二十四話 最終決戦?
無許可ではあるものの、クルセイドちゃんの力を借り何とかオヅカから白星を勝ち取った俺達。
では、あるのだが。
だからと言って、浮かれてなどいられない。
何故ならば、俺達にとって『勝利の女神様』と呼んでも過言ではないクルセイドちゃん……
彼女の力が及ばぬ者達の存在が、未だ残されているからだ。
現に今、その事を裏付けるかのようにして。
二つの人影が、俺達の足元にまで迫っていた。
そしてその影の主とは、言うまでもなく土部河とレイターの二人だ。
そう……そこからも分かるように、奴等は多くの挑戦者達による攻撃の嵐を耐え抜いてしまったのである。
しかも先程の、[聖盾・クルセイド]が放つ威光まで効かなかったというのだから、それはつまり『我がチームが可能な最大火力の攻撃』を防ぎ切ったのと同義。
だとすれば、俺達はこれ以上何が出来ると言うのだろうか……とは言え、今更退くつもりも無く。
「なあ、ドラゴン進……」
「言うな大吾、分かってるさ。
俺達の目標は優勝なんだ。
だったら遅かれ早かれ、アイツらとは戦う事になっただろう。
んで、その時が〝今来た〟ってだけだろ?
大丈夫だ、覚悟はもう出来てる……
ただ正直、勝てるかどうかはだいぶ怪しい所だろうが。
でもこうなった以上、やらなきゃならねえ。
まあ、俺は端からそのつもりだったけどな。
……何が何でも優勝して、その後優勝トロフィーをクルセイドちゃんに見せて。
そんでもって、あの子に喜んでもらう。
また笑顔になってもらうって、俺はそう心に誓ってんだよ。
だったらさ、もう泣き言なんて止めてここは俺達の出せるありったけの力で、奴等ととことん戦ってやろうじゃねえか。
それに、今の俺達には〝コイツら〟もいるしな。
アレだよ、たった今手懐けたコイツらがだよ。
もしかすると案外、ラクに倒せるかもしれねえぞ?
……って訳だ、俺達は変わらずクールにいこうぜ」
俺達はそんなやり取りを最後に。
きっと土部河とレイターの二人を睨め付けた後、最後の戦いが始まるであろうその瞬間を、息を殺すようにして待ち続けていた。
そうだ、ドラゴン進は発言通り。
そして俺もまた、決戦に向けた心構えと準備など、とうに終えていたのだから。
……だがしかし。
現実はそう思い通りにはならなかった。
良くも悪くも、だ。
ちなみに言うと、今に関しては〝後者〟だと言えよう。
何しろ、俺達はいつでも戦えたと言うのに。
対する、土部河とレイターは……本当に、何がしたいのだろう。
「…………」
二人はオヅカに向けて何事か呟いた後。
俺達には互いに一瞥をくれただけで、すぐにダンジョン奥にある道へと小走りに去って行ってしまったのである。
「え……?」
「んだよ……やんねえのかよ……」
そう、つまり肩透かしを喰らったという事だ。
これには流石の俺とドラゴン進もすっかり拍子抜けしてしまい。
数秒程度とは言え、呆然とただその場に立ち尽くしてしまった程であった。
「……はっ!?お、おいドラゴン進!!
よく考えたらボケっと突っ立ってる場合じゃないぞ!!
あの二人、多分だけど俺達を無視してそのまま宝箱を開けに行くつもりだ!!追いかけよう!!」
「あ?……あ!?あ、ああそっか!!
いやでも、アイツ等に限ってんなダセー事はしないと思うが……まあ良いや。
おし!!
じゃあ今すぐ俺達も行かねえとだな!!」
ただし、俺達はその後すぐに正気を取り戻し、土部河とレイターを追いかけるのだが。
▽
「あ……悪い大吾。奴等を追いかける前に一つ、やっときたい事があるんだ、少しだけ待ってくれるか?」
……しかし、歩き出そうとした直前。
ドラゴン進が俺を引き止め、口元を妙な形に綻ばせそう言うのだった。
「え?いやまあ、どうしてもって言うなら待つけどさ……でも、あんまりもたもたしてると手遅れになるぞ?」
「大丈夫大丈夫、すぐ終わるからよ。
それに、〝俺の予想〟が当たってるならの話だが、少し遅れたくらいじゃ問題無いはずだぜ……
おい、ゴブ一!!ゴブニ!!ゴブ三!!
お前らはここで待っててくれ!!
念のため挑戦者達が妙な真似しないか見張っててもらいたいんだ!!
