていたコメント欄の荒み具合が更に悪化しました。


さあ、ご主人もご覧になって下さい。

そして現状を理解したのならば、もう少し早く移動しましょう』


そこで仕方なく、目を向けてみると。


@xnb62q4

『おいスマホクラフター!!お前はいい加減クルセイドちゃんに返事をしてやれよ!!』


@cnlgh7_q3x993

『本当、ちょっと酷過ぎない?なんでこの人ってクルセイドちゃんを頑なに無視してるんだろう?何かあったのかな?』


@0q_38zo

『例え本当に何かあったとしてもこの対応は不誠実だろう。コイツはさっさとクルセイドちゃんに返信して謝罪すべき』


それはあまりにも膨大な数であったため、一部のみの抜粋とさせてもらったが。


そこにはこの通り。

スマホ画面の中は、俺に対しての怒りの声で満ち満ちているのだった。


「うわぁ……な、なあ。

やっぱり、返事くらいはしてあげた方が良いんじゃないか?」


『……正直、私もそんな気がしてきました。


確かに、『クルセイドちゃん』氏程の有名人に全てを白状してしまうと、もしも彼女の口からその事が外部に漏れ出た際の情報の拡散、伝達速度は凄まじいものとなる可能性が非常に高く、それが危険だと言うのは変わりありません。


ですが、まさかここまで視聴者の怒りを買う事になるとは、流石に予想外でした。


加えて、他にこの炎上を沈静化させる手段を探すと言うのも困難ですし……分かりました。


ご主人、『クルセイドちゃん』氏への返信を許可します。

それで彼女と接触する事になっても構いませんので。


ただし、その場で私の事は絶対に話さないで下さい。

嘘を交えた丁度良い言い訳は、また後で考えますから。


……いえ、やはりご主人だと心配ですね。


それでは、コメントへの返信は今から私が考え、その上で行います。ご主人はそのまま移動を継続して下さい』


そんなやり取りを終えると、スマホは勝手に開いた画面を勝手に戻し、これまた勝手な事にも独断で何やら検索を始めた。


「おい、それどう言う意味だよ!!


っていうか、この際だから言わせてもらうけどな!!

