十五話 The Battle Royale
@D.SHIN
『突然だけど報告で〜す。
俺、スマホクラフターと〝例の企画〟参加します。
ってワケで今作戦会議中、絶対優勝するぜ!
#拡散希望 #ドラゴン進 #スマホクラフター』
▽
@3nmo8
『マジか!』
@93ecmxcsronl
『これは予想外にも程がある』
zzz3q_mom3z3
『この二人が同じチームで参加するの、ちょっと楽しみではあるけどそれ以上に意外過ぎてビビった』
@coo3m_lo
『〉〉@zzz3q_mom3z3
同じく。チームの事もそうだけど、スマホクラフターがこんな感じの企画に参加するイメージもあんまりなかったからさ』
@rzxr0llso9
『まあ二人で居酒屋行ってるくらいだし、あの後仲直り(?)でもしたんじゃないかな?』
@A99_leq
『〉〉@rzxr0llso9
あのダンジョン配信以降、ドラゴン進がスマホクラフターの事にあんまり突っ込まないのも何かおかしいと思ってたんだよね。だから多分そうなんだと思うよ』
@EFze8
[こちらのコメントは削除されました]
『だとしても和解が早過ぎて不自然な気がするんだが。やっぱあの配信ヤラセだったんじゃねえの?
ただ馬鹿の一つ覚えみたいに、『動物愛護が〜』しか言えなかったはずのアホ進があそこまで演技できるのかは微妙だけどね。
※追記
なんか燃えてるのでコメント削除します。
アイツの信者マジヤバ杉』
@dx998so
『ま、面白そうだしなんでも良くない?
って事でドラゴン進さん、スマホクラフターさん応援してます!どうか優勝出来ますように!』
@3seoscxsncrm
『おっ、これ牛華族じゃん。配信者でもこーゆう店来るんだな』
等々、ドラゴン進がSNSで発信した内容を見た人々の反応はこのようなものであった。
皆それぞれに思う所はあれど、とにかく『俺とドラゴン進が組んで何かしらの物事に挑む』という部分が余程衝撃的だったのか投稿は瞬く間に広がり。
今では投稿の表示回数が五十万回を突破。
またそれによってドラゴン進、俺共にフォロワー及び視聴者がまあまあ増加するという副産物もあった。
……まあ、要するに。
これで俺の逃げ場は完全に失われたという事だ。
何しろ結構な大型企画らしきそれに、参加すると表明しておきながら当日姿を現さないとなれば我が視聴者達は怒り、落胆し、そして最後にはチャンネル登録を解除してしまうだろうし。
いや、それだけならばまだ良いが。
最悪の場合、反転してアンチとなった彼等が俺を炎上させようと常に目を光らせ、コメント欄を荒らし、終いには活動中止にまで追いやられてしまうかもしれないんだからな。
ああ、何とふざけた話だろうか。
これも全部、全部アイツのせいだ……いや。
責任の所在に関して言えば、企画の立案者にも俺は多少の憤りを覚えている。
偶然か、はたまた必然か、それは分からないが。
彼奴が俺とドラゴン進、どちらかにさえ連絡していなければこんな悲劇は防げたはずなんだからな……
だが、最早何もかもが手遅れ。
ドラゴン進は最初からそれが目的であり、尚且つそこで立てた手柄を口実に紅丸を呼び戻すためなのだろう、例の企画への参加に俺を道連れとし。
しかもそれだけでなく、食い逃げまでされたばかりか、俺は奴と共に騒ぎ過ぎたせいで駅前の牛華族を出入り禁止にされてしまった。
元凶は幾度も大声を張り上げ、俺を挑発したアイツだと言うのに……
正直、同類扱いされてしまった事に対しては怒りよりも悲しみの感情の方が強い。
当然、その後に心地良く酔う事など出来もしなかった。
「あ〜あ、出禁、出禁かぁ……はぁ。
何か悲しいなぁ、アイツと一緒で迷惑客だと思われたのかなぁ。
