九 キスして、目を開けて③
二日目。朝のホームルームもそこそこに、早速準備に取り掛かる。
今日は最初に新と一緒に回る約束をしている。
顔見知りだらけの中でデートというのも恥ずかしいけれど、新と一緒に回れるのもこれが最後なので、楽しむことに専念したいと思う。
雪女の浴衣に着替え、教室を出るともう廊下で待っていた。
「お待たせしました。」
「いや、全然。浴衣、似合うな。可愛い。」
「ありがとうございます。」
学校なので敬語モードだ。
だけど、新は変わらずストレートに褒めてくれるし、わたしは思わず赤面してしまう。
「それじゃ、行くか。」
すっと恋人つなぎされて、一緒に廊下を歩きだす。あら、これは・・・無意識だな。でも、指摘すると今日一日つないでくれなくなってしまいそうなので、素直に手を引かれていく。
「迷路に行ってみたいんだよな?」
「はい。」
短い時間で楽しめるように、事前に行きたいところを相談しておいた。
迷路は教室を全部使っていた。たかが教室の広さと少し油断していたら、迷子になりかけた。
行き止まりかと思っていたところに、かがんでくぐる扉が隠されていたり、クイズの答えが正解の道につながっていたり、新と悩みながら進んでいくのが楽しかった。
迷路を脱出して、チュロス屋の教室へ向かっていたら、新聞部につかまった。
文化祭の写真を後で校内掲示するそうで、撮影させてほしいという。
自分が映っている写真は後でもらえるということなので、せっかくなので撮ってもらう。
新に少し肩を寄せてピースサインをしてほほ笑む。
新聞部の方は何度も頭を下げながら、次の被写体探しに人込みへ消えていった。
気を取り直して、お店を目指して歩く。
どこを向いても人ばかり。みんな非日常に浮かれているようで、わたしたちのことは気にならないみたいだ。
おかげで、気兼ねなく新をあちらこちらに連れまわした。
「このチュロス美味しい!」
「へえ、よかったな。」
「一口食べます?」
勢いで差し出して置いて、ちょっとやりすぎたかなと思ったけど、新も迷いなく食いついてきた。やっぱり、わたしたちも浮かれているみたい。
「うん、うまいな。こっちのポップコーンもあげるよ。」
新がつまんでくれたポップコーンを、口をあけて入れてもらう。
「おいしいね。」
それから美術部や書道部の展示を回ると、あっという間に時間になってしまった。
今度会うのは舞台の上だ。
わたしは手を振ると、お化け屋敷の持ち場に戻った。




