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20/23

十九話 開幕 『The Battle Royale 』

「さあ『The Battle Royale 』、本当に、本当にもう間も無くの開幕となります!!


ではその前に、まずは簡単にそのルールをおさらいしておきましょう!!


とは言っても、ルールは簡単!!

ダンジョンの奥にある宝箱を開けた者が優勝!!


また、挑戦者は二人一組のチームとなっておりますが、例え片方が脱落していたとしても二人のうちのどちらかが宝箱を開ければその時点で優勝決定となります!!


加えて他チームへの攻撃、妨害は一切として反則になりません!!まさに何でもアリ!!もう一度言いますが何でもアリです!!


ルールとしては以上となります!!


それでは皆様、いよいよ開始となる『The Battle Royale 』を存分にご堪能下さい!!」


ルール説明の直後、解説役の男が目配せすると共に、俺達の目前に立つスタッフの一人が片手を頭上高く掲げた。


その手が振り下ろされた時こそ、この企画が、この戦いが。文字通り幕を切って落とされるのだろう。


すると、今度はそれを見た挑戦者全員が上半身を低くし、片足を一歩前にし。前傾姿勢となる事で駆け出す準備を始めた。


勿論、俺もそのうちの一人である。


ただし、ドラゴン進と相談した結果、俺達だけは他の者とは違い。


目標の宝箱ではなく、壁のある〝やや東の方〟に身体と目を向けているのだが。


「よし!遂に始まるぜ!

スマホクラフター!お前も気、引き締めろよ!」


「ああ、分かってるって。

……でもさ、本当にこれで良いのか?


お前の言う通り、俺達だけスタートの方向をちょっと変えてるけどさ。


正直、寄り道してるような余裕が俺達にあるとは思えないんだけど……」


「いや、別にそこまでするワケじゃねえよ。


あくまでもこれは『最初だけ』だ。


どうしても、初っ端だけは〝他の挑戦者共(コイツら)と団子になってる〟ワケにはいかねえんだよ。


と言うか、さっきから言ってるだろ?


『意味は始まればすぐに分かる』ってよ。


とにかく、だ。


いいかスマホクラフター?

今は余計な事ばっか考えてないで集中しろ、分かったな?」


「ま、まあ、お前がそこまで言うなら……」





「大吾さん達、大丈夫かな……?


何だか、他の人達とはちょっと違う方向に行こうとしてるみたいだけど……ねえ、リンちゃん。


もしかしてこれも、皆で立てたって言う作戦の一つだったりするの?」


『いいえ、そうではありません…………が。


ご主人と『ドラゴン進』氏の狙いは計算せずとも、何となくは理解出来ました。


ですから『クルセイドちゃん』氏、そこまで心配する必要はありませんよ。


お二人は決して優勝を諦めた訳ではないのですから。


いいえ、むしろその逆です。


お二人の目標は今でも、『優勝』の二文字のみです』





「挑戦者全員、準備は宜しいですね!?


ではこれより、開始の宣言をさせて頂きます!!


3、2、1…………『The Battle Royale 』、スタートです!!」


スタッフの張り上げた一声。


それこそが開幕の合図となった。


そうだ、遂に企画が始まったのだ。


挑戦者は皆、歳末のセールに雪崩れ込むかのようにして宝箱を目指し、一直線に駆け出して行く……


かと、思いきや。


どうしてなのだろう。

そんな予想は清々しい程の失中に終わった。


「……って、あれ!?」


「だから言っただろ!!ほら、お前も早くこっちに来い!!巻き込まれるぞ!!」


唖然とする中、ドラゴン進に肩を掴まれた俺は人混みを抜け、奴と共に壁際へと駆け込む。


一方、ドラゴン進が引き連れていたはずのゴブリン達は既に移動を終えていたらしく。


現れた俺達の前で三匹共に、いつの間にやら壁に貼り付くようにしていた。


「な、なあ、そろそろ教えてくれたって良いだろう?


