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十二話 佐藤大吾の近況報告

─────

二子玉川ダンジョン[大河の深淵]

─────


あのダンジョンの攻略を終えてからも色々とあった。


当然、視聴者やフォロワーにも報告しておかなければならないだろう。


という事でここは一つ、そうして起きた出来事とやらを整理しておこうと思う。


まず一つ目に……とは言っても、これは出来事という程のものではないのだが。


まあ良い、続けよう。


一つはダンジョン攻略を成功させた事によって、俺がレベルアップを果たしたというものだ。


─────

佐藤大吾:レベルアップ


Lv 12 → 20

EXP 13559


HP 500 → 789

MP 125 → 211


[パラメータ](簡略)

ATK 32 → 41

DEF 39 → 52

INT 40 → 65

RES 26 → 37

AGI 20 → 26

LUK 22 → 30

─────


ちなみにパラメータ、ステータスの上昇度合いはこのようなものとなっている。


戦闘という戦闘はしていない、と言うかあの程度だったにも関わらず。しかも敵を完全に討伐、制圧した訳でもないのにだ。


だとすると、あの炎上系配信者こと『ドラゴン進』は、本当は俺なんかよりも物凄く格上で。


経験値稼ぎ〝としては〟良い冒険者だったのかもしれないな……


いやそれとも、アイツの従えていたドラゴンが強かったとか?でもそっちは倒してすらいないぞ?


まあ、俺一人でいくら考えようと答えは見つからない。


という事で次に進もう。


二つ目は、『スマホの名前が決まった』だ。


と言うのも、これは我が家で休憩中のクルセイドちゃんからの提案だったのだが……


「あの、大吾さん。


少し気になっていたのですが、スマホさんのお名前って特に決めたりはしてないんですか?


なら、今ここで付けてあげましょうよ。


ずっと『スマホさん』って呼ぶのも何だか味気なくて可哀想ですし。


それに、その方が私だけでなく、大吾さんの配信を見ている視聴者さん達や、フォロワーさん達にも親しみが湧いて良いと思うんです。


ね?スマホさんもそう思いませんか?」


『ふむ、『味気ない』や『親しみが湧く』というのはともかくとしても、固有の名称を持つ事自体には私も賛成です。


その方がより正確に私とご主人とのやり取りが行えるだけでなく、『今のは別の冒険者が所有しているスマホの事を言ったつもりだった』、『あれは私ではなく、スマートフォン全体を指し示す発言だった』なんてミスも防げるでしょうから。


ではご主人、『クルセイドちゃん』氏。


早速ですが私の名前に関して、何か良い案はありますでしょうか?』


なんて話になり、当人のスマホも意外と積極的であったという事で、急遽スマホの命名に向けた会議……とも言えぬようなものが始まったのだ。


「あ、それなら『せんべい』とかどうだ?

ほら、お前も煎餅も両方湿気に弱いから丁度良」


『ご主人、今丁度良いと言おうとしましたね?


一体何が丁度良いと言うのですか?意味が分かりませんし、普通に嫌なので却下します』


「私は、『スマホちゃん』を推薦します!


やっぱり『さん』より、『ちゃん』の方がより親しみやすいかな〜って思うんですよね!」


『そ、そうかもしれませんが『クルセイドちゃん』氏。


肝心な名前の部分が一文字も変わっていないというのはどうかと思いますよ……ですので申し訳ありませんが、そちらも却下します』


「じゃあ『おかき』ってのはどうかな?

ほら、あれも煎餅の一種みたいなもので」


『却下します。と言うか、ご主人はいい加減煎餅から離れて下さい。ふざけているのですか?』


だがしかし、会議は予想以上に波乱となり。


そうした激しい議論の末に、辿り着いたのは……


『なるほど、私にある『林檎のような模様』にちなんで『リン』、ですか……まあ、少々安直過ぎるような気もしますが良しとしましょう。


この機会を逃すと、今度こそふざけた名前や、妙な名前にされてしまいそうですし……』


「じゃあ改めて、リンちゃん!

これからもよろしくお願いします!」


「う〜ん、やっぱり俺は『おせん』の方が良いと思うんだけどなぁ……」


スマホも言った通り、アイツにあるマークから連想……と言うか。


ほぼそのまんまそれを拝借させてもらい、名前は『リン』となった。


という訳で、以降あの無機物はリンと呼ぶ事にさせてもらう。





最初に〝色々〟と言った事からも分かるように、知らせはまだ幾つかある。


三つ目は『収益の話』だ。


実は、帰宅後に俺もアーカイブで閲覧した所。


「もう何か、逆に凄いな。

最初の方とか見てて本当の本当に、一ミリも面白くないもん」


『ご主人、それはもう嫌と言う程伝わりましたから、少し黙っていて下さい。


アナタ様が『つまらない』、『面白くない』という旨の発言をするのはこれで十三回目ですよ?』


……等々の感想しか出てこなかった、あの二子玉川ダンジョンでの配信が、何と。


まさかの視聴回数はこの度二十万回を突破し、しかもそれによってチャンネル登録者数は五万を達成。


しかもしかも、その際の収益が十万を超えるという、俺にとっては大偉業を成し遂げてしまったのだ。


これはもう、視聴者の皆の力添えがあったお陰、ご支援の賜物に違い無いのだから必ずや報告しなければ……いや、でも。


あんまり「金が金が」と前面に出すと、〝また〟嫌われてしまうだろうか?


