二十一話 VS毒魔法使い (2)
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アイテム [岩石(小)]
[岩石(小)]
佐藤大吾が自らの鎧からクラフトした、拳大の鉱物の塊。それ以上に説明する事柄は無い。
強いて挙げるとすれば、ただ鎧から引き剥がしたのではなく、一度クラフトという過程を通過している事によって『佐藤大吾が最も握り易い形をしている』、『接触時のダメージを増加させるため両端がやや尖っている』という事くらいだろうか。
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アイテム [小鬼の秘石]
[小鬼の秘石]
ダンジョン[不戻の湖底]内で佐藤大吾がクラフトした石ころ。だがその実はゴブリンから抜け落ちた体毛、牙、爪等々を大量に寄せ集めた塊である。
それによってゴブリンはこの石を持つ者に抗えない。無数の同族と似た存在感を放つこれを、彼等は味方と誤認してしまうからだ。またそのため、もしも魔物使いがこの石を所持していれば一時的にだが彼等の協力を得る事も出来るだろう。
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『……と、いう事です。
お二人の持つアイテムは今現在、槍と鎧の他はこのような物でして。
ご主人と『ドラゴン進』氏は、これらを用意するために一時間も早くこちらへとやって来ていたのです。
中でも特に、『ドラゴン進』氏の準備は非常に時間が掛かる物事ばかりでしたので……
『小鬼の秘石』のクラフトもそうですし。
例えそれを作り終えたとしても、今度はダンジョン内でゴブリンを探さなくてはなりませんでしたからね。
とは言え、現地調達でなければ入場前に没収されていたかもしれませんし。それに、あまり荷物が多いと体力の消耗も考えられます。
また、早くから魔物を同行させていては作戦が他者にバレてしまい、対策される等の恐れもありましたので、どうしてもそうするより他は無かったのです』
「なるほどね、ありがとうリンちゃん!
大吾さんは、自分でも戦えるように……ドラゴン進さん、は。
相棒の紅丸がいないから、戦力的にはそうするしかなかったって事も……と、とにかく、お陰でよく分かったよ!
でも、よくよく考えると『小鬼の秘石』って私物扱いになりそうな気が……」
『断じて違います。
あれは紋章と同じく、魔物使いには欠かせないものの一つなのですから、セーフです、セーフなのですよ。
……とにかく、お二人はこれらのアイテムを用い。
『ドラゴン進』氏は魔物と共に守りを固め。
ご主人は彼等という名の壁の奥から、あの中では最上位の威力と命中精度を誇る、『投擲』によって攻撃する……
というのが、私達の編み出した戦法なのです。
まあ尤も、それは本来『私が戦闘を行っている間、主戦力の不在の隙を狙ってやって来た他の挑戦者から身を守るための時間稼ぎ』だったのですが。
今や、それが最善策となってしまっているというのは少し。
いや、それ以上に……
まあ正直に打ち明けてしまえば、この私にも些か不安な点はあるのです……』
「あ、や、やっぱり、リンちゃんもちょっとは心配だったのね……ま、まあでも!
今の作戦は、私が聞いても凄く緻密に立てられた計画だったと思うし!
だから、二人ならきっと……」
『私を励ましてくれているのですね。
ありがとうございます『クルセイドちゃん』氏。
ですが、〝そこ〟ではありません。
私が最も不安視しているのは作戦ではなく、お二人の心持ちや性格についてなのです。
特に、『ドラゴン進』氏は協調性が皆無と言っても良く。
また、本人の前では口が裂けても言えませんが……ご主人もご主人で、まだまだ小心者です。
それに何より、お二人は以前のトラブルの和解が未だ出来ておらず。チームとしてはとても纏っているとは言えない状況なのです。
ですから、私はそれが障害になるのではないかと……ブツブツ。
はぁ、全くお二人は、仲が良いのか悪いのか……ブツブツ。
……あ、長々とすみません。
私とした事が、愚痴を溢してしまいましたね。
まあ色々と言ってしまいましたが。
とにかく、私はそれだけが心配なのです』
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「……いや、待てよ。
俺も前に一度、スマホクラフターの配信を見た事があったが。確か、あの時は……!!
