二話 初のダンジョン探索……それと配信も!?
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都庁前ダンジョン[はじまりの魔境]
全冒険者平均探索成功率[78%]
全冒険者平均死亡率[2%]
危険度[低]
脅威度[低]
佐藤大吾:職業[上級職:スマホクラフター]
[懸念事項]
状態『酒気帯び/睡眠不足』…………更新
状態『酒気帯び/睡眠不足/緊張(高)New』
HP減少
ダンジョン探索経験無し
算出:佐藤大吾 [ダンジョン探索成功率]
〝44%〟
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「低いし不吉!!ていうか、勝手にそーゆう事調べるのはいい加減よせよ!!
ついさっき入ったばかりなんだぞ!?そんな時に縁起の悪い数字なんか見せないでくれよ!!」
『ご主人、むしろ喜ぶべきだと思いますが?
この数値は二日酔いで目の下にクマまである、しかも単身のビギナー冒険者としては非常に高水準なのですから』
▽
うーん、何というかこう、『意外と整備の行き届いているトンネルみたい』とでも言えば伝わるだろうか?
今回初潜入となる、ダンジョン内部の様子を例えるとだ。我が未知なる領域はそのような具合であったのだ。
そして、これには理由がある。
国が派遣する者達の負担をより軽く、より入り易くしようと言う目的で整備したからだそうだ。
このダンジョンの位置やスマホから聞いた事前情報等々、それらを加味すればこの処置は妥当と言えるかもしれない。
かもしれない、が。
今の俺とってそれは、探索のやる気を削ぐ悲報でしかなかった。
美しいアーチ状をした天井。
真っ直ぐに伸びるアスファルトの舗装。
むしろそれらが原因で、『この場所は人間に入り尽くされたも同然』 なのだと再確認させられてしまったのだから。
まあ、言われずとも分かっていた事ではあるのだが、な……
とはいえ、そりゃあ初心者なんだからその方が安心だろうし。事実として魔物の影や険しい道のりetc、この歩みを阻むものが今の所皆無なのは正直嬉しい。
と、今の言葉に嘘偽りはない……それは真実である。
だが、しかし。
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アイテム[魔物の残滓]
[魔物の残滓]
魔物の何か、生物の一部の残りカス。こうなってはもう、そうとしか言えない。それ以上分からない。
アイテム[冒険者の置き土産]
[冒険者の置き土産]
冒険者が残していったであろうアイテム。残念ながらダンジョン産ではない。ネコババは犯罪なので取得はしない方が無難。
アイテム[サンドイッチのゴミ]
[サンドイッチのゴミ]
サンドイッチの入っていた袋。238Kcal、タンパク質10.5g、脂質11g、炭水化物22g、食塩相当量2.2g。素晴らしい!低カロリー高タンパクで、ダイエット中の方にもオススメですね!中身があればの話ですが。
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そのせいでご覧の通り。
拾えるアイテムとやらは最早ゴミ同然の、いや。
ゴミそのものばかりなのだ。
これではまともに収入を得るなど夢のまた夢、どころか正反対のボランティア活動で終わってしまう。
それだけはダメだ、俺はゴミ掃除をやりに来たのではない。
「まあ正直、何となくこうなるだろうとは思ってたけどさぁ……
でも、せっかくダンジョン探索してるのに〝こんなん〟ばっかりってのは流石にちょっとなぁ……
なあ、もっとまともなアイテムとかは何処かに落ちてないのか?」
『ご主人、前人未到の地でもないこのダンジョンの、しかも入り口の辺りでそのようなモノを探せと言う方が無理があるとは思いませんか?
とはいえ、確かにこれでは無駄足となってしまいますね、少し待っていて下さい。
[検索中…………]
ふむ、では予定変更と致しましょう。
『プランB』に移行します。
ご主人、もっと奥へ進んで下さい。
ただし数匹魔物の存在が確認されましたので、必ず私の指示通りに』
「あ、ああ、分かった……けど、『プランB』って一体何をするんだ?俺、初耳なんだけど」
『大丈夫ですご主人、私を信じて下さい』
「いや、それしか言われないと余計不安になるんだけど……」
そこで俺が選んだのは、スマホの提案した謎の『プランB』なる作戦(?)であった。
という事で、俺は更にダンジョン奥地へと進んで行く……
▽
「ごめんなさい『クルセイドちゃん』!!
わ、私のせいで……!!」
「き、気にしないで……とにかく、アナタはすぐに逃げて下さい!!ここは私が何とかしますから!!」
「ク、クルセイドちゃん……!!
本当に、ごめんなさい……!!」
▽
スマホを信じた過去の自分を殴りたかった。
自らの行く末をこの無機物に託した自分は馬鹿だと思った。もう二度としないと誓った。
何しろ、コイツのナビゲーション通りに進んだ先の通路にはまさかの。
人の数倍はあろうかという体躯を持つ、巨大な蜥蜴のような魔物が立ち塞がっていたのだから。
「おいおい、何なんだよアイツは……ドラゴンか?」
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『サラマンダー』
討伐推奨レベル[30〜]
脅威度[中]
動き自体は遅いが、時折放ってくる火球には要注意。また、ごく稀に発育不全による火炎袋の未発達な個体が胃液を吐き出してくる場合もあるが、そちらは硫酸と同等の腐食性を持つため通常個体よりも更に注意が必要。
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『いいえご主人。
あれはサラマンダーという魔物です。
火球、もしくは胃液を吐き出して攻撃してくる事もあるそうなので、絶対に正面には立たないで下さい』
「……おい、コラお前!!
今度という今度は許さないぞ!!
