二十話 VS毒魔法使い
「うわっ!?」
「とにかく避けろスマホクラフター!!
それとお前達もだ!!
このままじゃお陀仏だぞ!!」
突然放たれた毒系統の魔法を避けるべく、転がるようにして壁際を離れた俺達の前に立っていたのは。
ローブを纏った、痩せぎすの男……
「あ!?アンタは確か、例の魔法使い!!」
「おや、これは有難いねぇ。
かの有名なスマホクラフター様に覚えてもらえてるとはなぁ……
ああそうだ、俺がオヅカだ。
だが金輪際その名を忘れられぬよう、君達には今から俺が直々に敗北をくれてやるとしよう……」
そう、それはオヅカだった。
その間にもオヅカは次なる攻撃に移ろうとしているらしく、奴の両掌には禍々しい色をした魔力の珠のようなものが形成され始めている……つまり。
「へっ!!やる気みたいで嬉しいぜ!!
こっちも丁度、テメーにはどっかで必ず〝お礼〟がしてやりたいと思ってた所だったんだからな!!
なあスマホクラフター!!
お前もそうだろう!?」
「え、いや俺は別に……待てよ。
そっか、この人がいなければ俺はリンと一緒に……
……ああ、その通りだドラゴン進!!
俺達に戦いを挑んだ事を後悔させてやろう!!
さあやろう、応戦だ!!」
今こそ、俺達も戦いの舞台に立つ時がやって来たのだ。
▽
「さあ!!第四回『The Battle Royale 』!!
今回も予想はしていましたが波乱の幕開けとなりました!!
スタートした途端、挑戦者達は宝箱には目もくれず殆ど全員が土部河へと怒涛の勢いで攻撃を浴びせ掛けています!!
これでは流石の土部河も、早々のリタイアとなってしまうのでしょうか!?
クルセイドちゃんには今回の現状、どう映りますか!?」
「そうですね……なかなか過酷な戦いではありますが、それでも土部河さんはこの難局を切り抜けられるだろうと私は考えていますね。
その証拠に、土部河さんは今も落ち着いて挑戦者達に対処していますし。
それに何より、土部河さんに攻撃が偏り過ぎてしまっているせいで、相棒のレイターさんがむしろ動き易くなっているような状況ですから。
このままいけば、着実にレイターさんが敵の数を減らしていって、後に残るのはあの二人……という展開になるのではないでしょうか」
解説席からはそのようなやり取りが聞こえた。
そこからも分かるように、今現在注目の的となっているのは『土部河VSその他ほぼ全員』である。
その片隅で争う、俺達とはまさに真逆の立ち位置だ。
だがしかし、スポットライトが無いからと言って奮起しない訳にはいかない。
負けて良い戦いなど一つもありはしないのだから。
とにかく、俺達とオヅカとの戦いもまた始まったのだ。
「じゃあドラゴン進、〝あの感じ〟で良いんだよな!?」
「ああそうだ!!
作戦通りにいくぞ!!」
そこでまず初めに。
俺達は素早く移動し、〝ある隊形〟を作った。
その隊形とはこうだ。
ゴブリン達とドラゴン進が四つ並びとなって壁役になり。
守りを固めたその背後に、俺が将棋の王将のような形で陣取るというものである。
「おや、それは……ク、アッハッハッハ!!
お二人さん、何だいそいつは?
そんな事をしたってよぉ、大事な〝キング〟は、肝心なスマホを持ってやしないんだろう?」
すると、俺達が動きを終えた後。
その最終的な全貌を目の当たりにしたオヅカは魔力の形成を止めてまで、噴き出しつつ笑う事を優先した。
まあ、俺の現状はオヅカも理解しているようだし。加えて奴は、そんな俺達を内心では見下しているのだろう。
だからこそ、その反応も無理は無いと思う。
……実に、皮肉なものだ。
そうして相手が劣っているとばかり思い込み、生まれた油断がまさか命取りになるとは、今の奴は夢にも思っていない事だろう。
とは言え、こちらにとってはむしろ好都合。
という事で、俺達はまた静かに行動を始めた……
「だったら、スマホクラフターをわざわざそこまでして守る必要なんて何処にも」
「……へへ」
「ん……確か君はドラゴン進、だったね?