し、しまった……!!」
俺が飛礫を投げる直前、オヅカは何かを思い出した様子であったが。
「ああ、そうさ!!俺の投擲は正確に狙った箇所に命中もすれば、滅茶苦茶に高威力でもある!!
だが、気付いた所でもう遅い!!
さあ喰らえオヅカ!!『投石』!!」
それも、俺の動きを止められなかった今となっては無意味に等しい。
好機などとうの昔に過ぎ去っているのだ。
という事で遠慮なく、俺は全力をもって手にしたそれを、オヅカへと何の捻りも無い技名と共に投げつけた。
「クッ!!メ、『魔毒塊』!!」
だが、惜しかった。
「何!?防がれただと!?」
咄嗟に避けられぬと悟ったのだろう、オヅカは。
未完成だった毒魔法をどうにか物体と変え、それを身代わりとして攻撃を防いでしまったのだ。
「ぐ…………う、うぉおおおお!!
クッ……ハァ、ハァ。
おいおい、マジかよ。
分かったつもりではいたけどよぉ、まさかここまでとは思わねぇだろ普通……!!」
しかし、その反動までは相殺出来なかったらしく。
奴を四、五メートル程、後退させる事には成功した。
……が、それが良くなかった。
気が付けば随分とその数を減らしていた。
今の今まで、土部河を攻撃していた挑戦者達の多くが。
こちらの存在を。
そして、その有様を知ってしまったのだ。
「なっ!?なんだあの威力は!?」
「アイツ、スマホなしだとまるで役に立たないんじゃなかったのか!?」
「……なあ、アイツ。
放っておいたらあのままオヅカを倒して、今度は安全圏から俺達にアレを投げつけて来るんじゃないか!?」
「それは、マズいな……よし、作戦変更だ!!
土部河を狙うのは一旦止めだ!!
アイツを先に倒そう!!」
「そ、そうだな。どの道、このままじゃあ俺達レイターやられるのがオチだろうし。それなら……!!」
そんな彼等は、すぐに騒つき始めたかと思うと。
今度は数瞬の後、標的を俺達と変えた多くの者が壁際へと集まり始めたのである……
その安直過ぎるとも言える彼等の行動は。
なかなか土部河とレイターのチームを下す事が出来ず、焦った末の『足掻き』なのは分かっている。
だからまあ、一定の理解を示す事は出来るのだが。
出来るの、だが……
何にせよ、俺達とってそれが迷惑である事に変わりはない。
いや、それどころか絶体絶命だ。
と、そう言う訳で……
「おいおいおいおい!!
マジかよふざけんな!!
ど、どうするスマホクラフター!?
お前、なんか良い案は無いのかよ!?」
「そ、そんな事急に言われても……!!」
そう。次に焦るのは俺達の番であった。
それはまるで、挑戦者達の入り混じる恐怖や焦りといった感情が、伝染するかのように……
▽
だがしかし、不幸はそれだけに留まらなかった。
それは何故かと言うと……原因はオヅカだ。
「ん?何だ、アイツら狙いをこっちに移したのか?
……しめた!!
なら、有り難く利用させてもらおうかねぇ……!!」
何と、挑戦者達がこちらに集まり始めた事を知った奴は。素早く群衆の中に身を隠したのだ。
「あっ!?お、おいスマホクラフター!!
アイツ、奴らの中に紛れて時間稼ぎするつもりだぜ!!
それだけは絶対に阻止しろ!!
じゃないとアイツに今度こそ毒魔法を使われるぞ!!
分かったらさっさともう一回、石をぶん投げて奴を止めるんだ!!早くしろ!!」
「分かってる!!分かってる……けど!!