だが、それだけってのも退屈だろうからな……暇潰しに、そこの野郎を死なない程度に痛めつけておいてくれよな!!」
そして、そんな彼の指差す先には……
ほんの数分前まで、俺達を苦しめていた毒魔法使いがいる。
「え、えぇ!?おいおいおいおい!!
ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ!!
お前ら俺を殺す気か!?
ゴブリンに力加減なんか分かる訳ないだろ!?
なあ、頼むから待ってくれって!!」
当然、それを聞いた途端にオヅカは恐怖のあまりか、耳朶だけでなく全身までもを酷く震わせ始めた。
以前までの何処か飄々とした口調や様子は見る影も無く、まるで別人のようだ。
どうやら先の発言を受け、すっかりと狼狽させられてしまっているらしい。
「へへへ……それじゃあ任せたぜ!!
よし、これでOKだ!!さあ行こうぜ大吾!!」
にも関わらず、ドラゴン進はまるでそれが見えていないかの如く。ごく自然に、ごく当たり前に俺の肩を叩いて歩き始める。
勿論、今の今までドラゴン進を急かしていた俺ですらも、現状を目の当たりにした後で彼と共に並んで行く事など不可能であった。
と言うか、余程の奇人狂人でもなければ殆どの人間が「無理です」と答えるだろう。
何しろ、オヅカの言い分は尤もなのだし。
また少し先の未来にいる奴の状態、怪我の有無等、それらを頭に思い浮かべただけでも寒気がしたからだ。
俺は相棒のように冷酷でもなければ、無機物のように冷徹でもないのである。
つまり消去法で善人に当たる俺は、それを食い止めるべく口火を切った。
「何するかと思えば、お前さあ……
それはいくら何でもちょっと可哀想過ぎやしないか?
アイツだって参加者の一人ってだけなんだし、別に俺達が憎くて狙った訳じゃないだろうからさ。
だから、流石にゴブリンを使って痛ぶるのは止めてやろうよ、な?」
しかし、ドラゴン進からはまさかの反論が寄越された。
「おいおい待て大吾、何言ってんだお前は。
そんなん俺だって分かってるさ。
言っとくが、俺がコイツにムカついてんのは、『奇襲
を仕掛けられたから』ってだけじゃねえぞ?
思い出してもみろよ。コイツがこの会場に妙な物を持ち込みさえしなけりゃ、俺達はスマホ有りで企画に参加出来てたんだぜ?
で、もしそうなってたら今頃は優勝してたかもしれねえだろ?いや、そうでなくても絶対、戦闘はラクになってたはずだ。だってリンはお前の主力武器なんだからな。
な?これで分かっただろ?……って言うか。
俺からすると、むしろお前がキレない方がおかしいと思うんだが?」
「ああ、そう言えばそうだったな。
でも、そうなるとまあ、一理あるような……ないような……」
ふむ、ドラゴン進の言いたい事は充分に伝わった。
確かに思い返してみれば、俺がリンを連れて来られなかったのには『私物持ち込み禁止』という事情があり。
尚且つ、その原因となった人物はオヅカだったと考えると……指摘されて漸くそうなる、というのもアレだが。
なるほど、仰る通りと言った所か。
何だか俺も、段々と腹が立ってきたぞ……!!
「…………いや、お前の言う通りだなドラゴン進。
よし分かった。そう言う事なら、やっぱりオヅカにはそれ相応の罰を受けてもらわなきゃならないと思う。
って訳だし、俺も『放っておく』に一票だな。
じゃあ話も纏まった事だし、アイツは無視して俺達はこのまま奥を目指すとしようか」
「そうそう、それで良いんだよ。お前も話が分かるようになってきたじゃねえか……おし、じゃあさっさと行こうぜ!」
という事で、オヅカを放置すると決めた俺はドラゴン進と共に歩き出した。
の、だが……はぁ、全く。
こう見えても、俺達は非常に急いでいると言うのに。
その決定に異議を唱えるたった一人の者が。
再度、我がチームの歩みを防ぎ止めるのであった。
「お、おい待ってくれよ!!
本当に洒落にならないぞ!?
なあ頼むよお前達!!
頼むから待ってくれって!!
と言うか、そういう事ならこっちにだって言い分はあるんだぞ!?俺もやりたくてやった訳じゃないんだ!!
俺はただ、〝アイツ〟に頼まれただけで……!!」
「ん?」
「アイツ、だと?……おいオヅカ。
お前その話、もう少し詳しく聞かせてみろ。
ただし手短にな。そうすりゃお前の処遇も、もしかすっと今より多少はマシになるかもしれないぜ?」
そう……『異議を唱える者』こと、オヅカは。
興味を唆られるとある話、という。
そんな餌を用いて、俺達の進行を食い止めたのである。