いや、きっとそうだな。


じゃあこの辺りはテキトーに濁すとしようか。


……ああそれと、ついでにこれも話しておくとだな。


先程〝また〟と付け加えたように、当時は散々だった俺の好感度は今では少々回復しているのだ。


炎上も当然、既に収まっているぞ。


@.n.8.

『まあ何にせよ、コイツがクルセイドちゃんと和解したみたいで安心したよ。


その事実を知れただけでも、このクソつまんない配信を見続けた甲斐があったと言えるね。あのままだとクルセイドちゃんが可哀想でしょうがなかったからさ』


@rxnq0

『私もそう思います。確かにこの人の事は最初「本当に何がしたいんだ?」って思ってましたけど。でも、結局はクルセイドちゃんをしっかり守ってあげたみたいですからね、少し見直しました』


@898qq8mm_

『俺は戦闘面でも見方が変わったかな。おお、意外とやるんだな〜って感じでさ。スマホクラフターって単体でもまあまあ強いんだね。まあでも、配信はもうちょいどうにかした方が良いとは思うけどね』


その証拠に、三つほどアーカイブの配信に残されていたコメントを抜粋したものがこちらである。


詰まる所、俺は漸く図らずも無視し続けてしまっていたクルセイドちゃんと再会を果たし。


更には追い回していたドラゴン進から彼女を救ったからこそ。


世間から見た俺の評価は上昇もとい再浮上、騒動も無事に沈静化し。


結果として一度成りかけた『炎上、迷惑系配信者』からの脱却を果たしたという訳だ。


これもまた、視聴者の皆が冷静に物事を判断する慧眼、そして明晰な頭脳を持ち合わせてくれていたからこその……いや。


そう思っているのは確かだが、あんまり褒めちぎると媚を売っているように見えてしまう恐れがあると言えよう。


ならば一つ、ここもテキトーにぼかした感じの報告にしておくとするか。





……そして、最後に。


まあ、これは公にするかどうか悩んではいるのだが。


『俺とクルセイドちゃんのその後』に関しての話だ。


あの一件以降、俺達の関係がどうだと取り沙汰されてはいるが。


この際だからはっきり言っておくと、確かに彼女とは

あの後俺の自宅で連絡先も交換したし、結果的にとは言え我が家に招く事となったのも事実だ。


……が。高く見積もってもせいぜい『友達の域を出ない関係』であるため。


関係も何も、それ以上でもそれ以下でもなければ、それ以降に進展すると言う事もまた有り得ないのだ。


とは言え、これは俺自身の考えであり。


一方のクルセイドちゃんはと言うと、こんな事も話していた。


「大吾さん、あの時は本当にすみませんでした。

私の軽はずみな発言で、ご迷惑をお掛けしてしまって。


そのせいでご自宅にもお邪魔する事になってしまいましたし……正直、お詫びの言葉もありません。


…………で、ですが!


例え軽はずみであっても、あの言葉に嘘はありません!


大吾さんはあの時、身を挺してまで私を守ってくれたんですから!それだけはどうしても、お伝えしておきたくて……そ、それだけです!


そ、それじゃあ大吾さん!私はこれで失礼します!


少しの間とは言え、ご自宅にお招き頂いてありがとうございました!またお会いしましょう!」


ちなみに、そんな彼女は話し終えるとすぐに。


「もう大丈夫です!すっかり元気になりましたから!」


「近くに配信してる方もいないみたいですし、本当に大丈夫ですから!」


などと言って、あっという間に去って行ってしまったのでウチに一泊した訳ではないぞ。


まあ、それはともかくとしても……どうしたものか。


無言を貫けば、視聴者達にはますます疑われる事は必至だ。


しかし、だからと言って「クルセイドちゃんにはこう言われました!」なんて公言してしまえば、更なる勘違いを生むかもしれない。


というか、そこだけは絶対に言えない。


その結果、またクルセイドちゃんに嫌な思いをさせてしまうと言うのは不本意だからな……だからこそ、俺は今猛烈に悩んでいるのだ。


でも、クルセイドちゃんのあの言葉が本当なのだとすれば……いやいや、何を考えてるんだ俺は。


あれはクルセイドちゃんが俺を思い遣るがために口から出た、あくまでもフォロー等を目的とした発言なはずだ。


でなければ、高嶺の花である彼女からあんな言葉を賜る訳がないのだし……ああ、きっとそうだ。


ではこの辺りの情報を発信する際には、より慎重に事を運ぶため必ずスマホ、ではなくリンと相談した上でこれまた濁しながら進めるとしよう。


……とまあ、長くなってしまったがダンジョン探索後の変化はこれくらいだろうか。


だが改めて見ると、視聴者へ報告すると言うのに後半の方は殆ど濁してばかりになってしまうような気がする……いや、実際その通りだな。


じゃあここは一つ、前にリンが作ってくれたSNSのアカウントに、この間行った居酒屋の写真でも載せておくとするか。


それでどうなるという訳ではないのは重々承知しているが。でもグルメ関係に話題が逸れたりして、ほんの少しくらいは事を誤魔化せる……


かも、しれないからな。


『ご主人、不用意に写真などSNSに載せては、居場所を特定されるかもしれませんよ?』


「え?あ……ああ、まあ、そうかもな。


でもほら、音沙汰無しだとまた妙な噂を立てられるかもしれないだろ?」


『無関係な写真一枚でそれが無くなるとも思えないのですが……まあ、ご主人がそれで良いのでしたら、私は別に構いませんが』

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