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三話 サラマンダーVSダンジョン探索初心者(スマホクラフター)

「まあ色々と言いたい事はあったんだけど、もう良いや。諦めるよ。


とにかく、今はクルセイドちゃんを助けないと!……とは言っても、俺に出来るのなんてせいぜい『生贄になって数秒足止めする』くらいだと思うけど、本当に戦うのか?


何だったら囮になるか、どうにかしてクルセイドちゃんをあそこから連れ出したりした方が良いような気もするけど……」


『何を仰るのですか、ご主人は上位職のスマホクラフターなんですよ?それに、今は私もいるのですから問題ありません。


職業についても説明します。

戦法も全てこの私が指揮を取ります。


だからご主人、アナタは余計な事は気にせず、かつ迅速に『クルセイドちゃん』氏の救出へ向かって下さい』


さて、残された時間は少ない。


最早いつ何時、『クルセイドちゃん』に限界が来るかも分からないのだから。


とにかく、おおよその方針は決定した。


それは『サラマンダーを撃破し、彼女を助ける』というものだ。


出来る気がしないが、戦いはスマホが全面的にサポートしてくれるらしい。


「……よし、それじゃあ行くぞ!」


という事で、俺は駆け出した。


本来ならば絶対に勝てないであろう、戦いの舞台へと向けて。




@kurufan0801

『クルセイドちゃん今回はマジでヤバいんじゃないの!?警察とか呼んだ方が良いんじゃ……』


@OJ. 0.8m3_x

『無理だろ、警察がダンジョンの中に入ってるのなんて見た事ないし、でも確かに今回はちょっとヤバいかもね』


@aaaaaaaa77

『クルセイドちゃん早く逃げて!駆除とかもうどうでも良いから!』


@30coe__1212

『……あれ?何か映ったけど、また誰か来た?』


@xq8n3t4g6

『おい良い加減にしろよ!またクルセイドちゃんの邪魔しに来た奴がいるのかよ!』


@crusade LOVE

『どうせ金目当ての雑魚冒険者だろ?さっさと消えろよ!これ以上クルセイドちゃんに無理させると洒落にならないんだぞ!』


移動中、何やらスマホが映し出しているのに気が付いた。


流れるコメントの数々。

次のオススメ動画を勝手に探し始めるありがた迷惑な機能。


どうやらコイツ、配信を見ているようだ。


まあ大方〝俺の方〟かクルセイドちゃんの配信か、間違いなくそのどちらかであろう。


『ご主人、たった今『クルセイドちゃん』氏の配信にアナタ様が映り込んだようです。「消えろ!帰れ!」等のコールが一斉に始まりました』


「良いよそんな事教えなくても!

と言うか知りたくなかったんだけど!」


『ご主人、〝そちらの方〟はお気になさらず。


彼女の配信に映ったと言う事は、『今この瞬間から、討伐対象の間合いに入った』と同義。


私が真に伝えたかったのはそちらの方です。

ですのでご主人、今からはより気を引き締めて事に挑んで下さい』


……きちんと指示通り動き、現に今も尚クルセイドちゃんとサラマンダーに近づきつつあると言うのに、何故か俺を無駄に傷付けるスマホ。


この時の俺は、『帰ったら絶対にコイツを売り飛ばして、その金で新しいスマホを買おう』などと考えてしまっていた。


の、だが。

当然そんな場合ではない。


重々承知しているつもりだったが、俺はそう再認識させられる事となった。


「あ、アナタはさっきの!?……何してるの!!


すぐに逃げなさい!!

この魔物は初心者が勝てる相手じゃないわ!!」


クルセイドちゃんも俺に気が付いたらしく、彼女がこちらへと叫ぶようにそう言い放ったのだ。


余程焦っているのだろう、以前は丁寧であった口調もまるで無しに。


しかし、それは同時に『サラマンダーにも気付かれてしまった』事を意味する。


何故ならば。


彼女の発言、それこそが俺達の存在を魔物に告げる、最良の警笛となるのだから……


『ご主人、どうやらサラマンダーがアナタ様の存在を認識したようです、お気を付けて』


「お、おいマジかよ!?嘘だろ!?俺はまだ碌に戦い方も分からないってのにか!?」


そして遂に、サラマンダーの両目が俺を捉えた。


〝ギャアアアアアア!!〟


ギョロリとしたワニのような眼球。

だが体躯はその数倍以上はあるだろうか。


しかもそれが、絶叫にも近い咆哮で威嚇するその光景はまさに地獄である。


「あ、あ……」


また正直に打ち明けると、その時点で俺は既に戦意を喪失し切っており。


恐怖に怯え、震えるこの足では立っているのがやっとというくらいだった。


ただしそれは、何処か浮世離れしているように、無機質に、無感情に。


淡々とまた俺に語り掛け、緊張を解きほぐしたスマホの存在が無ければの話なのだが。


『ではご主人、今から『クラフター』並びに『スマホクラフター』について説明を始めます』


「わ、分かったから早くしてくれ!!頼むから!!

ていうか遅過ぎるだろ!!」


『その言い分は理解出来ますが、登場のタイミングも考えると致し方なかったのです。


とにかく、もうこうなっては仕方ありません。

今から手短に説明しますから、しっかりと聞いていて下さいね?


ただし、『サラマンダーの攻撃を避けながら』というのをお忘れなく』


「んなもん分かってるわ!!」


やり取りを終えた直後、俺は弾かれるようにして右方向へ飛び退いた。


そのすぐ後、つい先程まで俺のいた場所を焦がし尽くすサラマンダーの火球。それを避けるためにだ。





「ま、まさか、戦う気なの!?