こっちに向かって来る奴もどうにかしないといけないだろ!?」
「馬鹿、何やってる!!雑魚は後回しにしろ!!
じゃないと本当に取り返しのつかない事になるぞ!!」
敵の思わぬ行動に、一段と焦る俺達。
それでも何とか、大勢の中からオヅカを見つけ出そうと努力したのだが……
木を隠すなら森とはよく言ったものだ。
悲しくもタイムオーバー、その時が来てしまった。
「『操りの魔毒』」
不意に、そのような声が聞こえたかと思うと。
突如として挑戦者達を、深紫の霧に似た何かが包み込んだ。
「!?」
「マズい!!ゴブ一!!ゴブニ!!ゴブ三!!全員一旦退がるぞ!!」
まるで毒霧のようなそれは、当然オヅカによるものであろう。
奴がそれ程の広範囲に魔法を放ったのだ。
直に見た訳ではないが、その魔法の性質と聞き覚えのある声でそんな事はすぐに分かった。
「うわっ!?何だこれ……」
「か、身体が、動かない……」
すると、途端に舞い上がる瘴気のようなそれを吸い込んだ者達は皆、何処か様子がおかしくなり……
そして、最後にはそこにいた全員がバタバタと倒れ込んでいった。
ただ一人、オヅカを除いて。
「と、とりあえず、俺達は助かったみたいだな……
と言うか、これはむしろ俺達にとっては『嬉しい誤算』みたいなものなんじゃ……?」
「……いいや、どうやらそうでもないらしいぜ。
よく見てみろ、何かアイツらおかしくねえか?」
しかし、真に驚くべきはここからであった。
「う、うぅ……」
「タ、タスケ、テ……」
一体、彼等の身に何があったというのだ。
今し方まるで死んだように地に伏し、もう二度と起き上がる事はないだろうとばかり思われていた挑戦者達が。
怠惰にも映る程緩慢に、だが確実に。
文字通り実にゆっくりと、ゆっくりと全員が動き出しただけでなく。
その様はまるで、生ける屍こと『ゾンビ』のようにして蘇ったかと思うと。
再び俺達へと向けてゆらゆらと歩き始めたのである。
「うわぁああああ!?ゾ、ゾ、ゾ、ゾンビ!?
ゾンビだよな!?アレは間違いなくゾンビだよな!?」
「うるせえ!!気をしっかり持てスマホクラフター!!……とは、言ったものの。
流石の俺も、こうなるとは完全に予想外だったぜ……さて、どうすっかな……!!」
その間にも、ゾンビと化した挑戦者達は腐りかけの身体を引き摺るようにして俺達との距離を縮めて来る。
見れば見る程、本物の歩く死体のようだ。
彼等は皆身体を揺すりながら。ダンジョンに呻き声を響かせながら。そうして着々とこちらに迫りつつあるのだから。
ただ、彼等の動きが機敏なものから、余りにも鈍重な速度へと変わったのは唯一幸いと言えるだろう……が、そんな事はさておいてだ。
それにしても、これは本当にどうした事だろう。
挑戦者達の身に何が起こったんだ?
そして何故、まだ俺達を狙う?
現状あのゾンビ達には、とてもそう出来る程の理性があるようには見えないのだが?
などと考えてはみたものの結局、答えは見つからず……と、その時。
事の真相は、意外にも当事者であるオヅカによって齎された。
慌てふためく俺達を前に、彼等の長のようにしてその中央に仁王立ちしていた奴が楽しげに声を上げたのだ。
「ク、クク……アッハッハッハ!!
いやぁ、悪い悪い。
別に馬鹿にしてる訳じゃあないんだよ。
ただそこまで驚いてもらえると、こっちもやった甲斐があるって言うかさ。
まあ、せっかくだから君達にも教えてあげるよ。
もしかすると、もうとっくに気付いてるかもしれないけどね……」