何故笑った?
君には何がそんなに可笑しいというんだい?」
「いやいや、別に何でもねえよ。
それより良いのか?
お前、随分と余裕そうにヘラヘラしてるけどよ。
そんな暇があんなら、お前も土部河をぶっ倒しにでも行った方が良いんじゃねえか?
その調子でもし俺達に負けたりでもしたら、相当ダサいぜ?」
そう、今回ばかりはドラゴン進の言う通りである。
いくら他者の目に滑稽に映ろうとも。
その歩みは鈍重で、僅かなものだとしても。
俺達は着実に、着実に白星へと向けて動き出しているのだから。
▽
「……おおっと!?
土部河を中心とした激しい争いについつい、目が行きがちになっておりましたが……!!
どうやらあの『優勝から最も遠いチーム』と呼ばれ、登場時も奇妙な様子で話題を攫った、ドラゴン進とスマホクラフターの二人も遂に戦闘を開始するようです!!
しかもその相手はオヅカ!!
二対一とは言え、決して油断ならない相手です!!
さあクルセイドちゃん!!
応援している二人が戦い始めるようですが、今のお気持ちはどうですか!?」
「ま、まあ、少し心配ではありますが……ただ、正直。
やはり、それ以上にお二人の様子が気になる所ですね。
今のお二人とそこにゴブリンを加えた配置を見るに、作戦があるのは間違いないのでしょうが……
……ね、ねえリンちゃん?そうだよね、ね?
本当に大丈夫なんだよね?作戦、あるんだよね?」
『勿論ですよ『クルセイドちゃん』氏。
前にも言った通り、心配は不要です。
しかし、その一言ばかりでは納得出来ないのも仕方ないでしょう……ふむ。
皆、戦いに集中していてこちらの話などあまり聞こえていないようですし、そろそろ話してしまっても問題は無いでしょう。
ではいい加減、種明かしといきましょうか。
『クルセイドちゃん』氏。耳を貸して頂けますか?』
▽
「……まあ、ダサいだろうねぇ。
ここまで言って、君達に負けたんだったらそりゃあもう、暫くは人前に出られないくらいだよ。
でもねぇ、君達も分かってると思うけど、それはあくまでも『敗北したら』の話さ。
ただ正直な所、今の君達に俺が負けるとは思えないんだけど。もしかしてその並びに何か、俺に勝つ必勝法でもあるって言うのかい?
……いや、やっぱり言わなくても良いや。
それは今から、この身をもって教えてもらう事にするよ……!!」
ドラゴン進の返答により笑みを引っ込めたオヅカは。
一頻り話し終えた後に、再び魔力を掌に集中させ始めた……つまり、今度こそ戦いの幕開けだ。
一方、そんなオヅカの様子を見た、俺達はと言うと。
「……来るぞ!!
おいスマホクラフター!!
時間は稼いでやったんだ!!
きっちり準備は出来てるんだろうな!?」
「ああ、お陰様でな!!
