二十三話 再始動&一つのアイディア
「それじゃあまずは、さっさとオヅカを倒すとしようぜ!!そんでもってその次は土部河とレイターもだ!!
これぞまさしく、大番狂わせってヤツさ……いや、ジャイアントキリングか?
まあ良いや、ひとまず目標は『優勝を掻っ攫ってやる事』だ!!俺達の手でな!!」
「ああ!!とにかく、まずはオヅカだ!!」
全ては俺達にとっての勝利の女神、クルセイドちゃんに笑顔を取り戻すため。
そんな想いを胸に奮起し、再始動した俺達の行動は早かった。
「ゴブ一!!ゴブニ!!ゴブ三!!
指示がデタラメになっちまって本当すまねえが、また後退してくれ!!俺達はこの位置で大吾を守り切るぞ!!」
まずは、そうしてドラゴン進が俺の前へと戻って来た。
彼の言うように、二転三転した指示の結果がそれであるのは確かだが。真にリーダーを得た一人と三匹の守りは、以前よりも遥か堅牢に見える。
「ありがとうドラゴン進!!それにゴブリン達も!!
それじゃあ早速、反撃開始だ!!」
勿論、負けてはいられない。
俺かて生まれ変わったのだ、彼等と同じように。
だからこそ、その後の俺はそれはもう可能な限り迅速に、かつ全力で投擲を行った。
次から次へと岩石をクラフトしては、それをすぐさま敵軍に投げ付けたのだ。
まずは最優先でオヅカへと。
次はドラゴン進達に近付くゾンビ達へ。
そして余裕があればその他に、というような具合でだ。
とは、言ったものの。
隙などほぼ無いに等しいのだがな。
何せ、ゾンビ共は倒しても倒してもキリがなく。
加えて最も狙うべき相手であるオヅカのもまた、挑戦者を文字通りの隠れ蓑として逃げ回ってばかりいるのだから。
埒が明かないとはまさにこの事だ。
いや……それどころか時間が経てば立つ程、こちらの状況は悪くなる一方だと言えよう。
現に、俺も鎧という名の武器のストックが大分少なくなってきてしまった。
「ハァ……ハァ……ま、まだまだ!!」
ドラゴン進率いる魔物と彼の部隊も、気が付けばかなり消耗しているようだ。
今はまだ何とか踏みとどまってはいるとは言え、皆荒い息をしている。
もう、限界という事だろうか。
いやまだだ、ここで俺が諦める訳にはいかない。
だが、策が無いのもまた事実……
何か挑戦者達を一気に足止め出来る、それかもしくは、オヅカの隙を付ける良い方法はないだろうか。
「……!!」
そう考えていた、まさにその時。
ドラゴン進の背中を見、そして彼が持つ〝ある物〟の存在を想起した途端。
俺の脳裏を一つのアイディアが過ぎった。
天啓が降りて来たのだ。
とは言え、すぐさまそれを実行するにしても、仲間へ一言伝えておくのが筋というものであろう。
そこで、俺はドラゴン進の背中にこう語り掛けた。
「聞いてくれドラゴン進!!
このままじゃ俺達はアイツを倒せないと思うんだ!!
今はまだ何とか持ってるけど、それが崩れるのも時間の問題だろう!!
だから、一つ試してみたい事があるんだ!!
だけどそれはチームの連携を乱す事になるだろうし、お前が良いと言ってくれればの話なんだけど……」
すると。
「よし分かった、良いぜ!!
こっちの事は気にすんな!!すぐにやっちまえ!!」
答えはまさかのOK。
しかも何の説明も聞かず、即答でだ。
「え!?そ、そんなにあっさり……?
で、でも、本当に良いのか?」
「当たり前だろ!?
今のお前になら俺は何でも任せられる!!
さっきも言ったが、俺はもうお前に命託してるんだからよ!!じゃあしっかり頼むぜ大吾!!」
……正直、猛反発を受ける事さえ覚悟していたというのに、よもやそんな反応が返って来るとは。
と、そのようにして急な作戦の変更に当たり、予想外の発言に驚かされたのはむしろ俺の方であった。
だが、同時に有り難いとも思った。
はっきり言えばこの案には自信がある。
だからこそ、すぐに試したくもあり。
それに何より、アイツがそれだけ俺を信頼してくれていると言う事実を知れた事が、俺は堪らなく嬉しかった。
……とにかく、了承は得たのだ。
「よし!それじゃあ、コレを……」
─────
鋼の盾[クラフト可能アイテム]
─────
「……………………クルセイドちゃん、ごめん!!」
俺は遂に、事を実行に移した。
▽
「さて、クルセイドちゃんの一喝によって、見事復活を果たしたドラゴン進とスマホクラフターのコンビでしたが……状況はあまり芳しくないようです。
二人はここからどうするのか……ん?
おっと!?ここでスマホクラフターが突然、何かを取り出しました!!アレは一体何でしょう!?」
「あ、あれって……!!」
『ご、ご主人……!?
アナタ様は一体、何をするつもりなのですか……!?』
▽
ドラゴン進の後押しもあり、漸く脳裏に描いた計画を実践し始めた俺。
では具体的に、どのような事をしたのかと言うと……それは。
まず初めとして、クルセイドちゃんの盾をクラフトするというものであった。
「アッハッハ!!今更何をしようってんだいスマホクラフターさんよぉ!!
そんな盾一つじゃあ、流石に仲間全員は守り切れないと思うけどなぁ!?」
すると、それを見て悪足掻きと捉えたのか。
ゾンビ達の中心でオヅカが揶揄うように笑い、悪意混じりにそう言うのが聞こえた。
「…………」
だがしかし、そんな安い挑発など何処吹く風。
俺は全くの無反応を貫き……そして、直後にはもう。
確かな手応えと共に、アイテムは完成していた。
希望は既に、我が手中に握られていたのだ。
「よし、出来たぞ!!