常連ってほどじゃないけどあの店にはちょくちょく行ってたんだし、顔も覚えてくれてたっぽいから分かってくれると思ったんだけどなぁ……」
『……ご主人、過ぎた事を悔やんでも仕方ありませんよ。
さあ、分かったら準備をして、今日もダンジョン探索へ向かいましょう。
どうせ参加しなければならないのであれば、せめてその時のために少しでも経験を積んでおくべきですよ』
という訳で、翌日となった今この時でも。
ショックのあまり、俺は寝床からなかなか這い出す事が出来ずにいた。
▽
……ちなみに。
以前から例の企画とばかり言っている、『配信者に向けた大規模企画』についてなのだが。
[【第四回】 The Battle Royale 〜『Buddy』で王座を掴み取れ〜]
それが配信される際、タイトルはこのようなものとなる予定らしい。
が、それだけではまだ分からないと思うので簡単に説明するとだな。
どうやらこれは題名にもある通り。
ダンジョン探索を中心とする配信者達を幾人も招集した上で、皆を競わせたり、戦わせたりする等してその中で最も強い人物を決めようと言う、ややバイオレンスな企画なんだそうだ。
また当然と言えばそうだが。
そのため企画と同様、荒々しいのは発案者も立案者もその周りも、そしてファン達も。
まあ要するに、皆が同じ穴の狢という事なのである。
だからこそ、それを知った直後の俺は……
「えぇ……そんな企画に参加したら、俺の視聴者にも〝そっち系〟の人が増えてコメント欄とかの治安が悪くなるかもしれないじゃないか……!!」
「いや、それだけじゃない!!
もし負けて怪我でもしたら大変だし、それに例え勝てたとしても対戦相手のファンに恨まれたらそれこそ一巻の終わり、炎上待ったなしだ……!!」
などと考えずにはいられなくなり、かつ思い悩み。
簡単に言えば、更にやる気が削がれかけていたのだが……何と、驚くべき事にも今回は。
本来こう言った企画にはあまり顔を出さないはずの、あの『クルセイドちゃん』が審査員のような立ち位置での参加を表明した事で、彼女のファンもそうでない者も大盛り上がり。
企画には更なる注目が寄せられると共に。
俺もまた、活気付けられたうちの一人であるためほんの少し、ほんの少しではあるが意欲を取り戻す事が出来たのであった。
@Crusadechan
『大吾さん、今回は災難でしたね。
事情はリンちゃんから全てお聞きしました。
正直、心配で堪りません。
そこで何か出来る事は無いかと考えた結果、ゲスト解説役のような形で私も参加する事にしました。
とは言え、それで何が出来るという訳ではありませんが……近くでアナタの事を見守っています。
大吾さん、頑張って下さい。
ですが、どうかお気を付けて……』
そして、そんな彼女からは少し前にこのような励ましのDMが SNSにて送られてきたというのも、俺のやる気を復活させた一因である。
『え?「余計な事するな!」ですって?
まあまあ、ひとまずは落ち着いて下さい。
それよりもご主人、どうやら私の想像以上に『クルセイドちゃん』氏はアナタ様の事を気に掛けているようですよ。
ですので、こうなった以上は全力で事に挑むとしましょう。
目標は大きく、『目指せ優勝』です』
ちなみに、彼女へと情報を漏らした犯人である無機物の供述は以上だ。
もしかすると、リンは意気消沈している俺を鼓舞するためにそうしたのかもしれない……が。
だからと言って、わざわざクルセイドちゃんまで巻き込んだ事を見逃せるはずもなく。
アイツには『検索履歴を消さない&アプリやブラウザのタブを幾つも開いたままにしておく事で若干負担を増やす』という、厳罰を与えておいた。
@D.SHIN
『おい!!何やってんだスマホクラフター!!
今日もダンジョン入って特訓するからちゃんと時間通りに集合しろっつったろ!!
分かったら早く来い!今すぐ来い!