だからドラゴン進、お前は自分の事だけに集中しろ!!」
「おっし!!じゃあ始めんぞ!!」
そう、ドラゴン進が会話という形で時間を確保してくれた事により、準備は万端であった。
「何……!?」
それを知り、初めて動揺を見せるオヅカ。
だが、今となってはもう遅い……俺達は動き出した。
「さあ、出来立てのホヤホヤだ!!受け取れ!!」
そしてまず、俺は〝ある物〟を四つ、ドラゴン進と三匹のゴブリンに放り投げる。
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アイテム[岩石の槍]
[岩石の槍]
佐藤大吾が岩石からクラフトした小型の槍。何分元となった素材が素材のため、扱い易い重量や取り回しの良さも考えてこのサイズとなった。
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その〝ある物〟とは武器だ。
防衛のためと、壁役をしてくれている彼等を丸腰のまま放置する訳にはいかないからな。
ちなみに、槍のクラフトに使用した岩石はだな。
以前解説役も話していた、俺の身に付けている『焦茶色の非常に大きな鎧』から剥ぎ取る事によって入手したものである。
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アイテム[岩石の鎧]
[岩石の鎧]
佐藤大吾が岩石からクラフトした鎧。しかし技術が足りないのか、『ただ岩と岩を繋ぎ合わせただけ』のようなこの鎧は各部位が全体的に脆く、また剥がれ易い。そのためこれは防御面において、はっきり言ってしまうと『使い物にならない』と言えるだろう。
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そう……実を言うと、あれもまた俺のクラフトによって作り上げた一品なのである。
しかし、鎧にも関わらずその目的は『守り』にあらず。
真の用途はこうして武器を製作するためであったのだ。
……まあ、それはともかく。
そうして槍を手にしたドラゴン進とゴブリンは、オヅカへと得物を突き出し突き払い、文字通り『横薙ぎに注ぐ槍の雨』を浴びせる。
「クソッ、舐めていたが四対一はなかなか……いや、武装もか。
とにかく、これはまたやり辛いねぇ。
こうも連続で攻撃されちゃあ流石の俺でも、魔力を溜める暇もやり返す暇も無い、どうしたものか……」
そんな一人と三匹の攻撃は、土部河に降り掛かるそれにはやや劣るものの。
そのあまりの激しさにオヅカは途端、防戦一方となる程であった。
「ゴブ一!!ゴブニ!!ゴブ三!!そのままガンガンいけ!!畳み掛けるぞ!!
だが、もし誰か一匹が危なくなったらすぐソイツのサポートに回れ!!その時は俺も加勢するからよ!!
何、心配すんな!!仮とは言えお前達とは契約を結んだんだ、絶対に見捨てたりはしねえ!!
だから今は『攻め続ける事』、『味方が危険になったら必ず助ける事』。それだけを考えろ!!」
また、その猛攻を可能としているのは。
槍とはまた異なる〝ある物〟を所有し、ゴブリン達と共に前線に立つドラゴン進による魔物への指示、それと激励を目的とした声掛けがある事も要因の一つだろう。
……正直、最初の頃は『コイツ、もしかして紅丸がいないからと言って、全部俺にやらせるつもりなのでは?』
などと、心配ばかりしていたが。
実際はむしろその逆で、直前には「目の前で的確に指示してやらねえとコイツらが可哀想だからな!」と言い、現に今もリーダーシップを発揮して戦闘を優位に進めているのだから驚きだ。
それと、驚いたと言えばもう一つ。
存外、コイツが魔物に対して〝だけ〟は気配りの出来る男だったという事にも、俺はなかなか仰天させられてしまったものだ。
やはり、腐っても魔物使いと言う事だろうか。
ただ、ゴブリン達に与えられたセンスの欠片も無いネーミングセンスは最早、虐待の域にまで達しているような気がしなくもないが……いや、まあ良い。
あまりそんな事を考えていて、もしも口から漏れ出てしまえば最後。その時はドラゴン進にまた手酷く叱責されるだろうからな。
という事で、気持ちを新たにした俺は。
「それじゃあ俺も、〝アレ〟を作り始めるか。
またちょっと鎧から岩石を取って、ここをこうして……よし!出来た!」
再びクラフトによって製作した〝飛礫のような物〟を握り。
それをオヅカへと投げ、要は『投擲による援護』を行うため。奴に狙いを定めるのだった。
「おや?なるほど、こいつは驚いた。
奥の君はただ守られてるだけじゃあなく、急拵えのスナイパーだったんだねぇ。
だが、そんな石ころ、幾つ放り投げた所でどうにも……」