そんなの無理よ!!早く逃げ……うっ!!」


そこでとうとう脇腹に手をやり、蹲るクルセイドちゃん。


サラマンダーの目の前で取る行動としては最悪な選択だ。


しかし、魔物の牙が彼女を貫く事は無かった。


何せ奴の標的はたった今、俺に変わったのだから。


『ご主人、〝クラフター〟というものは本来、取得した素材やアイテムを用いてまた新たな武器や防具、その他アイテムを作り出す職業を言います。


勿論、今のご主人にもそれは可能です。


しかし、初心者クラフターの未熟な技術で生み出すモノを利用して、あのサラマンダーから勝利をもぎ取るというのは困難を極めます。


いえ、不可能に近いでしょう。

なので、〝この私をクラフト〟して下さい。


ご主人はこの私を日常的に使い込んだ事によって、その上級職であるスマホをクラフトする達人、『スマホクラフター』となれたのですから。ご主人にはそれが出来るのです。


また当然、そちらの方が遥かに自由度の高く、威力もある攻撃、行動の可能なモノを作り出す事が出来ますよ。


さあ、それではどうぞ』


そうして放たれる火球の嵐の中、俺は何とかそれをやり過ごしただけでなく、無機物の説明を全て聞き取り、理解した。


そう、理解した……のだが。


それだけでは何をしたら良いか分からず、未だ攻撃に転じる事すら出来ずにいた。


「ああ、よく分かったよ!!

肝心のやり方以外はな!!


教えてくれ、俺は一体何をすれば良いんだ!?」


『簡単です。あの魔物を倒せる何かになって欲しいとこの私に〝念じるだけ〟で良いのです。


本当に、剣でも槍でもそれ以外でも、何でも構いません。


『本来のクラフター』にはそのように手品紛いの技術はありませんが、スマホクラフターであるご主人にはそれが可能なのです。


アナタ様個人の力に加え、ご主人の加護によって大幅に強化されている……だけでなく。


世界のあらゆる物事を検索によって導き出せる、この私を使用するのならば。


という訳でご主人、早速やってみましょう』


そこで聞いてみた所、スマホが言うには俺はただコイツに『そうなって欲しい姿に変われと願えば良い』だけとの事。


何だか、その説明だけでは出来る気がしないが。

だがやらなければもう二度と、俺は日の目を拝む事は無いであろう。


それと、クルセイドちゃんも。


そこで一か八かくらいの気持ちで、俺は握り締めたスマホにある事を強く念じてみた……すると。


突如として俺の目前に、何やら文字が浮かび上がってきた。


─────


クラフト成功

[スマートフォン『モデル:剣闘士(グラディエーター)』]


─────


『……ふむ、『クルセイドちゃん』氏のように〝戦う者〟の姿をこの私に投影しましたか。


まあ、咄嗟に願ったとしては上等です』


また同時に、女性のようなロボット?

ロボットのような女性?分からないが、とにかく。


全身を銀に染め、大きな剣を背負った女の姿も。


気が付けば、目の前にあった。

そこにいたのだ、彼女は。


『ではご主人、これより魔物の討伐を行います。少し離れていて下さい』


(念じる、サラマンダーを、アイツを倒せるくらいの武器を……でも、悩むな。


例えばの話、『クルセイドちゃんみたいに強く』とか、無茶を言っても良いんだろうか……?)


自身でそう願ったのだから何となく予想はしていたが、やはりその女はスマホそのものだったようだ。


そんな元無機物だった女は俺にそう告げると、すぐさまサラマンダーへと向けて駆け出した……そして。


あれ程恐ろしかった。

勝てる訳がないとばかり思っていた。


あの魔物、サラマンダーを。


スマホは剣の一振り、たったのそれだけで斬り伏せて見せたのだった。


「……マ、マジかよ」


『ご主人、何を今更になってから驚いているのですか。


この力は確かに私のものでもありますが、同時にアナタ様のものでもあるのですよ?


スマホクラフターであるご主人は上級職でこそあるものの、戦闘向きの職業ではない。


一方、私は膨大な知識とそれを用いた戦闘を無感情に、いえ〝無感情だからこそ〟正確に遂行出来ますが、一人では何も出来ない。


この私とご主人、一つと一人が手を取り合って初めて、私達はここまで強くなれる、強くなれた。


これこそが、スマホクラフターの真髄なのです。


ご主人、これで漸くアナタ様もお分かりになったでしょう?上級職とは、どのようなものなのかという事が』


……そのようにして、呆気なくも終わった戦いを前に。


その時の俺は驚きのあまり、剣を抜いた事で初めて露出したロボットのような女、もといスマホの背にある林檎のような模様。


それをただただ、眺めているばかりだった。


勿論、俺とクルセイドちゃん両者の配信に、先程とは比べ物にならない程膨大な量のコメントが寄せられている事にも一切として気が付かぬまま。




@kurufan0801

『スマホクラフターだっけ?聞いた事もなかったけどめちゃくちゃ強いじゃん!!』


@OJ. 0.8m3_x

『いや本当、冗談抜きで強いな。多分だけどあのスマホの持ち主装備がゴミ過ぎるし、絶対冒険者始めたばっかだろ?それでサラマンダー倒せるとか普通あり得ないよ……』


@silent.snow78

『同意、マジで凄いもん見たわ……』


@seavoice

『って言うかアレ、あのスマホの女の子の模様?あんな感じの模様がおんなじ風に背中に入ってる人見た事あるような気がするんだけど、気のせい?』


@ashshark_zz

『強い。強過ぎる。〝先駆の冒険者〟の再来か?』

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