これは一体、どう言う事なんだ……!?」


そうして無事、壁を背に難を逃れた俺は思わずそう呟いてしまっていた。


何故ならば、振り返った先にある光景。


それがつい先程まで想像していた、『宝箱へ急ぐ挑戦者達の大行進』なぞではなく。


いや、それとは非常に、非常にかけ離れたものであったからだ。


……まず第一に、そのような真似をしようなどという者が、そこには一人として存在していなかった。


つまり、『宝箱のある方向へと急ぐ者』が誰もいないという事だ。


それどころか、俺達を除く挑戦者達は。


「覚悟しろ土部河どぶかわ!!うおおおおお!!

喰らえ!!『斧斜連斬アックスラッシュ』!!」


「『魔弾砲ウィザードリィ・カノン』!!

さあ土部川!!こいつも喰らっちまいな!!


へへへ、卑怯とは言わせねえぞ?

これも全部、お前が悪いんだからな?」


皆足を止め、打つ切る殴るという。


数々の攻撃をまるで嵐が如く繰り出していたのである。


とは言え、その暴風雨は全て土部河へと降り注いでいるのだが……ただ何故そこまでして、奴に集中砲火を浴びせるのかが正直よく分からない。


そのような暇があるのならば、一刻も早く宝箱を目指した方が何倍も有益だと言うのに。


「おいおい、スマホクラフター。

もしかしてお前、これでもまだ分かんねえのか?」


そんな時に突然、ドラゴン進が俺をやや嘲るように言った。


しかも目を向けて見れば、蔑みにも似た視線までこちらに注いでいる。


その目に少々カチンとさせられた俺は、例え状況が飲み込めずとも言い返さずにはいられなかった。


「な、何だよ、本当感じ悪いなお前……で?


何が言いたいんだよ?

分かってるんなら教えてくれたって良いじゃないか、俺達チームだろ?」


「へっ、素直じゃねえな……まあ良い、そんなに聞きたいってんなら教えてやるよ」


すると奴は、一度鼻で笑った後に口を開く。


俺は胸中の苛立ちが怒りと変わりかけるのを何とか堪えながら、ひとまずは奴が話すのを待った。


「まずそもそも、だ。この企画のルールはいくら何でもガバガバ過ぎるとは思わねえか?


せっかく二人一組のチームだって言うのに、宝箱を開けるのはどっちか一人で良いってんだぜ?


例え片方が気絶してようが脱落してようがだ、そんなんフツーおかしいだろ?」


「え……ま、まあ確かに。


大体そう言う企画とかって、どちらか一人が棄権したりするとチーム自体が脱落……みたいなのが多い気がするな」


「ああ。だが、それだとただの『出来レース』とか、大乱闘みたいなもんで企画が終わっちまうからな、今回ばかりはそうも出来ねえんだ……


ルールが雑なのはこうやって、挑戦者共が速攻で数を減らしていくのが最初から目に見えてたからなんだよ。


何しろ、土部河は生きてるだけでもヘイトを集めるような野郎だってのに、前々からSNSで挑戦者の事を散々煽ってたからな。


まあ、お前はそこら辺疎いから知らなかったんだろうが……とにかく、そうなんだよ。


だがそれでいて、チームは勿論、ソイツ自身もこの中では最強クラスだときた……


なら、結果なんて分かってるようなもんなんだからよ。


『初っ端袋叩きにして、早々に優勝争いから引き摺り下ろす』方が何倍もマシじゃねえか。


奴等だってその方がさっさと鬱憤を晴らせるだろうし、体力が残ってる今のうちに仕掛けた方が勝てる確率も高いだろうから、まあ良い事尽くめだな。


……んで、たまたま全員がそう考えたからこそ、いきなり乱戦になったって訳よ。


と言うか、普通はそう思うだろうしな。だからこれは、偶然というよりかはむしろ当たり前の結果だと言えるだろうぜ。


で、俺はそこまで読んだ上で、まず最初に奴等から離れた、と……そんな感じだ。


どうだ、これで分かっただろ?」


なるほど、まあドラゴン進の指示、そして行動の理由は分かった。


それに、実に理に適っていると俺も思う。


だから文句を言うつもりはない、ないのだが……


「むむ……」


「どうした?まだ何か不満そうな面してるぜ?」


「あ、いや、そうじゃないんだ。


ただ何と言うか……ごめん。


正直、お前がそこまで考えてるとは全く思ってなくて……」


ただ、どうしても『短絡的』や『短気』としか映らなかったコイツの第一印象が抜けず。


疑問は晴れたと言うのに、顔の曇りだけは未だに払い去る事が出来ずにいた。


「おま、俺の事なんだと思ってんだよ!!