後はコレをアイツに……それっ!!
さあドラゴン進!!こいつを受け取ってくれ!!」
次にすぐさま、俺は出来上がったばかりのそのアイテムをドラゴン進へと放り投げる。
「ああ、任せとけ!!……よし取ったぞ!!
で、でもよ……こ、これは一体何なんだ!?
何つーか、『とんでもない代物』っていうのだけは分かるけどよ……!!」
そしてドラゴン進がそれを手にしたその時、その瞬間。
俺達の勝ちはほぼ確定となった。
まあ、まだ実際にそのアイテムを使用した訳ではないので、一応『ほぼ』と付け加えはしたが……でも、きっと大丈夫なはずだ。
─────
クラフト成功
アイテム[聖盾・クルセイド]
[聖盾・クルセイド]
クルセイドちゃんの愛用していた盾を佐藤大吾が『無許可クラフト』した事によって誕生させた一品。
ソードマスターである彼女の様々な想いと記憶の詰まったこの盾は、『中級者〜初心者』レベルの冒険者達ならば一度見せるのみで平伏せる事が出来るはずだ。
意外にも聞こえるかもしれないが、彼女はそれ程までに優秀な冒険者であるのだから。
─────
何せ、そのアイテムの名は『聖盾・クルセイド』。
これもまた一応とは言え俺の自信作であり。
だが同時に、まさに全身全霊を込めたとはっきり言い切る事の出来る渾身の一作でもあるのだから。
ただし。
(しかし、それで一体どうするというのか?
良い一品なのは確かだろうが、あくまでも盾は盾。
オヅカの言うように、それだけでは形勢を逆転させる事は愚か、皆を守り切る事も出来ないのではないだろうか?)
そうは言ったものの、例えばこのような疑問が生じたとて無理はないだろう。
いやそれどころか、充分に理解出来るとすら言える。
だが、そうではない。そうではないのだ。
この盾は本来の用途である、『身を守る』目的で使うのではないからだ。
まあ、見ていればすぐに分かるはずだ……という事で。
動揺するドラゴン進に、俺はこう語り掛けた。
「聞いてくれドラゴン進!!それはクルセイドちゃんが持っていた盾をクラフトして作った物だ!!」
「な、何っ……!?
じゃあお前、勝手に作り変えたって事か!?」
「…………まあ聞け!!
元々は、実力も知名度も人気もあるクルセイドちゃんの盾だ!!そんな代物だからきっとお前の持つ[小鬼の秘石]と同等……いや、それ以上の効果を発揮するだろう!!
勿論、その対象はゾンビ共だ!!
だが、それは秘石と同じで使用者が『魔物使い』じゃないと何の意味も無い!!
つまりお前が持ってこそ、その盾は初めて効果を発揮するんだよ!!」
「何……!?アイツ、小賢しい真似を……!!」
俺の張り上げた声は当然、オヅカの耳にも届いたらしく。事の真相を知った奴は、そこで漸く狼狽し始めた様子だった。
だが、それではもう遅い、気付くのが遅過ぎた。
「な、なるほど……
理屈は全くだが、とにかく分かったぜ!!」
「よし!!じゃあ早速、その盾を持ち上げてこう命令するんだ!!
『挑戦者達は全員、今すぐ俺の前に平伏せ』って!!」
「OK!!任せとけ!!」
こちらに頷いて見せた後、ドラゴン進は手にした盾を天高く掲げる。
「させるか……『毒塊弾』!!」
「こっちだってドラゴン進の邪魔はさせないぞ!!
さあもう一度だ!!『投石』!!」
またその際、オヅカによって放たれた毒魔法は。
手の空いた俺がきちんと防ぎ止め……そして。
「おい挑戦者共!!
今から俺が言う事をよく聞け!!
『聖盾・クルセイド』の名の下に、ドラゴン進が命じる……!!
テメェ等全員頭が高えんだよ!!
今すぐに頭を垂らしやがれ!!」
そう。こちらの作戦は無事成功したのである。
さあ、あとは結果がどうなるか。
……なんて、心配は杞憂だったようだな。
「お、おお、流石はクルセイドちゃんだ。
彼女の持つパワー……みたいなのは、想像以上だったって訳だな……」
まあ思わずも俺がそう呟いてしまったのだから、もう分かるだろうが。
結果として、作戦はこちらも見事に大成功。
「ウ、ウゴケナイ……」
「クルセイドチャン……サイコウ……」
接近を続けていた挑戦者達は皆跪き、その後俺達を主君として敬うかのように、その首を深く垂らした。
「動けない、か……それじゃあ。
俺もここまでって事だねぇ……」
またそこには、彼等の先導役であったオヅカも含まれていた。
実力者であるはずの奴がどうして……とは、数瞬考えたものの。
よくよく思い返してみれば、奴はレベルやステータスの数値自体は、俺達とそう変わりはしなかったはずだ。
ならば、奴がそのような現状だったとしても何ら不思議ではないのだと言えよう。俺はそう判断した。
まあ、とにかくだ。
こちらの思惑は怖い程上手くいったのだし。
こうして無事、オヅカと多くの挑戦者も無力化出来たのだ。
だとすれば……それはつまり。
「よっしゃあ!!
やった!!やったぞ大吾!!」
「ああ、やったなドラゴン進!!
一時はどうなるかと思ったけど、良かった!!本当に良かった!!
助かったよドラゴン進!!勿論ゴブリン達も!!
皆、俺の事を信じてくれて、守ってくれて、本当にありがとう!!
お陰でこの勝負…………俺達の勝ちだ!!」
そう。それ即ち、我がチームの勝利を意味する。