じゃねえとこっちから行くからな!早くしろ!』
それと、もう一つちなみに言うと。
あれ以降、ドラゴン進からは連日の如く、このような趣旨のDMが送り付けられてくるのだが。
前回の食い逃げ、証拠写真の捏造、企画への強制的な誘導……等々。
枚挙に暇が無い程の迷惑行為の数々は思い出しただけでも腹が立つので、基本的に俺はそのDMに対してほぼ毎回無視を決め込んでいる。
だがしかし、その中でも宣言している通り。
どうせあの野郎は放置していても、ウチの近所までやって来ては「特訓だ!」、「探索だ!」などと言って俺を無理矢理に連れ出そうとするので……
詰まる所、返事をしようが無視しようが、後の展開はちっとも変わらないのである。
▽
─────
場所:上野
─────
あれから三日の時が経った。
勿論、どうのこうのと言いつつも、その間は全て特訓に費やしている。
そのお陰で俺とドラゴン進は日々を重ねる毎に強くなっていった。
─────
佐藤大吾:レベルアップ
Lv 20 → 22
EXP 16105
HP 789 → 840
MP 211 → 223
[パラメータ](簡略)
ATK 41 → 43
DEF 52 → 54
INT 65 → 68
RES 37 → 39
AGI 26 → 27
LUK 30 → 32
─────
その確固たる証拠として今現在、俺のパラメータとステータスはこのように上昇しているぞ。
確かに、これはサラマンダーや炎上系配信者と戦った後に見せた増加分と比べると、やや物足りなく映ってしまうかもしれないが。
今回はわざわざ格上の相手と戦うようなリスクは取らず、地道にコツコツと研鑽を重ねた結果なのだから仕方がないと言い訳したい所である。
と言うか、今までの上がり幅の方が異常で、これくらいが正常なのだ。
感覚の麻痺とは実に恐ろしいものだな。
まあ別に、俺がしている訳ではないが。
……とにかく、出来る限りの事はやった。
無論、特訓以外にもだ。
ドラゴン進、リン達と共に作戦を練り上げ。
昨晩は酒まで控え、睡眠を多く取り。
財布やカード類、スマホも忘れずに持ち。
そして遅刻する事無く、ドラゴン進との待ち合わせ場所である上野駅改札前には、〝企画開始の一時間も前〟から既に到着済み。
という事で準備は万端。
今の調子を一言で表すとすれば、『企画だろうが何だろうがいつでも来い!』である。
……はず、だったのだが。
『おや、ご主人、『ドラゴン進』氏も無事に到着したようですよ。あれをご覧下さい』
「お、確かにあの服装はアイツで間違い無いな。
良かった……正直、ホッとしたよ。
何かアイツ、『大事な時に限って寝坊しそうなタイプ』な気がしたからさ」
そうして俺の後に続き、上野に現れたドラゴン進。
奴から数秒後に聞かされる衝撃の事実により。
俺達の気分は一転。
絶望の淵へと叩き落とされる事となる……
「お〜い!!
お〜いお前ら!!お〜い!!」
「いやいや、そんな大声出さなくても聞こえてるって。
もしかして人違いし」
「違えよ!!慌ててんだよ!!……じゃなくて!!
それよりお前ら聞いたか!?大変だぞ!?」
「ん?聞いたって、何をだよ?」
「ああ……その様子じゃ知らないみたいだな。
まあ良い、とりあえず落ち着いて聞いてくれ。
何か、ついさっき『The Battle Royale 』の運営から発表があったらしくてな。
俺もそれを見たって言うフォロワーに教えられて、ほんの少し前にこの事を知ったんだけどよ。
何でも、前乗りしてダンジョンに入ってた奴等の中で、どんなモンかは分からねえんだが『何かしらの危険物』を持ち込んだ馬鹿がいたっつって。
そ、その馬鹿のせいで……挑戦者全員。
きゅ、急遽、『企画中の武器、防具等装備品を除いた私物の所持』が禁止になっちまったらしいんだよ!!
勿論、お前のそのスマホもだ!!」
「な、何だって……!?」
『つ、つまりご主人は。
完全なる、丸腰……』