……ま、まあ良い、説教はこれが終わってからにしてやる。


それよりだ、スマホクラフター。


いくら攻撃が土部河に集中してるからって油断は禁物だぜ、むしろ怖いのはここからだ」


そんな俺を無視して、次にドラゴン進は主戦場を睨め付けながらそう言う。


また、そんな奴の顔はきりりと引き締まっていた。


何と言うか、いつになく真面目な様子である。


『お!おい見ろ、スマホクラフター。


コレ、結構なレアアイテムだぜ?

売ればニ、三回はまともな店に飲みに行けるだろうな。


ん?『じゃあ早く戻って売りに行こう』だって?

馬鹿お前、そこらの店じゃ買い叩かれて終わりだ。


こーゆうのはな、後から来た冒険者に相場の倍くらいで売っ払うのが一番良いんだよ。


いや、ファンに売り付けてやるのも良いな、その時は俺のサインとかも入れて三倍くらいの値段で……へへ、へへへ……』


『おいスマホクラフター!!お前、今度特訓する時はクルセイドちゃんも呼べって言っただろ!?何一人で来てんだよ!!


あ?『お前がいる時は死んでも呼ばない』だと?

ふざけんなテメェ!!父親気取りかこの野郎!!』


などとばかり口にしている、普段のコイツでは一瞬すらも浮かばぬであろうその表情に、俺は殊更に強くそう感じさせられていた。


「ん?……『むしろ怖いのはここから』って、どうしてだよ?まあ油断するつもりなんて更々無いけどさ、でも俺達は今、全くのノーマークなんだし」


「馬鹿、そう言う時が一番危ねえんだよ。

と言うか、今だってそこまで安全とは言えねえんだ。


戦いを見るにアイツら、怒りに任せて土部川ばっか狙いやがってるみたいだからな。


全く、肝心な事を忘れやがって……」


「肝心な事?」


「ああ、だってそうだろ?


本当にフクロにしなきゃならないのは本来、アイツじゃなくその相棒のレイターなんだからよ……だからまあ、あれもそう長くは持たないと思うぜ。


って訳だスマホクラフター。

何にせよ、お前もちゃんと戦う準備をしとけよな。


……俺がそう言った本当の理由はな。


もう一つ、忘れちゃならねえ問題があるからなんだよ」


そこでドラゴン進は一旦言葉を区切り、何処か遠い目をして見せた。


だが今までの話を聞いた俺にはもう、コイツへの不信感は豆粒程も無い。


だからこそ、奴がまた口を開くのを黙って待ち続けた。


「こんな状況になると、必ず現れる奴がいるんだ。


例えばこう……乱戦のどさくさに紛れて、自分の気に入らねえ奴を始末しようだとか。


雑魚処理をしようだとか、そう言う事ばかり考えるような……ん?」


「何か、聞こえるような……?」


その直後だった。


突如として俺とドラゴン進の耳に届いたのは。


なぞらえるならば、『何かタイヤのような物の空気が抜けてゆく時にも似た』物音。


……そして。


全てを溶かす魔毒(メルトラール)


それが毒系統の魔法であり。俺達の頭上にある岩を融解、次に落下させんとする、まさにその音であったと俺達が気付いたのは。


術者が姿を現した、その後であった。


「ほらな来やがった!!


やっぱいるんだよ、〝こーゆう奴〟が!!


おい、ボサっとすんなよスマホクラフター!!

敵襲だぜ!!」

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