二 怖いくらいにあなたが嫌い⑤
自室のベッドに横たわって、暗い天井を見上げる。
目まぐるしい一日だった。
わたしが彼に決別を告げて走った後、希湖も追いかけてきてくれた。
さすがに自宅まで走り切るのはできなくて、途中で休んでいたところに追いついて、家まで送ってくれたのだ。希湖は「言えてよかったね」とだけ言って、あとはずっと黙って肩を支えてくれた。
家の近くまで来ると、ちょうど涼也が帰ってきているところだった。
わたしたちの表情を見て、ただならぬことがあったらしいと察して駆け寄ってきてくれ、希湖が先ほどあったことを話した。
涼也が怒って、今すぐ駅に引き返そうとするのを押しとどめて、わたしは希湖を家まで送ってほしいと頼んだ。
二人とも最初は戸惑っていたけれど、自宅もすぐ近くだったし、希湖に大変な思いをさせて申し訳なかったので、せめて遅くなる前に帰らせたかった。
「希湖のおかげで助かった。本当にありがとう。」
わたしは親友をぎゅっと抱きしめた。
「ううん。頑張ったのは優姫だよ。明日からも無理しないでね。どんなことでも相談して。」
わたしはもう一度「ありがとう」と言うと手を振った。
涼也と希湖が歩き出したのを見送ってわたしも自宅へ向かった。
わたしが疲れ果てているのを見て、父も義母も陽太も心配してくれたが「相談できそうだったら後でする」と言ってそっとさせてもらうことにした。
少しでも心配させないように、夕ご飯は無理やり完食して、さっさとお風呂に入って自室に引きこもった。
自分があんなに動揺してしまうなんて、少し情けなかった。
今までは完璧に”白雪姫”を演じ切れていたのに、友人の背に隠れて、勇気までもらって、やっと言えた言葉も、途切れ途切れで堂々としていなくて、女王どころか、まるで”白雪姫”ではない。
自分の死因も考えれば仕方のないことだと言い訳できるけれど、勝ちは得たけれど勝負には負けた気分だ。
明日から、彼はどんな態度をとってくるのだろう。
不安と恐怖で胸が重くなる。
それでも、わたしは彼に立ち向かわないといけない。
わたしは”白雪姫”なのだから。