〝こーゆうの〟は本当さ!先に言っとかないとダメじゃないか!何でわっかんないかなぁ!!」
俺はそう怒りつつも、内心ではビビりまくっていた。
だが、どちらも本心である。
俺の中にはそんな二つの感情が介在していたのだ。
『すみませんご主人。
ですが私の計算した結果によると、事前に〝この状況〟を事細かくご主人に報告するとパニックを起こすのが[62%]。
恐怖のあまりその場から動けなくなるのが[38%]となってしまいましたので、お伝えする訳にはいかなかったのです』
だが憎らしい事にも、スマホの返事は実に淡々としていた。
またその口調から察するに、どうやらコイツにとってこのサラマンダーなる魔物の登場は想定内だったらしい。
だったら、尚更話しておいて欲しかったのだが。
胸の内にある怒りの炎がより強く燃え上がり、より大きく燃え広がるのを感じる。
「いや当たり前だろ!!初心者なんだからそうなるに決まってるじゃん!!
でもさぁ!!だからって『心の準備』もさせてくれないってのはあんまりじゃないか!?」
『ですがご主人、報告をしなかった事によって現にアナタ様はこうして今。しっかりとご自身の脚でこの場に立っているではありませんか。
それに、もう過ぎた事ですからその話はここまでにしましょう。
さあご主人、今すぐに討伐対象へ接近して下さい。
さあ早く、急いで』
にも関わらず厚顔無恥なこの無機物は、今度はそのような事を言い始めた。
まあ要するに、スマホは俺にまた『サラマンダーの近くまで行け』と指示しているのだ。
本当に、何を言っているんだコイツは。
俺は探索もそうなら戦闘だって勿論未経験なのだ。
それがサラマンダーなんかと戦えるワケがない。
「おま……本当に、さっきから聞いてりゃ無茶苦茶ばっかり言ってくるな。
サラマンダーより先にお前をバキバキに壊してやっても良いん」
『ご主人、事は一刻を争います。
お喋りはまた後にしましょう。
とにかく、今は急いで下さい』
「……」
未だに怒りは収まらないが、今の無機物の口調には何処か鬼気迫るものがあった。ような気がした。
「はぁ、分かったよ。
行けば良いんだろ、行けば」
だから仕方なく、仕方なくではあるが俺はスマホに従った。
そうして恐怖にすくむ足を無理矢理動かし。
なるべく気配を悟られぬよう、見つからぬよう。
ゆっくりと、だが可能な限り迅速に、サラマンダーへと接近していった。
「ん?あれは……?」
すると。
魔物の影に隠れていた、物事の全貌が見えてきた。
そして同時に俺は、スマホが急かしていたその真意を知るのだった。
▽
物事の全貌とはこうだ。
まず第一として、魔物は他の誰かと交戦中だった。
そして第二に、そのサラマンダーを戦っている人物というのが……ダンジョン入り口で俺と言葉を交わしたあの『クルセイドちゃん』であった。
しかし、どうやら彼女は負傷しているようだが、それだけが分からなかった。
だって、彼女はかの有名な『クルセイドちゃん』なんだぞ?
確かに魔物もなかなか手強そうには見えるが、それでも彼女ほどの人物が遅れを取るとは到底思えない。
などと考えていると、また無機物の声がした。
『先程検索した結果、『クルセイドちゃん』氏の配信がヒットしました。
どうやら彼女は国からの依頼でこのダンジョンを定期的に探索、内部調査しているそうで、今はその最中です。
ですが七分程前、突然にもこのダンジョン内の魔物としてはかなり強力な部類であるサラマンダーを発見し、駆除目的で交戦。
それからまた一分程後に他の冒険者を逃そうとした一瞬の隙を突かれ、彼女は負傷しました。そして現在に至ります。
配信は彼女を心配する沢山の声で荒れに荒れています。また、彼女もあの様子ではそろそろ限界でしょう。
ですのでご主人、今からアナタ様が彼女をこの危機から救い出すのです。
そうすれば、結果的にとはいえ『クルセイドちゃん』氏と〝コラボ配信〟出来ると言うだけでなく、彼女を助ければそれはまさしくピンチに現れたヒーロー。
今はまだ〝弱小配信者のご主人〟でも、立ち所に人気者の道を駆け上がる事となるでしょう。
さあ、それが分かったらご主人。可能な限り迅速に、この私と共にサラマンダーを倒しましょう。
今こそ『プランB』の始まりです、さあお早く』
なるほど。つまりこの無機物は全てを計算、把握した上で俺をここに連れて来たという事か。
……って、あれ?
「おい、ちょっと待て。
お前、今〝弱小配信者のご主人〟って言ったか?
前にも言ったけど、俺はまだアカウントも持ってないんだぞ?
それなのに何で」
『ああ、その事でしたらご心配無く。
〝そりゃあどっちかって言えばやってみたくはあるけどさ〟と仰っていたので、既にアカウントは私の方で作成済みです。
当然『クルセイドちゃん』氏と同様、こちらでも今の状況は配信していますよ』
「…………あっ、そう」
何だか正直怖いと言うか、何もかもを利用せんとするそのサイコパスのような思考もやっぱり怖いと言うか。
とにかく、すっかりドン引きしてしまっていた俺は、もうこの冷血な無機物に対して何も言えなかった。
というか、もう何でも良かった。
好きにしてくれという感じだった。
まあ要するに、諦めの境地にいたというワケだ。
今あるのは、ただあそこにいるサラマンダーを倒し、『クルセイドちゃん』を助けたいというその一心だけ、ただそれだけであった。