俺からしてみれば、お前に任せる方がしんぱ……」


『…………検索完了。


ご主人、計画をやや変更します。


『クルセイドちゃん』氏への返信、接触等の行為は一旦保留。ダンジョンを探索、及び配信を終えた後、速やかにここを離れましょう。


先程から方針自体は変わっていませんが、以前よりも『より迅速に、より早急に』、です。


さあ、今からはその事だけを考えて行動して下さい』


「え?な、何だよ急に……?」


だから、今度こそ文句の一つでも言ってやろうかと思っていたのだが。


こちらの発言を遮ってまで始められたスマホのある話に、俺は否応無しに沈黙させられる事となる。


『これは『クルセイドちゃん』氏への適切な返答のため検索を行う途中、それと並行して彼女からのコメントを再度確認していた際に知り得た情報なのですが。


……どうやら『クルセイドちゃん』氏のコメントに反応し、所謂『迷惑系、炎上系』と呼ばれる配信者。


『ドラゴンシン』氏も、こちらのダンジョンに潜入しているようなのです』


「な!?そ、それって、さっき流してた動画の配信者じゃないか!?」


『ええ、偶然にもその通りです。


また、『ドラゴン進』氏は今現在、『クルセイドちゃん』氏を付け回しているとの事。


ですから、ご主人にはより早急な探索、配信の遂行をお願いしているのですよ。


そのような人物とは接触するだけでもリスクが非常に大きく、特に今のご主人が目を付けられれば最後。


彼の持つ過激なファン、所謂『信者』達や。


現在もアナタ様に対して怒りの声を上げる者達の中で憶測が飛び交い、炎上はますます広がっていく事でしょう。


そうなった後ではもう、騒ぎを沈静化させる手段など皆無と言えます。


つまりご主人。もしそうなったらアナタ様は今後一切として、〝普通の配信者〟と同じように活動する事は出来なくなってしまうのですよ?』


「うっ…………」


まあ確かに、その通りではある。


迷惑系、炎上系配信者……そんな奴とは会う事は愚か、一言だって話すのはマズい。


そこで口が滑ってもアウト。

というか、そうでなくても充分にアウトだからだ。


何故ならば、例え俺がまともな発言をしたとしても、撮れ高が無いからと言ってソイツに絡まれ続けるだろうし。


それかもしくは、同様の理由で妙な動画の切り抜き方をされてしまってソイツの仲間だと思われたり、印象を下げられた挙句、より炎上が激化してしまったりだとか……


まあとにかく、そのような未来など容易く予想出来る。


「……わ、分かった。

流石にそうなったら俺も困るからな。


お前の言う通りにするよ。

じゃあ、すぐに探索を終わらせよう。


たださっきお前、『ドラゴンシン』氏は今現在、『クルセイドちゃん』氏を付け回している』とか何とか言ってたよな?


それだけがちょっと心配だけど……」


『ご主人、お気持ちは分かりますが今はご自分の心配をなさるべきです。


それに……


─────

[ステータス](検索結果による推定)


ドラゴン進:職業『魔物使い』


HP 1700以上

MP 1000以上


[パラメータ](簡略:検索結果による推定)

ATK 100以上

DEF 90以上

INT ??? データ不足

RES ??? データ不足

AGI 60〜70

LUK ??? データ不足


Lv 30〜35

─────


このように〝準非戦闘職〟とも言える存在である、魔物使いの『ドラゴン進』氏のステータス、パラメータは戦闘職と比べて低く。


万が一襲われたからと言って、『クルセイドちゃん氏が遅れを取る』という事はまず有り得ないでしょうから』


「そ、そっか。

まあ、そういう事なら……!!」


という事で、俺はまた歩き出した。


ただし、先程のような慎重さはそこにはもう無い。


ここからは大至急、可及的速やかに。

全ての物事をやり遂げなければならないのだから。


『え、ええ……ご主人……


い、急ぎ……ましょう……』





@D.SHIN/炎上系配信者 ドラゴン進【ライブ中】


[【神回確定】憧れのクルセイドちゃんがスマホクラフターとかいう奴に奪われそうなんで今から本気で告白します!!]


「ハァ……ハァ……!!


もう!!いい加減にして下さい!!


私はアナタとお付き合いするつもりなんてありません!!だからこれ以上私について来ないで!!今はそれどころじゃないの!!」


「待ってクルセイドちゃん!!ちょっと待ってよ!!


だってクルセイドちゃん、今からスマホクラフターとか言う奴に会いに行くんでしょ!?だったら見過ごせないよ!!


ねえ!!俺本気なんだよ!!

だからお願い!!ちょっとだけ待ってよ!!少しで良いから俺に時間を頂戴!!少しで良いから!!」


@kurufan0801

『うわぁ……クルセイドちゃん可哀想。

流石にやり過ぎでしょ。


クルセイドちゃんが優しいから攻撃して来ないのを良い事にずっと追いかけ回して、本人嫌だって言ってるのに告白とかさ、本当コイツ好きになれないわ』


@0cmqr0s3.l9_

『〉〉@kurufan0801

お前の方がよっぽど好きになれないね。嫌なら見なきゃ良いじゃん?』


@en9.c33__cl

『〉〉@kurufan0801

過去の配信見ろ。ドラゴン進は前からクルセイドちゃんの事好きだったんだぞ?


お前、自分の好きな人がスマホなんちゃらとか言う奴の所に行くとか、コラボするとか連絡先交換するとかってコメントまでしてて黙ってられるか?


無理だろう?いや、それで何もしなかったら男じゃないね。だから俺はドラゴン進を応援する』


@qmnmmx.c

『ドラゴン進さん頑張って!!諦めなきゃきっとクルセイドちゃんもOKしてくれる!!』


@9len390zn0s8

[こちらのコメントは削除されました]

『やっぱ信者って怖いな……』

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― 新着の感想 ―
AIアドバイザーのパディとのやり取りや攻防がすごく面白いです!まさかのスマホ変身展開はたまらないですね。炎上に対してここからどう立ち向かっていくのか、今後の展開も楽しみに追わせていただきます!
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